真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

34 / 48
隼人・弁慶編 第11話 「それでも……」

 

 

ミチルさんは死んだ。

 

なぜ、死んだ?

 

俺か、竜馬か、それともゲッターGのゲットマシンのせいか。

 

何が理由なのかなどどうでもいい。

 

俺は、大切な人を失った。それだけは事実だ。

 

「大切な人を取り戻したいと思うだろう? スティンガーくん」

 

「う、うん、そうだね コーウェンくん」

 

悪魔の誘惑に俺は抗えなかった。

 

それが大切な親友を……仲間たちの絆を崩壊させることになるなど考えもしなかった。

 

俺の心にあったのは、ただミチルさんにもう一度会いたいという気持ちだけだった。

 

意識を失った隼人は、夢を見ていた。

 

(俺は、まちがったのか。)

 

(一体…何を守りたかったのか。)

 

今ここで、テオドール達を助けたとしても、俺が竜馬を…ゲッターチームを裏切ったという事実は何も変わらない。

 

「二度と仲間を裏切らない」という誓いすらも、弁慶と……「仲間」と戦っていることですでに破綻している。

 

「矛盾」した思いが隼人の選択を鈍らせたのか。

 

心のどこかで、弁慶が正しいことはわかっていた。

 

テオドール達が任務を完遂しても、その命を失っては「仲間」を守ったことにはならない。

 

「……なあミチルさん、俺はまた間違えたのか、間違えたのなら言ってくれ。たのむ教えてくれ」

 

朧気な意識の中、隼人はミチルの姿を思い浮かべた。

 

ミチルが死んでからはその存在を忘れることはなくとも、その顔をできるだけ思い出さないようにしていた。

 

久しぶりに思い浮かべた彼女は…

 

隼人の中の「早乙女ミチル」は、静かに微笑んでいた。

 

その笑顔は、まるで「それでいい」と言っているようだった。

 

ならばこんなところで寝ている場合ではない!!

 

隼人の中の「最後の灯火」が灯った。

 

 

 

1983年

3月1日 グダンスク

 

 

既に東西の戦術機隊がBETA群に入って数分が経過している。

 

弁慶は、突撃級の群れの大波と格闘していた。

 

「邪魔だああああああああああああ!!」

 

最高速の時速200キロでそのまま突っ切る。

 

地下からも、突撃級がゲッター3に襲い掛かる。

 

「チ! なんだってこいつらはゲッターを目の敵にしやがる!!」

 

すでにゲッター3をBETAが取り囲んでいた。

 

「俺は認めんぞ! ガキ共を殺してでも守る世界なんて!!」

 

その時! それに気づいた。

 

地下から猛スピードで向かってくる存在を!!

 

「チ! まさか!!」

 

ゲッター3の進行線上にボロボロのゲッター2が地下から現れた。

 

「隼人!!! てめえまだやるつもりか!!」

 

「……弁慶。俺は間違っているのかもしれない。だが、それでもあいつ等を信じる!」

 

BETAの群れの中をかいくぐってゲッター2がゲッター3に迫る。

 

「信じるだと? 一体何を?」

 

「あいつらがレーザーヤクトを完遂して帰ってくることだ!!」

 

戦術機に乗る衛士の生還率がわかっていない隼人ではない。

 

「隼人お前は!!」

 

「俺は信じる! あいつ等を俺の仲間を信じる!」

 

弁慶の言葉を隼人が遮った。頭から出血した隼人がモニターごしに映る、それは手負いの虎に相違なかった。

 

「信じるだと? あの時俺たち、仲間から離れたお前が仲間を信じるっていうのか!!」

 

「俺はあの時、信じることができなかった。お前を!ミチルさんを死なせてしまったチームを!それが過ちだった。」

 

ゲッター2が再び、地中に潜った。

 

(地中に!?血迷ったか隼人!?)

 

ゲッター3相手に地中から攻撃するなど、普段の隼人ならば絶対にしないだろう。

 

「今は違う!! 俺は「仲間を信じる」! 信じることが「裏切らない」ことだ!!」

 

ゲッター3のソナーが地中のゲッター2を捉えた。

 

地中から襲い掛かろうとするゲッター2をゲッター3が待ち構える。

 

隼人の気迫に弁慶は圧されそうになった。

 

(先ほどまでとはまるで違う)

 

だがそれでも……。

 

「「それでも……俺はあいつ等を守る!!」」

 

二人は同じ言葉を放ち、激突した。

 

「「うおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

地中からゲッター2の左腕、万力のゲッターアームが飛び出る。

 

そこに待ち構えたゲッター3がゲッターパンチを振り下ろした。

 

(手ごたえあり!!)

 

ゲッター3は素早く、腕を上げるとそこには!

 

そこには、潰れたゲッター2の左腕のみが残されていた。

 

「な!」

 

つぎの瞬間! ゲッター3の背部のゲッターミサイルが爆発した。

 

ゲッターミサイルタンクを隻腕のゲッター2のドリルが破壊したのだった。

 

隼人は、あえて地中に潜行して、攻撃することとゲッター2の左腕を囮に使い、弁慶のパンチに対してカウンターを加えたのだった。

 

「借りは返したぞ! 弁慶!」

 

隻腕のゲッター2と背部を損傷したゲッター3が向き合う。

 

「隼人! お前?」

 

「肉を切らせて骨を断つ」戦い方など、隼人らしくない。

 

むしろ隼人の方が損傷が大きいなど弁慶にはこれまでの経験上考えられない戦い方だった。

 

損傷したゲッター3が内陸部へ進もうとするが、隻腕のゲッター2がその前に立ちはだかる。

 

「どけえ! 隼人! もう時間がない!!」

 

「弁慶……俺の勝ちだ。」

 

次の瞬間、グダンスク沿岸部からの艦砲射撃がゲッター2機ごとBETA群へと降り注いだ。

 

BETAの大群は、艦砲射撃によって次々と撃破されていく。

 

内陸部からのレーザー掃射はない。

 

爆撃と煙が過ぎ去った後、BETAの死骸の上にゲッター3はただ1機だけぽつんと戦場に残っていた。

 

「イヤッホー!!666だ!666がやりやがった!!」

 

「俺たちの戦友がレーザー級を殲滅したぞ!」

 

「各員! BETAの殲滅を確認!! 我々の勝利だ!」

 

「我が陣営の666戦術機が作戦に成功をもたらした! わが陣営のだ!」

 

各司令部、各衛士、各陣営が好きかってに交信を繰り返した。

 

そのどれもが第666戦術機中隊を賛美していた。

 

「弁慶! ゲッター2は! ゲッター2はどこへいった!!」

 

武蔵の無線が無数の戦果報告の中に聞こえるが、弁慶は返さなかった。

 

(俺が間違っていたのか?)

 

「隼人おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

彼と今の今まで戦っていたかつての仲間は跡形もなく消え去っていた。

 

 

隼人・弁慶編11話終

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。