真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

32 / 48
弁慶編 第9話 「シビル・ウォー」

月面戦争時

 

 

 

竜馬達は、インベーダーを、寄生された人々を基地ごと焼き尽くして、帰投した。

 

その3人を真っ赤な顔をした弁慶が待ち構えていた。

 

「どういうことだ! 竜馬!!」

 

激昂する弁慶に対して、意外にも竜馬は冷ややかだった。

 

「どうもこうもあるか 作戦は終わった。それだけだ。」

 

「そういうことを言ってんじゃねえ!!」

 

竜馬の首を掴み、弁慶が詰め寄った。

 

「てめえ! あの中にはまだ人がいたんだ! 何か方法が……手があったはずだろ!」

 

弁慶は、寄生されたインベーダーの中の人を殺した竜馬が許せなかったのだ。

 

「何とか言えよ!!」

 

「インベーダーに寄生された時点で、人じゃねえんだよ!!」

 

竜馬は、それまでの態度を翻して、弁慶の手を撥ね退けた。

 

「この人殺しが! よくもそんなことを!!!」

 

弁慶は竜馬を殴ろうとしたが、それを武蔵が体当たりで止めた。

 

「やめろ!弁慶! 俺たちがここで争って何になる!?」

 

「退いてくれ先輩! 俺はあいつが許せねえ!」

 

「俺はもう休む。疲れたんでな。」

 

竜馬は服を直すと足早に自室へと帰っていった。

 

「竜馬! 話は終わってないぞ! 待ちやがれ!」

 

武蔵に飛びつかれながらも弁慶は竜馬に追いすがろうと手を伸ばす。

 

「誰が……誰が一番辛いと思っているんだ! 手をかけた竜馬が一番辛いんだ!!」

 

武蔵の言葉にハッとなった弁慶はようやく落ち着いた。

 

「竜馬の言っていることは正しい。インベーダーに寄生された人間は既にインベーダーだ。あいつ等を救うには殺すしかない」

 

傍でやり取りをみていた隼人が弁慶に言い聞かせた。

 

「悲劇を生み出したくなかったら、強くなるんだな。弁慶。そうすれば、インベーダーに寄生された人間も減るだろう。」

 

隼人も竜馬の跡を追った。

 

「くそおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

弁慶は無力な自身に憤りを感じる他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

1983年 3月1日 午後0時

旧ポーランド領 グダンスク

 

「何がどうなってやがる!? どうしてゲッター2が!?」

 

弁慶は、突如現れ、自身の前に立ちふさがったゲッター2の前にたじろいだ。

 

「どうした!? 車少佐!?」

 

突然声を上げた弁慶に対して、巌谷が通信を送った。

 

「こちらヴァンキッシュ3!! 所属不明機に攻撃を受けている!!」

 

「なんだと!? 一体どこのどいつだ!?」

 

その時、ゲッター2が高速移動を開始し、弁慶の周りを回転し始めた。

 

「俺と同じ「ゲッターロボ」だ!」

 

「ゲッター!? 弁慶! ゲッターがもう1機現れたのか!?」

 

たまらず、武蔵が交信に入った。

 

「そうだ! 先輩! 敵は「ゲッター2」だ!」

 

弁慶はゲッター3の腕を伸ばしてゲッター2を確保しようとするが、ゲッター2は驚異的な方向転換、速度緩急を繰り返し、全てを避けた。

 

(とんでもねえ。こいつに乗っているやつは隼人クラスの達人だ)

 

さらに、ゲッター2は地中に潜ろうとはしなかった。

 

ゲッター2最大の特性が、ゲッター3相手では、最も有効な弱点になることを知っている。

 

(こいつは、各形態の特徴も熟知していやがる。)

 

ゲッター2が、ゲッター3の背後に回って、繰り出したドリルストームを腕で防御する。

 

「今まで、戦ってきた奴の中で間違いねえ……最強だ。」

 

「車少佐! どうだ!? そいつを突破して、BETA群へ向かえそうか?」

 

「チ! 巌谷中尉! 今すぐには無理だ!! アレに乗ってる奴は凄腕だ! 油断したら逆にやられる!」

 

ゲッター3は、ゲッター2の攻撃を捌きつつBETA梯団へと進行しようとするが、うまくいかなった。

 

国連軍作戦司令部にも、日本帝国の「G」が攻めあぐめているとの情報が入った。

 

「馬鹿な! 日本帝国の「G」が所属不明機と交戦中だと!?」

 

「アレを止めることが可能な機体なんているものか!」

 

「一体!? どこの国の差し金だ!?」

 

「ソビエトか!?」

 

「ソビエトにそんな化け物がいたらBETAになんか負けてねえよ!」

 

作戦司令部は、「G」の投入で光線級及び新たなBETA梯団は解決すると思っていたことからの反動で、パニック状態となっていた。

 

「こちらヴァンキッシュ1。欧州司令部!」

 

巌谷から欧州司令部へと通信が入った。

 

「うちの3番機の進行が遮られている! このままでは、レーザーヤークト、突撃級の殲滅どちらも不可能だ! 障害を突破できる保証がない! 代案の検討を願う!!」

 

欧州司令部上層部には手札がなかった。

 

……獣の数字を冠する部隊を除いて。

 

 

 

 

 

 

1983年 3月1日 午後0時10分

グダンスク「南」沿岸部

 

「一体……どうなってるのよ」

 

アネットが飽和する無線交信に不安気な声を漏らした。

 

ワルシャワ条約機構軍とともに待機をしていた第666戦術機中隊。

 

テオドールは静かに時を待っていた。

 

彼の仲間が……チャンスを彼らにもたらしてくれるその時を信じて。

 

「欧州作戦司令部から第666戦術機中隊指揮官へ」

 

「こちらシュバルツ1だ。」

 

作戦司令部から666戦術機中隊へ米軍とともに「レーザーヤークト」の依頼が下された。

 

「総員傾注! 我々はこれよりグダンスク内陸部のBETA梯団に対してレーザーヤークトを開始する。」

 

「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

テオドールは眼を開いた。

 

(これがそのチャンスなのか? ハヤト)

 

テオドールの待っていた答えがもたらされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

グダンスク内陸部では、依然としてゲッター2とゲッター3の戦いが繰り広げられた。

 

 

「妙だ。こいつの動きどこか見覚えがある。」

 

弁慶は、ゲッター3の攻撃を全て避け切り、高速移動するゲッター2に既視感を感じていた。

 

(……まさか?)

 

ヒットアンドアウェイを繰り返すゲッター2を前に弁慶を攻めあぐんでいた。

 

「こいつの狙いは俺を止めることか? それが何の得になる!? 人が死ぬだけだ!!」

 

「弁慶少佐!」

 

巌谷の通信が弁慶に入った。

 

「どうした巌谷中尉!」

 

「司令部は東ドイツの第666戦術機中隊へレーザーヤークトを命じた!」

 

「なんだって!?」

 

弁慶は、昨日最前線に飛び込んでいた10機の東ドイツの部隊を思い返した。

 

またあの少年兵が、砲弾と光線の雨を搔い潜って光線級を殲滅させられるのだ。

 

弁慶は、感情のまま破れかぶれに足元の要撃級の大挟みをゲッター2へと投げつけた。

 

それは、ゲッター2を掠めたのだった。

 

「まて……おかしい。」

 

弁慶は感情を押し殺し、冷静になった。

 

(ゲッターロボ最速のゲッター2になぜ届いた?)

 

投げつけた物体よりもゲッター2の方が速いはずだ。

 

(俺が無意識に相手の動きを読んだってのか?)

 

「なんでそんなことができる?」

 

それを可能にする条件は一つしかなかった。

 

(俺はこいつを知っている?)

 

ゲッター2のパイロットなど一人しか知らない。

 

「試してみるしかないな。」

 

「何か……何かないか。」

 

弁慶の目に突撃級の死骸が映った。

 

これだ!

 

ゲッター2が弁慶の背後に回りこんだ。

 

「来る!」

 

ゲッター2の突進に合わせて、弁慶は突撃級の死骸を手元へ引き寄せる。

 

ドリルアームの直撃に突撃級の外殻を合わせた。

 

その一瞬。タイミングは完璧だった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお」

 

弁慶は、拳を振り下ろしたが、ゲッター2はそれをゲッタービジョンで避け切った。

 

今の攻防で、弁慶は理解した。

 

「俺はこいつを知っている。そして……こいつも俺を知っている!!」

 

こいつは! こいつの正体は!!

 

弁慶は、ゲッターロボ同士の秘匿回線で呼びかけた!!

 

「隼人!! お前なんだろう!? 一体なんのつもりだ!?」

 

その問いに、ゲッター2は動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

グダンスク内陸部からBETA梯団は海岸線へと迫っていく。

 

「ジョリーロジャース」と「第666戦術機中隊」は作戦を成功させるために光線級へと向かう。

 

動きを止めた2機とは、対照的に作戦は進行していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッター2に乗っていた隼人が口を開いた。

 

「……弁慶。よく俺だとわかったな。」

 

弁慶の動きを知っていてなおかつ、弁慶もその動きが読める人物。

 

それは、かつてのゲッターチームメンバー以外にいるはずもない。

 

所属不明機が隼人だと確認できた弁慶は自身を止める隼人に対して怒りを覚えた。

 

「隼人! てめえは何を考えている!? 今ここで俺たちが争っていれば、どうなるんかわかっているのか!? てめえは知らねえだろうが、東ドイツのガキどもが駆り出されるんだぞ! ガキを殺す気か!!」

 

「何も考えてねえのはお前だ。この作戦の意義とこの「世界」の現状がわかってないのはお前だ!!」

 

ゲッター2から弁慶と同様に隼人が弁慶に対して怒鳴りつけた。

 

「ゲッターで光線級を叩けば、この作戦は成功する。それがこの「世界」のためじゃないのか!!。」

 

弁慶は作戦を成功させることが優先だと隼人へ問いかけるが、隼人は緩めない。

 

「お前がこの戦場を荒らすことでこの世界に「機会」が失われるんだ!」

 

「「機会」?何の「機会」だ!? 隼人!?俺にわかるように説明しろ!!」

 

「この世界は、俺たちの世界と違う!侵略者に対して各国がバラバラで戦っている。それも東西冷戦の中でだ!」

 

隼人は弁慶に対して呼びかけた。

 

「わかるか? 弁慶。俺たちは突然この世界にやってきた。明日、いなくなっても何もおかしくないんだ! そんな俺たち余所者が東西融和の種になるかもしれないこの「機会」を奪ってもいいのか!」

 

「な!?」

 

弁慶の目に迷いが生まれ、この作戦の指揮系統の歪さを思い返した。

 

隼人の口ぶりから、隼人はこの世界の現状を弁慶以上に理解していることがわかった。

 

「この世界は他陣営の国を盾にして、生き延びている。俺たちの行動で「この世界のチャンス」を奪うわけにはいかないんだ。」

 

弁慶の脳裏にキャンプで暮らす難民たちの顔が浮かぶ。

 

(確かにそうだ。この世界が一つになるチャンスに、俺たち余所者が邪魔するわけには…)

 

弁慶は、ゲッター3の腕を下ろそうとしたが、今度は、かつてインベーダーに寄生された人達の顔と、作戦で出会った東ドイツの少年兵たちの顔が浮かんできた。

 

失われた命、そしてこれから失うことになる命。

 

弁慶は、再び顔を上げて、ゲッター2と隼人を見た。

 

その目に迷いはなかった。

 

「てめえの言い分はわかった。だが、それとこれは別だ! 大義名分でガキどもを殺す気か? 目の前の助けられる命を救えないで何が「世界」だ! どけ神隼人! 俺は俺の仲間の「命」を守る! あの時とは違う!今なら間に合うんだよ!」

 

ゲッター3は内陸部へと再び進み始めた。

 

「弁慶……それはできない。俺も俺の仲間の……あいつらの命を懸けても守りたいと思っている「夢」を守るために戦う! たとえお前と殺しあうことになってもな! 俺は二度と仲間を裏切らん! こい! 車弁慶!」

 

ゲッター2はそれを迎え撃つ。

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

二機のゲッターは、互いの素性、事情を知ってもなお、戦うことをいとわない。

 

それがBETA大戦の「最前線」だけを知っている者と「最前線」を知らない者の差だった。

 

彼らは……彼らの守りたいものために……止まることなどできなかった。

 

2機のゲッターはさらに激しく衝突を繰り返すのだった。

 

 

弁慶編 9話 終

 




マブラヴ世界で分かれたゲッターチームがゲッター同士で戦うって最初どうかな?って思ったんですが、思ったより好評でよかったと思います。

竜馬編書きたいなー。と思いつつもまだまだ海王星作戦は続きます。

それではよいお年を。

PS

初めて、「活動報告」書いてみました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。