城下町のAGITΩ   作:オエージ

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人類を滅ぼし世界を作り直そうと大規模な行動にでた闇の力。
それを迎え撃つは城下町で戦い抜いてきたアギト、ギルス、G3‐Xの三大ライダー!
その戦いの中櫻田家は、国民は何をなすのだろうか。
そして昴は人の未来を取り戻せるのか・・・

遂に来ました城下町のAGITΩ最終回!
第一話から積み上げてきた物語の集大成です。どうか一字一句も漏らさずに読んで下さい。

それではどうぞ!!!!


最終話 城下町のAGITΩ

茜達が城にたどり着いた頃には戦いは始まっていた。三つの戦場にて三人の仮面ライダーが死闘を繰り広げている。

 

「岬、光、町の人の避難は?」

 

「それが・・・」

 

「皆石ころみたいに固まって動いてくれないの」

 

飛行船の墜落、怪物が空を覆う超常現象、創生主と名乗る者の出現、昴の正体、そして目の前で起こる怪物達との戦いと非日常的なことの連続により人々の精神は疲れ切りそれは体にも影響を及ぼしていた。その為にいくら岬や光が呼び掛けても引っ張っても動こうとせずただ戦闘を見つめているだけだった。

 

「今は信じよう。昴を、彼らを」

 

このままでは誰かが巻き添えになってしまうのではないかと危惧する中総一郎がその一言を言った。それに従い兄弟達は敷地内を一望できる演説場で仮面ライダー達の戦いを見守ることにした。

 

(負けないで、無事でいてね、昴)

 

茜は密かに昴の無事を祈るのであった。

 

 

 

 

『『ギギィッ!』』

 

大量のローカストロードがグランドフォームのアギトへと向かっていく。それに臆することなく前へと走り先頭に立つ個体に強烈なパンチを浴びせ吹っ飛ばす。出鼻を挫かれ勢いを殺されたローカストロードはやたらめったらに腕や足を振り回し襲い掛かる。アギトはそれを全ていなしカウンターを決めていった。飛び掛かってきた相手を全て沈黙させたアギトはクロスホーンを展開しまだ突撃準備の整っていない群れに目掛けて飛び上がる。相手の圧倒的な物量でまともにぶつかり合えば押し切られるのは明白。だから昴は相手のペースを見出し先に動くことで数のアドバンテージを崩す戦法に出たのだ。

 

「でやぁぁぁぁっ!」

 

ライダーキックが直撃しアンノウンは燃え上る。すかさずアギトは左腰を叩いてストームハルバードをオルタリングから抜き出しストームフォームへとチェンジして次の群れへと直進する。

 

「せいっ!はっ!うおりゃっ!!」

 

一陣の風のように群れの隙間を縫って疾走しすれ違いざまにハルバードスピンを繰り出していく。演武のような流れる動きで次々と敵を切り裂いてく様を人々は純粋に心を奪われる。

心に隙ができたその時、俊敏な槍撃から逃れたローカストロードの一体が人々が立ち尽くす場所と迫っていく。アギトはそれを見逃さない。

 

「させるか!」

 

頭を踏み台に飛び上がりアギトは投擲した。ストームハルバードは風を切って直進しローカストロードを貫いて地面に突き刺さる。武器を手放したことをチャンスと見て多くの者が跳躍しアギトを包囲する。全方位から襲ってくる攻撃にアギトは右腰を叩きフレイムフォームへと変わることで対処する。

 

「はぁぁぁ・・・はぁっ!!」

 

昴の目にはロード達が止まっているかのように見えた。それはフレイムフォームの力で五感が常人を超越した証拠だ。そのままアギトはオルタリングからフレイムセイバーを抜刀、すぐさま刀を振るうという居合切りの動きに似せたセイバースラッシュで囲うローカストロードらを一瞬の内に一刀両断した。

地面に着地する刃を横に構え断ち切りながらストームハルバードを投げた方に行く。それを引き抜きアギトは三位一体の戦士トリニティフォームとなる。

フォームチェンジを終えるとアギトはまず左手に持つストームハルバードを漕ぐように振り回し前方に突風を起こした。風に阻まれ動きを止めた敵の一団を見て今度はフレイムセイバーに力を集中させ炎を纏わせストームハルバードと重ね合わせた。

 

その瞬間、炎が風に乗ってローカストロードを猛襲、豪炎で相手を飲み込み一層した。

しかしすぐに上空で漂う個体が下りてきて再びアギトの前に立ちはだかった。

 

「来るなら来い!俺が全部倒してやるぜ!」

 

だがアギトは怯まない。守るべき命が後ろにいるからだ。そしてそれは別の場所で戦う仲間達も同じであった。

 

 

 

「グオォォォォォォォ!!」

 

昴が戦っている大通りとは少し離れた場所にてギルスは戦闘を行っていた。人も大通りほどではないがかなりの人数が戦いを見つめていた。

群れへと一直線に飛び掛かりその一体の肩を噛み千切る。

 

「ギギャァァァァァ!?」

 

絶叫する個体を蹴り飛ばして後ろから来る敵に振り向きざまでギルスクローを伸ばして胸を掻っ切った。さらに次は横から飛び出たローカストロードの首をギルスフィーラーで締め上げる。そしてギルスヒールクロウを叩き込んでローカストロードを爆散させた。

 

「ガァァァァァァァァァウ!!」

 

それでも戦意は収まることなく雄叫びを上げて容赦なく敵をズタズタにしていくギルスの姿を見て人はその強さや頼もしさよりも恐ろしいという思いが過っていた。

 

 

また別の場所でもローカストロード達の侵攻を止める者がいた。

 

『弥生、六時の方向から敵が迫って来てるぞ!』

 

「了解!すぐに迎撃する!」

 

四方八方から迫り来る敵に対抗するためにGトレーラーから送られてくる白井達の通信を受けて弥生は戦っている。白井の指摘通り六時の方向からローカストロードが襲い掛かってくるのをG3-XはGM-01で牽制し隙が出たところを左腕に装備したGS-03を振り下ろして真っ二つに割った。

 

『今度は9時の方向から三体来てるよ弥生ちゃん!」

 

「分かりました!」

 

六野のサポートで次なる襲撃を察知したG3-Xは一度GS-03を外してガードチェイサーからGG-02を取り出した。すかさずそれをGM-01に合体させるとローカストロード達の方へと前転し起き上がると同時に中央の一体の胴に強烈な砲弾を撃ち込んだ。

 

(残り二体)

 

爆発を跳躍で交わしたローカストロードはそのまま急降下して迫っていく。だがそれは失策であった。地上で構えるG3-Xはリロードして二発目を空中で身動きの取れないローカストロードに向けて放ち撃破する。

 

(残り一体、GG-02の残弾数も一つ・・・確実に決める!!)

 

そう意気込んだG3-Xは木から木へと跳躍していくローカストロードに対し、あえて銃を下げて動きを止めた。無暗に動くよりも仲間からのサポートを受けた方が確実だと感じたからだ。そしてその思いに仲間は応えた。

 

『後ろだ!思いっきり行け弥生!!』

 

「了解!!」

 

決着は一瞬だった。

待ちに待った白井の声に力強く返事したG3-Xは振り向くと同時に膝から地面に滑り出した。背面から垂直に飛び掛かってきたローカストロードとすれ違う。その時敵の顔の表情は視覚的変化は無かったが感覚的に捉えた表情はかなり動揺していたものだった。だがG3-Xはチャンスを逃さない。

 

「これが最後の一発だ!!」

 

滑りながら至近距離でGG-02最後の一発を放つとローカストロードは空中へと打ち上げられG3-Xが滑り終え立ち上がると同時に爆散した。

 

未だに敵の数は減る気配がないがそれでも敵を薙ぎ倒していく仮面ライダー達の雄姿を見て人々の心に失いかけていた希望の灯が燃え始める。

彼らならこの絶望を跳ね除けてくれる。誰もがそう信じて目の輝きを取り戻しつつあった。

それを感じ取った闇の力は人が僅かに抱いた希望の種を摘むべく次の一手を投じた。

 

 

 

場所は戻ってアギトはバーニングフォームとなり次々とローカストロードをその剛腕を持って薙ぎ倒していた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

城全体に響き渡るような叫び声とともにバーニングライダーパンチが放たれ目前で蠢くローカストロードの群れを一瞬の内に粉砕した。

 

「取りあえずはこれで・・・」

 

次なる襲撃も来る様子もなく相手も一時的に攻勢を止めているのだと思い昴は肩の力を抜いて呼吸を整える。

 

警戒を解いたその瞬間、後ろから強い衝撃を浴び前のめりに吹き飛ばされる。

 

「ぐっ!?」

 

反射的に受け身を取り後ろの敵を確認しようとしてみたが既にそこには影はなく横から襲撃者の杖が振り下ろされた。今度は腕を交差させ受けきったが相手の力はバーニングフォームの超パワーを持ってしても膝をつきそうになるほどだ。

 

「遊びは終わりだ」

 

そう一言口にしたのはやはり闇の力の切り札の一人陽のエルだ。アギトは無防備な陽のエルの脇腹を蹴って杖を退かせて反撃に移ろうとするが突然目の前に現れた陰のエルが払う大剣の一撃で後ろへ仰け反った。

 

「貴様には死んでもらおう。我々の手で、人間共の前で!」

 

重く低い声色で陰のエルは言い放ち昴は身構えた。今までの戦闘は相手にとってただの余興に過ぎなかった。ここからが本当の恐怖の始まりだと言わんばかりに二人のエルは各々の獲物でアギトを斬り付ける。シャイニングカリバーを出して応戦してみるも相手の振るう武器は重く早く、強靭な刃を持ったはずのシャイニングカリバーが小枝のように払われていく。ピキピキと軋む音と共に。

 

「くっ、このままでは・・・」

 

昴は思った。動きの遅いバーニングフォームでは二人の動きに対応することができない。ならば最速で動けるシャイニングフォームならチャンスを掴めるのではないかと。しかし空は蝗の大群に覆われシャイニングフォームへ至るのに必要な日光が届かない。闇の力はただ単に自分の力を見せつけるためではなくアギトの切り札を封じるために光を遮ったのだ。

 

「このままでは、何だ?」

 

こちらの言葉をオウム返しで挑発する陽のエル。ふと意識を後ろに向けると人々の心にアギトが負けてしまうのではないかという不安が漂い始めているのを感じ取った。これでは自分が前に出た意味がない。

 

(俺が弱気でどうする。逆転のチャンスはどこかにあるはずだ)

 

自分に言い聞かせた昴は周囲の状況に目を凝らした。反撃に転じれるものを探すために。

 

後ろには大勢の人々が立ち尽くしている。下がることは絶対に出来ない。

前には陽のエルと陰のエルが冷笑を浮かべこちらの様子を見据えている。怒りを感じるが無闇に突っ込むのは良い策とは言えないだろう。

上空はやはりローカストロードで覆われていて・・・

 

(いや、違う)

 

ここで昴は闘志を二人に敵に向けながら空を凝視する。

よく見るとアンノウンで構成された天井に僅かな穴が空き光が通っていた。ローカストロードが減ったことが原因に違いない。その穴を埋めるべく空では慌てて蠢いていた。

 

(見つけた!!)

 

数分もしない内に穴は塞がれるだろう。チャンスは今だと気付きアギトは力いっぱい地面に向けて拳を打ち付ける。腕で燃え上がる炎が地面を伝ってエルロード達を襲い掛かる。傷一つ付かずに払わてしまうだろうが相手の意識を自分から遠ざけることができれば良いので問題はない。

 

「今だ!」

 

アギトは光のさす方へと全速力で疾走する。距離はあっという間に縮まり目前には日光がスポットライトのように照らされている。後は一歩前に出ればシャイニングフォームへと変身できる。そう思い強い一歩を踏み出したアギトは、

 

目前の光が遠ざかっていくのを見た。

 

「っ!?」

 

光が遠ざかる現象に戸惑いながらもアギトはもうもう一度走るが光との距離は縮まらない。何故、という疑問が頭に過ると同時に答えに気付かされた。

 

「元の場所に戻されてる・・・!?」

 

前後にいる人とエルロードとの距離感で昴は一定距離まで走ると元いた場所へ戻されるのに気付いた。陰のエルが空間を捻じ曲げて光への到達を妨げていたのだ。

 

「お前はもう、逃げられない」

 

空の穴はもう塞がれシャイニングフォームになるチャンスを失ってしまった。それに追い打ちをかけるように紡がれた陰のエルの言葉が昴の耳に響き渡る。

 

「まだだ!!」

 

俯きそうな心を叩き起こすように叫んだアギトはシャイニングカリバーを握りしめエルロードへと突っ込んでいく。バーニングフォームの攻撃力に一発逆転を掛けた破れかぶれの突撃だった。

 

「愚かなり」

 

シャイニングカリバーと陰のエルの大剣がぶつかり合った。

しかしその瞬間、シャイニングカリバーの耐久性が限界を超え根元から折れて支えを失った大剣がアギトの肩に振り下ろされる。それでも紙一重で躱したアギトは残った下の刃で陰のエルを斬り付けようと腕を上げる。だが素手で掴まれシャイニングカリバーは完全に破壊されてしまう。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

それでも諦めずアギトは肉薄した陰のエル目掛けてバーニングライダーパンチを繰り出す。その時、陽のエルが杖でアギトの胸を突く。その瞬間、アギトの時間が止められパンチは陰のエルの顔ギリギリのところで静止した。

そこから陰のエルは一歩下がり手をかざすとアギトの足元に闇の紋章が浮かび爆発した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

爆発を直に受けてアギトは宙へと投げ出され地面へと叩きつけられる。全身に激痛が走り変身が解除されてしまった。

それを一瞥して影のエルと陽のエルは浮き上がり呆然としている人間達に言い放つ。

 

「人間共よ、これが現実だ。貴様らがいくら足掻いたところで運命は変わらない。貴様らはただ黙って滅びの時を待っていればいいのだ」

 

「希望を持とうというのなら我々が須らく砕いてやろう」

 

(あいつら好き勝手言いやがって・・・!)

 

それでも動けない自分に歯ぎしりをしながら昴は宙に浮くエルロードを見上げる。

状況は明らかにアンノウンに傾いていた。別の場所で戦っているギルスとG3-Xも敵の物量に押され疲弊し切っている。人々もまたアギトが敗れたことにより抱いていた希望の火種が消され再び絶望に包まれようとしていた。

城で見守る櫻田家もまた現状を苦々しく思っていた。

 

「私達は何もできずに世界が終わっていくのを見ているしかできないというの・・・!」

 

皆の不安を代弁するかのように奏は拳を握りしめる。圧倒されていく昴達を見てただ純粋に希望を持てる者はこの場にはいなかった。

 

 

だが決して諦め切ったわけではない。

 

「そんなことはないよカナちゃん。私達にできることがきっとあるはず・・・いや、ある!」

 

暗い雰囲気を断ち切ったのは茜だった。誰もが目を見開いて彼女を見つめる。茜の瞳は今までよりも強い輝きを放っていた。

 

「自分の胸に手を当ててみて。確かに私達の力ではあいつらに敵わないかもれない。でもそれでも戦うことが出来たということは皆は知っているはずだよ」

 

茜の言う通りだと皆は気付かされた。初めて昴の正体を知った時も彼に思いを託すという形で戦ったではないか。それにこれまでの彼らとの交流で多くの時間を共に過ごして来たではないか。

 

自分にも、いや、自分だけにしかできないことがある。そう思った兄弟達は互いに頷き合い行動に出た。

各々が飛び出していくのを見て茜も意を決して総一郎に提案する。

 

「お父さん、演説の準備をお願いしてもいいかな」

 

「え・・・構わないが、この状況でか?」

 

「うん、この状況だからこそ伝えなくちゃいけないことがあるから」

 

そう言い茜は変身が解除されてもなお人々を守るために強固な敵に立ち向かっている昴を見つめた。

 

 

 

 

「くっ・・・」

 

長時間戦闘を繰り広げていたギルスは疲弊し地面に片膝をついていた。力の増減を示す頭部の触覚も短くなっている。

このままではまずいと思いながらも今の斗真には攻めてくる敵の動きについてくるのが精一杯な状態であった。

ここでさらにまずいことが起こる。ローカストロードの一体がギルスの隙をついて通り抜け後ろで立ち尽くしている人々の元もとへ飛び上がっていったのだ。

 

(しまった!)

 

慌てて追おうとするも前から来る敵の応戦に手が離れずローカストロードが人々との距離を縮めていくのを見ていることしかできずにいる。

万事休す、そう思われた時突然遠くから投げられたコンクリートの塊がローカストロードを弾き飛ばした。こちらへ吹っ飛んでいくローカストロードをギルスヘルスタッブで爆散させるといつの間にか人々の前に輝が立っていたことに気付く。先ほどのは能力で砕いた床の一部を投げつけたのだろう。それよりも斗真はこの場に彼がいること自体を驚いていた。

 

「お前、どうして・・・」

 

「あなたと同じです。僕もこの国の皆を守りたい!だから戦うんです!!」

 

「フッ、そうか。あいつの弟だけあって見上げた根性持ってんじゃねえか・・・!」

 

斗真は輝の勇敢な行動に心を強く動かされた。こんなに小さい子供にも誰かを守るために力を振るう勇気を持っている。自分だって負けられない、今度はこっちが根性を見せる番だ、と思うと鉛のように重くなっていた体は軽くなった。

 

「この人達は僕が守ります!」

 

「それを言うなら僕達でしょ輝」

 

輝の言葉を訂正する声が聞こえたかと思うと道の脇に植えられていた木々が巨大化しその根っこや枝が人々の前で複雑に入り組んで天然のバリケードを形成した。こんな芸当をできるのは世界でもただ一人。そしてその少女はバリケードの天辺で堂々と胸を張って立っていた。

 

「「らいと(姉上)!」」

 

そう、桜庭らいとの姿になっている櫻田光である。光は斗真にピースサインをとると後ろの方へと振り返った。

逃げ遅れた人の表情は何とも言えないものだった。何も知らない一般人にとってギルスとアンノウンとを見分けることは困難である。その為ギルスが自分達を守っているのか同士討ちしているのか分からず困惑していたのだ。

 

「大丈夫!あの人は皆を守るために戦っているんだから安心して!あたしが保障するから・・・ね!!」

 

光の無邪気な笑顔は不思議と強い説得力が感じられる。その言葉に反応して人々はバリケードの向こうで奮闘しているギルスに目を向ける。

そして思いを受けたギルスは体中に漲ってきた闘志の炎を発散させるが如き勢いでエクシードギルスに変身した。戦闘が長引くことを予期して封印していた全力を今発揮する。

 

「ウオオオオオオラァッ!!」

 

伸ばしたギルススティンガーを多節棍をように振るい薙ぎ倒していく。間を縫ってバリケードを飛び越えようとするのなら雁字搦めに抑え込んで爪で引き裂いていった。

その姿は決して英雄的とは呼べないが何が何でも人々を守り抜こうという鋼の意志が秘めらておりそれを見た人々は次第にギルスに対する見方を改めていった。

 

 

 

G3-Xもまた苦境を強いられていた。銃弾は尽き何とか近接武器で凌いできたがバッテリーの残量も後僅かという状況である。

 

『心配するな、もうすぐ救援が来る。それまで持ちこたえたまえ』

 

白井の言う救援が何の事だろうと考えながら敵の攻撃を捌いていく。いよいよ稼働時間終了間近となったその時、遂に救援が駆けつけた。

何発もの銃弾が顔の横切りローカストロード達を怯ませていく。間違いなく同じG3システムの装備だった。

 

「救援感謝します六野さ・・・えぇ!?G3がいっぱいいる!?」

 

救援に来たのはG3-MILDを装着した六野だろうと思い振り向いた弥生は仰天して場違いな声を上げる。それもそのはず目の前にはG3と7人のG3-MILD、計8人のG3がいたからだ。思わず弥生はメットで覆われることを忘れて目をこする動作をしてみるがやはり錯覚ではなく本当に複数のG3が存在していた。どういうことか理解できないでいる弥生に先頭に立っているG3が声をかける。

 

「弥生さん私ですよ私。岬です」

 

「えっ、岬様!?ということは後ろのも・・・」

 

「おう!助けに来てやったぜ!」

「驚かせ悪かったね」

「いつまで呆けているのよ?さっさと終わらせるわよ」

「むぅ・・・その前に寝たい・・・」

「はいはい後で子守歌歌ってあげる今は頑張りましょうね」

「ねえ、あれを佃煮にしたら美味しいのかな?」

「不気味なこと言うのやめてくださる!?」

 

素顔は見えないものの言動は明らかにユニコ、イナリ、レヴィ、ベル、シャウラ、ブブ、ライオのものであった。

 

『さっき彼女らがこっちへやって来て自分達も君の為に何か手伝いたいと言ってきたのだよ。幸い櫻田岬は君と体格が酷似しているから調整無しでG3を着ることができたしG3-MILDは誰でも使いこなせるように設計してあるからな。どうだね、これ以上心強い救援も早々ないだろう』

 

「それはそうだが・・・」

 

感じたいた疑問に白井が答えてくれたがまだ弥生には疑問が残されていた。

 

一つはG3の装甲で守られているとはいえこの国の王女である岬に戦わせるとはいかがなものか。

いや、このことを考えるのは止そうと弥生は岬へ視線を向けた。お節介でも誰かに手を差し伸べずにはいられないのが彼女である。Gトレーラーに赴いたのも初めからそのつもりだったのだろう。ならば自分は岬の意志を尊重し彼女の万が一がないよう死力を尽くそうと決意を新たににした。

 

もう一つは単純なことであった。一体しか作られていないはずのG3-MILDが何故こんなにたくさん揃っているのか。だが心当たりは無いわけではなかった。

 

「私が生成したのよ」

 

岬達に遅れて現れたのはやはり奏だった。かつてG3-Xを生成した時のようにG3-MILDを生成したのであろう。

 

「よろしかったのですか?奏様の能力は生成したものの対価を支払うのですよね?」

 

G3一体がどれほどかかるのかは弥生には知らなかったが仮にも人知を超えた存在アンノウンと互角に渡り合える武装なのならば相応の対価が支払われるはずだ。しかも7機も生成したとなると全財産の何割かは削られてもおかしくないだろう。そして奏は過去の経験上それを嫌うはずだ。

 

「あんたの考えるていることは分かるわ。でも気にしなくていいのよ」

 

予想に反して奏の表情は穏やかなものであった。

 

「節約っていうのはね、ケチケチお金を貯めてそれだけっていうことじゃないのよ。いざという時に思いっきり使えるようにするためにするものなの。そしてそれが今だと思ったからこうして能力を使っているわけよ」

 

そういい奏は白井から渡された資料を見てG3システムのバッテリーを生成しG3-Xのバッテリーと入れ替える。

 

「さぁ早く決めなさいあんた達。そうじゃないと折角の大奮発が無駄になっちゃうでしょ」

 

そう言い全員分のGX-05を生成していく奏は笑顔であった。何か含みが込められているわけではない、必ず弥生達が勝つという自信に溢れた笑みだ。

 

「了解です奏様。必ずやあなたの期待に応えて見せましょう」

 

GX-05を受け取り9人のG3は並び立つ。ローカストロードもまたその壁を抜こうと疾走していく。。一瞬の隙も許されない勝負の時だ。

 

「撃てえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

弥生の叫びを合図に全員がGX-05の引き金を引いた。

九丁のガトリングから放たれた弾幕はもはやその域を超え銃弾の壁となって迫り来るローカストロードの群れを押しつぶし爆散させた。

敵を一度退けるとGトレーラーからの通信が入る。聞こえてくるのは遥の声だ。

 

「弥生さん、兄さんの元へ行ってください。兄は今苦しい状況に見舞われています。勝てる確率は0%に限りなく近いけど弥生さんがこなければ本当に0%になってしまいます!」

 

「ですが・・・」

 

助けに行きたいのは山々だがこの場にいるローカストロード達を見過ごすこともできない。ここを通せば奴らはそのまま町へと侵攻してしまうからだ。助けに行こうにもいけない弥生を岬が背中を押した。

 

「行ってください」

 

「しかしそれでは岬様が・・・」

 

「私は大丈夫!分身達もいるしかな姉だってついているから。だからここは私達に任せて弥生さんはすー兄を助けに行ってください!」

 

そう言い岬達はローカストロードの蹴散らし道を作った。彼女らの行為を無駄にしないためにもG3-Xはガードチェイサーに乗って昴がいる決戦の場へと急行していった。

 

 

そして場所は城前の大広場へと戻る。

 

昴は力の限り叫びエルロードに体当たりをして侵攻を抑え込んでいた。変身しようにも相手が隙を与えないので生身のまま動いて戦っていくしかなかった。だが、変身しても勝てなかった強敵相手に生身で勝てるはずもなく羽虫を払うかのような手で捨て身の突進も弾かれる。それでも諦めず昴は立ち上がりエルロードの注意を自分にひかせる。

 

「ええいしつこいぞ!」

 

何度も立ちはだかってくる昴にしびれを切らした陽のエルが手のひらから波動を放ち昴を吹っ飛ばす。続けて陰のエルが宙へと浮いた昴の前に飛んで大剣を振り落とす。

 

(やばい避けられない!!)

 

身を翻して躱そうと試みるが迫り来る刃のスピードの方が圧倒的に早く昴の胴を引き裂く・・・

 

 

直前に何かに背中を触れられた感触を受けると同時に昴はいつの間にか地面に着地していた。間一髪修が瞬間移動を使って回避させたのだ。

 

「何とか間に合ったようだな」

 

安堵する修に礼を言おうとするよりも先程陽のエルの波動を直に受けた痛みで昴は地に伏してしまう。そこに今度は葵と栞が起きる手助けをした。

 

「無理しないでお兄様。命は一つしかないんだから・・・」

 

それは目の前で命の火が消える所を見たことがある栞だからこそのことだろう。静かながらも痛切な表情で傷だらけの昴を見つめている。今彼女は最期に見た時の樹次郎と昴を重ね合わせているのだ。

昴も好き好んで身を危険に晒しているわけではない。出来ることなら栞の先の言葉を言わせずにことを終わらせたかった。しかし現実は甘くは無い。陰と陽のエルはこちらを見て嘲笑を浮かべている。

 

「数が増えたところで結果は変わらん。愚かでひ弱な人間共がいくら力を持とうとも我々には届くことはないのだ」

 

「もっとも、届いたとしても我々を打ち滅ぼすには程遠いものなのだろうがな。フハハハハハハハハ!!」

 

笑みを抑えきれずエルロード達は大声で嗤い始める。響き渡る嗤い声は昴達の後ろで控えている人々の心を削り取っていった。

 

自分達はどうすることもできない。どう頑張ったってあの怪物達を倒す力を自分は持っていない。どうせ滅びるのならいっそ奴らに命を差し出そうか、少しは楽に死ねるかもしれないのだから・・・

 

そんな負の感情が漂い始める。誰もがエルロードの圧倒的な力に屈し絶望しようとしていた。

 

 

 

 

その時、城から一つの声が響き渡った。

 

「櫻田家三女の茜です!!国民の皆さん、私の話を聞いてください!!」

 

突然、茜の声が城中に響き渡り誰もが城の演説場に立つ茜に目を向けた。

 

「うぅ・・・」

 

一度に多くの人々の視線を浴びて茜は思わずたじろぐ。今までよりはましになっただけで茜の人見知りは無くなったわけではないのだ。

彼女の脳裏に幼い頃の記憶が蘇る。あの時感じた倍以上の恐怖が襲い茜は逃げ出したい気持ちになった。

 

「怖がらないで!!」

 

顔を塞ぎそうになる茜に葵は城に届くよう大きな声で彼女に伝えた。

 

「ゆっくりでいい!上手く言葉にできなくてもいいから今あなたが思っていること、感じていることをそのまま話すのよ!!きっと皆にも伝わるはずだから!!」

 

(お姉ちゃん・・・)

 

辞退と能力を告白した時、葵の心境はどのような葛藤が流れていたのだろうか。それでも彼女はありのままを伝えることに逃げなかった。そんな姉の言葉に支えられ茜は塞ぎこもうとしていた手で思いっきり顔を引っ叩いた。

 

(逃げちゃ駄目だ、自分が自分であることに恥じる必要なんてない。だってそれを受け止めてくれる人が私にはいるから!!皆の為にも私は前に立って想いを伝えるんだ!!)

 

そこから茜は前に二歩進み、後ろには両親、前には兄弟達と多くの国民が見ている中で口を開いた。

 

「今この城で起きている出来事が分からずどうすればいいのかという思いで胸がいっぱいな人達も多いでしょう。私も同じです。この状況について私も説明できることは出来ません。皆さんの役に立てなくて本当に申し訳ありません」

 

「でもこれだけは言わせてください!それでも戦っている人達がいます!!その人達が戦うのは今回が初めてではありません。気付いている方もいるでしょうがこの国の都市伝説である仮面ライダーの正体は彼らなのです!!彼らがこんなに傷ついてまで戦うのかわかりますか?」

 

「それは未来を守りたいからです!人は誰でも未来を持っています。年を取り成長していく中で友達を作ったり家族と笑い合ったり苦手な事を克服したり、色んな出来事を経験していくことができる権利が未来です。誰もが平等に持っている未来を不当な手で失われることがないよう昴達は戦ってきました」

 

「そしてそれは今も変わりません。人の、皆さんの未来が輝けるものだと信じているからそれを奪おうとする奴らに立ち向かっているのです!!だから昴達を信じてください!!昴達のように怪物達と戦えとは言いません。でももし皆さんの中で彼らの支えになりたいと思う方がいるのなら胸の中の想いを声に出してください!」

 

「お願いします。皆さんの声で、斗真君を、弥生ちゃんを、昴を・・・城下町のAGITΩに力を貸してください!!」

 

茜は城全体に届くよう無我夢中で叫んだ。お世辞にも上手い演説とは言えなかった。話の内容を十分に理解できたのはごくわずかだろう。

 

だが、そのごくわずかの者達の心に茜の演説は勇気を与えた。

誰かが口を開く。鮎ケ瀬花蓮か、佐藤花か、はたまた福品創か、とにかく大勢の人々の中で誰か一人が呟いた。

 

「頑張れ」

 

かすれるような声だったが誰かが一歩踏み出した一言は声が聞こえた近くの者の背中を押しまたその者が隣の者に勇気を与えた。それは波紋に似ていた。茜という一つの滴が起こした小さな変化は広がっていき大きな波へと変えていったのだ。

 

「負けるな仮面ライダー!」

「昴様頑張ってください!」

「立ち上がって!」

「未来を取り戻してくれ!」

 

先程までの絶望に陥った表情は消え大勢の人々が昴を応援していた。しかもそれは最初からこの場にいた者達だけではなく、城に避難していた者達や斗真達が守っていた場所にいた者達も心を抑えきれず大広場へ飛び出してきた。

今や城中、いや、テレビを通して見ている国中の人々が仮面ライダーに声援を送っていた。

 

「黙れ!黙らぬか!!」

 

人々が再び希望を持ち出したことに苛立ちを覚えた陽のエルは激昂し人々に向けて光の球を投げる構えをとる。当たれば爆発する必殺の光球だ。

だが陽のエルが投げるよりも先に横から飛んできた銃弾が光球に触れて爆発を起こした。G3-Xが駆けつけたのだ。

 

「ぬっ!?」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

予想外の方向から攻撃を受けてエルロード達は後ずさる。G3-Xはその懐に飛び込み陽のエルに飛び蹴りを繰り出した。防御できず地面へ倒れこむ陽のエル。初めて攻撃が通った瞬間だ。だが次は陰のエルが着地を狙って大剣を横薙ぎに振るう。G3-Xは避けられない。

 

「たぁっ!」

 

「なにっ!?」

 

しかしG3-Xが真っ二つにされることはなかった。咄嗟にGK-06を引き抜いて陰のエルの大剣を受け止めたからだ。人間離れした反射神経に陰のエルは目を見開いているとG3-Xはつばぜり合うGK-06の刃を斜めに傾けて大剣を滑らせた。かなりの重さを持った大剣はそのまま地面に深く突き刺さり慌てて抜こうとする陰のエルにタックルをしかけて武器から遠ざける。

 

「おかしい、ただの人間がこれほどの力を持っているはずがない・・・貴様は何者だっ!!」

 

立ち上がった陽のエルはG3-Xを後ろから抑え込んで問いかける。G3-Xは至近距離からの銃撃でそれを退け陽のエルの問いに簡潔に答えた。

 

「私は四葉弥生。ただの・・・人間だ!!!!」

 

「馬鹿なありえない!ただの人間が我々と張り合おうなど!!」

 

現状を拒絶するかのようにエルロードは叫び互いに手のひらをかざす。G3-Xの頭上に巨大な爆発する紋章が現れる。それを落とそうとエルロードは念じる。

 

「グォォォォォォォォォ!!」

 

咆哮と共に両者の体中にギルススティンガーが巻き付き瞑想を妨げ空中の紋章は爆破することなく霞のごとく消失した。

次はエクシードギルスの乱入だ。彼もまた茜の言葉に反応して決戦の場へと移動したのだ。

 

荒々しくギルススティンガーを振り回しエルロードを地面にたたきつける。エクシードギルスは飛び掛かり陽のエルを飛び膝蹴りで吹っ飛ばし続けて陰のエルの首元に齧り付いた。すぐに陰のエルの腕力で払われ体勢を立て直した二体の反撃を受けるが斗真は不敵に笑う。

 

「俺は守るべき人がいる限り負けない。つまり俺は不死身だぁぁぁぁぁ!!!!」

 

無茶苦茶な理論を叫ぶエクシードギルスだが敵の攻撃をものともせず、一発殴られる度に立ち上がって倍返ししてく姿はまさにその無茶苦茶な理論を実証していた。

 

二人の仮面ライダーの奮闘に声援の勢いはさらに増していく。

 

「さぁ、次はお前の番だ。行ってこい!」

 

「張り切りすぎて体を壊さないようにね!」

 

気が付けば昴の後ろに家族が揃っていた。総一郎と五月が昴に声をかける。先程まで受けていた傷の痛みはとうに消え去り昴はエルロードと対峙している二人の元へ駆け寄った。

 

『理解に苦しみます。そんなことをしても私の手に人間の未来はある以上滅んでいく運命なのです』

 

天空で戦いを見つめる闇の力が声を漏らす。だがその言葉に怖気づくものなどもう誰もいなかった。

 

「さっき言ったことを忘れたか神様?だったらもう一度言ってやるからその脳味噌に刻んどけ・・・人の未来がお前の手の中にあるのなら・・・『俺達』が奪い返す!!!!」

 

以前言ったのとは微妙に変化していたが今の状況にはそれが一番合った言葉であった。皆が昴の言葉に頷き見守る中、昴は再度変身の構えをとる。今までとは違う挙動で。

 

一度両腕を突き出した後両脇へとグッと引くと腰にドラゴンネイルがついたオルタリングが発現する。そこからゆっくりと腕を伸ばし胸の前で交差させる。

 

「変身!!!!!!」

 

お馴染みの言葉を叫び昴は変身した。自分の持つ最強の形態シャイニングフォームへ。光を浴びないと変身できないはずだったシャイニングフォームが何故この場で変身できるようになったのか?

エルロードの攻撃を浴び続けたことで昴自身の能力超越進化(エボリューション)が発動したのか、人々の心からの声援によって彼らの中で眠っていたアギトの力の一部が昴に染み込んでいったのか、詳しい理由は昴自身にも分からなかった。

分かるのは今自分の体中から湧き出る温かい光とこの力を持ってなすべきことだけだった。昴にとってはそれさえあれば十分だった。

昴が変身したことによって三人の仮面ライダーが並び立つ。エルロードもまたこちらに強い殺意を向けてくる。

 

『『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』』

 

叫びがゴングとなって決戦が始まった。

 

エクシードギルスは陽のエルに目を向けて爪をたて攻撃を仕掛けていく。だが陽のエルはギルスの猛攻を片手で制した。先程は予想外の事態の連続で遅れを取っていたが本気を出したことによってエクシードギルスを追い詰める。

怯まずにパンチを繰り出すがひらりと交わした陽のエルはギルスの胸に杖を突きつける。

その瞬間、ギルスの時が止まり身動きが取れなくなる。

 

(畜生・・・動け!動けってんだよ!)

 

どんなに斗真がそう思っても時を操る陽のエルの力で完全に拘束されてしまっている。

 

「フハハハハ!私が本気になれば貴様如きを消すことなど造作でもないのだよ!!」

 

高笑いで勝ち誇る陽のエル。それが命取りとなるのも知らずに。

勝利を確信したことによって陽のエルに隙が生じた。その隙をついてG3-XはGA-04のアンカーを射出し陽のエルの体に突き刺した。

 

「しまった!奴の時も止めなければ・・・」

 

「もう遅い!」

 

慌てて杖をG3-Xに向けるがすでにG3-XはGX-05から銃弾を放っていた。

 

「ぬおぉぉぉぉぉっ!!」

 

次々と身を貫いていく銃弾に耐えながら陽のエルはG3-Xへと迫っていく。GX-05の弾が尽きた瞬間速度を上げて一瞬の内にG3-Xに肉薄し時間停止の杖をG3-Xの胸を突いた。

 

「これで終わりだ!所詮ただの人間が偉大なあのお方によって創造された私に勝てるはずがないのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

陽のエルは今度こそ勝利を確信する。後は身動きの取れない哀れな敵にとどめを指すだけだ。次は陰のエルと戦うアギトを始末する。そう思っていた。だが予想を覆すことが起きた。

 

ガチャリ、と重量感のある音が聞こえてきたと思い陽のエルは下を向くと仰天する。時を止めたはずの相手が動き自分の体に銃器を密着させているではないか。

 

「ただの人間を・・・」

 

確かに陽のエルの杖はG3-Xの胸をついていた。だがそれは胸部装甲であって中にいる弥生本人の体には触れておらず弥生は腕部だけを動かしてGXランチャーを陽のエルの胴に密着させた。自身の力に自惚れるあまり相手の特性を知ろうともしなかったのが陽のエルの敗因であった。

 

「なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

不屈の闘志を纏った指が引き金を引くと砲弾は放たれG3-Xと陽のエルの間で大爆発が起こる。その爆風によってG3-Xは吹っ飛んだ。装甲が犠牲になったことで弥生は大事には至らなかったが戦闘不能となった。

 

「おぉぉぉぉぉのぉぉぉぉぉぉれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

見下していた人間に一矢を報いられ自尊心に傷がついた陽のエルは激情のままに弥生に飛び掛かる。だが鞭のようにしなるギルススティンガーの一撃によって弾かれた。先程の爆発で杖が破壊されギルスが止まった時から解放されたのだ。

水を得た魚の如くエクシードギルスは全身の武器を使い陽のエルを切り裂いていく。陽のエルがたまらず一歩下がった瞬間、エクシードギルスも前へと進んで飛び膝蹴りを顔面に放つ。痛みに悶える隙も与えずギルススティンガーで拘束しギルスは飛び上がる。今こそ必殺技を決める時だ。

だが斗真の脳裏に金のエルとの戦いがフラッシュバックした。あの時のように自分の技が決まらないのではないだろうかという不安に見舞われる。

 

(だったらいつもの倍の力で決めればいいだけだ!!)

 

だがすぐに答えを見つけ出したエクシードギルスは空中で一回転して両足を陽のエルの肩に振り落とす。土壇場で編み出した新技『エクシードダブルヒールクロウ』。二つの踵の爪は見事陽のエルの肩を突き刺さるを通り越して切り裂いた!

 

「そんな馬鹿な・・・この私が・・・ギルス如きに・・・何故だ・・・」

 

「俺に負けたんじゃない。お前は人間の底力に負けたんだよ」

 

自身の敗北が理解できずにいる陽のエルに斗真は弥生の奮闘を思い出しそれを伝えた。陽のエルは恨めしそうに壊れた装甲を背負って立っている弥生に睨み付け爆散した。

それと同時に変身を解いた斗真は糸が切れたように地面に倒れた。今までの無理してきたツケがここで一気に襲い掛かったのだ。

だが倒れても斗真の顔に焦りは無かった。

 

「俺と弥生はやれることを全部やったぜ。後はお前次第だ昴」

 

そう言い首を捻って斗真はアギトと陰のエルの対決の行方を見守ることにした。

 

「でやぁぁっ!」

 

「ぬうんっ!」

 

シャイニングフォームと化したアギトと陰のエルとの一騎打ちは互角の展開を繰り広げていた。

地面から引き抜いた大剣を大振りに振るう陰のエルに対してアギトは間を縫うような動きで交わし攻撃を当てていく。それにものともせず陰のエルは大剣をアギトに叩きつける。しかしアギトはすぐに受け身を取って前へと突っ込みアギトを俊敏な連撃を、陰のエルは強烈な一撃を互いの敵に繰り出していく。それは正に剛腕と俊足、真逆の強さを持った者同士高度な死闘であった。

決着を早めようと陰のエルは空間を歪めてアギトの動きを崩そうと試みるがシャイニングフォームの超スピードはそれを振り切って前に進む。

 

「おぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

能力を使ったことにより守りが疎かになりアギトはここぞラッシュと陰のエルに向けて撃ち続ける。全身にくまなく打撃を撃ち込み締めにアッパーを叩き込むことで陰のエルに大ダメージを与えるがそれでも倒すまでには至らなかった。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 

ゆっくりと腰を据えてシャイニングライダーキックの構えを取るアギト。だがいつもより深く息を吸い力をため込むことで空中に浮くアギトの紋章は二つ浮かびだした。

一方陰のエルはそれを迎え撃とうと大剣にエネルギーを貯めて今か今かとアギトのキックを待ち構えている。

 

勝負の時だ。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

力の限り叫んだアギトは二つの紋章を抜けて加速した大技『強化シャイニングライダーキック』を陰のエルに向けて繰り出した。陰のエルもそれに応じてエネルギーを込めた大剣をアギトの足に向けて振り上げる。

 

二つの必殺技が直撃すると閃光が迸り両者の周囲の床を崩壊させていく。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

必殺技の押し合いに勝利したのは陰のエルであった。鼓膜を破るような雄叫びを上げて大剣を振りアギトを空を吹き飛ばした。その衝撃で自慢の大剣が粉々に砕かれてしまったが既に勝負は決まったと大剣を投げ捨て両手を翳してアギトを粉砕する破壊の閃光を放つべく力を貯めた。

 

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

アギトにとっては絶体絶命の状況。だがアギトは諦めず一発逆転の賭けに身を投じる。

 

 

「マシントルネイダァァァァァァァァァァァァ!!」

 

愛車の名を叫ぶとマシントルネイダーはその声に応じるかのように独りでに動き出しスライダーモードとなってアギトの元へと駆けつけた。

 

「何だと!?」

 

これには陰のエルだけではなく全ての者が目を見開いた。驚愕する陰のエルを尻目にアギトは身を捻って後ろに構えるマシントルネイダーに足をついた。

 

そしてそのまま足を膝を縮めバネをつくる。先程の相手の攻撃を上乗せしてアギトはマシントルネイダーを蹴り上げ再び作った二つの紋章を潜り抜けた。

 

 

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

『強化シャイニングライダーブレイク』が放たれた閃光を貫いて陰のエルに炸裂した!!

そして陰のエルは振り子のように吹き飛んで城壁にめり込んだ。

 

「悲願敵わずこの身が砕けることをお許し下され・・・********!!」

 

人の言葉では表現できない言語で主の名前を叫んだ陰のエルはそのまま息絶え爆散した。

 

「やったぁ!仮面ライダーの勝利だ!!」

 

『『ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!』』

 

立ちはだかった二人のエルロードがライダー達の手によって倒されたことにより人々は手を叩いて喜び合った。昴も一呼吸し変身を解いた。

 

「昴、お疲れ」

 

振り向くと茜が家族の前に立って手を差し伸べている。昴がその手を掴もうとした瞬間。

 

 

 

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

突如、空からの轟音が地上を震わせる。終末の使者として出した僕が人の手によって倒されたことへの怒りの咆哮だった。

空に浮かぶ闇の力は体から三つの光の球が這い出て周囲を旋回し始める。その球の正体を昴は感覚で察した。

 

エルロードだ。樹が言っていた神話通りなら今闇の力の元にいるエルロード達は『水エル』、『風のエル』、『地のエル』といったところか。自分たちはまだ相手の手ごまの半数を倒しただけに過ぎないことを痛感させた。

 

『人よ、私はあなた達を見くびっていました。もう手心は加えません。私自らの手であなた達を葬って見せましょう・・・!』

 

そう言い闇の力は三体のエルロードと共に上昇していく。空を覆うローカストロードをどかして向かおうとする先に見えたのは太陽だ。

 

「まさかあいつ太陽を壊す気か!?」

 

正気の沙汰とは思えない。

今すぐにでも止めようと変身を試みるがそれを斗真と弥生の二人が止めた。

 

「無茶だ!あんな遠くにいる奴にお前の攻撃が届くはずがない!」

 

「何とか届いたとしても周りにいる三体のエルロードに袋叩きに遭うぞ!」

 

二人の目には昴が今行おうとしていることが無謀に見えた。だが昴は思ったよりも冷静だった。

 

「大丈夫。俺だってそこまで馬鹿じゃねえよ。ちゃんと方法は考えてあるぜ」

 

「方法?それは一体なんだ?」

 

「それはだな・・・」

 

そう言い昴は二人の手を放して家族の元へ駆け寄る。彼らと見つめ合い昴は言った。

 

 

「皆・・・俺に力を貸してくれ・・・!!」

 

それは決して他力本願ではない。やけっぱちの突撃策でもない。

今まで共に生き彼らの強さを誰よりも理解していたからこその提案だった。自分一人の手では届かないのであれば皆と手を繋いで手を伸ばす、至極単純で合理的な判断なのだ。

 

『『うん・・・!!』』

 

昴の願いを跳ね除ける者は無く同じタイミングで強く頷いた。

そこからすぐに昴と茜が中心になるよう横に並び立った。互いに横にいる者と目を合わせ手を繋ぐ櫻田家。最後に茜と昴が目を合わせた。

 

「昴・・・絶対この世界を守ろうね」

 

「ああ・・・勿論だ茜」

 

そして二人は痛みを感じるぐらい強く互いの手を繋ぎ合わせた。これで準備は完了した。

 

 

「さぁ行こうぜ・・・最後の戦いだ」

 

昴の呟きを合図に茜の重力操作が発動し櫻田家の面々は多くの国民に見守られながら今の太陽に向かおうと上昇する闇の力に向けて飛び立った。

 

『無駄なことを・・・!』

 

迫ってくる櫻田家を落そうと闇の力は手のひらから光の矢の嵐を放つ。だがそれは現れた七色の壁によって全て弾かれた。

 

「え!?何これ!?カナちゃんがやったの!?」

 

「違うわよ!こんなの出せるわけないでしょ!」

 

突然自分達を守った七色のバリアに騒然となる。それを出した一人を除いて。

 

「俺がやった」

 

『『っ!?』』

 

気が付けば昴の背中から七色の光が溢れ出し光の矢から家族を守っていたのだ。

 

「昴・・・それは一体」

 

「俺にもよく分からない。多分レベルアップしたってことかな?」

 

理屈が分からないがこれで攻撃を受ける心配は無いと茜は空を飛ぶ速度を上げていく。あっという間に闇の力との距離は縮まっていく。だが闇の力も追いつかれまいと上昇速度を上げていく。

 

「さてと、この辺なら大丈夫かな・・・皆!俺をあいつの所まで力いっぱい投げてくれ!!」

 

「え?でもまだ結構距離が・・・」

 

「問題ないさ。今の俺なら届きそうな気がする」

 

そう言い放つ昴の顔はいつも通りの自信に満ちた笑みを浮かべていた。茜達はその笑みを信じることにした。

 

大きく深呼吸、全体を震わせ思いっきり昴を前へと打ち上げた。

 

『『いっけぇぇぇぇぇぇ!!』』

 

 

その瞬間、昴の周りが虹色に輝きだした。その感覚を感じたのは今が初めてではなかった。人々から声援を受けてシャイニングフォームへ変身した時感じ取っていた温かい光そのものだ。陰のエルとの戦いの中で内に輝く光の強さが増していき家族と共に飛び立ったことでそれを外へと放出する術を得た。

そして今、それを完全に制御するに至り闇の力との真っ向勝負に出たのだ。

 

これは決して偶然などではない。そもそもアギトとは人が太古に託された『限りなく進化していく力』なのだ。昴にとっての最強形態であるシャイニングフォームもアギトの無限の進化の過程の一つに過ぎない。そして昴は今、この国に生きる多くの人達の想いを受け取りさらなる進化へと遂げようとしている。

 

 

 

さぁ・・・目覚めろ、その魂!!

 

「変身!!!!!!!」

 

過去最大級の声量で叫ぶと周りの光がオルタリング集約され背中から解き放たれる。刹那、場を白く染め上げるようなほどの眩い光が放たれ思わず目を伏せる。

光が収まり目を開けてみるとそこに見えたのは新たなるアギトの姿であった。

 

それは全体的にはシャイニングフォームと共通する姿であったが大きく違ったのはその背中だ。

 

アギトの背中に巨大な七色の翼が生えていたのだ。遠目から見ればそれは大きな二つの虹にも見えたのであろう。

 

名付けるとしたら『仮面ライダーアギト レインボーフォーム』といったとこか。

 

「さぁ覚悟はいいか・・・この国中の皆の想いを込めた一撃・・・まともに食らってただで済むと思うなよ!!」

 

そう言いアギトは翼を光らせ闇の力のいる方へシャイニングフォームとは比べ物にならないほどのアギトの紋章を召喚させる。数は12、奇しくも昴自身を含めた櫻田家の人数と一致していた。

 

『消え去りなさい・・・消え去れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

未知の進化に狼狽え闇の力は光の矢を放ちながら太陽へと向かい大気圏を抜け出そうとする。いくらアギトとはいえ生き物なので生身で宇宙へ行くのは自殺行為に等しい。大気圏に相手がたどり着く前に決着をつけなければならない。

 

(やって見せるさ・・・俺は一人じゃない!皆が付いているんだ!!)

 

「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

喉が避けそうになるほど叫び声を上げてアギトはキックの構えを取って紋章を突き破っていく。紋章を貫く度に速度を上げ最終的には光速すら超越するスピードで闇の力の元へと急上昇していく。

 

闇の力の傍に浮く三体のエルロードは重なり合って道を阻む。だがレインボーフォームとなった今のアギトにとってもはや敵ではなく一瞬の内に三体のエルロードを撃破し遂に闇の力の元へと辿り着いた。

 

『レインボーライダーキック』の直撃を受けた闇の力はこの世の物とは思えない程のおぞましい叫びと共大気圏ギリギリで大爆発を起こした。その爆風に巻き込まれローカストロードは全て消滅し天は晴れ晴れとした青空を取り戻した。

 

正に完全勝利。だが誰もそれを祝福しようとするものはいない。

何故なら闇の力の爆発と共に昴もまた大空へ姿を消したからだ。

 

「昴ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

茜の悲痛な叫びが城中にこだまするのであった。

果たして昴は本当に死んだのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

(ここはどこだ・・・)

 

昴が何もない空間の中で目を覚ました。ただ延々と黒く染まっている空間に目を凝らして見ると奥で青年がこちらを見て立ちつくしていた。青年は口を開いた。

 

「あなたの勝ちです。人の王よ」

 

「おいおい、俺は王子であって王じゃないぜ」

 

「あの国の人の心の中にあなたのへ感謝と尊敬の念が感じられます。あなたがここを抜け出して現世へと戻れば間違いなく人はあなたを王と選ぶでしょう」

 

ですが、と青年は厳しい目つきで昴を見据える。

 

「今の出来事によって人は自ら秘める力を自覚するでしょう。その中であなたのようにアギトに目覚める人間も増えていく。やがてそれは力を持つ者と持たざる者の闘争へと変わっていくのです。私はそれを何としても止めたかった。ですがあなたは・・・」

 

そう言い青年は俯いた。その姿から彼の後悔と無念の気持ちが伝わってくる。

昴は悟った。人には理解できない思考とはいえ彼も彼なりに人間のことを愛していたのだと。彼の歪んだ一方通行の心はひょっとした自分がそうなっていたかもしれないと。例えば茜に正体を明かしたあの時、泣いている茜をそのまま置いてけぼりにしていたらきっとこの青年のことを否定できなかったのだろう。そう思うと昴の彼に対する敵意が薄れていった。

 

「そうか・・・そうなっちまうかもしれないのか・・・」

 

青年の傍に立ち昴は決断した。

 

「だとしたら俺は、王にはならない」

 

その一言に青年は目を見開き昴は今までの経緯を語りだした。

 

「俺はずっとアギトの力に悩んだりする人がいなくなればいいなと思って選挙に臨んできた。確かに王になれば俺の願いはすぐに叶えられるかもしれない。でもそれは違うんだと最近気づかされた」

 

たとえで王になって人がアギトを受け入れるような政策をとったとしてもそれは昴が生きている間だけで問題を先送りにしているだけに過ぎないとあの時の葵との会話で気づかされたことであった。

 

「だから決めたよ。王の権力に頼らず自分の力で俺の願いを実現させる。アギトと人が分かり合える未来をな」

 

「・・・それが、途方もない時間と労力を要するものと知って言っているのですか?」

 

「知ってるさ、多分俺が生きている間には終わらないだろうな。でも諦めず努力していけば分かってくれる人達はきっと現れる、そいつらに後を託せばいいんだ。俺は、土台作りが出来ればいい・・・」

 

「形容しがたいほどの夢想家ですねあなたは・・・」

 

吐き捨てる青年だが言葉とは裏腹に表情は穏やかなものだった。目の前にいるのは人間でありながら自分に勝った少年だ。彼が作る未来を見通すのも悪くないかもしれない。そう思い青年は手をかざし昴の後ろの空間に穴を空けた。穴の奥には櫻田城が写っている。

 

「行きなさい。肉体を破壊された私はもう現世へ干渉することはできません。あなたはあなたの帰りを待っている者の元へと戻り、自らの願いのために一歩踏み出すのです」

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

そう言い昴は青年に背を向けて穴の中へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

櫻田城は悲しみに包まれていた。崩壊の危機は去ったがそれを阻止するのに戦い続けた昴の行方が分からなくなってしまったからだ。

 

「昴・・・」

 

俯き呟く茜。だが急に周りが騒がしくなり視線を空に向けた。

青空に見えたのは二本の虹、それは昴が変身した新たなアギトの翼に他ならなかった。驚きのあまり言葉を失う面々の前にアギトは着地し変身を解いた。

 

「いやぁ~死ぬかと思った~・・・ってうわっ!?」

 

『『無事で良かった~!!』』

 

いつものふざけた調子で喋り出そうとした昴だが一斉に抱き着いてきた家族によって地面に倒され全員分の重さを受ける。

 

「ちょ、死ぬ死ぬ!?ホントにヤバイ奴だからこれ!」

 

割と本気のトーンで言ってきたので慌てて昴から距離を取る一同だったが一人だけ昴から離れないものがいた。

 

「茜・・・?」

 

昴の無事を知った茜は泣きじゃくりながら抱き着いている。

 

「ただいま」

 

昴は茜の背中を優しく撫で呟くと茜は涙を拭い笑顔になって言った。

 

「おかえり」

 

茜が言うとダムが決壊するがごとく人々から歓喜の声が沸き上がった。櫻田城に今度こそハッピーエンドが訪れたのだ。

 

「これで終わったのだな。長く続いていた戦いが・・・」

 

いつの間にかここに来ていた白井が感慨深く空を見上げる。

 

「いや・・・始まりさ」

 

「ん?」

 

昴はあの空間での青年との会話を思い出したのだ。

 

「アンノウンとの戦いは終わった。でもそれは新しい闘いの始まりなんだ。そしてその闘いに・・・」

 

 

 

 

「俺は勝つさ!」

 

そう言い昴は天に向かって拳を突き上げた。それは自分の願いを叶えるための新たな闘いを始める決意表明だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれから二年の歳月が流れ・・・

この二年間は櫻田家に様々な変化を齎した。そして今日、また新たな変化が訪れようとしていたのである。

 

「あか姉いつまで部屋にいるの!?もう出発の時間が来てるよ!」

 

岬が茜の部屋の前でノックしながら呼び掛けていた。

 

「うん・・・後で皆に追いつくから先に行ってていいよ・・・」

 

そう言う茜のものは平時と違い暗い声色だった。

 

「先に行ってて、あか姉今日が何の日か分かって・・・」

 

と、何の日か言おうとする岬の肩を遥が掴んだ。

 

「岬、時間だよ」

 

「でも遥。あか姉が・・・」

 

「姉さんなら大丈夫だよ。重力操作があればいつでも間に合うから」

 

不服ながらもこのままでは自分達が遅れてしまう懸念があるので岬は必ず来るように茜に伝え家の前で待っているリムジンに乗った。リムジンの中には家族だけではなく昴の仲間達もいて岬と遥が乗ったのを確認して目的地へと走り出す。櫻田家その場にいないのは家の中で閉じこもっている茜と、昴だけだった・・・

 

 

 

 

 

「そろそろかな」

 

昴は今、櫻田王国国際空港にいた。出発までの間待合室に腰を掛けていると後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。振り返れば予想通りかつて共に戦ってきた仲間達と一人を除いた兄弟と両親、そして新しい家族となるであろう修の恋人の花が昴の元へ向かってきた。

 

「全くつい最近連絡してきたかと思えば旅に出るって言い出すわ、何も言わずに行こうとするわ、俺達にもお前を見送るくらいさせてくれよ」

 

二年前に起きた出来事によってアギトの存在が明らかとなり国では大騒ぎになった。そこで昴は戦いの後早々選挙の辞退を表明し、次期国王となった修の戴冠式に出席しすぐに混乱を収める為に国中を駆け回った。多忙を極めこうして大勢が顔を合わせたのはあれ以来初となったほどだ。そして国の混乱に収拾をつけた昴は世界中でも似たような出来事が起きていることを知り、世界へと旅立つことを決心したのがこれまでの経緯である。

 

「悪い悪い、何か、皆と会ったら思い留まっちゃいそうな気がしてさ・・・」

 

「何が『思い留まっちゃいそうな気がする』よ。あんたはとっくに決心がついているんでしょ?単に別れを言いたくなかっただけじゃない」

 

「まぁ・・・身も蓋もなければそうなんだけどさ・・・」

 

奏に図星をつかれて思わず冷や汗を昴。とはいえあのまま皆に一言も言わず旅立っていくには後ろめたいものを感じていたしフライトまでまだ余裕もある。

気を取り直して昴は改めて皆と話すことにした。とりあえずは近況や未来のことについて語り合おうと思い、最初に顔を向けたのは葵だ。

 

「姉ちゃん。一人暮らしを始めたって聞いたけど大丈夫なの?」

 

「うん。最初は色々苦労があったけど皆や近所の人達が支えてくれたから今は平気」

 

「なら良かった。でも何か困ったことがあったら俺に連絡してくれ、地球の裏側でも飛んできて力になるからさ」

 

「ふふ、ありがとう昴」

 

昴が葵と言葉を交わし終えると奏が昴の前に出た。

 

「一応私も一人暮らしを始めたんだけど?」

 

「そう言えばそうだったな。医大に受かったんだっけ、調子はどうよ?」

 

「全然ね、少なくとも私の目標に関してはだけど」

 

「兄貴の足のことか?」

 

昴の問いに奏は頷く。

 

「奏・・・お前・・・」

 

「諦めてなんかないわよ私はあんたの足のこと。でもそれは償いの為なんかじゃない。私がやりたいと思ってやってることよ。それを為すのに能力も国王の財力もいらない、私自身で実現してみせるわ」

 

奏が償いではなく自分のやりたいこととして道を選んだことに修はもしその日がきたら受け入れることを決めた。

それに、と奏は花の方を見て言った。

 

「王様の足が不自由だと色々迷惑をかけちゃうんじゃないの?王妃様とか」

 

「お、王妃様!?」

 

奏の言葉に花は顔を真っ赤にした。

 

「ままま待って奏さん。私はまだ修君とつつ付き合ってるだけでおおお王妃様なんてててててて・・・」

 

「でも将来的にはそうなるつもりでしょ?」

 

「うぅ・・・」

 

「まあまあ姉貴、義姉さんのことをからかうなよ」

 

「義姉さん!?もう修君からも何か言ってよ~」

 

止めに入るようでしれっと義姉さんと呼ぶ昴に花の顔は益々紅潮する一方でたまらず修に助けを求める。

 

「奏、昴・・・」

 

そこで修は全員に聞こえるように堂々と言った。

 

「俺の嫁をいじるのは止めてもらおうか!」

 

「修君~!?」

 

予想外の方向からの攻撃で花はたちまちノックダウン。フラフラになる花に修は肩に手を当てて支えると嫉妬深い表情で奏が二人を睨み付ける。

 

「・・・諦めてなんかないわよ・・・」

 

「!?」

 

何やら尋常じゃないものを感じ取った昴は慌てて話題を変えようと岬に話しかける。

 

「岬は高校でも生徒会長をやるつもりなのか?」

 

「うん。性分だからね。まあ中学の時の経験もあるし上手くやれるよ」

 

「中学の時はほとんど僕が実務をやってたけどね」

 

割り込んできた遥に岬は悪い顔せず肩を抱いた。

 

「いいじゃん、ようは適材適所ってやつだよ。というわけで高校もよろしく頼むね遥」

 

「やれやれ、岬は僕がいないとホント駄目なんだから・・・」

 

そう言いながらも岬に付き合うことを決めた遥。

昴はあの二人なら特に心配する必要はないと判断し今度は弥生に目を向けた。

 

「ところでお前は今年卒業だけど何か目標は決まったのか?やっぱり親父さんみたいに軍人を目指すのか?」

 

「いや、私は警察官になろうと思う。この町は私が守ってきた故郷だ。これからも守っていきたいと思う」

 

「そうか・・・お前らしいな。頑張れよ」

 

「ああ、任せてくれ」

 

弥生と言葉を交わした昴。次は白井だ。

 

「ところでお前はどうするんだ?全く予想できないんだが・・・」

 

「私か?私は大学に進学するつもりだが」

 

「え・・・お前が?」

 

意外な答えに昴は目を丸くし白井はそのことについて説明を述べた。

 

「今までの私が作ってきたものは自分の好奇心に従ったものだけだった。でもこうして君達を親交を深めていく内に人の役に立てる発明をしてみたくなったのさ」

 

今の心境を出会ったばかりの頃と見比べ昴は彼女の人としての成長を強く感じていた。つらく厳しい戦いであったがもたらしたものは決して悪いものではないと昴は実感する。

 

「というわけで六野、君の大学へ行くからこれからも頼むぞ」

 

「えっ!?またこき使う気なの!?」

 

何か問題でも?と言いたげに首を傾げる白井に六野は観念してついていくことにした。

 

「・・・分かったよ分かりましたよ。でも大学では僕が先輩だからね!」

 

「はいはい先輩にはちゃんと敬意を払いますよ。感謝したまえ六野」

 

「早速払ってないじゃん!?」

 

最早この二人はこれが平常運転となっていた。ちょっぴり肩を落とす六野を尻目に昴の前に立ったのは光だ。

 

「はいはい!次あたしがすーちゃんと話す番!すーちゃん知ってた?あたし映画に出るんだよ」

 

「ああ、もちろん知ってるさ」

 

二年前のあの日以降光はらいととしてアイドル活動をしていたことを公表し改めて王族アイドルとして活動を続けていた。そんな時、事務所に来たのが映画出演のオファーだった。生命操作を持つ光なら子供にも大人も演じれることに着目してのことだった。

 

ちなみにその映画とは悪の組織に改造人間にされた薄幸少女が攫われた恋人を救うために単身敵が潜む島へドンパチにしに行くというもので光が演じるのはヒロインのライバル役らしい。

 

「でも大丈夫なのか?能天気100%のお前が演技しているとこ想像できないんだが」

 

「もうひどいなすーちゃんは!あたしだってちゃんと頑張って役になりきったんだから!」

 

「本当かぁ?」

 

ちょっと不安に感じる昴に斗真が光のことについて話した。

 

「光の言ってることは本当だぜ。撮影を見てきたけどすっげえはまり役だったな」

 

えっへん、胸を張る光。だが昴はそれより驚くべきことがあった。

 

「え?何でお前が撮影現場にいたの?」

 

「あ、お前には言い忘れてたな。俺卒業後は光の事務所で働くことにしたんだよ」

 

「えええええええ!?」

 

驚愕の事実に昴は目が飛び出るかの勢いで絶叫した。

 

「え?マジで?」

 

「マジだ」

 

「ファンクラブどーすんの?」

 

「あいつらなら大丈夫だ。俺の魂をしっかりと受け継いだあいつらならやってけるさ」

 

「・・・ああ、そう」

 

もう昴はこのことに関してはツッコムことを止めた。彼の光に対する思いは本物なので彼に任せて大丈夫に違いないと判断したからだ。

 

そして次は輝と栞が前に出た。昴はしゃがんで二人に目線を合わせて話しかける。

 

「栞、入学おめでとう。入学式に来れなくてごめんな」

 

「大丈夫だよお兄様。祝ってくれる気持ちだけで私は嬉しいから」

 

「栞がそう言ってくれるな俺も嬉しいよ。それと輝、ちゃんと勉強してるか?」

 

「はい!バッチリです兄上!この勢いなら小学校を卒業するころには修兄上の右腕になれると自負しています!!」

 

自信満々に言う輝に昴はこっそり栞に耳打ちする。

 

『で、実際のところはどうなの?』

 

『この前算数の宿題が終わらなくて私が手伝ったの』

 

「し、栞!?それは内緒にするって約束じゃ・・・」

 

あわあわと狼狽える輝であったが昴は怒らず笑って答えた。

 

「恥じることはないぜ輝。俺だってお前ぐらいの時は七の段がからっきしだったんだからな」

 

いやそれはヘタをしたら今もだろ・・・と周りは心の中でツッコミを入れる。

 

「まあ何だ、お前には俺よりも学ぶ時間がたくさんあるんだ。焦らずゆっくりやっていけば苦手なこともきっと克服できるさ」

 

「はい、ありがとうございます兄上!」

 

輝が元気を取り戻し栞もほっとしている。昴は彼らがこれからどのように成長していくのか楽しみに感じていた。

 

「昴・・・」

 

そして最後に昴の前に来たのは総一郎と五月、昴の両親である。

 

「えっと・・・」

 

何を言えばいいのか考えていると五月が昴を抱きしめた。

 

「風邪をひかないように気を付けて、怪我もしちゃだめ、寂しくなったら連絡してきなさい。後、外国の人とも仲良くやっていくのよ」

 

「よ、止してくれ。子供じゃないんだからさ」

 

「いいえ子供よ。あなたは私の子供、家族であることは何があっても変わらないわ」

 

「母さん・・・」

 

五月が抱擁を解くと総一郎は昴に懐からあるものを取り出し昴に渡す。

何年か前にとった家族の集合写真だった。

 

「旅立つお前にこれを託そう。これがある限りお前はどんなところでも私達と一緒だ」

 

「ありがとう親父、いつか必ず皆の元へ戻ってくる。だってあの家が俺の帰る場所だから」

 

写真を受け取ると同時に昴が乗る便のフライトが近づいていることを知らせるアナウンスが聞こえてくる。

 

「それじゃ、行ってくる」

 

そう言い昴は手を振って皆の元を離れ飛行機に乗り込んだのであった。

 

 

 

 

—まもなく櫻田国際空港発○○便が離陸いたします。

 

機内のアナウンスが流れるとゆっくりと飛行機は動き出した。席に座る昴は先程の家族と仲間の交流を反芻していた。だがそれは決していい思い出ばかりではない。

 

「結局・・・来なかったな茜・・・」

 

何も相談せずに家を離れ、その上やっと会えると思ったら外国へ旅にでようとする自分に怒っているのだろうか。旅立ちを見送る家族の中に茜だけがいなかったことが昴にとってはショックだった。

 

「いつかこの国に戻った時、謝りに行くか・・・でもなんて言えばいいんだ」

 

そう悩む昴だが何やら周りが騒がしくなるのを感じる。何事だと思っていると乗客の誰かが大声で叫んだ。

 

 

「茜様だ!窓の外に茜様がいるぞ!!」

 

「!?」

 

すぐさま昴は横の窓に目を向けるとその目を見開いた。

 

何故なら窓の外に見える茜は宙に浮いてアギトのエンブレムが描かれた大きな旗を担ぎこちらに向けて振っていたからだ。

 

 

茜の行動は飛行機だけでは無く空港の方でも注目を集めていた。

 

「あか姉・・・あの旗作るために部屋に引きこもってたんだ・・・」

 

岬は唖然としていた。遥は能力で予知していたとはいえ実際にその光景を目の当たりにして驚いていた。輝と栞は純粋に昴が乗る飛行機と茜に手を振るのに夢中だった。

 

「というか茜ちゃん、あんなに人に見られてんのに大丈夫なの?」

 

「まあ元々あの子はあんな感じで活発な子だったんだけどね」

 

光も大胆な茜の行動に驚いていたが人見知りになる前の茜のことを知る奏、修、葵、五月はそこまで驚かなかった。

数年間の出来事を鑑みて総一郎は茜のことについて語り出す。

 

「二年前、茜に起きたことは他の兄弟と比べて小さなものだった。でもそれが日を増すごとに積み重なっていってやがてそれが成長へと変わった。ある意味あの選挙を通して一番成長したのは茜かもしれないな・・・」

 

一同は総一郎の言葉に頷き茜と旅立つ昴に向けてて精一杯手を振るのであった。

 

 

 

「茜ぇ・・・」

 

笑顔で旅立ちを見送る茜を見て昴の頬に涙が流れ落ちる。だが昴はすぐに涙をぬぐった。涙に濡れたままでは茜が見えないからだ。

その時、一瞬だが茜と昴の目が合った。茜は何かを呟く。その声は耳には聞こえなかったが心には届いた。

 

 

『いってらっしゃい!』

 

確かに茜の心からの言葉を聞き入れた昴は同じぐらいの声で茜に向かって叫んだ。

 

 

「いってきます!」

 

 

 

こうして一つのタンポポから生まれた綿毛は多くの者達に見守れながら旅立っていった。その先には様々な困難が待ち構え苦難が降りかかるであろう。だがそれでも彼は前に進む。自分の信念の為に、いつかそれを為して家族の元へ変える為に彼は旅立つのである。

 

その旅の末に輝ける未来を築けると信じて・・・

 

 

城下町のAGITΩ -完-




城下町のAGITΩ 堂々完結!!
というわけで少しこの作品について私から語らせていただきます。

一年程前、私は城下町のダンデライオンをアニメで知りました。超能力、王族、選挙といった一目では結びつきにくいキーワードに興味を持って視聴してみたのですがそこからドはまりしまして最終回を迎えた後、この作品の二次創作を作ってみたいと思ったのです。実をいうと最初の時点ではアギトを絡める予定はなかったのです。
最初に考えたのはオリジナルの主人公の設定でした。
次男にて茜の双子の兄という設定で能力は何故か不所持、そのことにコンプレックスを抱いているオリ主が兄弟達との交流でそれを克服していくというストーリーを妄想していました。
しかし、ハーメルンに投稿することにして他の方々のダンデライオンの二次創作を見て無能力の次男という設定がすでに存在していましたので路線を変更、実はすごい能力を隠し持っているという設定に変更したのです。その頃は電気系の能力で怒ると落雷を引き起こすとかコピー系とか色々と考えていました。
ですが今度はその能力を生かせるストーリーを創作するとどうしてもシリアスな世界観になってしまうという問題が発生してしまいました。
悩んだ末に私が考えたことはクロスオーバー作品にしようということです。他の作品の要素を入れることでシリアスが入っても違和感がないようにしたわけです(勿論シリアスになりすぎてダンデライオンの良さを損なわないように努力はしました)。ここでやっとアギトを絡めようという発想に至りました。
これは超能力繋がりでありますがアギトは私が物心がついて最初に見た仮面ライダーだった為思いれが強かったというのもあります。

大まかな流れを決め次に私がしなければならないと感じたことは両作品をより詳しく知ることでした。二次創作を書く以上その作品をより深く理解することは不可欠ですからね。早速、本屋にてダンデライオンの原作コミックとアニメの公式ガイドブックを購入して熟読、アギトも改めて再視聴しネットで裏設定や考察についても調べ上げました。
両作品の魅力を十二分に理解し本格的に執筆に乗り出したのです。

ハーメルン内に投稿し一歩下がった目線で自分の作品を読むようになってこれはよかったな、ここはこうすればよかったな、と頭の中だけで考えていた時とは違う思いも出てきて一喜一憂の日々が始まりました。落ち込んだこともありましたが日に日に増えていくお気に入り登録者数や感想欄のコメントによって支えられ最終回まで書き続けることができたのです。

そして最終回を迎えたこの回で皆様へのサプライズとして今作品オリジナルフォームを出そうと思いました。
クロスオーバー作品に相応しいフォームにしようと思い出来たのがアニメの主題歌『Ring Ring Rainbow!! 』から名前をとったレインボーフォームです。また昴の名前の由来であるプレアレス星団の別名 六連星。『六』連星から『七』色の虹とこれまでの物語を通しての昴が一歩成長したというのも表現しております(それと原典のアギトのフォーム数と合わせて七つ目のフォームという意味合いもあります)。単なる偶然ですがだからこそそこに運命を感じてレインボーフォームを採用したのです。
ちなみに没案としてコミック三巻の輝の夢の中で出てきた王の牙(ダンデライオン)が本当にあって・・・というのも考えていました(笑)。

多少ブレたこともありましたが最後までこの作品を書き切ったことは私にとって大きな変化をもたらしたと自負しております。

それでは最後にこの作品を最後まで見てくださった読者の皆様への感謝の言葉で城下町のAGITΩの幕引きといきましょう。


いつか別の作品を書いた時にお会いしましょう!!
ご愛読ありがとうございました!!!!

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