それではどうぞ!
お正月の櫻田家にて、王家の子らは総一郎に呼ばれリビングに集合していた。突然集められたのには理由があった。
「今からテレビ出演!?それも前みたいなゲームをやるってどういうことだよ親父?」
「国王候補選挙まで後僅か、ここで改めてお前達のことを国民に知ってもらおうと勝負の場を設けることにしたんだ」
総一郎が語るゲームの内容は以下の通りである。
ある鷹匠のペットが逃げてしまったのでそれを捕まえるというものだ。渡された写真には依頼人と鷹が写っている。
前回と違う点として今回は一組3,4人のチームを組んで行動する。
勝利したチームのメンバーはその後テレビにて自身をPRする権利が与えられる。
必要無い、したくない場合はその権利を他の人に譲渡することも可能(ただし譲渡された者が他の者に譲渡することはできない。PR権のたらい回しを防ぐ為である)。
「今夜は新年会もあるのでリミットは日没まで、最初に目標を保護したチームの優勝とする。ここまでで質問はあるか?」
特に誰も質問をしないのでそのまま総一郎は話を続ける。
「重要な事前情報として、
1つ、この一枚の写真。
2つ、目標はこの町から出て行かないだろうということ。
そして3つ・・・名前は『ミケ』だそうだ」
(重要って実質二つじゃ・・・)
溜めた割にはどうでもいい情報だと奏が心の中で突っ込むがその間にくじ引きが始まりチームが決まったことにより早速会場である街中まで移動することとなった。
―チームA(葵、光、栞、昴)
「はぁ・・・」
「光、どうかしたの?」
「いや別に・・・」
光は溜め息を吐いていた。
(葵ちゃんも栞も勝負事には消極的なタイプだしやる気なさそうだな~・・・どうせなら・・・)
「姉貴のチームに入りたかったな~、て思ってるだろ?」
「そう・・・カナちゃんチームが優勝候補っぽいし・・・ってすーちゃん!?」
光は自分の考えていたことを読まれ思わず素っ頓狂な声を上げた。
「ふっふっふっ・・・だがこの俺様が居るからにはこのチームの勝利は確実・・・何故って?それは俺が今から超格好よく鷹を捕えるだからな!」
「・・・はぁ・・・」
「おいおいおい!何でさっきよりも深く溜め息してんだよ!?」
「だって・・・ねぇ・・・」
そう言い光はビルの巨大スクリーンを見上げる。画面には自分達の動きが中継されておりそれぞれのチーム分けも表示されていた。
チームA(葵様、光様、栞様、昴様)
チームB(修様、奏様、輝様)
チームC(茜様、岬様、遥様)
と言った具合に。
「この並びだとすーちゃん完全に余り物だよ」
「あ、余り物ぉっ!?」
他が年齢順に並んでいるのに何故か自分だけその法則が適用されていない事実に昴は強いショックを受け石化した。
―チームB(修、奏、輝)
「三人で力を合わせて頑張りましょう~」
完全に外面モードで語り掛ける奏に修は問い掛ける。
「三人でって言うが、俺は瞬間移動、輝には怪力があるがお前はどうするんだ?鷹レーダーでも生成してくれるのか?」
「そんなの無駄遣・・・オホン!流石に卑怯ですよ兄様っ」
口で言ったのは建て前である、強引な勝ち方では支持率を落としてしまうというのが奏の本音だ。それを踏まえた上でボソっと奏に聞こえないように修は呟いた。
「役立たずじゃん・・・」
「何か言いましたか『お兄様』」
「イエナニモ」
奏には聞こえていたようで修の額に一筋の汗が流れる。隣にいた輝も奏から発せられた黒いオーラのようなものを感じ取って涙目になる。
「鷹捕獲よりも邪魔も・・・オホン!強敵茜の排除に専念しましょう~」
「「ハイワカリマシタ」」
こうして奏という絶対支配者の指示の元、チームBは動き出した。
―チームC(茜、岬、遥)
「あか姉やる気ないでしょ」
「うん・・・」
「なんで!」
「なんでって私の苦手分野分かるでしょ!今の時点でカメラに写ってるというのに何でまた自分からカメラの前に立たなきゃいけないの!?」
力説する茜に遥はまた別の見方を提示した。
「姉さん。僕思うんだけど譲渡ルールはそんな無気力勝負を避けるためにあるんだと思う」
「え?どうゆうこと?」
「PR権がいらないなら他の誰かに譲ればいいし、けど逆に負けたら・・・他の誰かから押し付けられる可能性がある」
「っ!?押し付けてきそうなのがいる!」
脳裏に自身の兄のにやけ顔が浮かび、茜は安全にPR権を誰かに押し付ける為に行動を開始した。
その頃、チームAは・・・
「どうせ俺なんてただの余り物ですよ~だ・・・」
いじけモードと化した昴が路地裏で膝を抱えて座り込んでいた。その後ろには栞が立っていて隅っこで縮こまる昴の背を優しく撫でた。
「大丈夫、お兄様は余り物じゃないよ。お兄様もちゃんとした私達チームの一員だよ」
「うぅ・・・栞ぃ・・・お前の優しさが五臓六腑に染み渡るぜ・・・」
そう言い泣きながら栞に抱き着く昴。兄貴の面子形無しである。
こんなんじゃこの勝負は負け確定だとまた溜め息を漏らそうとしていた光に葵が声を掛けた。
「ねぇ光、それに皆。やっぱり勝ちたい?」
その問いに光と昴、それに珍しく栞も首を縦に振った。栞の場合は落ち込んでいる光と昴に元気になってもらいたいという気持ちもあるのだろう。
「それじゃあお姉ちゃんが皆に気付いたことを今から話すね」
そう言い葵は例の写真を見せる。
「私達が探しているミケってこの子のことだと思うんだ」
葵が指を指したのは鷹匠の腕に止まっている鷹ではなく写真の端にいた猫であった。
「捕まえるのは鷹だっては言われていない。それにお父さんが教えてくれた3つ目の情報『名前はミケ』というのもヒントになっているんじゃないかな」
「おぉ~。これなら皆が鷹探しに夢中になってる隙に猫を探せば勝利間違いなしだね」
「ふふっ、そうね。栞、あなた能力で猫さんがいっぱい居そうな場所を探せるかな」
「任せてお姉様」
栞は物体会話を発動しあらゆるものから猫がたくさん居る場所を聞き出し一同はそこに向かうことにした。
「それにして姉ちゃんはすごいよな~。この問題の引っ掛けに気付くなんてさ!」
「そんなことないわよ。ただちょっと皆より早く気付いただけで・・・」
「いやいやいや!スクリーン見て見ろよ。あいつらまだ鷹を追っかけまわしてやがるぜ。あ、兄貴の奴間違って茜のスカートだけ取って瞬間移動してる」
スクリーンには少年漫画のような能力バトルを繰り広げるチームBとCの姿が写っている。この様子だと当分は本来のターゲットに気付く事はないだろう。
「とにかく俺達はこのまま勝利に向かってまっしぐらだぜ!!」
上機嫌に鼻歌を歌う昴だったがその表情は次の瞬間覆されることになる。
―おや、どうやらチームAに何かしらの変化が起きたようです。チームAを撮影していたドローンの映像を五分ほど前まで戻してみましょう
昴の鼻歌によって何か変化を感じ取ったゲームの実況がビルの大スクリーンにチームAの数分前に映像を写す。当然葵が目標が猫だということを明かす場面だ。
―おおっと!ここで新展開です!葵様はこのゲームの真のターゲットにお気付きになったご様子!!ここに来てチームAの勝利が濃厚か!
熱く語る実況と対照的に昴と光は青ざめる。何故ならあのスクリーンは自分達以外にも見えているので・・・
『『な、なんだって~!?』』
このように葵達の行動は他のチームに筒抜けになってしまったのだ。
「どうりで二羽の鷹の確率を計算しても両方共0%だったわけだ・・・」
「やられたわ・・・姉さんチームはノーマークで問題無いとたかを括っていたけれどそれが仇になるとは・・・」
「たかだけに、ププッ」
「何か言いましたか『お兄様』」
「イエナニモ」
「とにかく、すぐに猫探しに移行しないと負けちゃうよ!」
様々な反応を見せながらチームBとCは猫を探す為に散り散りとなった。
「すーちゃんのバカぁ~!すーちゃんが変な鼻歌を歌ってたせいで皆に気付かれちゃったじゃないの~!」
折角の有利な状況を台無しされたので光は昴の胸をポカポカ叩き出した。
「ご、ごめ~ん!でも責任取ってミケは俺が必ず捕まえるからそれで許してくれ!」
「負けたらあたしのCD百枚買ってもらうからね!」
なんとか光の攻撃から離れた昴はミケを探すべく走り出した。
(とにかく他のチームよりも先にミケを見つけないと・・・)
昴は猛ダッシュで街中を走り抜けている。ちょうど角を曲がろうとしたその時、突然前からニュッと何者かの手が自分を掴もうとしてきたので反射的に避けると目の前には修が立っていた。
「惜しいな、後もうちょっとで触れたんだけどな」
修は自分自身と触れた者を瞬間移動することができる。その力を使えば昴を一瞬の内に地球の裏側まで飛ばすことだって造作もないのである。
「よぉ兄貴。姉貴の差し金で俺を妨害しに来たのか?」
「そう言うなよ、見方を変えればいいのだ弟よ。今から俺がお前に南の島日帰り旅行に連れてってやる」
「いいねぇそれ。俺達の勝利記念に是非とも行ってみたな」
「まぁそう言うな。お望みなら今すぐ連れてってやるよ」
修が再び瞬間移動を行使し、櫻田家の長兄次兄対決の火ぶたが切って落とされた。
修は能力を駆使して様々な方向から触れようと襲い掛かるが昴はそれを予期して巧みに交わし続ける。一見互角の戦いに見えるようだが実際は違う。修は昴に触れれば後は何処へでもテレポートすれば勝ちだが昴の場合勝利条件が無いのだ。ただ触られまいと避け続ける昴、だがそれもいずれ限界が来るもので・・・
「しまった!」
うっかりバランスを崩してしまい昴はそれを整えるのに大きな隙を生じさせてしまった。当然それを見逃す修ではない。
「悪く思うなよ」
既にコートを掴まれている。後は修が瞬間移動を使えば彼の勝利となる。
だが昴はまだ諦めていなかった。
「あー!あんなところに浴衣姿の佐藤さんがー!」
「えっ、どこどこ!?」
昴によって能力の精度が落ちた修はそのままコートだけを連れて瞬間移動し昴の前から消えた。では修はどこへテレポートしたのだろうか?
「しゅ、修君!?」
修が聞き覚えのある声に振り向くとそこには浴衣姿の佐藤花と花の友人の一条瞳が目の前にいた。恐らく初詣の帰り道なのであろう。
「あ、明けましておめでとうございます」
「こ、こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします・・・」
とりあえず新年の挨拶を交わす二人。
「というわけで、浴衣姿が想像よりも可愛かったので結婚してくだ・・・フゴォッ!?」
「いきなり出てきた上にうちの花になんつうこと口走るのよこの変態王子!」
[櫻田修 反射的に花にプロポーズし反射的に瞳からラリアットを受け脱落]
「とりあえず邪魔者を一人排除できたか」
コートを犠牲にギリギリで逆転勝利を収めた昴は再びミケ捜索の為に走り出す。
だが次の刺客が行く手を阻んだ。
「ちょっと待ったー!ここから先へ行きたければ私達に勝ってからだよすー兄!」
「出たな分身戦隊ミサレンジャー!」
『『何そのネーミングセンス!?』』
前方に岬が現れたかと思えば瞬く間に彼女の分身達が昴の周りを囲み始めた。
オホンと咳払いし岬達はジリジリと昴に詰め寄っていく。包囲網を突破するのは難しそうだ。
「すー兄にはこのまま私達が勝つまで足止めさせてもらうよ!」
「珍しく張り切っちゃって、さては遥に良い所を見せたいんだな」
岬は突然顔を真っ赤にして一歩下がった。
「なななな何を急にそんな事を!?こここ根拠はどこにあるというの!?」
「(ホント分かりやすい奴だなこいつ・・・)お前アレだろ。今まで特に目立った活躍無かったから見せ場作ろうと躍起になってるんだろ?仕方ないよな、鷹探しの時は遥の確率予知で居場所を割り出して茜が重力操作でそこまで飛んで行けばいいからお前の入る余地無かったもんな」
「そうそう遥ってばなんかいつもあか姉を贔屓するし、遥のことを一番分かってるのはこのわた・・・って何言わすのよ!?」
「いや、ほとんど自分から話してるよね?」
「と・に・か・く!私が遥の事を好きというのは真っ赤な誤解だから!」
「いや、あながち間違いでもないだろ。だってお前が小1ぐらいの時言ってた将来の夢って確か遥のおよ・・・」
「シャラープっ!!そんな事この場で言ってたらただじゃ置かないよ!」
「わかったよ黙っておくよ。そういえば遥で思い出したけど輝が今着てる服おさがりだよな」
「わかればよろし・・・えっ!?」
昴の唐突な情報に岬達は食い付き彼に詰め寄った。
「え?どゆこと!?」
「そのまんまの意味だよ。輝が今着てる服ってあれおさがりだよ」
「え?でもあんな服あったけ?記憶に無いんだけど・・・」
「そりゃぁ小さい頃だったから曖昧になってるんだろ。近くで見れば思い出すんじゃないの?」
「ちょっと確認してくる!」
ドドド!と擬音が付きそうな勢いで走り去っていくミサレンジャーの背中を昴は見送っていた。
(・・・まぁ、遥の、とは言ってないけどな)
「ミケは一体どこに・・・」
その頃輝は奏の指示によりミケを捜索していたがドドド!とものすごい速度で迫ってくる姉と分身達を見て仰天した。
「輝お願い!その服遥のおさがりかどうかちょっとだけ確かめさせてー!」
「姉上一体何を・・・ってのわ~!?」
先程まで活躍出来なかったジレンマ、遥が何かと肩を持つ茜への嫉妬、さらに心の内に隠していたと思っていたことを昴に見透かされていたという羞恥心、等が重なり岬のテンションはおかしなことになってしまいそのまま輝に襲い掛かった。
[櫻田輝 突如奇襲を仕掛けてきた分身戦隊ミサレンジャーにもみくちゃにされ脱落]
「今度こそ!」
第二の刺客を頭脳プレー(?)で退け、昴は公園の噴水広場の付近に足を運んでいたがまたもや後ろから自分を狙う気配を感じ取り転がりながらそれを避ける。
「あんたもしつこい奴だな、あに・・・」
「ハジメマシテ、ワタクシハオテツダイアンドロイド『SHU・MK-Ⅱ』デゴザイマス」
「いや誰だお前!?」
修かと思って振り返れば額にMK-Ⅱと記された謎のアンドロイドが立っており昴は驚愕した。
「ワタクシハオテツダ・・・」
「いやそれはさっき聞いた!お前は何だって聞いてるの!ってか何だよMK-Ⅱって!?MK-Ⅰどこ行ったんだよ!?」
「センダイハジュンショクシマシタ」
「マジかよハードな過去背負ってんなお前」
「トイウワケデカナデサマノメイニヨリアナタヲコウソクサセテイタダキマス」
「なんつうもん作ってんだよ姉貴は!?ってかそのカタコト読みづらいからやめろ!お前本当は普通に喋れんだろ!?」
「これは所謂キャラ作りです」
「ホントに出来るのかよ!?」
昴が驚いている内にSHU・MK-Ⅱは彼に抱き着き拘束する。
「おい止めろ!兄貴の顔で抱き着くな気色悪い!」
「ご安心を、私そっちの気はございませんので」
「そっちの気とか言ってくる時点で安心できねぇんだけど!?」
どうにかSHU・MK-Ⅱを引き離そうと力を込める意外にもSHUの力も強く昴は完全にその場で固定されてしまった。
「おらぁ!離れろ!このメカ修!」
肘打ちを決めながら叫んでいると背後からドドド!と擬音が付きそうな勢いと共に奴らが迫ってきた。恐る恐る振り向くと予想通りそいつらは先程撒いた筈の分身戦隊ミサレンジャーだ。
「すー兄!あんたの言う通り輝の服調べて見たけど襟元のタグに『すばる』って書いてあったんだけど!騙したね!」
「やっぱバレたか~・・・」
「乙女の恋心を踏み躙った報いを受けるがいいわ!」
「いやその理屈はおかしくね!?」
しかしミサレンジャーは聞く耳持たず空高く飛び上がって必殺ミサキックを昴と彼を掴んでいるSHU・MK-Ⅱに向けて放ったのだ。
『『成敗!』』
「のげぇ~!?」
謎の悲鳴と共に昴とSHU・MK-Ⅱはそのまま吹っ飛ばされ噴水の中へと落っこちて行った。
「岬、そっちはどう?見つかった?」
丁度その時、別行動していた。遥が岬の前に現れた。最悪のタイミングで。
「さっき計算してみたけれどどうやらミケのいる場所は・・・ってどうしたの・・・何で急に囲んでくるの・・・?」
「・・・・・」
遥は無言のまま取り囲んでくるミサレンジャーに危機感を抱く。そして分身の誰かがこう呟いた。
「もうこの際遥本人から実力行使でよくない?」
先程までの状態に加え昴に騙された怒りも合わさって岬のテンションはフルスロットル強いるため止める者も無い。迷わずミサレンジャーは遥へアタックする。
「遥ぁ!おさがりよこせぇ!!」
「いや何があったのさ岬!?ってうわぁ~!?」
[櫻田遥 岬のフレンドリーファイアにより脱落」
[櫻田岬 我に返り自分がした行いを思い出して悶絶し脱落]
その頃昴は目を覚まし噴水から這い上がっていた。
「ふぅ~危ない所だった・・・アレ、あいつは?」
SHU・MK-Ⅱが急に姿を消したことを不思議に思い昴は辺りを見渡すと噴水に沈んでいくSHU・MK-Ⅱを発見した。
「おい大丈夫か!?お前まさか防水加工されないんじゃ・・・」
敵とはいえ兄と同じ顔を持つ者を見捨てることができず昴は手の伸ばす。それに対しSHU・MK-Ⅱは親指を突き立てた。
(心配無いってことか?)
しかしSHU・MK-Ⅱは上がってくる様子は無くそのまま沈んでいき最後には突き立てた親指だけになりそして水の中へと消えていった。その姿はとあるマッチョな州知事が主演のあの映画の感動のラストそのものであった。
「いや泣けるかよ!お前それがやりたかっただけじゃねぇか!?ってかこの噴水底深っ!?」
SHU・MK-Ⅱ捨て身のモノマネに突っ込む昴。
そんな昴の周りをフードを被った謎の集団が囲み出す。
「クックック、MK-Ⅱガヤラレタヨウダナ」
「ダガヤツハワレワレノナカデモサイジャク・・・」
「何だお前ら?」
「ヤツノナカマサ。ロットナンバーテキニハオトウトニナルガナ」
「まさかのメカ櫻田兄弟!?」
ソレハドウカナ?と謎の集団は一斉にフードを外し昴はげんなりとした顔になる。
「オマエノツギノアイテハコノSHU・MK-Ⅲダ!」
「マテ、MK-Ⅳガサキダ!」
「チガウ、コイツヲタオスノハコノMK-Ⅴダ!」
「コノオレMK-Ⅵガオマエヲジコクヘトオクッテヤル!」
「何で全員修顔なんだよ!?気持ち悪っ!!」
とにかく昴はメカ修軍団から必死で逃げることにした。
「ふっふっふ、逃げ惑うがいいわ昴」
その頃奏は影に潜みメカ修軍団をコントローラーを使って操作し昴を追い詰めていた。
何故執拗に昴を狙ったのにかは理由がある。
(この機に乗じて教えてやるわ。人のプライベートを話せばどうなるかってことをね!)
葵の誕生日以降どういうわけが周りの自分を見る目が何とも言えない表情であり岬に問い詰めて見たら昴がボルシチの件を暴露していたことが判明したのである。
その為密かな夜の楽しみをバラされた恨みを晴らそうと奏は昴に集中攻撃していたのである。
(3号機から6号機に昴を追いかけさせ残りの7号機から12号機をミケ捜索に回せばこの勝負勝ったも同然!こんな完璧な作戦を思いつく自分が恐ろしいわね!)
色々と突っ込み所があるがとにかく奏は勝ち誇っていた。
そんな彼女の背名をポンと何者かが触る。
奏が振り返るとそこには満面の笑みを浮かべた光がいた。
「油断大敵だよ奏ちゃん♪」
「げっ!?」
次の瞬間生命操作が発動し奏は4歳前後まで変化させられた。
「あんた・・・こんなことしてただで済むと思ってますの・・・?」
「はいはい文句は後で聞くから。ほら早く着替えないとまずいんじゃないの?服ダブダブだよ」
「ムキィー!覚えてやがれですわー!」
[櫻田奏 体も口調も4歳前後に戻され脱落]
[櫻田光 折角の姉をイジるチャンスを逃さない為戦線離脱]
奏の脱落によりメカ修軍団は機能停止し自由の身となった昴は遂にミケらしき猫を発見する。
「よしっ、これで・・・」
ミケを捕獲するべく手を伸ばす昴だったが突然茜が頭上から急降下してきたので慌てて転がりながら回避行動を取った。
「昴・・・悪いけどミケはあんたに渡さないよ!」
堂々と仁王立ちして立ちはだかる茜に昴は違和感を覚える。カメラの目線を嫌う彼女が何故ここまで堂々としていられるのだろうか?さらに言うと茜は数時間前修の妨害に遭い全国ネットでパンツを晒す醜態を見せているのでとてもじゃないが動ける精神状態では無い筈である。
「おいどうした?カメラの視線が完全にお前に向けられてるぞ」
「ウフフ、そうだね、カメラがあんなにいっぱい、ウヒヒヒ、ウヘヘヘ・・・」
(こいつ!?長時間カメラの視線に晒され続けたせいで感覚麻痺を起してやがるのか!)
今の彼女にとってはカメラの視線も軽い快楽に感じているであろう。そうとしか思えない程茜の瞳は完全に危ない目になっている。
「昴・・・そういえばあんたにはプリンの恨みがあったよね・・・」
「いやそれもう前に言ったよね!?いつまで引きずってんの!?」
聞く耳持たず茜は重力操作を応用した衝撃波を昴に向けてブッ放した。
昴は難なく避けるが茜はすで次の衝撃波の準備を整えている。
「食べ物の恨みは一生!その報いも永遠と受け続けるんだよ!」
「ここにきてラスボス登場かよ・・・ああもう分かった!相手になってやる!」
暴走状態と化した茜を説得不能と判断した昴は茜に対抗するべくファイティングポーズを取る。
「「ほあちゃー!」」
意味不明な奇声と共に昴VS茜、因縁の双子対決が始まった・・・
かに思えたその時だ。
「にゃ~」
「あら?」
通りかかっていた葵の足元に例のミケがすり寄ってきた。
隣りに居た栞が物体会話を使用し猫の気持ちを読み取った。
「お姉様に一目惚れしてるみたい」
「まぁ・・・」
葵が抱き抱えるとミケは嫌がる事なく葵に抱かれたことでゲーム終了のブザーが鳴った。
―試合終了~!勝利したのは葵様、光様、栞様、昴様チームです!
「・・・やっとカメラから解放される・・・」
ブザーが鳴り終わったころには茜はゲームが終わった脱力感でその場にへたり込んでいた。
「なんか締まらないけど勝ったからこれ良いのかな?」
「良いわけないだろ」
突然後ろから声が聞こえ振り向くとそこには修、遥、輝の三人が立っていた。
三人共ボロボロでいつもと全く違う雰囲気を醸し出し昴に迫ってくる。
「や、やぁ皆さん。ど、どうしたのかなそんなに睨んで?」
「自分の胸に聞いてみたらどうだ・・・」
「僕達兄さんが原因で散々な目に遭ったんだけど・・・」
「兄上、お覚悟を・・・」
「ちょ、ちょっと待って!確かに皆には悪いことしたなぁ~って思ってるけどさ、ほらそこは正月だし大目に見てくれても・・・いいわけないよね・・・」
既に三人に取り囲まれ昴は己の運命を察した。
「辞世の句を聞いておこうか」
「・・・命だけはお助けくだされ」
『『断る!』』
[櫻田昴 兄弟達の逆襲を喰らい
櫻田城
「イテテ、あいつら本気で叩きやがって・・・」
頭に浮かぶ三段重ねのタンコブを摩りながら昴は新年会の様子を見渡していた。
西国の王子が例の如く茜に求婚し修がそれを妨害しいがみ合っている。いつもの事なので茜はそれをスルーし他の国の王女と談笑していた。葵や岬達も他の国の王族と他愛もない話をしているのを見て昴は思った。
「俺達ってあんまり王族らしくないなって思っていたけど案外どこも一緒なんだな」
「ま、中には本音と建て前を使い分けてる輩もいるんでしょうけど」
「そんな暗いこと言うなよ。てか姉貴・・・」
「何ですの?私の顔に何か付いていまして?」
隣りに立っているのは小さな奏である。自分と同じく離れた場所にいるのは周りの者を驚かせない為であろうか。
「光の能力で体が4歳相当になったのは分かるけど何で口調までその頃に戻ってんだ?」
「し、知りませんわ!何故か外れませんのよ!」
「プププ、ビデオカメラ持って来ればよかった」
「やって見なさい、そんな事をすればただですみません事よ!」
「いやそんな小っちゃい姿で言われてもな・・・飴ちゃんあげようか?」
「ムキィー!後で覚えてやがれですわー!」
子ども扱いされ捨て台詞を置いて走り去っていく奏に入れ替わるようにメイドの曽和が昴の元へと現れる。
一体何のようだと思っていると先に曽和が口を開いてきた。
「昴様、陛下がお呼びです。至急謁見の間へお急ぎください」
謁見の間
曽和に案内され謁見の間にいくとそこには総一郎が待っていた。総一郎は昴を見るやいつものおどけた笑顔で話しかけてくる。
「よっ、昴。昼間のゲームは楽しめたか?」
「あれのどこに楽しめる要素があるんだよ親父。ってか呼んだのってその事じゃないよなわざわざ人の居ない場所まで来させたんだし」
「そうだ。お前を呼んだのには伝えなければならないことがあるからだ」
すぐに総一郎は真剣な表情になり懐から1枚の写真を昴に渡す。
渡された写真を見て昴は目を見開いた。正確には写真に写っている男にだ。
三十代後半ぐらいの顔つきに父に匹敵する程の背丈、その男の腹の内を体現するかのような黒一色に統一された服装、そしてなにより男の腰についている鈍い光を放つ物体。
昴はその男を覚えている。忘れる筈も無い。自分と家族の間を引き裂こうとしたあの男の事を。
昴は無意識の内に写真に写る男の名を呟いた。
「樹次郎」
昴は写真の握る手を強めていく。あの時樹が自分達にした数々の悪事が頭の中でフラッシュバックしていく。
「今日の昼ごろ、監視ドローンが取った写真だ。どうやら町はずれの稼働停止していた発電所を新たな隠れ家としてこの町に潜伏し続けていたらしい」
「あの野郎生きていたのか・・・!」
樹はあの時確かに爆発の中へと消えていった筈、何故彼が生きていたのかという疑問が過るよりも先にあの男が生き延びてこの町に潜んでいたことによる憤りが昴の脳内を支配する。
「すぐにでも機動隊を動員させ樹次郎を拘束する手筈は整えているが奴と同じアギトであるお前の意見を聞きたいと思ってな」
「多分無理だと思うぜ。あいつはむかつく野郎だが強さは本物だ、並の相手なら返り討ちにされちまう。だから・・・」
その瞬間昴は手の中の写真を握り潰した。
「あいつは俺が倒す」
その目には迷い無く樹への激しい敵意が込められていた。
その頃、樹は
「すまないな、君の無念を晴らすには少し時間がかかりそうだ・・・」
樹は薄暗い発電所の地下で写真の人物に語り掛けていた。
その表情には冷酷さも激情も無く、ただ純粋に写真の人物への詫びの気持ちが浮かんでいる。
「でも安心して欲しい。君ができなかったことを私は必ず成し遂げて見せる・・・世界中のいる君と同じアギトの為にも・・・」
樹が次の言葉を紡ぐよりも先に彼の感覚が昴の接近を捕えた。その瞬間樹の表情がかつてのように無表情になった。
「・・・この場所ともお別れですか・・・名残惜しいですが見つかってしまっては意味が無い・・・」
棒読みのような口調で立ち上がり樹は腰からアンクポイントを発現させ戦闘準備を整える。
「昴様、今度こそ決着を着けましょうか・・・」
闇の中で樹は呟いた。
彼が語り掛けていた人物は何者なのかそれを問う者は今この場には存在しなかった。
恐らく本編最後になるであろうギャグ回です。
次回からはエルロードとの決戦と見せかけて樹との真の決着をつける話が続きます。
ですが3部ほど暗くならないのでご安心を。
写真の人物は一体何者なのでしょうか?
A、樹の弟
B、樹の息子
C まさかの幼少期の昴
D その辺で彼が盗撮したJY
正解した方には豪華プレゼントが・・・ありませんので過度な期待をせずお待ちください。
なお、解答が選択肢の中にあるとは限らないのでご了承ください。