城下町のAGITΩ   作:オエージ

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姉を救う為にいかなる困難を乗り越えると決心した昴。
その道を彼の親友、秋原斗真が阻む。
再開された激闘の末に昴は遂に・・・

それでは本編をどうぞ・・・


第34話 再び激突!エクシードギルスVS???

城下町の監視カメラを管理する警備センターは現在、大混乱に陥っていた。

 

「これは一体どういうことだ・・・?」

 

警備センターの責任者兼国王の補佐を務める楠は自分が見てる光景に目を疑った。

町のあらゆる場所が映されているはずの監視カメラのモニターが全て黒で統一されているのだ。楠の部下が楠に事態を説明する。

 

「なんらかの妨害電波を受け町中の監視カメラが機能停止にされています!」

 

「今までも一部の監視カメラに異常が起きる事態は多々あったがこれほど大規模な例は始めてだな・・・それもよりによって昴様のお命が危うい時期に」

 

「しかし、ここまで規模は大きく長時間続くのであれば逆探知し、電波を発している犯人を割り出せるかもしれません」

 

「よし、急いでくれ!そして一分一秒でも早く監視カメラを復旧させるのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

監視カメラが機能停止した夜の町中を昴はガードチェイサーに乗って走り回っていた。目的はただ一つ、葵が幽閉されている場所を見つけ出しそこに待ち構えている樹を倒してこの事件を終わらせる為だ。

 

(とはいえ何も手掛かり無しじゃきついな・・・)

 

とりあえず辺りに怪しいものはないか探って入るが一向にヒントになるものは見つからない。

 

別の場所に移動しようと昴はガードチェイサーのバックミラーに見覚えのあるバイクが写っているのに気付く。斗真のバイクだ。当然彼も乗っており自分の後ろをついてきていた。

白井はあの時、斗真と弥生は樹の流した嘘を信じきっていると言ってた。ということは自分を病院に連れ戻すために追っているのだろうか。

 

(冗談じゃねぇ!今病院に戻されたら振出しに戻ることになっちまう!悪いがここはなんとしても逃げ切る!)

 

昴はアクセルを回しガードチェイサーを加速させる同時に斗真もバイクのアクセルを回し加速する。

しかし、G3システム専用の高速バイクであるガードチェイサーに対し、斗真のバイクは市販のバイクであるため速度には差があり距離を引き離していく。

 

(これでなんとか・・・)

 

安堵する昴だが彼は大事な事を見落としていた。

 

「変身!」

 

声が聞こえバックミラーを覗くとそこにはギルスに変身した斗真が写っていた。

 

「嘘だろオイ!?」

 

ギルスの力によって斗真のバイクはギルスレイダーへと変化して一気にスピードを上げ昴の隣へと追いついてしまう。

 

「昴、よく聞け!お前は今バーニングシンドロームとかいう病の末期症状で死の淵に立っている!だから今すぐにでも病院へ戻れ!」

 

「違うんだ斗真、これは罠だ!お前は騙されているんだ!だから俺の話を聞いてくれ!」

 

昴は必死に弁解するが斗真は病の苦しみによって記憶が混乱状態になっていると勘違いしてしまう。

 

「話なら聞いてやるよ。ただし、それはお前を引っ張ってでも病院に送り届けて手術が終わった後にな!」

 

言い終わるや否やギルスはギルスフィーラーを伸ばしガードチェイサーに巻き付ける。このままではギルスに引っ張られ病院へと逆戻りだ。

 

(畜生・・・何でこうなるんだよ!)

 

ギルスを引き離すには戦うしかないと悟り、腰からオルタリングを出現させる。

 

「変身!」

 

光に包まれ昴はアギトへと変身する。それと同時にガードチェイサーもアギトの力の影響を受け金色に変色しマシントルネイダーへと変化した。

 

(まさかまた戦うことになるなんてな・・・)

 

勘違いという形で再び親友と対決するのに躊躇しながらも昴は先へ急ぐ為にギルスへの応戦を開始する。

 

 

 

 

 

櫻田葵は樹の隠れ家で幽閉され、薄暗い部屋の中で樹に敵意の視線を向ける。

しかし敵意を向けられても樹の無感情な表情と棒読みのような口調は変わらなかった。

 

「そこまで警戒なさらなくても問題ございませんよ葵様、あなたは人質ですがただそれだけです。私は一切あなたに不必要な無礼は決していたしません。目的が済み次第解放してさしあげることを約束致しましょう。こればかりは嘘ではありません。あなたが大人しくここで拘束されていただければですが・・・」

 

葵が気にかけていたことは樹の言った事の中には入ってなかった。

 

「そんなことよりも聞きたいことがあります」

 

「何でしょうか?拘束させていただいている代償としてあなたの質問に嘘偽り無くお答えしましょう・・・」

 

「あなたは昴をどうする気なのですか?彼に何をさせるつもりなのですか?」

 

強い声色で問うと樹は困っているような素振りを見せる。

 

「それにお答えするには少し話が長くなりますね・・・」

 

効かれて欲しく無いことを聞かれたというよりも解答に手間が掛かるといった雰囲気で樹は葵に語り掛ける。

 

「まず初めに質問を質問でお返しすることになってしまうのですが葵様は昴様のことをどうお思いでしょうか?兄弟で唯一能力を得られなかった哀れな弟、と言った具合でしょうか・・・?」

 

「私を見くびらないでください。昴に能力があろうとなかろうと昴は昴、掛け替えの無い大切な家族です!」

 

「そうですか・・・では単刀直入に言いましょう。昴様は能力をお持ちです。それもあなた方ご兄弟のそれとは比べ物にならない程です・・・」

 

樹の発言に葵は驚かなかった。以前から昴が何か隠しているのは察知していたからだ。

 

「そのご様子ですと以前からお気付きになられてたようですね・・・」

 

「それで、昴の能力とはどういうものなのですか?」

 

葵に問われ樹は遂に昴の真実を話し出した。

 

「アギトへと変わっていく力。それが昴様の能力です」

 

「アギト・・・?」

 

今まで聞いたことの無い単語に葵は困惑する。

 

「はい、アギト・・・それは限りなく進化する力。進化の中で昴様は様々な姿に変わられます。今昴様が変身可能な形態は4つ・・・」

 

樹は葵に4つのそれぞれ微妙に違う仮面の戦士の写真を見せる。

 

「これが・・・昴!?」

 

「はい、正確には昴様が変身したアギトですが・・・まずはこの金色一色の姿から説明しましょうか。この形態を私はグランドフォームと名付けました。武器を持たず肉体のみで戦う基本の姿です・・・」

 

樹は他の形態の説明を始める。

 

▼▼▼

 

「うおぉぉぉ!」

 

ギルスとのバイクチェイスを続けるアギトはギルスフィーラーを切断しようとオルタリングの左側を叩いてストームハルバードを取出し青色に変色する。

 

▼▼▼

 

樹は青色のアギトの写真を指さした。

 

「この姿の名はストームフォーム。薙刀を手に風の如く駆け回る形態です・・・」

 

▼▼▼

 

ストームフォームとなったアギトはマシントルネイダーに巻き付いたギルスフィーラーを切断させる。切断されたギルスはギルスクロウを伸ばし接近戦を仕掛ける。

至近距離での打ち合いの末、二人はマシンから飛び上がり真夜中の雑木林の中へと飛び込んだ。

 

(こうなった以上は何としても押し通る!)

 

ストームハルバードを地面に突き立てオルタリングの右側を叩く。するとオルタリングからフレイムセイバーが現れて引き抜き変化した。

 

▼▼▼

 

今度は赤いアギトの写真を葵に見せた。

 

「この赤い姿はフレイムフォーム。炎の刀を振り下し、力の強さに特化した形態・・・」

 

▼▼▼

 

アギトとギルスは木々を挟み、睨み合いながら雑木林を走って行く。

膠着した状況を破ったのはギルスだ。ギルスは両腕のギルスクロウを突き出して突進する。

対するアギトはがっしりと構えギルスを迎撃する準備を取る。

 

「でやぁぁぁぁ!」

 

「ウオォォォォ!」

 

武器がぶつかり合い、僅かにパワーが勝ったアギトが押し勝つ。

 

「悪く思うなよ!」

 

弾かれ無防備な姿を晒すギルスにアギトはフレイムセイバーで峰打ちして無力化させようと試みるがその瞬間、体が凄まじい高温に当てられ膝をついてしまう。

 

(これはあの時と同じ!?)

 

以前の戦いでフレイムフォームに変身した際も謎の高温に襲われたのを思い出す。それと同時にあの時の解決方を思い出しアギトはギルスから離れ地面に刺していたストームハルバードを引き抜いた。

 

アギトの色が一色では無く三色に変わった。

 

▼▼▼

 

「そして最後に紹介するのは・・・」

 

そう言い樹は四枚目の写真を持った。そこに写るアギトの姿は今までの形態の特徴を合わせた姿だ。

 

「トリニティフォーム、三色の力を同時に操る強力な形態ですが・・・」

 

樹は今まで持っていた写真を払い除け、写真は宙を舞う。樹はそれに気を止めることは無い。

 

「私の目的はこの程度のものではありません、私が望むのはその先です・・・」

 

「その・・・先?」

 

「はい、実をいうとアギトにはまだ別の形態が残っているのですよ・・・」

 

▼▼▼

 

トリニティフォームとなったアギトは右手にフレイムセイバーを左手にストームハルバードを構えてギルスと対峙する。

 

「そうか・・・意地でも戻らないつもりなんだな?」

 

「ああ、俺にはやる事がある。その為にはお前とだって戦ってみせる!」

 

「わかった・・・なら俺も出し惜しみ無しだ!!」

 

ギルスは両腕を顔の前でクロスし、唸り始める。

 

「ウウウゥゥゥゥゥゥ・・・・・」

 

ゆっくりと両腕を下した瞬間、口が開きギルスは咆哮する。

 

「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

 

それによってギルスの闘争本能が爆発し、エクシードギルスへと変化を遂げる。

 

「その姿は!?」

 

今まで病院で過ごしていたアギトはギルスの未知の姿に動揺を隠しきれない。

 

「ここから本気でかかってこい、でないと俺はお前を殺しかねない!!」

 

エクシードギルスは手前の木をへし折り、倒れた木を蹴り飛ばす。

アギトは飛んでくる木をフレイムセイバーで一刀両断するがその間にエクシードギルスは飛び上がり踵落としを決めようとする。

 

「吹っ飛ばしてやる!」

 

ストームハルバードから突風を引き起こすことでエクシードギルスを弾こうとするがエクシードギルスは背中から生やしたギルススティンガーを地面に突き刺し飛ばされずにアギトの近くに着地する。

 

「ウガァァァァァァァ!!」

 

エクシードギルスは飛び掛かり全身でアギトを攻撃する。

腕で殴り足で蹴り爪を突き立て牙が襲い触手をしならせ背中の突起すらも武器とするエクシードギルスに二本の武器で対抗するしかないアギトは防戦一方でジリジリと追い詰められていく。

 

「なんて戦い方だ、これじゃまるであの時に逆戻りじゃねぇか!」

 

しかしエクシードギルスは答えずギルススティンガーを横薙ぎに払いアギトはそのまま垂直に吹っ飛び木に激突する。

 

「ぐあぁっ!?」

 

傷みの拍子でストームハルバードを落としてしまい慌てて拾おう駆け寄るがストームハルバードはギルススティンガーによって遠くの彼方へと放り投げられ、アギトも目の前のエクシードギルスの飛び膝蹴りを浴びダウンしてしまう。

さらに不幸な事にストームハルバードが飛んで行ったことによってトリニティフォームが解除されフレイムフォームに戻り、再び高温に身を侵されてしまう。

 

「ぐぐ、まずい・・・」

 

グランドフォームに戻る間の与えずエクシードギルスはアギトを縛り上げ宙に浮かして地面へ何度も叩き付ける。

 

「グゥゥ・・・グオォォォォォォ!」

 

闘争本能に支配されたエクシードギルスに斗真の意志は無く目の前の相手に止めを刺すべくエクシードヒールクロウを繰り出す為に飛び上がる。

 

アギトは既に謎の高温に今まで疲労が重なる中でエクシードギルスの猛攻を受けて虫の息となり飛び上がる影をただ見上げるしか出来なかった。

 

「こんな所で・・・こんな形で・・・俺は・・・姉ちゃんを・・・救えないまま終わってしまうのかよ・・・!」

 

動こうにもギルススティンガーが絡みついている上に高温によって心臓が早く波打ってしまい避ける事が絶望的な状況でもアギトの意志の炎は消えることは無かった。

 

「負けられないんだ・・・俺は、絶対に!!」

 

 

 

 

 

その時、オルタリングに変化が起きた。

赤と白に変色し周りには爪を彷彿させる『ドラゴンズネイル』が浮き上がる。

 

「こ、これは・・・?」

 

その刹那、昴は身体の内側から燃やされるような感覚を憶えた。その火は身体の中で膨張していき今にも外へと溢れんばかりだ。

 

「いや違う・・・感覚じゃ無い、本当に燃えている!?」

 

気付けば足元の雑草が焦げ、巻き付くギルススティンガーにも熱を帯びているではないか。

熱は最高潮に達し、火山が噴火するように昴の体が爆裂する。

その爆風にギルススティンガーは千切れエクシードギルスは空高くへと浮き飛ばされる。

地面へ着地し、エクシードギルスは爆裂によって巻き上げられた粉塵を凝視する。

そして煙から現れた者は・・・

 

▼▼▼

 

「それではお答えしましょうか、アギトの第五の形態を・・・」

 

樹は遂に目的の片鱗を葵に話す。

 

「既に名前は付けております、その形態の名は・・・

 

 

 

 

 

 

 

バーニングフォーム」

 

▼▼▼

 

煙から現れたアギトは燃えていた。いや、正確には炎を纏っていた。

 

頭の赤色のクロスホーンは6つに展開され続け、体はマグマのような表皮に覆われ所々にひびができている。フレイムフォームよりも真っ赤なこの姿を例えるとしたらこうなるだろう。

『燃え盛る豪炎の戦士』と。

 

そう、昴は樹の言うバーニングフォームに覚醒したのだ。

 

エクシードギルスは相手がまだ健在だと知って突進していくがアギトの行動は至ってシンプルだった。

 

 

 

拳を握り殴った。

 

ただそれだけの動作のはずだが殴られたエクシードギルスは砲弾の如く後ろの木々をへし折って吹き飛ばされてしまう。

これがバーニングフォームの真髄、全てを犠牲に極限まで底上げされたパワーはただの攻撃すら相手を一撃で消し去るほどの破壊力を秘めているのだ。

そして犠牲になったのはそれ以外の能力の他にもう一つある。人としての理性だ。

 

「・・・・・」

 

昴の意識を消滅させたアギトは遠くで倒れているギルスを見据える。

 

「グゥ・・・」

 

パンチの直撃でギルスはエクシードギルスの状態を保てなくなり頭部の触角も短くなってしまっている。ギルスはもう気絶して戦闘不能になっていた。

にも関わらずアギトは歩を進める。ギルスにトドメを刺す為に。

だが、突然アギトは頭を抑え悶え始める。意識せず突発的な変身であった為にバーニングフォームを保てず昴の姿に戻る。

 

「俺は一体・・・!?」

 

見渡すと雑木林はバーニングフォームの余波によって火に包まれ木のほとんどが折れている。そして何より奥で倒れ込む無残な姿の親友。

変身中は意識こそ無かったが昴ははっきりと覚えていた。これをやったのは紛れもない自分だと。

 

「俺はどうなってしまったんだ!?」

 

昴は恐怖した。自分の新たな力に、それを抑えきれず惨事を起こした自分の未熟さに・・・

 

 

 

 

 

 

 

その頃、樹は感じ取っていた。昴がバーニングフォームに変身したことに。

 

「遂に目覚めたか、いよいよだ、いよいよ私の計画の第一段階が終了したぞ・・・!」

 

樹は純粋に歓喜の声を上げ、赤く燃えながら水平線から顔を見せる朝日を眺めている。

 

「次は、昴様に現実を知ってもらいましょうか。その力が何を意味するものかを・・・」

 




次に昴の前に立つのは一体何者なのか・・・
次回に続きます。

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