城下町のAGITΩ   作:オエージ

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第28話 さーち☆らいとの行方

ある日光は茜と昴にある事を頼んだ。

 

「「さっちゃんの付き人!?」」

 

「さっちゃんと()()()のね」

 

光の話によれば事務所で二人が夏風邪を引いてしまい、急遽ヘルプが必要になったそうだ。

 

「付き人っていうか身の回りのサポート的な、生命操作(ゴッドハンド)で変身させれば正体も隠せるからやってくれない?」

 

「ああ、いいけど」

 

「私もいいよ。あ、でも私にはジャミンググラスがあるから変身しなくても平気だよ」

 

「「え、それは・・・」」

 

前回も言った通りジャミンググラスはそういう設定なだけでただのメガネに過ぎないのだ。

しかし、茜はその効果を信じきっているのである。

昴と光は茜に聞こえないようヒソヒソ声で相談する。

 

『ど、どうしようこれ・・・』

 

『流石に本当の事は言えないよな。姉ちゃんに何されるかわかんねえし・・・』

 

以前、光は危うく口を滑らせようとして葵と『お話し』することになってしまい、軽いトラウマを植え付けられたのだ。

 

『とにかく何かうまいこと言って誤魔化さないと・・・チクショー姉ちゃんも姉ちゃんだぜ、なんでスカーレットブルームなんか思いついたんだ?』

 

『スカーレットブルーム?・・・それだ!』

 

「でもそれだと茜ちゃんスカーレットブルームだと思われちゃうかもよ」

 

「あーそっかぁ・・・」

 

茜がジャミンググラスをしまい何とか危機を脱した次男と五女。

 

『ナイス光!後でアイス奢ってやるからな!』

 

『チョコバニラでお願いね!』

 

 

 

 

 

そして翌日、光の所属するアイドル事務所にて、プロデューサーの松岡は紗千子に二人を紹介していた。

 

「紗千子、こちらが急遽ヘルプで入ってもらった赤城さま・・・じゃなくて赤城さんと金剛寺さんだ」

 

(どっかで聞いたことあるような苗字だな・・・)

 

現在二人の姿は光の能力で二十歳程になり、茜はジャミンググラスではない普通のメガネを掛けており、昴はいつものボサボサヘア―を整え七三分けに変えているため周りも彼らが王族であることには気付いていないようだ。

 

「あのっ、赤城です!精一杯バックアップしますので何でもいってくださいね!」

 

「すば・・・金剛寺っす。頑張るっす」

 

それぞれの自己紹介を終え、紗千子は礼儀正しくおじぎをして昴に手を差し出す。

 

「米澤紗千子です。よろしくお願いします」

 

「あ、はい、こちらこそ」

 

次は茜が握手する番だが元々紗千子のファンということもあって完全にニヤついている。

 

(あの調子だとすぐバレるぞ・・・)

 

呆れた目で茜を一瞥した後、視線は紗千子に写る。

 

(それにしても近くで見るとホントに可愛いんだな。茜があんなになるのもちょっとはわかるかな)

 

帰ったら茜から紗千子のCDを借りようと考えていると紗千子達が仕事の関係で事務所から出ていき、今この場にいるのは昴と茜と光、そして彼らが王族だということを知る数少ない人物、プロデューサーの松岡の四人になると松岡は昴と茜の前で膝をついた。

 

「お初にお目に掛かります、姫君、若君」

 

「松岡さん、それじゃ皆にバレちゃうから」

 

「でもこればかりは。特に昴様には・・・」

 

「え?俺?」

 

「はい、妹君から話は聞いております。アイドルになるための特訓にお付き合いし、オーディション前日に後押ししてくださったことも」

 

「いや、あれは・・・」

 

あの特訓は全て遥発案であり、自分がしたことと言えば帰り道をおぶったり、一緒にタイヤを引っ掛けて走り込みをたり等で褒められるようなことはしていないと昴は思っており、その趣旨を伝えるも松岡の頭は下がる一方だ。

 

「おぉ・・・何と謙虚で聡明な・・・流石は自らのお力だけで国王選挙を10位から5位に短期間で上り詰めた御方!」

 

「いやそんな5位くらいで大げさな、これから1位になるんですから・・・痛っ!?何でぇ!?」

 

突然、光からひざカックンを受け昴は倒れ込む。

 

「いや、あたしにもこんな態度とられたことなかったから、イラっときて、テヘッ♪」

 

「テヘッ♪じゃねぇよ!何でそこだけ可愛い子アピール!?」

 

「いやアイドルにはこういう積み重ねが大事なのよん♪」

 

「大事なのよん♪じゃねぇよ!キャラ迷走してんじゃねぇか!」

 

なにあともあれ、昴と茜はライブまでの数日間、事務所で働く事になった。

 

 

 

 

五日後、ライブが近づくにつれてレッスンにも熱が入ってきた。

 

「光、私達の知らないところでこんなに頑張っていたんだなぁ」

 

「まぁ俺は特訓時代のレッスンは見てきたけどな。でもあの時と比べると技術も熱意も段違いだぜ」

 

しかし、それでも昴は光に妙な違和感を感じていた。

 

そして熱が入っているのは光だけでなく紗千子も同じだった。

 

「らいと、そこフリ違う」

 

「あ、ゴメン」

 

「そんなだと本番後悔するわよ」

 

そう言ってバックからスポーツドリンクを取り出し飲もうとするが、生憎ペットボトルは空だった。

 

「・・・コンビニに行ってきます」

 

「あ、それなら私が」

 

茜が代わりに買いに行こうとするがそれを紗千子が拒む。

 

「いえ、ついでに外歩きしたいので」

 

「あ、すいません」

 

紗千子が部屋を出て回りは三人だけになった。

 

「さっちゃんナーバスなの?」

 

「プロ意識が高いいんだよ」

 

そう言って光はレッスンを一旦中止し、休憩に入る。

 

「なあ光」

 

「ん?どしたのすーちゃん?」

 

光はスポーツドリンクを飲みながら昴の質問を聞こうとしている。

 

「何か、悩み事でもあるのか?」

 

図星な問いに光は思わずドリンクを吹き出しそうになるのをギリギリで防ぎむせた。

 

「ゲホゴホッ、な、なんでそれを・・・?」

 

「いや、妙に暗い雰囲気だったからもしやと思ってさ」

 

「そうなんだ。すーちゃんはすごいね」

 

「そうだよ。俺はすっげぇすごいんだぜ!」

 

「いや、それほどではないかな~」

 

「ちょっとは夢を見させてくれよ・・・」

 

軽い掛け合いを交わした光は本題に入った。

 

「次でライブで桜庭らいとは卒業するかもしれない」

 

「ええ!?なんで急に!?今この大事な時期に!?」

 

昴は光の言葉に慌てふためくが茜は冷静に分析した。

 

「それってつまり、桜庭らいとをやめて王族だということを公に発表するってこと?」

 

「うん、そうなの」

 

「あ、そういうことか・・・俺は最初から気付いてたぜ」

 

((嘘付け・・・))

 

元々、選挙の支持率向上の為に始めたアイドル活動なので本来なら悩むことはないのだろうが光にはある懸念があった。

 

「確かに最初は遊び半分で始めたことだけどさっちゃんに会って本気でアイドルについて考えるようになった。事務所の人達、応援してくれるファン、そして何より親友でライバルのさっちゃん。皆が居てくれたからこそ今まで『桜庭らいと』は成り立ってきた。そしてそれが今のあたしの生きがい・・・」

 

「それを違う事の糧にしたくないってことか」

 

昴の問いに光は首を縦に振った。

 

「うん、『桜庭らいと』が『桜庭らいと』であり続けることがファンへの誠意だということはわかってる。せめて支えてきてくれた事務所の皆、特にさっちゃんに言うべきなんだろうけど・・・ねえすーちゃん」

 

光はいつぞやのような目で昴を見てこう問い掛けた。

 

 

 

 

「ウソって隠し通せば真実と変わらないのかな?」

 

「っ!?」

 

光の問いに茜は思わず昴の顔を見る。

何故ならこの質問は昴にとってかなり重大な意味を持つことになるのだ。

 

「そうだなぁ・・・」

 

昴は顎に手を当てゆっくりと考え込む。

 

「真実になるかは兎も角、何でもかんでも告白すればいいってもんじゃないのはわかるな」

 

「そうなの?」

 

「そうだ。ひょっとしたらこの事務所に王族に良い感情を抱いていない人だっているかもしれないそんなところを光があたしは王族ですって言ったらこれまで通りの日々が送れると思うか?」

 

「うぅ~ん・・・無理そうかな」

 

「そうだろ、だから中には黙っておいた方が良いことだってある。まあいつかは話さなきゃいけないだろうだけどさ」

 

でもな、と昴は光の見つめて言った。

 

 

 

 

「たとえどんなに周りに隠し事をしてもウソをついても、自分にだけはウソは付きたくないと俺は思う」

 

その一言からしばしの沈黙が訪れる。

 

「・・・難しいね」

 

「そうだよな、ぶっちゃけ俺も良くわかんねえや」

 

そう言って二人はクスクスと笑い出した。

 

しかし、その会話をドアの裏側で聞いていた者が居た。

 

(らいとが王族・・・!?)

 

米澤紗千子である。実は部屋を出た後財布を忘れていたことに気付き、給湯室で済ませたのですぐに部屋に戻ってきたため昴達の会話を聞いてしまっていたのである。もっともドアの裏側からそれとなく聞こえる声を拾っていただけなので光が王族だという程度しかわからなかったのだが。

 

(らいとは王家の者で今までの成功は王の後ろ盾があったから?そして前に聞いてしまった卒業の話は王族であることを公にするために・・・でもということは引退するわけじゃないからこれからも一緒に・・・あーもうわかんない!!)

 

それまでただ独りでアイドル活動をしてきた紗千子にとって桜庭らいとという新たな存在は自分を大きく変えた。

彼女と競い合い高め合う日々を心の底から楽しんでいた紗千子の心は荒波にのまれる小舟のように揺れ動いていた。

 

 

 

 

 

 

二人の心の揺れが収まらないままライブ当日を迎えた。

 

「二人共いろいろあったがよく頑張ってくれた、今日はとびきりの輝きを見せてくれ」

 

「「・・・はい・・・」」

 

二人は下向いており、茜はそれをいい緊張感じゃないと感じ取りなんとか盛り上げようと奮起する。

 

「よーし、ライブが終わったら私がカツ丼奢っちゃうよー!」

 

「あの、重たいものはちょっと・・・」

 

「ラーメンがいい」

 

(あへー・・・)

 

豪快に滑る茜を見て昴は頭を抱える。

 

「(見てらんねぇや・・・)俺、会場の様子を見てきます」

 

そう思い、会場の方へと向かう。

程なくして紗千子も少し用事があると言って楽屋を出て行った。

 

「光・・・」

 

「・・・・・」

 

光は座り込んである事を考えていた。

実は昴にした質問を葵にもしており、その時の彼女の答えを思い出す。

 

『自分にウソをつき続ける以上、やっぱりそれはウソであり続けるだと思う』

 

そう語る葵の目はとても寂しそうな感じであった。

そうしてもう一度昴の言葉を思い出す。

 

『たとえどんなに周りに隠し事をしてもウソをついても、自分にだけはウソは付きたくないと俺は思う』

 

その二つの言葉を改めて受け取り、光は決心した。

 

「大丈夫?」

 

「うん、なんたってアイドルだからね!ファンの皆を楽しませなきゃ!」

 

光の目にもう迷いは消えていた。

 

 

 

 

 

「あの!待ってください!」

 

突然後ろから声を掛けられ昴が振り向くとそこには紗千子が立っていた。

 

「どうかしたんすか、さっちゃんさん?」

 

「あの・・・呼び方を混ぜないでください」

 

「じゃあさっさん」

 

「何でよりによってそっちの方を!?」

 

気を取り直して紗千子は昴に尋ねる。

 

「私、聞いてしまったんです。らいとが光様だってことを。もしかしてあなたは昴様ではないのですか?」

 

「・・・それで、俺に何を尋ねたいんだ?」

 

「らいとの事ですよ。彼女は選挙に利用するためにアイドルになったのですか?彼女にとってのアイドルって何ですか?全部遊びだったんですか!?」

 

「・・・・・」

 

気迫溢れる表情で質問する紗千子に対し昴はひょうひょうとした態度で答える。

 

「わかんねぇな。桜庭らいとの事はさっぱりだわ」

 

「どうして・・・?あなたとらいとは家族じゃないんですか!?」

 

「家族だよ。でも俺が知っているのは『櫻田光』であって『桜庭らいと』のことはあんたが一番わかっているんじゃないか?」

 

「え?」

 

「なあさっちゃん。あんたの目から『桜庭らいと』はどう見えるんだ?今まで一緒に踊って来たんだろ?そこで何を思った?何を感じた?」

 

「それは・・・」

 

「そいつはあんたの言う選挙のためだけに踊っているように思ったか?遊んでいるように歌ってるって感じたか?どうなんだ?」

 

「・・・」

 

そっと優しい手つきで紗千子の肩に手を置いた。

 

「あんたも気付いてるんだろ。答えは最初から胸の中にあるってことを。それでも気になるのなら本人に直接聞くといい」

 

それだけを言って昴は紗千子の前を立ち去り、入れ替わるように桜庭らいとが現れる。

 

「さっちゃん、聞いて欲しいことがあるの」

 

「本番前よ、今じゃなきゃ駄目?」

 

「駄目!だってあたしこのままじゃ最高のライブにできないから」

 

紗千子が立ち止まり聞く準備をとると光は告白を始める。

 

「ずっと隠していたことがあるの」

 

「言おうか悩んだけどやっぱりさっちゃんには知ってもらいたくて」

 

「私の本名は櫻田光。櫻田王家第五王女・・・王族なんだ」

 

紗千子はその告白に驚く様子はない

 

「どうして今まで隠してたの?」

 

「さっちゃんが王族の事どう見ているのかと思うと怖くて・・・」

 

「・・・・・」

 

「あたしがアイドルとして今までやってきた気持ちを誤解されたくなくって・・・!」

 

「ばか」

 

「あだっ!?」

 

紗千子は迷わずらいとの頭をチョップした。

 

「私を見くびらないで。本気かどうかの見極めくらいできます」

 

「王族だかなんだか知らないけど私はずっとそばで『桜庭らいと』を見てきた。あなたが本当は何者であろうと私は『桜庭らいと』を知っている」

 

「さっちゃん・・・」

 

「さあ行こう」

 

紗千子はらいとに手を差し出した。

 

ファン(みんな)が待ってるわ」

 

「・・・うん!」

 

そして二人はライブ会場へと向かった。

 

 

「打ち解けたようだな・・・」

 

「そうね・・・」

 

「茜居たんだ・・・」

 

「酷くない!?」

 

いつの間にか茜が隣に居たことに昴は驚愕を憶えた。

 

「でも、ちょっと光が羨ましいな」

 

「どうしてだ?」

 

「私はいつも王族としてやるべきことばっかりを考えて勝手に自分の将来に制限を設けていたの」

 

「でもおバカな妹だと思っていた光はいつの間にか大人になっていてた」

 

「本当に自分のやりたいことを見つけてそれを貫く意志を持った光が羨ましいな、思ってね」

 

「そうか、でも、きっと見つかるさ。お前が本当にやりたいこと」

 

「あれっ?今日の昴なんか優しい」

 

「俺はいつも優しいだろ」

 

「それは知らなかったぁ~」

 

「そこは知ってるぅ~でいいだろ。ったく何でいつも俺は綺麗に締まれねえんだ・・・?」

 

「昴は締まらないくらいが丁度いいよ。ところで昴は本当にやりたいことってあるの?」

 

「俺か?俺の、本当にやりたいことは・・・」

 

言い終わる前にアンノウンの気配を察知し、駆け出していく。

 

「わりぃ、ちょっと行ってくる!他の連中には腹壊してトイレに立て籠もってるって言っておいてくれ!」

 

昴を見送りながら茜は嘆いた。

 

「・・・昴はまず周りに正直になることからかな」

 

 

 

 

 

昴が駐車場で停めていたバイクに近づくと斗真を発見した。

 

「弥生が既に戦ってるってさ。俺達も早く行こうぜ昴!」

 

「お前、いいのか?ライブを見逃すことになるんだぞ?」

 

「それはかなり惜しいけど。でもあの子が大好きなこの城下町を守るのも桜庭らいと親衛隊長の務めだからな!」

 

(こいつ・・・マイナス方向にレベルアップしてやがる!)

 

流石に口には出さず昴は斗真と並走し、二人で叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

アギトとギルスに姿を変えた二人はアンノウンのいる地下貯水路まで一直線に走って行き先行して戦っていたG3-Xと合流する。

 

「気を付けろ!こいつはかなりの強敵だぞ!」

 

目の前に立つのは青い蟹の姿のアンノウン クラブロード クルスタータ・パレオだ。

 

「アビアビィッ!」

 

パレオを奇声を発しながらこちらへと攻撃を仕掛けてくる。

アギトはカウンター戦法を取るがパレオの強靭な甲羅によって阻まれ逆に押し出されてしまう。

 

「たしかにこいつは骨が折れるぜ・・・だが勝てない相手ではねぇな。こい!焼き蟹にしてやるぜ!」

 

アギトは右腰を叩いてフレイムセイバーを取り出し、フレイムフォームへと変身する。

 

「はぁっ!」

 

アギトは巧みな剣技でパレオの堅い甲羅に次々と傷を作っていく。

パレオも右腕のハサミで応戦しようとするがギルスクロウを出したギルスによってそれを阻まれる。

 

「よし、止めといくか!!」

 

アギトはフレイムセイバーの鍔を展開しセイバースラッシュの構えをとる。

勝負は決した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

フレイムセイバーを振り上げた瞬間、アギトの心臓はドクンッと強く波打ったと思えば胸を抑え苦しみ始める。

 

「うぅ・・・あが・・・(何だこれ?体がとんでもなく熱い!まるで全身が焼き爛れるほどに!!)」

 

アギトの隙を突いてパレオは強烈なパンチをアギトに浴びせ壁へと激突させるがアギトにとっては殴られた痛みよりも増していく体の熱さの方が深刻であった。

 

「がぁっ!?熱い・・・」

 

「昴!?大丈夫か!?」

 

起き上がる様子もなく悶え苦しむアギトを見てG3-Xは彼の元へと駆け寄る。

しかし、アギトはそれどころではなかった。

 

「ぐあああ!」

 

のたうちまわる最中で偶然にも手が左腰に当たりオルタリングからストームハルバードが現れる。

 

(熱が収まった!?)

 

疑問を抱いてる暇もなくストームハルバードを引き抜きトリニティフォームへと変身し、パレオによってギルスが投げ飛ばされると同時にパレオの前に立つ。

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

二刀流の猛攻にはさすがの強靭な甲羅を持つパレオも引き下がる。

そこを狙ってアギトはフレイムセイバーとストームハルバードでパレオの腰を挟み込み上空へと投げ出す。さらにそこには受け身を取って体勢を立て直したギルスが飛び回し蹴りで追撃をしかけてくる。

しかし、パレオはそれを両手で受け止め不敵に笑う。だが受け止められたギルスも笑い返す。

 

「っ!?」

 

「今だ!」

 

ギルスの声に反応して先程まで止まっていたギルスレイダーが独りでに動き出す。ギルスレイダーは生きているバイクでギルスの意志によって自由に動かせるのだ。

 

「そのまま奴をぶっ飛ばせ!」

 

ギルスレイダーは指示通りパレオに体当たりをして吹っ飛ばした。

 

「よし、今度こそ決めるぜ!」

 

「ああ!」

 

マシントルネイダーをスライダーモードへと変化させたアギトはギルスを乗せ上空へと浮上しそこから飛び降りる。落下の勢いを使ってパレオを倒すつもりだ。

しかしパレオの倒されまいと回避行動にでるがそれを見過ごすG3-Xではない。

 

『GS-03、GA-04 アクティブ』

 

「逃がすものか!」

 

GA-04で左腕を拘束し右腕のハサミでそれを切断しようとしたところを一気に近づきGS-03で足を切りつける。足の甲羅を切り裂かれ本体にも刃が通りパレオは絶叫して動けなくなった。

そしてアギトとギルスはパレオの目と鼻の先まで落下する。

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

スライダーモードからのライダーシュートとギルスヒールクロウの同時攻撃『ライダーダブルブレイク』の直撃によりパレオは爆散して消え去った。

 

「勝てたはいいけど、あの時の熱は一体・・・?」

 

アギトの疑問は解消されなかった。彼に起こる災厄が降りかかるまでは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は経ち、

 

「もうすっかり秋ですね」

 

「おう、そうだな」

 

町を歩きながら修と会話している少女の名は佐藤 花。

一見素朴な印象を与える彼女だがなんと修の恋人なのだ。ただし、選挙が終わるまでは交際はお預けではあるが。

 

「もう随分と紅葉しています」

 

「だな・・・」

 

しかし、修と花は相思相愛で二人だけの時間を堪能していた。

 

「いつもこうやって一緒に帰れるなんて夢みたい・・・もしかしたらここにいる櫻田君は幻なんじゃないかって、私、ときどき不安になっちゃたりするんだ・・・」

 

「うっ!おわぁー!?」

 

「あ、ゴメン。幻なんかじゃないよ・・・ね?」

 

花が振り向くとそこにあるはずの修の姿が消えていた。

 

「って、櫻田君!?」

 

突然の櫻田修の消失に動揺する花を影から見つめる者がいた。

 

「・・・始まったか、能力の暴走が・・・」

 

台本を棒読みするかのように淡々と呟く。

 

「そしてアギトの力を持つ王子の覚醒も近い・・・」

 

懐から取り出したのはのたうちまわるアギトの写真だ。

 

「順調だ。全てが私の思い通りに事が運んでいる・・・計画が、復讐が・・・」

 

その人物は路地裏へと足を進めていく。さらに懐から昴の顔写真を取り出した。

 

「櫻田昴。あなたには王になってもらいますよ。ただし、この国の王としてではなく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界に君臨する絶対的王者として・・・!!」

 




唐突ですが今回を持って第二部は終了とさせていただきます。

続く第3部ですが、物語が大きく動き内容もシリアスな雰囲気に変わります。
その為、しばらくの間投稿は中止にし、小説の推敲に徹します。
勝手な判断で申し訳ありませんがどうかご理解いただけるようお願いいたします。

それでは第3部が投稿した際、皆様が城下町のAGITΩのページを開いてくださることを信じて一旦筆を下させてもらいます。

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