城下町のAGITΩ   作:オエージ

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遂にG3-X登場です!!

それではどうぞ!

注:今回の話は過去最長の長さですのでしおりなどの機能を使ってゆっくり閲覧することをお勧めします。


第23話 起動!G3-X

白井邸

 

「自分がした事を理解しているのか?」

 

「・・・・・」

 

「無策で敵に突っ込み、G3を破壊しただけでなく、それを庇った昴にも怪我を負わせたんだぞ」

 

あの後、昴はペルグランデと対決したが弥生を庇った際に受けた肩の傷が原因で思うように動けず更なる追撃を浴び、現在昏睡状態にあるのだ。

しかし、弥生は自分に責任がある事を自覚しながらも白井に反論する。

 

「G3-Xだったら、こんな結果にはならなかった・・・」

 

「なんだと?」

 

「あの時放った攻撃はG3最大クラスの攻撃力を持っていた。だが、結果はこの通りだ。あなたがG3-Xを出し惜しみしなければ奴を倒せたかもしれないんだぞ!」

 

「黙れ!あの時G3-XがいたらAIが暴走してこれ以下の事態になりかねなかったんだぞ!」

 

「私だったらそれも使いこなせた。あなたの杞憂がこの結果をもたらしたんだ!」

 

「あくまでG3-Xが無かったからと言うのか・・・こんな事になるなら六野にG3を着させた方がマシだ!ここから出て行きたまえ!そして二度と私の前に姿を見せるな!!」

 

事実上のG3装着資格剥奪だ。

しかし、弥生は立ち去る前にケースからG3-Xのデータが入ったメモリを奪う。

 

「そちらが造る気がないなら私の手でG3-Xを造り出す!」

 

「何をバカな事を、返せ!」

 

白井は弥生を追い行けようとするが運動不足の彼女が追いつけるわけもなく弥生の姿を見失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

とある空き地

 

弥生と彼女を心配してついてきた六野は現在G3-Xの製作作業に取り組んでいる。

 

いや、取り組んでいるつもりなのだ。

 

バギッ!っと音を立てのこぎりが折れる。

 

「また折れた・・・これで10回目だ・・・」

 

「の、のこぎりの状態が良くなかったからです!」

 

今度は新品ののこぎりを取り出した。

 

「六野さん、ちゃんと抑えてくださいよ・・・」

 

「は、はい・・・」

 

しかし、のこぎりは見事に折れた。

両者に気まずい沈黙が漂い、六野がその沈黙を破った。

 

「弥生ちゃんってもしかして不器用?」

 

「そ、そんなことはないです!」

 

「いや、この状況どうみても不器用しか起こせない状況だよね!?」

 

六野が指を指したのは工具の墓場だ。

 

折れたのこぎりにドライバー、ひん曲がったレンチ、頭が割れたげんのう、そして何故かバラバラになったドリル。

 

「これもう呪われてるレベルの不器用だよ!?」

 

「ち、違います私は不器用では決してありません!もう一度やればそれが証明できるはずです!」

 

「それもう30回は聞いたよ!?」

 

それでも否定したいのか顔が真っ赤になって弥生は壊れた工具を補充するべくホームセンターへと向かって行った。一人になった六野はあたりを見渡し、

 

「ってかこれG3-Xのどの部分を造ってるんだろう?」

 

二人はG3-Xの製作作業をしているつもりだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫻田奏は現在町中を歩き回っていた。昴を探すために、

しかし、どこに行っても姿は見えず、電話しても返事が返ってこない状況であった。

苛立つ心を抑えながらもあの時見た修と昴の会話を整理している。

 

(昴は能力を持っていた。それもあの時の事件がトリガーになって能力に目覚めた)

 

(そして能力を得たことによって昴は何か別の事件に巻き込まれて、その事を一人で抱え込んでいる・・・)

 

(つまりあの時私が起こした事件のせいで昴が辛い思いをしていると言うの・・・)

 

これまで自分は修の借りを返すためだけに生きていた。対等な関係を取り戻すために。

しかし、昴にもその借りがあったのだ。

 

(なのに私はそんな事に気付かずのうのうと昴と普通に接してきた・・・昴が傷を負い続けていることも知らずに・・・!)

 

奏はものすごい嫌悪感に襲われる。あの事件は自分が思っていた以上に家族に影響を与えていのだ。

 

(私はどうすればいいの?あいつにどう償えばいいの?)

 

奏は悩みながら角を曲がると何者かにぶつかってしまう。

その拍子にその人が持っていた荷物が地面に転がっていく。

 

「あ、すいません」

 

「こちらこそ・・・って奏様!?」

 

(ん?この声は?)

 

聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには昴のクラスメイトの四葉弥生が居た。

直接話したことはないが昴や茜、そして一度だけ会ったことのあると言う岬の話から超が付くほどの堅物だとは知っていた。

彼女の落ちた荷物を一瞥する。それは工具だった。しかも大量の。

 

(え?なにこれ?)

 

とりあえず工具を拾い上げ弥生に差す出す。

 

「お手を煩わせてしまい申し訳ございません!」

 

「いえ、困ったときはお互い様ですから」

 

奏はいつもの外面スマイルで対応する。

 

「ところでこんなに工具を集めてどうするのですか?」

 

「これはG・・・じゃなかった、自由研究の工作に使用しようという所存であります!」

 

「(G?)あの、高校に自由研究は無いと思うのですが・・・?」

 

あ、しまった、小声で洩らし、1分程黙りこくった後、

 

「・・・親戚の子の自由研究を手伝おうと思いまして・・・」

 

その時、奏は察した。

 

(この子、嘘が出来ないタイプだ・・・)

 

と、同時にあることが思い浮かぶ。

昴のクラスメイトなら昴の秘密について何か手がかりになることを知っているのではないかと。かつて岬に聞いたことだが彼女は留守中に家まで来ていたという。浅い縁というわけではないだろう。そう思いぎこちない挙動で去ろうとする弥生を止める。

 

「あの、ここで会ったのも何かの縁、ちょっとお茶していきませんか?」

 

弥生の堅物思考にはNOと言う選択肢は無く、そのまま奏に連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

喫茶店

 

奏に連れられるままに弥生は喫茶店に入店する。

二人のテーブルには既にコーヒーが置かれている。

 

「さ、遠慮せず飲んでください」

 

「は、はい・・・」

 

弥生はコーヒーに口をつけるが、

 

(に、苦い・・・!?)

 

真面目でストイックな性格故、こういった店に入ったことのない弥生は初めて飲むコーヒーの味に驚愕する。

 

(皆こんな苦いのを好んで飲んでいるのか!?いや、しかし奏様が進めてくださったものを無碍に扱うわけには・・・)

 

そう思い目を瞑って思い切りコーヒーを飲み干す弥生を見て奏は、

 

(ブラック派なんだ・・・)

 

砂糖を入れながら彼女の嗜好を誤解釈していた。

コーヒーを飲み終え、奏は弥生に質問する。

 

「ところで四葉さん、弟の事なのですが」

 

「昴様のことでしょうか?」

 

「はい、前に妹の岬から聞いたことですが昴を探して家まで来ていたようですね」

 

「そ、その節は申し訳ございませんでした!妹様にご迷惑をお掛けしてしまい・・・」

 

「いえいえ、こちらこそおもてなしが出来ず申し訳ありませんでした」

 

と、ここまでは普通の会話ではあるがここから本題に入る。

 

「所で四葉さん、昴が今どこに居るかご存知ですか?」

 

「す、昴様が・・・ですか?」

 

少し動揺した様子を見せ彼女が昴と何か関わりがあると確信する。

 

「電話を駆けても繋がりませんし、どこに居るか知りませんか」

 

弥生は困惑の表情を見せ、少し考え込んだ後答えた。

 

「昴様は無事です。怪我を負われていますが時間が立てば自然に治癒できる程度のもののようです」

 

この時、弥生の失言を奏は聞き逃さなかった。

 

 

 

 

 

「四葉さん、私は昴が怪我をしていないかとは聞いてませんよ」

 

「えっ?」

 

恐らく嘘が付けない性格上このような噛み合わない解答が出たのだろう。

 

「私が聞いたのは昴がどこに居るか、その事については否定してないのは居場所を知っていると言う解釈をしてもよろしいでしょうか?」

 

「・・・・・っ!?」

 

弥生の顔はみるみる内に蒼白になりそして、喫茶店を抜け出した。

 

「ごっ、ごちそうさまでしたー!!」

 

「へ?ちょっと、四葉さん!?」

 

突然の行動に戸惑いながらもレジで店員にカードを渡して逃げる彼女を追いかけた。

 

 

 

 

 

工事現場付近

 

「はぁはぁ・・・ここまで来れば・・・」

 

彼女は全速力で走りここまで逃げてきた。一息吐くべく自販機に手を伸ばすが、

 

 

 

「何が、ここまで来ればですって・・・?」

 

振り向くとそこには奏が立っていた。

そして、上空から小型のドローンが彼女の手に降りた。

能力で作成したドローンであろう。

 

「このドローンを使ってあなたの移動ルートを予測して先回りしていたのよ」

 

弥生は呆然と立ち尽くしている。

そんな彼女に近づき、先程の続きをする。

この辺にはカメラが無いので外面も気にする必要がない。もっとも、有っても彼女は気にすることが出来るほど冷静さを保っていないだろが、

 

「逃げるってことは知っているのね、昴がどこに居るか、昴がどんな事件に巻き込まれているかってことを」

 

奏は弥生の目を逸らさず問い詰めるが弥生は彼女の目から背ける。

 

「・・・それは言えません」

 

「どうして?」

 

「それも言えません」

 

「じゃあ何か一つでもいいわ。言えることはあるの?」

 

「・・・ありません。どうかこの事は忘れてください」

 

あくまで答えない弥生に奏は強硬手段に出る。自分でも使いたくない姑息な手段だ。

 

「私は選挙に勝ちこの国の国王になると確信しているわ。そんな私に隠し事をしてもいいのかしら?あなたの家族の事も考えて喋ることね・・・(まるで一昔前の暴君ね・・・)」

 

奏は言っている自分自身に殴りたくなるような脅迫を仕掛ける。権力を振りかざし家族を天秤に賭けさせようするなんてよくこんな醜い脅しが思いつくものだと彼女は自虐気に思う。

 

(でも、どんな手を使っても昴の秘密を知らなきゃならない。そうしないとあいつに償いが出来ないのよ!!)

 

それでも弥生は口を割らず、

 

「それでも言えません。もし言ったらあなたの平穏が壊れてしまうかもしれない。そんなことを起こすわけにはいきません・・・」

 

刀のように真っ直ぐな瞳を向け弥生は奏の脅しを跳ねのけた。

今度は奏が目を逸らし、呟いた。

 

 

 

「私の平穏なんて10年以上前に壊れているわよ・・・」

 

その発言に疑問を持った弥生だが遠くからの悲鳴を聞き、その思考を中断して悲鳴が聞こえた方へ向かった。

 

「ちょっと!?待ちなさい!」

 

奏も弥生を追いかけるとそこで信じがたい物を見た。

 

「ひぃ・・・こないで・・・」

 

女性が襲われていた。

しかし、女性に迫る相手は巨漢でもチンピラでもない。

 

 

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!」

 

巨大な虎の化け物 タイガーロード ティグリス・ペルグランデだ。

 

「何よあれ・・・」

 

見たこともない怪物を目にし、奏は顔を強張らせる。

 

「ヴォウッ!」

 

ペルグランデは女性を押しつぶそうと手を振り上げるが奏が咄嗟に『衝撃を完全に吸収する壁』を創り出し、女性を救う。

 

「逃げて!!」

 

奏の声に反応してしらずか女性は一目散にこの場から姿を消すと同時に壁が粉々に破壊されてしまう。

 

「嘘でしょ!?トラックの突撃も防げるのよあの壁は!?」

 

驚愕の叫びに反応してこちらを向いたペルグランデは奏の能力を危険なものだと判断し、アンノウンが共通して行う殺しのサインをし、奏にゆっくりと近づいていく。

 

「こんな物騒なものは造りたくないんだけどね・・・」

 

そう言い奏は拳銃を作成し、ペルグランデ向けて発砲する。

しかし、弾丸はペルグランデの前で突然止まり砕け散った。

 

「何よ!?どういうことなの!?」

 

何度も撃つが効かないどころか当たることすら出来ない。

 

「だったら!」

 

今度は手榴弾をペルグランデの目の前に大量に作成して爆破させる。

 

 

 

 

 

だが、ペルグランデの周りに膜が出来てるかの如く爆風が避けた。

 

「そんな・・・」

 

愕然とする奏の腕を弥生は掴み、走り出した。

 

「一旦逃げましょう」

 

「え、でも・・・」

 

 

 

「アンノウンには通常兵器は効かないんです!アンノウンに対抗できるのはアギトの力とG3だけです!!」

 

(何を・・・言ってるの・・・この子・・・?)

 

突然聞き慣れない単語を聞き、奏の頭はパニック状態になる。

一方弥生は携帯で白井に連絡する。

 

「白井!アンノウンだ!G3を出してくれ!」

 

『君が壊したんだが?』

 

「あ、そうだった。ならせめてGM-01を持ってきてくれ!あれならアンノウンの足止めが出来る!」

 

『フン、G3-Xの完成が間に合わなくて残念だったな』

 

「G3-Xのデータを奪ったのは謝る!だが、今はそんな事を気にしてる場合ではないだろ!今追われているんだ!」

 

もはや同じ国の言語なのかと疑うほどの意味不明な単語の応酬に奏は逆に冷静を取り戻すほどだ。

 

「ヴオゥゥゥゥ!」

 

しかし、ペルグランデは跳び跳ね弥生達の前に立ちはだかる。

 

「くっ・・・昴が居れば」

 

「っ!?」

 

万事休すかと思われたその時、アンノウンを察知して駆け付けた斗真が上の橋から飛び降りた。

 

「変身!!」

 

斗真はギルスへと変身し(飛び降りながらの変身の為奏には正体を気付かれていない)、ペルグランデの肩に乗って爪で引っ掻きまくる。

 

「今度は何!?」

 

その疑問は解消されることなく弥生に引っ張られた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら安全です」

 

何とかペルグランデの撒いて安全なところへと避難したが奏はそんなことどうでもよかった。連続で起こり続けた超常現象の数々の前には、

 

「どう言う事か説明してもらえるわよね?」

 

「・・・」

 

弥生が答えないので奏は勝手に話を続ける。

 

「あの化け物は何?アンノウンって言う名前なの?G3って何?突然現れた緑色の怪物は何なの?あれがアギトなの?」

 

「・・・・・お答えできません!」

 

「何でよ!何で隠すのよ!あなたもまさかあのアンノウンとやらの仲間だと言うの!?」

 

「お、落ち着いてください!」

 

「落ち着けるわけないでしょ!!」

 

一通り叫んだ奏はその場に倒れ込む。無理もない。これまでのことで肉体的にも精神的にもかなり疲労しているのだ。

それを慌てて弥生が支える。

 

「一つだけ・・・これだけは絶対に答えて欲しいことがあるの・・・」

 

弥生に起こされながら奏は尋ねる。

 

「この事が、昴が隠してきた秘密なの?」

 

「っ!?何故それを!?」

 

「さっき言ったわよね?昴が居ればって、あいつらと昴は戦っていると言うの?」

 

「・・・・・・・はい」

 

予測は出来ていたが実際に答えられると奏は動揺を隠しきれなかった。

 

「そう・・・やっぱりそうなのね・・・」

 

「今まで黙っていて申し訳ございません」

 

「いいわよ。こんな事、実際に見なければ信じないわよ」

 

「昴様は現在負傷しております。私を庇ったせいで・・・面目次第もございません」

 

弥生は涙ぐんで答える。しかし、奏の顔は穏やかだった。

 

「いいわよ、それはあいつが望んでしたことなのだろうからあなたが責任を感じることではないわ」

 

「しかし!」

 

その次の言葉を奏は手で止めて、

 

「本当に責任があるのは私よ。私があいつに力を与えてしまったのだから・・・」

 

「?それはどう言うことですか?」

 

「そうね、あなたが話してくれたかこっちの事も話さなきゃいけないわよね」

 

そして奏は弥生にかつての事件の事を話した。

その時の影響で昴に能力が芽生えたことを、

 

「あいつは昔から欲張りなやつだった。多くのものを守ろうと必死だった」

 

「もし、能力が芽生えなければあいつは家族や近くの人たちを守るだけで精一杯だったでしょうね」

 

「でも能力が目覚めて守れる範囲が広がってしまった。そのせいであいつは一人で抱え込もうとして傷を負い続けた」

 

「当然よね、どんなに強くたって体と心は一つしかないんだから・・・でももう止められない、あいつはきっと自分が人を守るのは義務だって、力を得た自分の責任だって思い込んでいるから・・・」

 

「私が知りたかったのはただあいつに変な義務感を持つきっかけを作ってしまったことへの贖罪のためなの」

 

「奏様・・・」

 

だが奏は自嘲気味になる。

 

「でもそれは無駄だったみたいね、私じゃ力になれそうにない・・・」

 

そのまま去って行こうとする弥生は呼び止める。彼女の能力の凄さは一緒に逃げている間に充分感じ取ったのだ。

 

「一つだけ、彼の手助けになるかもしれない事があります」

 

その言葉に奏は振り向く。

 

 

 

 

そして弥生はポケットからG3-Xのデータの入ったメモリを取り出す。

 

 

 

 

「このメモリのデータに入っているスーツを奏様の能力で作成していただきたいのです」

 

 

 

アリーナ前

 

ギルスのペルグランデの激闘は続いていた。

しかし、ギルスはペルグランデの攻撃を躱すのが精一杯であった。

 

「ヴォォォォォ!」

 

巨大な手斧がギルス目掛けて振り落とされる。

ギルスはバク転してそれを回避し、ギルスヒールクロウをペルグランデの腕に突き刺し手斧から放す。

だが、それによりペルグランデは暴れ出しギルスは壁に叩きつけられた。

 

「ガッ!?」

 

頭を抑えながら立ち上がると前に渡された小型通信機から白井の通信が入る。

 

『撤退しろ秋原斗真』

 

「逃げろだと・・・ふざけるなよ。今戦えるのは俺だけなんだぜ」

 

『だからこそだ。君が倒れたら戦える人間がいなくなるだろ』

 

「だがなぁ・・・」

 

その時、ペルグランデが足を上げギルスを踏んだ。

 

「グァァァァァ!?」

 

重機のような怪力でギルス押しつぶそうとするペルグランデの足、

 

 

 

しかしその時、遠くから投げられたナイフがペルグランデの太ももに刺さり、ギルスは危機を脱する。

 

「誰だっ!?」

 

ギルスは起き上がり投げられた方向を見た。白井もまたジャックした監視カメラの映像で現場を覗いている。

 

ガシャ、ガシャ・・・と足音が聞こえる。

 

 

 

 

『バカな・・・ありえない・・・なんで・・・?』

 

通信越しでも白井の動揺の表情が窺える。

 

 

青空のように真っ青な装甲にオレンジのカメラアイ、そして左肩にはこう刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

G3-X

 

 

G3-Xは手に持ったアタッシュケースのようなものを下してペルグランデに向けて走り出した。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

ペルグランデは迎え撃つべくライアットを仕掛けるがそれをスライディングで避け、太ももに刺さったナイフGK-06を握る。ペルグランデは自らのスピードによって足の肉を切り裂かれ絶叫する。

 

「グォォォォォ!?」

 

痛みに耐えながら巨体な両腕を振り回すがG3-Xはそれを完全に予測し、避けながらGK-06を突き刺し、着実にペルグランデの身体能力を削っていく。

 

「タァッ!」

 

G3-Xは隙を突いて右足でソバットを放つがペルグランデの腕によって捕まってしまう。

このままでは以前の二の舞だ。

だが、

 

 

「やぁぁーっ!!」

 

左足が飛び上がりペルグランデの顎を蹴り飛ばした。

 

「グゥッ!?」

 

ペルグランデは脳震盪を起こしG3-Xを手放し、たまらずダウンした。

立ち上がっている最中にG3-Xはペルグランデの攻撃範囲内から外れ、下したアタッシュケース状の物を拾い上げる。

そこから側面の数字を1・3・2の順で入力する。

 

【カイジョシマス】

 

機械音声が鳴りアタッシュケースはガトリングに変形する。

これがG3-Xの必殺兵器『GX-05』だ。

 

「・・・撃つ!」

 

ドダダダダダダダダ!!、とGX-05は凄まじい音を響かせ銃口から弾丸が雨あられと飛び出し、一発残らずペルグランデの体を魔犬の牙の如く貫いていく。

 

「グゥ・・・ウゥ・・・ウォォォォォォ!」

 

しかし、ペルグランデも負けじと吠え、少しずつG3-Xに近づいていく。

そしてその時、GX-05が弾切れを起こしたと同時に飛び上がり巨大で鋭利な爪をG3-Xに向ける。

 

 

 

対するG3-Xは腰から予備の弾倉を取り出してそれを素早くGX-05に装填、上空のペルグランデ目掛け、ぶっ放した!!

 

再び銃口から轟音が響き渡る。

 

「グゥゥゥゥゥゥアァァァァァァァァ!?」

 

ペルグランデは断末魔の叫びともに花火となって散った。

 

「・・・・・・・」

 

G3-Xはそれをただ黙って見上げる。

 

その姿を小型ドローンが捕えていた。

その映像は奏の端末に送れらている。

 

「・・・これで少しは借りを返せたかしら・・・」

 

奏は戦いを見届けドローンを帰還させ家へと帰って行った。

 

 

「何て火力だ・・・」

 

ギルスは立ち上がりG3-Xに近づく。

 

 

 

 

『待て!不用意に近づくな!』

 

突然の制止に戸惑い前を見るとなんとG3-Xが殴り掛かってきたのだ。

 

「!?」

 

ギルスは反射的に受け止めるがG3-Xの膝蹴りが直撃し、吹っ飛ぶ。

 

「おい、どうしちまったんだ・・・?」

 

さらにもう一つの予備弾倉をGX-05に装填し、銃口をこちらに向ける。

 

「おい待て!俺は敵じゃない!」

 

ギルスの声が聞こえないのかG3-Xは引き金に指を入れ、撃つ直前までいく。

しかしその時、G3-Xの動きが一瞬止まり、思い切り頭をGX-05に叩きつけ気絶した。

 

「これは一体・・・」

 

『AIの暴走だよ。恐らく君の爪や牙に反応してAIが敵と誤認したんだ。だから彼女はAIに乗っ取られる前に気絶して急停止させたのだろう』

 

「?」

 

『こっちの話だ。とりあえず彼女をGトレーラーまで運んでくれ』

 

「あ、ああ・・・」

 

 

 

 

Gトレーラー内

 

弥生が目を覚ますと目の前には白井が居た。

 

「君に聞きたいことが山ほどあるが今は一つだけ聞くことにしよう、G3-Xをどうやって手に入れた」

 

弥生は暫らく黙りこくった後答えた。

 

「すまない、その事は別の機会にしてくれないか」

 

「何?」

 

「君の言ったことに背いたことを本当に申し訳なく思う。結果暴走を引き起こし秋原に迷惑をかけてしまった。やはり私にはG3-Xを扱う資格などないのかもしれない・・・」

 

「誰にも資格なんてないさ、あのじゃじゃ馬を使いこなせるとしたら何も考えない無我の境地に至らなければならないからな」

 

G3-Xは完璧だと白井は自負している。だがそれを使う人間は決して完璧ではない故にG3-Xは『人の為のマシン』には成り得ないのだ。

 

両者の間にしんみりした雰囲気が流れると一足先に起きていた昴がGトレーラーに入ってきた。

 

「弥生!あのトラ野郎を倒したのか!?」

 

「え?あ、ああ、倒したは、倒したが・・・」

 

すると昴はバンッ、背中を叩いた。

 

「すげえじゃねえか!あんな化け物を一人で仕留めるなんて!流石は俺の仲間だな!」

 

「なか・・・ま?」

 

「ああ、俺とお前は仲間だろ。何をそんな不思議がっているんだ?」

 

「いや、でも私はあの後・・・」

 

その後を言おうとすると白井が手で止める。

 

「当然だ。この私が選んだ奴だからな!これくらいわけないさ」

 

「し、白井?」

 

白井は振り向き、弥生の耳元で囁く。

 

「G3-Xの制御チップを作っておこう。それなら暴走の心配も無くなるぞ」

 

「いいのか?私はあなたに背いたんだぞ」

 

「これはこれ、それはそれだ。これからも頼りにしているぞ、G3-Xの装着者として・・・」

 

「・・・はい!!」

 

弥生の返事を聞くとそのまま白井はGトレーラーから出て、自宅へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

「まったく、まさか本当にG3-Xを作り出すなんて大した奴だよ・・・」

 

廊下を歩きながら白井は愚痴をこぼしていた。隣には六野もいる。

 

「でも僕驚いたよ、白井ちゃんがあんなあっさり弥生ちゃんのことを不問にするなんて」

 

「そんな覚えは一切ないが。彼女が頭を下げればいつでも許すつもりだったのだよ。私は慈悲深い人間だからな」

 

「その慈悲を少しでも僕に向けてから言ってよ・・・」

 

「何か言ったか?」

 

「イエナニモ」

 

六野はいつも通りの扱いだ。

 

(まぁ、でも・・・)

 

白井は白衣のポケットから黒いUSBメモリを取り出す。G3-Xのデータを積めたメモリと同じケースに入っていたものだ。

 

(奪われたのがこれじゃなくて良かった・・・こいつが奪われて装着していたら最悪死んでいたかもしれないしな・・・)

 

そして白井はそのメモリを六野に投げ渡す。

 

「それを処分しておけ。私は暫らく寝る。驚きすぎて疲れたのだ」

 

それだけを言って彼女は自室に入っていった。

 

 

 

 

 

「これ、捨てちゃうの・・・?」

 

(でもあの理不尽が服を着ているような白井ちゃんのことだし、1週間後あたりに『何故そのデータを消した!』とか怒鳴ってきそうだからこっそり持っておこう・・・)

 

そう言って六野は白井に渡されたメモリをポケットにしまい、自宅へと帰って行った。

 

 




遂に登場しましたG3-X!

子供のころ親に装着変身を買ってもらい遊んでいたこともあって一番思い出の深いライダーですね。

話が長くなってしまったのも思いで補正って奴の仕業だと思います。

それではまた次回お会いしましょう!

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