城下町のAGITΩ   作:オエージ

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第22話 G3大破

町はずれの林の中で特訓をしていた昴と斗真の二人は休憩を取っていた。

 

「なあ斗真、終わったら銭湯にでも行くか?」

 

「何が悲しくて野郎二人で銭湯に行かなきゃならねえんだよ。一人で行け」

 

「んだよ、つれねえなぁ・・・ん?」

 

昴の携帯に着信が入る。

 

「兄貴からだ。何だろう?」

 

「銭湯の誘いかもな」

 

「何が悲しくて兄弟二人で銭湯に行かなきゃならねえんだよ。ん?公園で待ってるだって?」

 

「何か用事か?」

 

「そうみたいだ。行ってくる」

 

そう言い昴はバイクに跨り、公園へと向かった。

 

 

 

 

公園

 

「おっ、来た来た」

 

公園で待っていた修は昴の到着を確認する。

 

「言われた通り来てやったぜ。何か用か?」

 

「まぁ、大したことじゃないんだがなっ」

 

そう言い修は昴にある物を投げ渡す。

昴は投げ渡された物をキャッチし、それを見るとグローブだった。

 

「なぁ昴。久しぶりにキャッチボールでもしないか?」

 

 

 

 

奏は恥ずかしさのあまり家を飛び出し、ぶつくさ独り言を呟きながら歩いていた。

 

「これも全部の修のせいよ。帰ったら憶えておきなさいよ・・・」

 

勝手に修に恨み節を言いながら無意識の内に公園に来ていた。

 

「あれは、修?それに昴も・・・?」

 

そこにはキャッチボールをする兄弟の姿がある。

 

「何やってのんよあいつら?ってか弟と遊ぶって昴の事だったんだ・・・」

 

物影に隠れ、奏は二人の様子を覗いてみた。

 

 

 

 

「おいどうした?もっと早く投げていいんだぞ」

 

昴は唐突な兄の誘いに戸惑いながらボールを投げた。

 

「どうしたんだよ兄貴?急にキャッチボールをやろうなんてさ」

 

「さっき言った通りだよ、久しぶりに弟と遊びたくなったのさ。それに・・・」

 

そう言い昴が投げたボールを取り、投げ返す。

 

「昔から男二人が腹を割って話すとしたらキャッチボールだって相場が決まってるだろ?」

 

「いや知らねえよそんな事!?」

 

昴は危うく落としそうになりながらもボールを掴む。

 

「と言うと兄貴は俺に話があるのか?」

 

修は昴のボールを受け取り、投げ返さず口を開く。

 

「ああ、そろそろ皆に話してもいいんじゃないか?」

 

「話すって何を?」

 

「そりゃぁ決まってるだろ」

 

修はボールと疑問を投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の能力の事だよ。何で黙ってきたんだ?」

 

投げられたボールを昴はキャッチせず、ボールは足元に転がった。

投げられた疑問も昴はとぼけて誤魔化そうとする。

 

「な、何の事かなー?俺に能力があるわけないじゃないか。アハハハハ・・・」

 

「いやそれ絶対ある奴の反応だろ!?」

 

疑惑が確信へと変わり、修は一旦話題を変える。

 

「昴、覚えているか?ここで起きた事故のことを」

 

「ここで起きた・・・事故・・・!?」

 

忘れる筈もない、修の足に纏わる出来事だ。

 

 

 

 

 

 

それはまだ自分達が幼かった時のこと・・・

 

「おーい奏、茜、昴、帰るぞー」

 

その日、四人は公園で遊んでいた。

本当は留守番を頼まれていたのだが奏が茜と昴を連れだしたのだ。

 

「私達はまだ遊んでいたいの!」

 

「そうそう、兄ちゃんもっかいキャッチボールしようよー」

 

奏のワガママに昴も便乗する。

 

「母さんに怒られてもしらないよー」

 

「そ、それだけは・・・わかったよ、帰るよー」

 

「私もー」

 

昴と茜が帰る素振りを見せると奏は慌ててそれを止めようとする。

 

「えっ!?ちょっと待って、いいものを出してあげますわ!」

 

奏は修の声を無視し、昴と茜が憧れているヒーローヒロインの変身玩具を創り出した。

喜ぶ二人を見て満足気な奏とは対称に修は浮かない表情だった。

 

「そんなにポンポン出してるとお年玉使い切るぞ」

 

「お金は使うためにあるものですわ!茜、昴見てて、飛び切りすごいものを出してあげますわ!」

 

今度はなんと城を創り出した。

 

「わぁぁぁぁ!おっきなお城!」

 

「どうすごいでしょ!」

 

「すごいよ奏お姉ちゃん!俺ここに住みたいぐらいだよ!」

 

「えっへん!」

 

「ねーねーお姉ちゃん入っていい?」

 

「もちろんですわ」

 

茜は城を見渡すと奏に質問する。

 

「どうやってあそこまで登るの?」

 

城の入り口は二階の部分にあるのだがそれを上がるための階段がなかった。

貯金切れでそこまで作成できなかったのであろう。

 

「「入れないのー・・・?」」

 

悲しそうな声を出す二人に修は、

 

「しょうがないな、俺が瞬間移動で連れてってやるよ、二人いっぺんは無理だから一人ずつだけど」

 

「茜連れてってもらえよ。俺はこの柱を登って行くからさ」

 

しかし、修に対抗意識を燃やす奏はそれを良しとしなかった。

 

「私が階段を生成しますわ!」

 

そう言い奏は無理やり階段を創り出した。

 

 

 

 

貯金が切れてるのにも関わらずに、である。

 

異変に最初に気付いたのは柱を登ろうとしていた昴だ。

 

突然登っていた柱が消え、尻もちをつく。

 

「あいててて・・・柱が消えたぞ?」

 

「何だって!?」

 

城を支える柱が消えたらどうなるか、それを修は理解していた。

 

そして城が崩れ出した。

 

まだ幼い茜と昴はその事態を理解できないでいる。

 

「茜!!昴!!」

 

修は迷わず駆けだした。

 

 

 

「え・・・?」

 

砂塵が消え、奏の目に写ったものは気を失っている茜、血を流しながら倒れている修、昴に至っては瓦礫の中に埋まり姿が見えなかった。

 

「なんで・・・?」

 

奏は理解できなかった。したくなかった。

自分はただ妹と弟を喜ばせたかっただけなのに、ただ自分のことを心配ばかりする兄に認めて欲しかっただけなのに・・・

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

奏の絶叫が公園に響いた。

 

 

 

 

「あれから俺は足に後遺症を抱え走れなくなった」

 

話は現代へと戻り、修はその後を語る。

 

「茜は事故の前後の記憶を失った。奏はその事故を気に病み変わっちまった。だけど・・・」

 

そして、修は同じく事故の当事者である昴に目を向ける。

 

「お前だけは何の影響もなかった。あの場で気絶していただけでお前だけは無傷だった」

 

「あれはただ俺の運が良かっただけだよ・・・」

 

「俺も最初はそう思った、だがよく考えたらおかしくないか?お前は城に入ろうと柱によじ登っていた、つまり城の真下にいた。普通に考えれば瓦礫を一番受けたのはお前のはず。事実目撃者によればお前は瓦礫に埋まってて姿を確認できなかったそうだな」

 

「俺がバリアでも張ったっていうのか?そんなわけないだろ、仮に出来たとしてもあの時なら茜を守るのに使うね」

 

「たしかにお前ならそうするかもしれないけど・・・あーもうめんどくせぇ!」

 

進展の無い会話に修はガシガシと自分の頭を掻く。

 

「実を言うとな俺、あの時見たんだよ」

 

「見た?」

 

話は再びあの事故に巻き戻る。

 

「茜ぇぇぇぇ!!」

 

修は茜を突き飛ばし瓦礫から守る。

 

「昴ぅぅぅぅ!!」

 

次は昴の元へ駆け寄る。

瞬間移動(トランスポーター)を使用しようとするがそれは断念した。

周りには大量の瓦礫が落ちてきている。移動した座標に瓦礫があった場合体内に瓦礫が入り込み本末転倒な事態になってしまうからだ。

 

(くっ・・・間に合わない!)

 

駆け寄る中で修は見た。

 

 

 

 

 

昴の腰が金色に光っているのを。

 

「あれは・・・!?」

 

瓦礫に飲み込まれる一瞬の間に金色の角を持った存在へと姿を変え、そして瓦礫の中に消えていった・・・

 

 

 

 

「俺の推測だが、あの時お前は無意識のままに能力を使って命の危機を脱していたんだと思う」

 

修の話に昴は呆然としていた。

 

(思えばあの後だった・・・アギトの力の予兆が出始めたのは・・・!)

 

自分でも気付かなかった最初の変身を修は見ていたのだ。

 

この時、実はアンノウンの気配を察知していたのだが昴は修から目が離せないでいた。

 

「あれから中学に入ってお前は不審な行動が目立ち始めたよな。傷を負って帰ってくることもあった。それってもしかしてお前が隠している能力と何か関係があるんだな?」

 

「・・・・・・」

 

「返事がないってことは肯定なんだな。なあ、もういいだろ、一人で抱え込むのは。家族だけでもお前の秘密を話したらどうだ?」

 

昴は下を向き、ボールを拾い上げ返投する。と同時に修の問いに返答した。

 

 

 

「ごめん・・・『今』は言えない」

 

「そうか・・・じゃあ話したい時に言えばいい」

 

「ってあっさり引き下がるのかよ!?」

 

「さっき言ったろ、大したことじゃないって。お前の心境を聞ければそれで良かったんだよ」

 

だがな、と兄は弟の目を見て、

 

「忘れるな、俺はお前の兄貴だ。助けが欲しい時はいつでも力になるって事を覚えておけ」

 

「あぁ・・・ありがとう」

 

それだけを言って昴はバイクに乗って走り出した。

 

「まったく、困った弟だぜ・・・」

 

修はそれを見送り、瞬間移動で去って行った。

 

 

 

 

「昴の・・・能力!?」

 

そこに残ったのは偶然二人の会話を盗み聞きしていた奏だけだった。

 

 

 

 

 

廃工場

 

G3は一足早く現場に到着し、敵を目視する。

前に取り逃がしたマギストラは神々しい法衣を纏い強化されていた。

 

「二人が来る前に片づける!」

 

そう意気込む弥生は驚愕の光景を目撃することになる。

 

「シャァァァァァ!」

 

強化マギストラは杖を天に掲げると杖が光り、巨大な輪が浮き上がる。

そしてそこから、ジャガーロード達が降ってきた。

 

「何!?」

 

一方、斗真は遅れて辿り着いた。

 

「変身!」

 

叫びと共に飛び上がりギルスに変身してG3の隣に着地する。

そしてルベオーとキュアネウスを見て仰天する。

 

「どういう事だ!?何で俺達が倒したばかりの奴らが居るんだ!?」

 

「・・・それだけじゃない、かつて昴が倒した個体も居る!?」

 

G3もトリスティスとアルビュスを見て驚いていた。昴もこの場に居たらルテウスの存在に驚いていただろう。

 

『どうやら、敵は蘇生召喚能力を得たようだな、やつを倒さない限り、無限に湧き出るぞ』

 

白井は冷静に敵の能力を分析した。しかし、弥生は冷静ではなかった。

 

「私は奴を逃がしたせいで・・・!」

 

「お前、まだそんな事を・・・」

 

その時、強化マギストラが吠え、ジャガーロード達が一斉に襲い掛かってきた。

 

「オォォォォォォォォ!」

 

ギルスはルベオーを殴り飛ばすとトリスティスが羽交い締めを仕掛けてくる。

しかし、ギルスは掴む手に噛みつき、肘打ちを放って羽交い締めから脱する。

立ち上がったルベオーもドロップキックで蹴り飛した。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

G3はGA-04をルテウスを巻き付け遠くへと投げ飛ばした。

しかし、後ろからキュアネウスが斬りかかりダメージを受ける。

 

「くっ!」

 

すぐさまGM-01を連射して退かすが今度は屋根に上ったアルビュスの弓から放たれた矢が襲い掛かる。

 

「こいつらと戦っても体力が消耗するだ、敵のリーダーを叩かなければ。秋原!敵を引き付けてくれ!」

 

「何だって!?てかお前大丈夫か?やれるのか」

 

「頼む!これは私の責任だ!」

 

弥生の心境を汲み取りギルスは頷いた。

 

「ウォォォォォォ!!」

 

ギルスはルベオーにギルスヒールクロウを放ち、爆散させ周りの注意を引き付けた。

 

『GG-02 アクティブ!』

 

その間にG3は走りながらGG-02を合体させ強化マギストラの元へ向かうがその行く手をGA-04のワイヤーをほどいたルテウスが立ちはだかる。

 

「邪魔だ!!」

 

G3は迷わずGG-02から弾丸を放ち、ルテウスを爆散させた。

その爆炎を突っ切り、強化マギストラの前へと立ち、もう一度GG-02を放った。

 

「はぁっ!」

 

その砲弾が直撃し、強化マギストラは吹っ飛ばされる。

 

(やったか!?)

 

「フフッ」

 

しかし、強化マギストラはそのまま着地し、腰に手を当てこちらを挑発してくる。

 

「そんな・・・」

 

渾身の攻撃が通じず、G3は戦意を喪失してしまう。

その時だ、

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

スライダーモードに乗ったアギトが到着した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

そこからアギトはライダーブレイクを繰り出し、トリスティスを爆散させる。

すかさずキュアネウスが飛び上がるが、トリニティフォームに変わりストームファイアーアタックでキュアネウスを迎撃、撃破する。

 

「おりゃぁっ!」

 

アルビュスの弓から放たれた矢をストームハルバードで弾き、鍔を展開させたフレイムセイバーをアルビュス目掛けて投げる。

フレイムセイバーは突き刺さり、アルビュスは炎上しながら屋根から落ち爆散する。

 

「っ!?」

 

瞬く間に僕を瞬殺され強化マギストラは動揺を隠しきれない。

その隙を突いてアギトはライダーシュートを放った。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ライダーシュートが胸に直撃し、強化マギストラを仰け反らせる。

しかし、すぐに体制を立て直し再び腰に手を当てようとするが、

 

「ウゥ・・・!?」

 

よろめき、頭には輪が浮かび出た。

 

「アァァァァァァァァァァ!?」

 

断末魔の瞬間、杖を遠くへ放り投げ、強化マギストラは今度こそ爆散した。

 

「弥生、無事か?」

 

アギトは駆け寄り心配するが弥生の精神状況は穏やかではなかった。

 

(一瞬の内に4体のアンノウンを撃破しただと!?)

 

自分は一体を撃破するのが限界だったのにも関わらずだ。

圧倒的な力の差の差を感じ取り、弥生は両膝をついた。

 

「おい大丈夫か!?」

 

昴は気に掛けるが逆にそれが弥生の心を傷つけた。

 

(私は彼の仲間ではないんだ。仲間というのは拮抗する力を持つ者同士のこと・・・私は彼の荷物でしかないんだ・・・・・・・)

 

深い絶望の淵に落ちていく弥生を現実に戻したのはまた別の絶望だ。

 

地面に刺さった持ち主のいない杖が再び光始め、再び巨大な輪が浮き上がる。

 

「今度は、何だ・・・」

 

斗真の声に答えるかのようにそれは降ってきた。

 

 

 

 

3メートルは達するかのような巨大なアンノウン タイガーロード ティグリス・ペルグランデが・・・

 

「ヴオォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

鼓膜が破れんばかりの雄叫びに流石の昴も危機感を覚える。

しかし、弥生は違った。彼女の心は乱れていた為冷静な判断が出来なかったからだ。

 

すぐさまガードチェイサーからGS-03を装着し、叫びながらペルグランデへと走って行く。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『落ち着け弥生!君の勝てる相手じゃない!!』

 

通信を無視し、ペルグランデの肩に斬りかかる。

しかし、肩に装備した鎧がGS-03の刃を受け付けない。

 

「ならっ!」

 

次は至近距離でGG-02を撃つがペルグランデはまったく傷つかない。

G3最強クラスの武装の連続攻撃もペルグランデにはとっては子犬がじゃれつくようなものでしかなかった。

 

「ああああああああああ!!」

 

もはややけくそ気味に脇腹を狙ってソバットを放つがそれも受け止められる。

 

「ヴォォォォ!」

 

そのままG3の片足を掴んで地面に叩きつける。

 

「ガッ!?」

 

頭部ユニットが割れ素顔は露わになるとそこには恐怖に怯える弥生の顔があった。

 

「あ・・・ああ・・・」

 

ペルグランデは止めをさすべく頭の輪から手斧を取り出した。

手斧とはあくまでペルグランデとのサイズ比であり、その大きさは弥生を押しつぶすには充分な大きさだ。

 

弥生は避けようとするがG3は動かない、先程の衝撃で動力部が大破してしまったのだ。

 

ペルグランデは処刑人のごとく斧を振りおろし、弥生は目を瞑った。

 

しかし、斧は弥生に達しない。

不思議に思って弥生が目を開けると答えはそこにあった。

 

「す・・・昴?」

 

再びトリニティフォームに変身したアギトが斧を受け止めていたのだ。

しかし強力で振り下ろされた斧を受け止めきれず肩に少し食い込んでいる。

 

「逃げろ弥生!」

 

ギルスフィーラーが弥生の体を巻き上げ、ギルスが解除ボタンを押してスーツがパージさせる。

 

だが、弥生は石像のように固まり、声にならない叫びを上げた・・・

 




タイガーロード ティグリス・ペルグランデ
殺害方法 対象を腕力で強引に圧縮させる。
巨大な虎の姿のアンノウン。特殊な力を持たないがその巨体から放たれる攻撃は強力無比で真正面からではとても勝ち目がない。
倒せるとすれば相手の攻撃範囲外からの射撃しかないだろう・・・


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