城下町のAGITΩ   作:オエージ

21 / 60
第19話 王女のスカート

「間に合ったー!」

 

いつものようにギリギリの時間で茜は教室に辿り着いた。

 

「年に一度くらい遅刻したって平気だってのに」

 

「いやぁ折角だから皆勤賞狙いたいじゃん?」

 

「まったく、相変らずド真面目なんだから・・・っ!?」

 

その時、茜の幼馴染で親友の鮎ヶ瀬花蓮は自身の目を疑った。

 

 

 

茜がスカートを履いていないのだ。

 

(え?・・・えっ!?)

 

花蓮だけでなく教室の全員がこの事態を『異常』だと感じた。

『あの茜が学校にスカートを履いてこない』

余りにもありえない状況に自分自身の異常を疑った。

結果、誰もがこの事実を指摘することに躊躇してしまった。

異常だと思っている自分が異常。

『だって誰も指摘しないのだから』

それは一種の集団心理。負の連鎖。

しかし、それで何事もなく平和に過ごせるのならそれも一つの幸せの形である・・・

 

 

 

 

(いやいや、やっぱりおかしくない!?)

 

ハッ、と花蓮は目を覚ます。

 

(ツッコんでいいものかどうか・・・)

 

しかし、人見知りの茜が急に自覚したら何が起こるか分からない。

 

(下手をすると恥ずか死ぬ可能性が・・・って、恥ずか死ぬって何!?)

 

それに彼女がわざとやっている場合、親友のセンスを貶すことになり、それはそれでショック死してしまう。

 

(茜!私はどうするのが正解なの!?)

 

「花蓮、悩み事?相談にのるよー」

 

「い、いや、何でもないよ」

 

(こいつ!人の気も知らないで・・・!でも心配してくれてありがとう)

 

悩みの果てに花蓮は周りに相談しようと考えたがある仮説が立ちはだかった。

周りが指摘しないのは気付いていないからではないのか?

 

(皆、この異常性に気付いていないのだとすると、下手に周りに相談して事態を明るみに出すのは避けたい・・・)

 

そう考えていると茜は斗真の元へと行った。

 

「おはよー秋原君」

 

「っ?!お、オハヨウゴザイマス・・・」

 

「どうしたの?」

 

「な、何か涼しそうじゃあないか?」

 

「そうかな?いつもと変わらないけど?」

 

「そ、そうだな!いつも通りだな!いつも通り・・・」

 

(あれ、もしかして・・・)

 

弥生が茜に問いかけてきた。

 

「あ、茜。訪ねたいことがあるのだが・・・」

 

「ん、なーに弥生ちゃん?」

 

「君はどんなファッションのこだわりがあるのだ?私は家柄上そういうことに疎いんだ・・・」

 

「えー、私なんて全然普通だよ。でも強いて言うならパンツよりもスカートの方が好きかなー」

 

「あ、ああ・・・スカートか・・・好きすぎて逆にというのはよくあることだな・・・」

 

「そうそう・・・逆に!?」

 

(やっぱりみんな気付いてません!?)

 

こんな状況の中、不幸中の幸いなのは白井咲子が休みということである。

彼女の性格上茜を見た途端、

『櫻田茜、君は露出癖を持っていたのか?』

と、言いかねない。そうなれば取り返しのつかないことになってしまっていただろう。

 

そんなカオスな状況の中、一つの劇薬が舞い降りた。

 

「おいーっす」

 

茜の兄、櫻田昴の君臨だ。

 

「あ、昴遅刻だー」

 

「別にいいじゃねぇか少しくらい」

 

「もう、昴は皆勤賞欲しくないの?」

 

「欲しくないね、何かもらえるわけでもないし」

 

花蓮は昴が席に座り、茜は他のクラスメイト達と会話し始めるとすかさず昴の元に駆け寄った。

 

「ん?どうした花蓮?」

 

「アンタ気付いてないの?」

 

「何が?」

 

「茜の事だよ、ほらよく見て!」

 

顔を掴み無理やり視線を茜の方へ向けると昴は一瞬目を見開き、頭を抱える。

 

「あのバカ、なにやってんだ・・・?」

 

(お、気付いたか)

 

しかし、昴は立ち上がり予想外の行動に出る。

 

「ちょっとあいつに言ってくる」

 

「っ!?ちょっと待って!」

 

花蓮は昴を引き止める。

 

「もうちょっと慎重に行こうよ、ことがことだからさ」

 

「だからこそ早く言わなきゃダメだろ、恥をかくのはアイツなんだぜ」

 

「う、それは・・・」

 

昴の意外な正論に言い返せず、道を開ける。

 

「おい茜!!」

 

呼ばれた茜だけでなくクラス全員が昴の方を見た。

 

「どうしたの昴?」

 

「いいからちょっと来い!」

 

昴は有無を言わせず茜の腕を掴み、教室の外へと連れて行く。

二人のいない教室はざわめきだした。

 

「言う気だ・・・」

「あいつ、絶対言うぞ・・・」

「ど、どうなるんだ?」

 

(昴、やっぱりダメェェェ!ここは学校なの。家とはわけが違うのぉぉぉぉぉ!!)

 

花蓮の心の叫びも虚しく、外からは「あぁぁぁぁぁぁぁ!?ホントだぁぁぁぁぁぁ!!」と、茜の叫び声が聞こえる。

万事休す、そう誰もが思う中教室の戸が開く。

 

「いやぁゴメンね、わざわざ教えてくれて」

 

「いいってことよ」

 

(あれ?)

 

特に変化はなく、双子は教室に入る。

花蓮達は一斉に昴の元に駆け寄る。

 

「昴、どういうこと?」

「い、言ったのか?」

 

「ああ、言ったよ」

 

「でも何も変わっていない気がするのだが・・・」

 

「変わっているだろ、茜の髪のリボン、ほどけそうだったじゃないか?」

 

「え?」

 

クラスメイト達は硬直した。

 

「あいつあの髪型を気にっててさ、あれがほどけると凄く慌てるんだよ」

 

(((そ、そっちかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??)))

 

その時、クラスメイトの心は一つとなった。

 

(気付かなかった・・・下半身に目を奪われてて、髪の事なんて、ってか何で親友の私よりも先に髪の事に気付いたの?ちょっと悔しい・・・)

 

「ん?他に何か?」

 

「い、いや・・・なんでもない・・・・・」

 

チャイムが鳴り、この事案については一旦保留となった。

 

 

 

 

 

 

二年棟

 

「茜がスカートを履いていない?」

 

この事件は瞬く間に広がり、噂は彼女の姉である奏の耳にまで入っていた。

噂を聞いた時、奏は動揺したがそれを表には出さず、いつもの外面スマイルで噂を話した友人と会話する。

 

「まさかあの子に限ってそんな・・・」

 

「でも気になりません?」

 

大丈夫ですよ、奏は外面スマイルを絶やさない。

 

「仮に何かあったとしてもあの子なら自分で対処できます。それに弟の昴もいますから」

 

「そ、そう?奏さんがいいならいいけど・・・・・」

 

そうしていると突然奏の前に柱が現れ彼女に激突した。

 

「奏さん!?」

(やっぱり気にしてるっぽい・・・)

 

 

 

 

 

三年棟

 

「変な噂が流れているようね」

 

噂は遂に三年棟にも広がり、葵は携帯を取り出した。

 

(一応茜にメールして確認してみよう。後、昴にも・・・)

 

 

 

 

一年棟

 

「あああああああああ!?」

 

「ど、どうしたの茜!?」

 

突然の叫びに花蓮は驚く。

茜は涙目になっている。

 

「忘れてた・・・」

 

(遂に気付いたか・・・!)

 

「ケータイ、家に忘れたっぽい・・・」

 

(もっと大切なものを忘れてないかなー?)

 

一方、携帯を忘れなかった昴は姉からの着信に気付く。

 

「姉ちゃんからだ、なんだろう?」

 

メールを開くとこう書いてあった。

 

『茜がスカートを履いてないって噂が広がっているけど、本当なの?』

 

(スカート?・・・あっ、ホントだ)

 

ほぼ無表情で妹の異常を確認した。

 

(さっき、花蓮が騒いでいたのはこれが原因か、上半身に目を奪われていて気付かなかった・・・ってか何で双子の俺より先に気付いてんだ?ちょっと悔しいな・・・)

 

昴はこの事を茜に言うべきか考え、途端に物凄い悪人顔に変貌する。

 

(こんな面白い状況、遊ばない手はないぜ!)

 

「あ、茜!」

 

一方、花蓮は決心した。親友に真実を話す覚悟を。

しかし、それを昴が引き止める。

 

「花蓮、話がある」

 

「え、ちょっと!?」

 

花蓮を教室外まで連れて行く。

 

「茜の事なんだが・・・」

 

「っ!?やっぱり気付いてたの!?」

 

「ああ、最初からな!」

 

※嘘です。

 

「じゃあ、何で?」

 

「それには深いわけがある」

 

「わけ?」

 

「ああ、これは

 

 

 

 

 

 

王女の試練なんだ!!」

 

※嘘でございます。

 

「し、試練?!」

 

「ああ、本当は言っちゃダメなんだがな・・・」

 

※嘘は言ってはいけません

 

「高校生ぐらいになった櫻田家の王女はその年の間に一度だけ、スカート無しで過ごさなきゃいけないんだ」

 

「えっ、何それ・・・・?」

 

「俺も最初はそんな反応だったがな、初代からのしきたりなんだ」

 

※しつこいようですが昴の言っていることは0%の真実と100%の嘘で出来ています。

 

「じゃ、じゃあ茜のお姉さん達も・・・」

 

「ああそうだ。奏なんてバレそうになって涙目でごましてたからな」

 

※櫻田奏とは言ってません。

 

「この試練は誰にも指摘されてはいけないんだ!」

 

※いけないのはこいつの頭です。

 

「そ、そうだったの・・・」

 

※そんなわけないでしょ。

 

「だからさ、あいつの事は気付かないフリしてやってくれ」

 

「う、うん・・・」

 

(よっしゃぁぁぁぁぁ!騙せたー!)

 

※この後メチャクチャ酷い目にあいます(ネタバレ)。お楽しみに!

 

 

『1年A組の櫻田茜さん。生徒会副会長がお呼びです。至急、生徒会室まで来てください』

 

「副会長ってカナちゃんが?なんだろうわざわざ呼び出しなんて?」

 

「私もついて行くよ」

 

「え?」

 

「だって心配だもん」

 

「へ、平気よ学校なら人見知りしないから、で、でもそうしないと花蓮の気がすまないのならやぶさかでもないかなー」

 

(移動中に指摘されたら試練失格だからね・・・)

 

あくまで昴の寝言を信じる花蓮であった。

 

(((な、何っ!?)))

 

一方、福品ら男子勢に電流が走った。

 

(櫻田茜が、)

(生徒会室まで移動する・・・)

(生徒会室は南棟の三階、ここは東棟の二階・・・ということは、必然的に階段を上がる!)

(つまり・・・・・・)

 

ゆっくりと、しかし、一秒の誤差もなく立ち上がる。

 

 

 

(((下から覗ける!!)))

 

「今日はやけに人の視線を感じるなぁー?」

 

(こいつらやっぱり気付いてる!ってか呑気だな茜!?でもそこが好き!!)

 

『『シタカラノゾケル、シタカラノゾケル』』

 

呪文のように男子たちは茜の後を追う。その数は一年の男子ほぼ全員だ。

後ろを見た花蓮はその中に信じられない者が紛れているのを見た。

 

 

 

「シュタカラノゾケム、シュタカラノゾケム」

 

櫻田昴だ。後微妙に噛んでる。

 

(昴ぅぅぅぅぅぅ!あんた兄貴でしょ。何妹のパンツ覗こうとしてるの!?)

 

しかし、昴の行動をよく見て見ると、

 

「おいお前ら速度を落とせ、バレるだろ。そこ、カメラしまう。肉眼で捕らえてこそ価値があるんだろうが」

 

速度を落とせばそれだけパンツを見る人数が減る。

カメラをしまえば、彼女の醜態が全国に広がることはない。

 

(まさかあんた・・・)

 

ふと、昴と目が合う。

親指を立て、その顔は語っていた。

 

『俺に構わず先に行け』、と

 

(ごめん、少し疑ってた!)

 

花蓮は茜を押して走り出す。

男子達も走り出す。

後ろで、「ちょ、お前らおちつ・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」、と昴の断末魔が聞こえ、何かを踏む音が響く。

 

(だよねー、薄々フラグだなと感じてたけど・・・)

 

階段まで来たとき、奏が現れた。

これで、何とかなる。

花蓮はそう楽観視していた。しかし現実は意地悪で、

 

「あんたホントにスカート履いて無かったのね」

 

(かなでさぁぁぁぁぁぁぁぁん!?)

 

 

 

「おい、生きてるか?」

 

唯一愚者の行列に加担しなかった男子、斗真は屍となった昴に話しかける。

 

「死んでるよ、お供えはフライドチキンで」

 

「そうか、じゃあ止めを刺すか・・・」

 

「待て待て待て!」

 

昴は跳ね上がる。

 

「てかお前、あの中に居なかったんだな」

 

「あいつには借りがあるが好きな人が別にいるからな」

 

「好きな人?誰だ?」

 

「ああ、それはな・・・」

 

斗真はポケットからその写真を取り出そうとした時、アンノウンを察知した。

 

「話はまた今度だな」

 

「ああ」

 

二人は体育館裏へと駆けだした。

 

「グルル・・・」

 

そこには犬を象ったアンノウン ジャッカルロード スケロス・ファルクスがいた。

 

「見たところ、やつの姿はジャッカルだな」

 

「ジャッカル?輝の右腕に眠ってるあれか?」

 

「は?」

 

「あ、ごめん。身内ネタは分かりづらいよな」

 

ファルクスはこちらに気付き、迫っていく。

対する二人は並び立って変身ポーズを構えた。

 

「「変身!!」」

 

変身すると同時、飛びかかってきたファルクスは二人のパンチで吹っ飛んだ。

 

「ガルゥ・・・」

 

ファルクスはすぐさま受け身を取り、こちらに攻撃を仕掛けてくる。

アギトは迎え撃つべく蹴りを放つがファルクスはそれを跳躍して躱した。

その隙をついたギルスがギルスクローを伸ばし、斬りかかるも頭の輪から出した鎌でそれを防がれてしまう。

 

「こいつ、なかなかやるな・・・」

 

素早さと跳躍力を利用した多面的な戦法に二人は苦戦を強いられる。

 

「だったらこの前手に入れた力で!」

 

アギトはオルタリングの両端を叩き、ストームハルバードとフレイムセイバーを取り出してトリニティフォームへと変身する。

 

「はぁぁぁぁ・・・・」

 

アギトはフレイムフォームの感覚を利用してファルクスを感知する。

 

「ガルルゥ!」

 

予測通り斜め後ろから奇襲を仕掛けてきたファルクスにストームフォームの素早さで鎌を防いだ。

 

「どりゃぁ!」

 

「ギッ!?」

 

そこからフレイムフォームの力を使い鎌を弾き飛ばして蹴り上げる。

 

「ウォォォォ!」

 

ギルスはすかさずギルスフィーラーを伸ばしてファルクスに巻き付け地面に叩きつけ、休む間を与えず自分の方へ引っ張っていく。

 

「今だ昴!」

 

「おう!」

 

ストームフォームの跳躍で素早く飛びストームファイヤーアタックを放ち、ファルクスを爆散させた。

 

戦いが終わり、変身を解除すると斗真はあるものを渡した。

 

「これは、茜のスカート?」

 

「ああ、茂みに落ちていた。大方飛んでる最中にスカートを枝で破って短パンに履き替えている時に予鈴を聞いて慌てて履かずに行ったんだろう」

 

「あいつならありえそうだ。これは後でコッソリ茜に渡して置くよ」

 

「ああ、その方がいい」

 

その時である。

 

「すまない!遅れ・・・・た?」

 

装着の関係上、G3を着込んだ弥生が遅れて到着する。

しかし、アンノウンは無く、見えるのは体育館裏でスカートの受け渡しをする男子二名。

その姿はさながら闇取引のようだ。

 

状況を独自に解釈した弥生は手に持ったGM-01を闇商人(弥生視点)に向ける。

 

「動くな!動くと当たらないだろ!」

 

「待て、話せばわかる!」

 

「問答無用!」

 

こうして二人は弾切れになるまで銃弾に追われ続けた。

 

 

 

 

 

一年棟

 

弥生のクーデターから逃げ延びた昴は奇妙な光景を目にしていた。

 

そこは惨状だった。

床が血に染まり多くの男たちと花蓮が倒れており、その真ん中で茜は泣いていた。

ただし、その血は全部鼻血なのでシリアスな雰囲気はない。

 

「何・・・・これ?」

 

「この子ったら、公衆の面前で自分のパンツを見せびらかしたのよ」

 

「ああ、短パン履いてるつもりだったんだ・・・まぁ、10年後には笑い話だ」

 

そのまま立ち去ろうとする昴を奏は呼び止める。

 

「待って」

 

「あ?」

 

「鮎ヶ瀬さんが気絶する前に言ってたことなんだけどね」

 

昴はドッ、と汗を拭きだした。

 

 

 

「櫻田家の王女はスカートを履かずに過ごす試練があるらしいけど、伝統に疎い私に説明してくれるかしら」

 

昴は答えず迷わず逃亡をはかる。

しかし、その手は横から現れた葵に握られ動けなくなる。

 

「ね・・・姉ちゃん・・・?」

 

「昴、逃げては駄目よ」

 

姉の顔は笑っていただが目が笑っていなかった。

 

後ろを振り向くといつぞやの注射器を握る奏の姿が、

 

「待て、それはヤバイって!マジでヤバイ奴だから!」

 

「大丈夫、10年後には笑い話よ」

 

そして、昴の悲鳴が学校に響き、世に言う茜スカート紛失事件は幕を閉じた。

 

 

 

オマケ 19.5話 隠し事オンライン

 

「イテテ、酷い目にあった・・・」

 

昴は腕を抑えながら階段を上がっていると遥と岬の部屋のドアが半開きになっていることに気付く。閉めようと近づくと部屋にいる遥の声を聞いた。

 

「えっ?もうこんなに・・・くそっ、なんでこんなまた・・・」

 

気になってこっそり部屋に入り遥のパソコンを覗くとそこには大量の茜のパンチラ画像が

 

(へ?)

 

遥が後ろの気配に気付く、

 

「岬?帰ったなら声かけてく・・・」

 

遥が振り向くとそこには岬では無く昴の姿があった。

 

「「うわああああああああ!?」」

 

遥の叫びに反応して昴も叫んだ。

 

(恐れていたことが、この作業を身内にバレるということが。でも茜姉さん本人じゃないだけマシかな・・・)

 

「に、兄さん。これにはわけが」

 

「遥・・・お前・・・」

 

ドン!と昴は机を叩いた。

 

 

 

「お前がいくら思春期でシスコンだからって姉のパンチラ画像でってのはどうかと思うぜ!!」

 

(前言撤回、一番めんどくさいのに見つかったぁぁぁぁぁ!!)

 

「ちょっと座れ、これは家族会議モンだぞ、事が姉のパンチラ画像だからな」

 

「だ、だから兄さん、僕の話を・・・」

 

「思春期で異性に興味を持つことは悪い事じゃない。だがそれでもラインというものを考えろ。はぁ・・・岬が見たらなんと言うか・・・」

 

「いや、だからね!」

 

「とりあえず母さんに電話するか」

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

遥は何とか誤解を解くことに成功した。

 

「え?ファンクラブ?」

 

「そう、兄さん達はネットとかしないから知らないんだろうけどこれは王族(ぼくら)の数あるファンサイトの一つなんだよ」

 

「・・・・・つまり?」

 

(めんどくさいな・・・)

「ファンサイトというのは王族(ぼくら)のファンが作った非公式サイトのことだよ」

 

「お、おう」

 

「テレビで流れた写真や映像をネットにアップしてその人の魅力を語り合う場なんだよ」

 

「茜が知ったら恥ずか死ぬだろうな」

 

「でしょ?国は娯楽として容認してるけど姉さんが困るだろうしこうして削除申請していたんだよ」

 

「んだよ~そういうことなら最初から言ってくれればいいじゃないかはるちゃんよ~」

 

(こいついつかハッ倒す・・・)

「兄さんが話を聞かなかったからだけど」

 

「ま、それもあるか。ってことは俺のファンサイトもあるのか?」

 

「え?」

 

「このイケメンのファンサイトならそりゃすごい規模だろな~『昴様カッコいい!』『昴様結婚してぇ~』なんて言われたりして~」

 

「無いよ」

 

「ほーらやっぱり・・・え、無いの?」

 

「無いわけでは無いけど男性陣合同のだけだけどね」

 

「俺個人のは?」

 

「無いよ、こういうのは男よりも女の子の方が人気があるんだよ」

 

「そうなのか・・・」

 

「えっと・・・そろそろ部屋から出てくれないかな?作業まだ残ってるし」

 

「そうだな・・・邪魔して悪かったな・・・」

 

(何この罪悪感)

 

昴はあっさり帰って行った。

 

 

櫻田昴は自分の部屋へ行き夕ご飯の時間になるまで眠った。そして、目を覚ましてからしばらくして、自分の個別ファンサイトが無いという現実を思い出し、泣いた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。