城下町のAGITΩ   作:オエージ

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第一部のクライマックスです!
ご期待ください!!


第15話 割れる心 割れる正体

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

アクティアの前で呆然と立ち尽くす昴の前に、スタンドから飛び上がったG3が着地する。

 

「お前っ!?」

 

「君の言葉に背いたことは謝罪する。だが今は引くのが先決だ!」

 

G3はGM-01にGG-02を合体させ、アクティアに向けて放った。

アクティアは盾でその砲弾の防ぐが爆発して煙が舞いあがり、煙が無くなったころにはもう3人の姿は無かった。

 

 

 

 

 

病院

 

「これを見てください」

 

医師は斗真のレントゲン写真を昴に見せる。

彼の心臓部に奇妙なものが写っていた。

 

「この金属片ですが、原理は分かりませんが彼の熱エネルギーをどんどん吸収していっています。このままだと24時間後に彼は凍死してしまうでしょう・・・」

 

「手術で摘出することは?」

 

「む、無理です。心臓に密接しているので少しでも間違えれば・・・申し訳ありません・・・」

 

「分かった、いや、いいんだ・・・」

 

そう言って部屋を出た昴に近くで待っていた弥生達が寄ってくる。

 

「彼の容態は?」

 

「24時間後には死ぬらしい・・・」

 

「何だって!?」

 

予想以上の深刻な事態に弥生は顔を強張らせるが昴はむしろ余裕の表情であった。

 

「そう心配すんなって。要はあのサソリ野郎が金属片を操っているんだから24時間以内にあいつをぶっ倒せばいいってことよ!」

 

「いや、その理屈は・・・」

 

六野が言い切る前に白井が前に出て昴に問いかける。

 

「勝算はあるのか?奴は君の斬撃を防いだ強敵だぞ」

 

その問いに昴はニッ、と笑ってこたえる。

 

「なぁに、心配ないって、とっくにあいつを倒す手段は見つけてるんだよ」

 

そう言って、昴は走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「と、見栄を張ったはいいが本当にどうする・・・?」

 

現在、昴は土手で寝転がっていた。そうしている場合ではないことを理解しているが方法が分からない以上、無駄な体力を浪費するわけにもいかないのである。

 

「前にカメの奴に使った反転キック戦法でいくか・・・あ、ダメだ、そうしたらあの針の餌食になっちまう」

 

「つうことで前から攻めるか・・・なら青の力で盾をすり抜けるスピードで・・・これもダメだ、青のパワーじゃあいつを倒しきれない・・・」

 

「だとすると求められるのは針を使わせないスピードと盾を破るパワーを持った一撃か・・・」

 

 

 

「って!そんな都合のいい技がないから悩んでんだよ!!」

 

そう言って頭を抱えながらゴロゴロと土手を転がる昴に聞き覚えのある声がかかる。

 

 

「兄上?何をされているのですか?」

 

昴は上半身を起こして上の方を見るとそこには弟の輝がいてその腕にはスケートボードが抱えられていた。

 

「な、なんでもないぜ・・・それよりどうしたんだそのスケボー?」

 

「はい!父上が買ってくれたのです!」

 

「へぇ~、それは良かったな、かっこいいじゃん」

 

「それだけじゃありません!この彗星号と僕の右腕(ジャッカル)の力が合わされば家族を脅かすどんな魔の手からも守れます!!」

 

「はは、そいつはすげーや・・・」

 

昴の頭に中二病という言葉が一瞬過ぎったがそれとは少し違うことを知っている。

輝もまだ小学校低学年、テレビのヒーローに憧れ、変身したいと思うお年頃なのである。

自分にもこういう時期があったかと思うと微笑ましくもなり、同時に恥ずかしいという気持ちになる。

 

「それでは兄上、この彗星号を使ってそちらに行きます!」

 

「いやちょっと待て、それは危な・・・」

 

昴が言い終える前に既に輝はスケートボードで坂を滑り始める。

途中までスピードを上げ順調に滑っていくが坂にあった大きめの石にボードの先端がぶつかり、そのまま輝は転がり川に落っこちてしまった。

 

「だから言ったのに・・・おーい大丈夫かー?」

 

輝を川から引き揚げながら昴に突然ある疑問が頭に浮かぶ、

 

 

何故輝はスケートボードから飛び出てしまったのか・・・

 

状況を確認しよう。

輝は土手の上からスケートボードを滑らせた。

この時スケートボードはスピードを上げて滑って行った。

その時、石がボードにぶつかり、ボードは急停止した。

たしか、慣性の法則といったのか、ボードが急に止まったことで輝はその勢いで川に落ちたのだ。

 

(まてよ・・・これをバイクでやればもっとすごいスピードと、パワーが得られるんじゃ・・・)

 

「輝!お前すげぇよ!天才だなおい!」

 

「あ、兄上・・・それは皮肉ですか・・・?」

 

「いや違うって、お前のおかげで俺の悩みが晴れたんだ。お前は俺の英雄だよ、スターだよ、ヒーローだよ!」

 

「ひ、ヒーロー・・・!」

 

状況は呑み込めないが本当に褒められているのを知り、輝は少し嬉しそうな表情になった。

 

(さて、輝を送ったら特訓開始だっ!)

 

 

 

 

茜はトボトボと家に向かって歩いていた、結局あの後起きたら誰もいなく、海岸に行くも、斗真も斗真のバイクもなく一人残されていたのだ。

 

(もう少しで真実を掴めたかもしれないのに・・・秋原君のことも昴のこともまだ全然わからない・・・)

 

悔しい気持ちを抑えながら玄関を開け家に入ると、そこには毛布に包まって凍えそうな輝の姿があった。

 

「修ちゃん、輝どうしたの?」

 

テーブルに座っていた修に話を聞く。

 

「さっき昴から輝が土手で派手に転んだって電話がかかってそれで俺が家まで輝を連れてったんだよ」

 

「ふぅ~ん、そんなことが・・・て、え?」

 

茜はドンとテーブルを叩き、修に顔を寄せて食い気味に質問をぶつける。

 

「昴に会ったの!?」

 

「ど、どうしたんだ?急に?」

 

「いいから答えて!」

 

「あ、ああ、さっき言った通りだよ俺が瞬間移動(トランスポーター)で土手まで行って輝を家に連れてったんだ」

 

「その後昴は!」

 

「あいつは用事があるって言ってバイクで町はずれの採石場のほうへ行ったぞ・・・てどうした茜?どこ行くんだ!?」

 

茜は修を無視して家から飛び出していった・・・

 

 

 

 

 

採石場

 

昴はカメラの無い採石場の敷地でバイクを走らせていた。

その速度が頂点に達したと同時に昴はハンドルを離し、座席に立った。

しかし、ハンドルから手が離れてバランスを失ったバイクは転倒し、地面に体をぶつけてしまう。

 

(痛ってぇ、アギトの力でダメージを抑えているとはいえきついなこれ・・・)

 

特訓を開始してから1時間が経過したがまだ成功の兆しは見れない。

 

(だけど、やるしかないか・・・)

 

そう自分に言い聞かせ、昴はバイクを起こして再び走ろうとすると後ろから手が置かれ振り向くと・・・

 

 

 

「茜・・・?」

 

「何をしているの、昴」

 

その目は強く昴を見つめていた。

 

「い、いや、これはアレだ。パフォーマンスに使おうと練習をね」

 

「それでも度が過ぎてるよ。まるでやらなきゃいけないことみたいに・・・」

 

「ぐっ・・・!?」

 

今まではなんとか誤魔化してきたが今回の茜はかなり手強い、そう思った矢先、昴はアンノウンを察知した。

 

(このタイミングでかよ!?)

 

昴はバイクのエンジンを掛けようとするが茜が腕を掴んで止める。

 

「どこ行くの?まだ話は終わってないよ!」

 

「離してくれ、俺が行かないと斗真は危ないんだ!」

 

言葉を放ってから昴はしまった、と感じた。茜は斗真がどうなっているのか知らない筈だからである。

しかし、茜は、

 

「秋原君が危ない?もしかして昴は秋原君が緑色の戦士になったことを知ってるの!?」

 

「え・・・?」

 

茜がまさかそのことを知っているとは思わず昴は硬直し、茜は動けない昴の肩をガッシリ掴まえる。

 

「教えて!秋原君の身に何が起きてるの!?それは昴が隠している何かと関係するものなの!?そして私はどうすればいいの!?」

 

次々と問い掛けられる茜の問いだが、昴はそれよりも早くアンノウンの元へ行かねばならないという焦りが心の中で勝ってしまっていた。

 

「お前には関係ないことだっ!」

 

「・・・・・・え?」

 

昴は叫び、茜は今まで開いていた口を閉ざした。

 

 

 

もし、心という概念が実在していたというのなら茜の心は急激に膨張していた。

 

「お前には関係ない、お前が気にするべきことじゃない」

 

危険な音を上げてどんどん心は膨張し限界に近づく。

 

「だからお前は何も知らなくていいんだ、それがお前にとっての幸せなんだよ。分かったならその手を退けろ!!」

 

これは茜を大切な妹を自分の戦いに巻き込ませないための彼なりの優しさがあって言ったことであった。しかし、優しさがいかなる時も最善とは限らない。

 

茜の心が現実に存在していたらその時、パンッ!、という音を立て割れていただろう。

 

「待ってよ・・・」

 

茜は昴の肩に手を置く。

 

「今言っただろ・・・ってウワァッ!?」

 

昴が振り向いた瞬間、突然茜が倒れ込む。

それを支えようとするが急に茜が重くなり、そのまま一緒に地面に倒れる。

立ち上がろうと茜を押すが上がるどころか地面にめり込み始めていた。

 

 

「私の能力を知っているよね・・・」

 

昴に馬乗りの状態になった茜は髪で表情が隠れてよく見えない。

 

重力制御(グラビティコア)は重力を操る能力。普段は重力を弱めて飛んだりしているけど重力を強めることだってできる。この場の重力は10G。通常の10倍の重力で引っ張られているから昴は絶対に起き上がれないよ」

 

仮に茜の体重を45キロを仮定した場合、10倍になるので450キロとなる。

並みの高校生では到底持ち上げることが不可能な重さである。

 

「待て・・・それならお前も辛いんじゃ・・・」

 

当然のその影響を茜も受けているの相当な負荷がかかっているはずだ。

現に今も「うぅ・・・あ・・・」と呻き声を漏らしている。

 

「辛いよ・・・」

 

「やっぱりそうだろ、だったら手を離して・・・」

 

あくまで茜を気遣う昴、だが茜は

 

 

 

「辛いよっ!!!!」

 

その時、昴の頬に滴がこぼれ、気付いた。

茜は泣いていたのだ。

 

「そうやって自分よりも人のことを優先する昴を見ているの辛い、誰にも言わない秘密を一人で抱えている昴を見ているのが辛い、勝手に悩んで勝手に立ち直る昴を見ているのが辛い!そんな昴に何もできない、何の力にもなれない私がいることが辛いんだよ!!」

 

幼子のように泣きじゃくる茜を見て昴は父の言葉を思い出した。

 

『お前は人のことを思うあまり自分を顧みない。それで傷つくのは自分だけじゃないんだ・・・』

 

次に弥生の言葉を思い出す。

 

『心というのは風船のようなものだ。溜め込めば膨らみ、それが限界を超えれば破裂し、直すことはとても難しい・・・』

 

それまで昴は家族を守る為には自分だけが傷つけばいいと思っていた。

しかし、それは家族の心を傷つけ、心の風船を膨張させていたのだ。

 

そして、それが爆発し今、茜は泣いていた。

 

(俺は、なんてバカだ!なんでこんなことに気付かなかった!大切な家族の為ならどんなに傷ついてもいいと思っていた。だけど俺もまた茜にとって大切な家族だったんだ・・・!)

 

昴は心の中で悔いた。だが、

 

(ごめん茜・・・でも、今立ち止まるわけにはいかないんだ!)

 

昴は腰からオルタリングを出し、一瞬だけアギトの力を解放し、茜を持ち上げる。

 

「え?」

 

茜の頭が後ろに少し向いた途端、今度は茜が倒れそうになると、昴が背中に手をあてて支える。

 

「すば・・・る?」

 

「ごめん、お前がそんなに思い詰めてたなんて知らなくてさ・・・俺、もう一人で背負いこんだりしないからさ・・・」

 

そう言い茜を自分のバイクに乗せる。

 

「掴まってくれ、俺の秘密を今から見せよう」

 

昴は茜を乗せ、アンノウンがいる場所へと走って行った。

 

 

 

 

港にて、G3はアクティアと対決していた。

装甲を纏っている関係上、針を恐れる必要はないが強固な盾と鋭利な斧によりG3は追い詰められていた。

 

『弥生、撤退しろ』

 

「まだだ!昴が来るまで私は退かない!」

 

アクティアが斧でG3を切り上げ、G3は飛ばされてしまう。

 

「ぐあぁっ!?」

 

『バッテリーユニットが今ので損傷した。早く戻らないと動けなくなるぞ!』

 

「しかし、昴がまだ・・・!」

 

動力元が損傷し、重くなったスーツを抱えながら、G3は立ち上がる。

しかし、アクティアはそんなG3を嘲笑うかのように斧を投げる構えをする。

 

 

 

しかし、その場に急行した昴のバイクの到着により構えは解かれた。

 

「昴っ!?」

 

昴が駆け付けたことに安堵すると同時に後ろに誰かを乗せていることに気付く。

 

『櫻田茜・・・?何故彼女がここに!?』

 

G3のカメラ越しで現場を覗く白井も動揺を隠せなかった。

 

 

だが、連れてきた本人である昴は非常に落ち着いている。

 

「茜、これから俺はあいつと戦うために異形に変身する。だけど、姿は変わっても俺だから・・・俺は俺のままで変わるからさ、余り変に見ないでくれよ」

 

「うん・・・」

 

茜は昴の言葉に頷くと昴は安堵した表情をこちらに見せ、すぐに目の前の敵と対峙する。

 

昴は左腰に両手をクロスし、ぐっと右腕を引く。

すると彼の腰にオルタリングが生成されゆっくり右腕を前へ伸ばし、伸ばしきった瞬間、昴は叫んだ。

 

「変身!!」

 

オルタリングの両端を叩き、昴は仮面ライダーアギトへと変身した。

 

その変身に茜は驚かずにはいられなかった。

 

「昴が仮面の戦士の正体・・・!?」

 

そして昴、いや、アギトは敵目掛け走って行った。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

アギトはアクティアに向けてパンチを繰り出す。アクティアは怯まず斧でアギトの首を狙う。

 

「てやぁっ!」

 

それをチョップで叩き落とし、アクティアの胴に正拳突きを打ち込み、アクティアをダウンさせる。追い打ちを掛けよう踵落としを決めようとするアギトだが、

 

「しゃぁっ!!」

 

突然、頭の尾を動かし、アギトの首筋に針を刺した。

 

「ぐがぁっ!?」

 

刺さった瞬間ものすごい毒を浴び、膝をつくアギトにアクティアは立ち再び毒針を刺そうとする。

しかし、アギトはクロスホーンを展開させ、叫ぶ。

 

「ま・・・け・・・る、かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アギトはその場でライダーキックを放つがアクティアはすかさず盾を構えライダーキックを防いだ。

だが、アギトは盾を踏み台にして飛び上がり、バイクへと着地しマシントルネイダーに変化させアクティアに向けて走り出す。

 

「うっ・・・!?」

 

毒で目まいを起こしアギトは転倒しそうになるのを堪えた。

負けられない理由があるからだ。

 

(こいつを倒さなきゃ斗真が・・・それに茜の前で俺が倒れるわけにはいかないっ!!)

 

決心を決めた瞬間、マシントルネイダーが輝き始めた。

 

「何だこれ!?」

 

今までにない現象にアギトは困惑する。そしてアクティアはその隙を狙って拾った斧をアギトめがけて投げた。

 

「とぉっ!」

 

アギトはマシントルネイダーからジャンプし、斧を避ける。

そして着地しようとしたその時、マシントルネイダーの車輪が平らに変形し、『スライダーモード』へと変わった。

 

「変わった!?」

 

突然の変化に仰天しながらも、アギトはスライダーモードで滑走する。

どうやら念じるだけで動かせるようだ。

 

「よしっ、これならっ!」

 

アギトはクロスホーンを展開し、角が6つに分かれる。

ライダーキックの構えに連動し地面にではなくマシントルネイダーの真下にアギトの紋章が浮かび上がる。

 

「はぁぁぁ・・・・・・・・・っ!」

 

マシントルネイダーが最高速度に達した瞬間急ブレーキさせ、その反動でアギトはマッハを超えるスピードでライダーキックを

 

 

 

 

 

いや、『ライダーブレイク』を繰り出した!!

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ライダーブレイクはアクティアの盾を粉々に砕き、本体へ直撃した。

 

「グアァァァァァァ!!」

 

ライダーブレイクを受けた勢いでアクティアはコンクリートにめり込み、そして爆散した。

 

一方アギトは地面を滑りながら着地し、元の昴の姿へと戻った。

 

 

 

「あれが・・・昴の隠してきた秘密・・・・」

 

茜はその戦いを最後まで見届け、昴を見続けていた・・・

 




ついに最初の山場まで来ました

今回茜に正体をばらす展開にしたのですが、実はばらす展開と隠し続ける展開と二つストーリを作っており書いている間もすごく悩んだのですがやはり今作のメインヒロインとしている茜には昴の秘密を知ってもらったほうが話がおもしろくなると思いましたのでばらす展開にしました。他の家族が知るのはまだ先だと思います?(まだそこまで作っていません。申し訳ありませんこのような見切り発車で)

真実を知った茜はどうするのか?そして自ら明かした昴は茜にどう答えるのか?
次回にご期待ください!!


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