とは言えとりあえずなので章名は変わるかもしれません。
「おい待てよ斗真!」
姿を明かして立ち去ろうとする斗真を昴は呼び止める。
「一体あの姿はなんなんだ!お前の体に何が起こっているんだ!」
「そんな事、俺が知りたいぐらいだ!もう俺に関わるんじゃねぇ!」
「何でそうなる!俺とお前の仲だろ!力になるからさ!」
「黙れ!なら今日で絶交だ!」
バイクのエンジンを回し、走り去っていく斗真を止めようとするが先程のダメージにより倒れてしまう。
「ま・・・て・・・・」
段々遠くなっていく斗真を見ながら昴の意識は喪失していった。
Gトレーラー内
昴は目を覚ますと視界に写ったのは弥生と六野の顔だ。
「おお!目を覚ましたか!」
「よかった~、3時間ほど眠ったままだから心配したよ」
「あ、あぁ、すまねぇ」
昴は起き上がり白井もいることを確認する。
白井はこちらが起きたことに気付き喋り出した。
「これでハッキリしたな、あの緑色の怪物は敵だということを」
「おい、ちょっと待てよ」
昴は立ち上がり白井を睨みつける。だが白井の表情に変化はなく話を続ける。
「あいつは二度も君を攻撃し、君を殺す寸前まで追い詰めた。相手にはそれほど明確な敵対意志があるのだよ」
「いや違う。あの時あいつは自分の力を制御できていなかった。それで俺に襲い掛かっただけだ」
熱くなる昴とは対称的に白井は無表情で淡々と話している。
「何故そう言いきれる。証拠はあるのか?」
「証拠ならある、あいつとは親友だからだ」
「根拠になっていない上、先程絶交されたのではないのか?」
「お前なぁ・・・」
遂に昴は両手で白井の胸倉を掴み強い口調で叫ぶ。
「友情がそんな簡単に壊れるものかよ!俺はあいつと絶交したわけじゃない!だから俺は斗真を信じる!!」
昴の激昂にさすがの白井も目を見開き閉口した。
このままエスカレートしていきそうなので、弥生と六野は昴を抑える。
「落ち着くんだ昴!」
「そ、そうだよ!これ以上はまずいって!」
二人の引き止めもあって昴は白井から手を離す。
「一つ・・・聞きたいことがある」
白井は再び昴の目を見て問い掛ける。
「私には友がいない故友情というものがわからない。友情とはなんなのだ?友情があるだけで君はあの怪物を信じようと言うのか?」
「それは違うぜ白井。友情があるだけなんかじゃない。友情があるからそれだけで充分なんだよ、親友を信じる根拠はな。それにもう一つお前が間違っていることがある」
「それは何だ?」
「お前は自分には友がいないって言ったよな。それが間違いだ。俺がいる、弥生がいる、六野さんもいる。お前は一人なんかじゃない」
そう言い昴はGトレーラーから出て行き弥生が追いかける。
「昴、待ってくれ。どこに行くつもりなんだ?」
「斗真の所だ。あいつと話してくる」
「なら私も・・・」
弥生が言い終える前に昴は手で止める。
「悪い、このことは俺に任せてくれ、お前は他にアンノウンが出たときの為に待っててくれ」
「・・・分かった」
本当は分かっていなかった、彼の傷はまだ治りきっていないのだ。
無理やりにでもついて行きたかったが彼の邪魔になってしまうのではないかという思いが過ぎり、弥生はバイクに乗って去っていく昴をただ見つめることしかできなかった。
その頃、斗真は公園のベンチに座り込みんでいた。
(これでいいんだ・・・これでもう誰も傷つけなくてすむ・・・)
「とうまー、サッカーしようぜー」
突然、自分の名前を呼ぶ声が聞こえ声の方を見ると、それは自分ではなく公園で遊んでいた子供の名前だった。
(紛らわしいな・・・)
そのとうまという少年は別の子供に引っ張られサッカーに参加していた。
その光景に斗真はデジャブを憶える。
(そういえばあいつもあんな強引な感じだったよな・・・)
斗真は目を瞑り、過去の記憶を思い出す。
―11年前
彼は王族という存在が大嫌いだった。
王族に何かされたわけではない。
しかし、生まれつき何不自由なく楽な生涯を過ごせることに不公平を感じたり、何もしなくても周りが持ち上げてきたりと、とにかく王族というものが大嫌いで自分は絶対に王族にはなびかないと決心していた。
たとえそれが、
「今日から皆の新しいお友達の秋原斗真くんでーす。さあ皆にご挨拶して」
「よお・・・」
「ご、ごめんねぇ、斗真くんは照れ屋さんみたいなの、それじゃあ斗真くんあそこの空いている席に座ってね」
「よぉ!おまえがあたらしい転園生だな!おれは櫻田昴。未来の王様だぜ!」
転園先の幼稚園で王子と同じクラスになったとしてもだ。
その幼稚園には昴の他に五人も王族がいた。そしてその彼らが幼稚園の中心に立っていた。
「とうまー、サッカーしようぜ!」
特に好奇心旺盛な昴は皆の人気者であり一人でいることが少ないくらいだった。
そしてその好奇心はよそから来た自分にも向けられたが斗真はそれを無視した。
「おーい、きこえないのかー、サッカーしようぜ」
「やらない」
「なんでだよー、いっしょにやろうぜー」
「絶対にやらない」
「おまえサッカーきらいなのか、じゃあドッジボールを・・・」
「そういう問題じゃねぇ!!」
斗真は立ち上がって否定するが昴はキョトンとしている。
「おまえとは遊ばないっていってるんだよ!」
「じゃあサッカーきらいじゃないの?」
「まぁきらいではない」
「じゃあなんでサッカーしないんだよ!こんなにさそってるのに!」
「ひとの話しをきけぇ!」
もう既に会話のドッジボールをしている二人に茜達が駆け付ける。
「すばるどうしたのー?」
「こいつがサッカーすきなのにやらないっていうんだよ」
「いやだからおまえとしないっていってるんだよ!」
一緒に来ていた奏はポン、と手のひらを叩く。
「きっとこの方はわたくしたちとおままごとをやりたいに違いないですわ!」
「だから違うっていってんだろぉぉぉ!!」
しかし、奏は完全にこちらの声を聞かず、指をパチンと叩く。
すると奏の後ろに小さなダンボールの家が作られた。
「わたくしのおままごとは一味違いますわ。へぶんずげーとを使った本格的なあそびでしてよ。あなたも気に入るはずですわ!」
すると周りの子供達が集まってくる。その中には彼らの兄の修も混ざっている。
「かなで、また能力の無駄使いをしたのか・・・」
「う、うるさいですわ!わたくしの勝手でしてよ」
「でもどうするんだ、こんなおおきいの片付けが大変だぞ」
「うう、それは」
ダイボール製ではあるが家はジャングルジムの半分ほどの大きさがあり運ぶのにはかなりの手間がかかりそうだ。
「それならわたしにまかせてー」
茜が家をヒョイと持ち上げる。これも能力によるものだろう。
「あかねー足元に気をつけるんだぞー」
「だいじょうぶだいじょうぶ・・・ってわぁ!」
足元の石に躓いて転んでしまい、家は別の女の子に向かって飛んでいく。
だがその瞬間、修は
「ふぅ、だから気をつけろっていったろ」
「ごめんなさい・・・」
しかし周りは歓声に溢れている。
「あんなおおきものを持ち上げるなんてあかねスゲー!」
「しゅうくんかっこいいー!」
「かなちゃんもすごーい!」
斗真は見ていられず走り出した。これが王族を嫌う一番の理由であった。
特殊能力
王族は生まれながらにしてその力を身に着け、それを使いこなす。
それこそが自分達と王族をわける境界線みたいですごく嫌だったのだ。
「おーいまてよー」
そんなことも知らずに昴は能天気に斗真に声をかける。
「よってくんなよ・・・」
「え?なんだって?」
「よってくんなよ!」
斗真は思い切り感情をぶつける。
「おまえ本当は俺達のことを見下しているんだろ!何の能力も持たないのことを!未来を約束されて何事もうまくいくおまえらから見たらおれたちなんてただのちっぽけな小市民だって笑っているんだろ!」
「・・・・・・」
「おい何か言えよ。むかつくならおまえの能力でおれをぶっ飛ばせばいいじゃないか!」
「いや、おれ能力ないけど?」
「へ?」
斗真は思わずポカンと口を開ける。
王族全員が何かしらの特殊能力を身に着けている。それがこの国の特徴であるはずなのだ。
「でもメタルなんとかって能力を・・・」
「ああ、あれ?なんか名前だけでも能力がないといろいろまずいって父ちゃんが言ってたから・・・よくわかんねぇや」
「おまえ・・・悔しくないのかよ?」
「何が?」
「おまえだけ能力ないことに!他の兄弟はみんなあるのにだぜ!生きててつらくないのかよ!」
「そうかなぁ?母ちゃんのごはんはうまいし、ベッドはフカフカで気持ちいいし、けっこうじゅーじつした人生送ってると思うけど・・・?」
「は?」
「あ、でもしゅう兄ちゃんの能力があればギリギリまで寝ていられるよな・・・でもあかねの方が飛べて楽しいかな・・・だけそれだとど忘れ物が・・・あっ、かなで姉ちゃんの能力があればそこでつくれるし、あおい姉ちゃんの能力ならそもそも忘れないよな・・・うーんみんな楽できてうらやましいなぁ・・・」
斗真はこの時気が付いた。
こいつはすごいバカだ。自分の境遇がどんなものかも理解していないほどの。
しかし、だからこそ心を偽ったりしない彼の事を信じていいと思った。
「おい」
「ん?」
「あそこのブランコまで競争しようぜ。それで勝ったら遊んでやるよ」
「ほんとぉ!よぉーし負けないぞー!」
そして二人は走りだし、僅差で昴が勝ち今があるのであった・・・
「って、何昔の思い出に浸っているんだ俺・・・」
斗真は近くの自販機で買った缶コーヒーのふたを開ける。
(もう後には戻れない、俺の力が誰かを傷つけるくらいなら誰とも関わりを持たない方がいいんだ・・・)
近くで遊ぶ子供達の声が聞こえる。
「すばるー、もう一回リフティング見せて―」
(すばる?あいつと同じ名前とは珍しいな)
そう感じてコーヒーを飲みながら子供達の居る方を見ると、
「しょうがないなぁ~、次で最後だからよく見とけよ、俺様のスーパーハイパーウルトラアルティメットカッコいいリフティングを」
そこには正真正銘の櫻田昴がいて斗真は思わずコーヒーを吹き出してしまう。
(何やってんだあいつ!?)
一方、昴は軽快な動きでボールをリフティングし、最後に大きく蹴り上げその間に宙返りした後落ちてくるボールを足でキャッチし、子供達から拍手を浴びた。
「すばるスゲー!」
「ねぇどうやるの?教えて教えて!」
「ハイハイ、また今度な~」
そう言って子供達の元から去りこちらへやってくる。
「よっ!見たか、俺の超ファインプレーを」
「お前、なんでここに・・・?」
「決まってるだろ、お前と話をするためさ」
「さっき言ったことを憶えていないのか」
「覚えてるぜ、だけどそれがお前のことを放っておく理由になんてならない」
「お前は昔からしつこい奴だったよな・・・」
「それが俺の良い所だよ」
そして二人は互いに笑いあう。こいつとは切っても切れないなにかで繋がれている。そう二人は思っているのだ。
「後悔しても知らないぜ」
「あ?それは自分に言っているのか」
既に二人はバイクに跨り、昴の腰からはオルタリングが、斗真の腰からは『メタファクター』が浮き上がる。
「どうだ、久しぶりに競争でもするか」
「いいねぇ~、ゴールはどこにするか」
「いや、ゴールなんていらないさ」
「ああ?・・・そうだな!」
「「先に倒れた方の負けだ!!」」
アクセルを全開にすると同時に昴はアギトに、斗真はギルスに変身した。
マシンもまた変身する。昴のバイクはマシントルネイダーに、斗真のバイクは『ギルスレイダー』へと。
「ガァッ!」
ギルスが腕からギルスフィーラーを出し、アギトを落とそうとするがアギトは瞬時にストームフォームに変身し、ストームハルバードでそれを弾いた。
「でやぁっ!」
刃を展開させ今度はアギトがギルスを攻撃する。ギルスもギルスフィーラーを引っ込めギルスクロウを出してそれに応戦した。
「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
時速300キロを超えたスピードの中で二人の激闘は続いていた。
Gトレーラー
「戦闘を開始したか・・・」
白井は小型通信機の発信機から彼らが戦っていることを知り、監視カメラにハッキングする作業に写る。
「・・・・・・」
一方、弥生は拳を握り締め佇んでいた。
自分のその場に行きたいが何が出来るかわからないからである。
そんな弥生の心境を汲み取ったのか白井は、
「行きたいなら行けばいい」
「えっ?」
弥生は白井の唐突な発言に疑問を憶えた。
「しかし、昴は来るなと・・・」
「あの男の行動から推測するにいらぬお節介をするのが友達というものじゃないのか?そうでなくともあいつに君の行動を咎める権利はないはずだ」
「・・・G3の出動準備を」
「もうとっくにしている」
その言葉を聞き、弥生は吹っ切れた。
何が出来るかは彼の隣に立ってから考えればよい。
弥生から腕、足、胴と、素早くG3スーツを装着、最後に頭部ユニットを顔につけることで1分もかからずに彼女はG3を装着した。
白井から渡されたガードアクセラーを受け取り、ガードチェイサーに差し込み起動させる。
「ガードチェイサー発進!」
白井の合図と共にGトレーラーのコンテナが開きガードチェイサーはG3を乗せ現場へと向かった。
アギトとギルスはバイクを降り、無人のスタジアムで激闘を続けていた。
アギトはグランドフォームに戻っている。
「たぁー!」
「グルァー!」
二人の蹴りが交差し、まわりに強い衝撃を生む。
「どりゃぁっ!」
「ガァウッ!」
今度は二人の拳が双方に体に直撃し、互いを吹っ飛ばした。
しかし、早く体制を整えたギルスは飛び上がり、ギルスヒールクロウを放つ構えを取る。
(まずい、またあの技だ!)
治りきっていない肩にもう一度受ければ確実に負けてしまう。後ろに下がって避ける時間もない。
(いや、違う・・・避ける方向は後ろにじゃない・・・上だ!)
あえてアギトはギルスのいる上に飛び上がった。
「!?」
アギトはギルスよりも高く飛び、クロスホーンを展開する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そのままギルス目掛けライダーパンチを放ち、ギルスは地面に叩きつけられ勝負は決した。
「やるじゃないか・・・」
地面に倒れながら斗真は顔を上げて昴を見る。
「やはり俺と違い力を使いこなしている差か?」
「差なんてもうないさ、お前は既にその力をものにしているだろ」
斗真は戦いの記憶を思い出す。
前までは殆どギルスに支配される形で振るっていたが彼と戦っていたとき、完全に自分の意志で動かしていたのだ。
「お前・・・これを狙って!?」
「まぁね」
「呆れた奴だ・・・もし俺がこの力に支配されたままどうするつもりだったんだ?」
「その時はその時で全力でお前を止めるだけさ。俺は無敵だからな!」
そして昴は手を差し出す。
その手を掴もうとしたその時、強烈な殺気を感じ取った。
「「!?」」
二人は瞬時にその場から跳び跳ねるとさっきまで彼らがいた場所に斧がブーメランの如く飛んできた。
そして斧は昴たちの後ろに現れた蠍のアンノウン スコーピオンロード レイウルス アクティアがキャッチした。
「空気の読めねぇ奴だな!」
昴は素早くアギトフレイムフォームに変身し、飛び上がってアクティアめがけてセイバースラッシュを放った。
パワーに特化したフレイムフォームの必殺技を今まで破った者はいない。
だからこそアギトは目の前の敵を瞬殺する為に無敗の必殺技を繰り出したのだ。
だが、しかし無敗のはずのセイバースラッシュがアクティアの盾にぶつかり、動きを止めた。
「なんだと・・・!?」
倒せないどころから傷一つ負わせることの出来なかった結果にアギトは動揺し硬直してしまう。
そこをついたアクティアは頭に付いた蠍の尾を伸ばしその針をアギトに向けて刺そうとする。
(まずい!?)
しかしそれを見た斗真はギルスに変身し、アギトを突き飛ばし自らアクティアの針を受ける。
「なっ・・・」
首元に針が刺さったギルスは斗真の姿に戻り、その場に崩れ落ちる。
昴はその針の威力よりも斗真が自分を庇い刺されたことに衝撃を受け呆然と立ち尽くした。
アクティアの脳内に彼らを操る謎の青年の声が響く。
『ギルスの少年は倒れました。さぁ、次はアギトに止めを刺すのです・・・!』