城下町のAGITΩ   作:オエージ

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初めましてオエージと申します。

このたび仮面ライダーアギトと城下町のダンデライオンのクロスオーバーを書くことになりました。
初投稿のため、変な部分もあるかもしれませんがすぐ慣れるよう努力しますのでよろしくお願いします。

それではどうぞ!


第1部 G3 ギルス編
第1話 櫻田さんちの十人きょうだい


ジリリリリ!と鳴る目覚まし時計の音とともに少年の朝は始まる。

少年の名前は櫻田(さくらだ) (すばる)。櫻田家の次男だ。

大きくあくびをしながら昴は目覚まし時計の時間を見る。

 

AM6:30

 

起きるには少々早い時間であるが、彼はベッドから起き上がって制服に着替え洗面所へと向かう。

 

(まだみんなは起きてないようだな)

 

早朝の洗面所で顔を洗い、髪を整え、ちょうど歯を磨き終え洗面所を出た頃、ドタドタと洗面所やトイレが騒がしくなる。

 

「おい遥早くしてくれ。輝がもう限界だ」

「あ、兄上・・・僕はまだ我慢できます」

「もう、お父さん長すぎるよちょっとどいて!」

 

(やっぱり櫻田家の朝は戦争だなぁ)

 

櫻田家には四人の男子と六人の女子、両親を合わせると12人の大家族であり、当然その朝はこのとおり賑やかになるのだ。そのため昴は混雑を避けるために早起きしているのだ。

 

「朝は早起きに限るな~」

 

このまま、朝ご飯まで二度寝でもしようかと考えていると台所から姉、櫻田葵の声が聞こえる。

 

「昴、茜と光を起こしてきてちょうだい」

 

そういえば二人を見かけないと思ったら寝ていたのか。これでは折角早起きしてきた意味がなくなるが姉の頼みを無視するわけにもいかないので昴は二人が寝ている部屋に向かった。

 

 

 

 

「こいつらまだ寝てるのか・・・」

 

二人の部屋に入ってみればそこには未だにベッドで惰眠を貪る茜と光の姿があった。

 

「おーい光起きろ、もう朝だぞ」

 

「むにゃむにゃ…もう食べられないよ…」

 

「そんなテンプレみたい寝言はいいから、早く起きろ」

 

やっと光は起き上がり、のろのろとした動きで部屋から出ていった。

 

「まずは一人目クリアと、さて」

 

昴は振り返り、もう一つのベッドで眠る自分と同じ赤毛の少女をみた。

彼女は櫻田茜、昴の双子の妹である。あまり似てないが。

 

「ほら起きろ、そんなに寝たってお前の胸は大きくならねぇぞ」

 

「ひどくないっ!?」

 

兄の無情な発言に妹茜は跳ね起きる。

 

「まだ成長期だから!」

 

「お前の成長期はとっくの昔に終わってるよ」

 

「かなちゃんや葵お姉ちゃんがあれだけ大きいなら私にも素質はあるはずだよ!」

 

「姉貴達は中学の時からあっただろ、認めろよお前は一生まな板だよ」

 

「うぅ、これ以上胸の話はしたら蹴るよっ」

 

「ほぉ、面白ェ…!!お前の胸と同じくらい貧弱な足が俺様のアイアンボディに通じるか…オ゛ウ゛ッ!?」

 

昴が言い終える前に茜は昴の脛を蹴る。さすがのアイアンボディ(?)も脛には弱かったのか涙目になりその場でうずくまった。

 

「脛は無いだろ脛は、脛と言えばお前『ジョンケイの泣き所』だぞ」

 

「それを言うなら『弁慶の泣き所』でしょ、ってか誰よジョンケイって」

 

「ジョンケイと言えばあれだろ、あれ?誰だっけ?」

 

「知らないで言ってたの!?」

 

「お前にジョンケイの何が分かるんだよ!!」

 

「逆ギレ!?」

 

 

「もう、いつまで部屋にいるのよ茜、昴も喧嘩しないで起こしてきてっていったじゃない!」

 

なかなか降りてこない双子に痺れを切らし、長女の葵が二人の喧嘩に乱入してきた。

 

「「だって茜(昴)が!!」」

 

「だってじゃないわよ、これ以上続けるのなら二人とも朝食はなしよ」

 

「「ええっ!?そんなぁ!?」」

 

こういう所は息ぴったりなのね、と葵は思った。

 

「それは酷いよお姉ちゃん!」

 

「そうだぜ、餓死しちまうよ!」

 

「(餓死は言い過ぎなんじゃ・・・)そうなりたくなければ今この場でやるべきことがあるでしょ」

 

お互い謝りなさいと葵は遠回しに諭す。

 

「えっでも元々は昴が・・・」

 

「俺は茜に蹴られたんだぜ」

 

「・・・」

 

互いの言い訳にの耳を貸さずただニッコリとした笑顔で見つめる姉の顔を見て二人は察した。

 

((逆らえば殺られる!))

 

 

「「・・・ごめんなさい」」

 

こうして櫻田家の朝に定番イベント双子の口喧嘩は長女の無言の圧力で強制終了するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「今日はママ特製野菜オムレツでーす。みんな残さず食べるように」

 

 

『『いただきまーす』』

 

「パパ、食事中ですよ」

「わ、分かってます」

「グリーンピース入ってる・・・」

「好き嫌い言ってると身長伸びないわよ」

「母上、僕は好き嫌いないので大きくなれますよね?」

「ええそうね。栞、よく噛んで食べてね」

「うん」

「あ、そういばトイレットペーパーのストックが無いけど」

「今週の買い物当番だれだっけ?」

「修ちゃんでしょ」

「ああ、俺か、今日帰りにでも買ってくるよ」

「修くん、お願いね」

「親孝行な子たちで助かるわー」

「いえいえ♪」

 

こうしていると一見普通の大家族の食事風景にしか見えないがこの家は実は全然普通ではないのである。

それは・・・

 

「あなた、いつまで新聞読んでるの!」

 

母五月が父総一郎の新聞を取り上げると、そこには年相応の父親の顔とその頭の上には王冠を載っていた。

 

「なんで王冠してるの・・・?」

 

「いや、間違って持って帰ってきちゃったんで、せっかくなんで」

 

「パパなんか王様みたい!」

 

「あの、一応本物だから」

 

 

 

「そうです、うちの父さんはこの国の国王で俺達は王族なのです!!!」

 

「・・・誰に話してるの?」

 

「いや、なんか言わなきゃって頭の中で何かが、ね」

 

「昴、ふざけてばかりいると本当にごはん抜きにするわよ」

 

「最近の姉ちゃんキツイや・・・」

 

 

 

 

 

 

櫻田家は王族である。

本来なら城の中で生活している彼らだが、父の教育方針により町の中で生活し、普通の学校で教育を受けているのだ。朝食を食べ終えた葵、修、奏、昴、茜の五人は自分たちが通う高校に向かう。同じ学校なので予定が合わない時以外は五人一緒に登校している。

 

「桜ももう終わりだな」

 

「そうね、花見のチャンスは今週末が最後かも」

 

「今年はどこでやるんだろうなぁ、楽しみだな~♪」

 

「あんたが楽しみにしてるのは弁当だけでしょうが」

 

「まぁそう言うなよ、よく言うだろ?『花より肉団子』って」

 

「言わないだろ」

 

「えっ?『花よりきび団子』だったけ?」

 

「あんたが食べ物にしか興味のないことはよーく分かったわよ」

 

このような感じに王族とは思えないような会話をする修、奏、昴の三人に遅れて葵が声をかける。

 

「みんな待って」

 

「どうしたよの姉さん、そんなにゆっくりしてると遅れるわよ」

 

「そうなんだけど茜が・・・ほら」

 

 

「カメラの位置変わってる!?せっかく記憶してたのにぃ!」

 

やはりお前か…、といった感じのため息を三人は吐いた。

 

王族が町の中で普通の暮らしをするにあたって、最初に出てくる問題は安全の確保だ。そのために町中に大量の監視カメラが設置されておりそれのおかげで自分達は普通の暮らしができるわけなのだが・・・

 

「あのさぁ、いい加減なれろよ茜」

 

「無理なものは無理なの!ってカメラの速度も速くなってる!?」

 

今度は四人同時にため息を吐く。

そう、茜は極度の人見知りであるのだ。

 

「大体町内だけでも2000台って多くない!?しかも週ごとに位置変わるし・・・覚える身にもなってよ」

 

「覚えてるのかよすごい無駄な努力だなぁオイ」

 

「全くね、カメラの位置を覚える時間があるならスピーチの一つや二つ考えるのに使うわよ」

 

「スピーチ?」

 

「だって私たち、次期国王選挙の候補者なんだから」

 

監視カメラが設置されてる二つ目の理由は次期国王を決める選挙である。そのためのカメラに映る行動言動の一つ一つが国民へのアピールとなるのだ。期限は1年間。

しかし人見知りの茜からすればいい迷惑である。

 

「うう、王様なんて修ちゃんか、葵お姉ちゃんのどっちかがやればいいのに」

 

「おいおい、勝手に決めるなよ、俺は王様になる気はないぞ」

 

「そうよ、チャンスは平等にあるべきよ」

 

「でも・・・」

 

「でもじゃないわよ、父さんが決めた事なんだから仕方ないでしょ」

 

 

「「ま、王様になるのは私(俺)だけど!」」

 

「「・・・ん?」」

 

奏と昴の声が重なり不穏な空気を作り出した。王になる気の無い長男長女とは対称に次男次女は兄弟の中でも王になろうとする意志がとても強いのである。

 

「姉貴が王になったら独裁国家になりそうだな」

 

「あら、独裁と言うのも悪くないものよ。要はそれに見合う知力やカリスマが備わっていればいい話だもの。私にはそれが充分備わっていると自負しているわ。その点あんたは七の段も出来ないんだから絶対に王には向いてないわね」

 

「残念ながらそれは昔の話だぜ!特訓の結果俺は七の段の半分まで出来るようになったのだ!」

 

「いや、それ誇れることじゃないよね!?」

 

「お前・・・まだ七の段出来ないのか」

 

「えっ?兄貴できるの?」

 

「余裕でできるぞ」

 

「マジかよ凄ぇな!」

 

「俺は逆にお前が凄いと思うぞ・・・」

 

 

「勝負あったわね、もっともあんたが七の段が出来ようがなかろうが私には勝てないけど」

 

「な、なんだと!」

 

「大体あんたは何の為に王になるのよ、どうせみんなにチヤホヤされたいとかくだらない理由でしょ」

 

「なにっ」

 

そして奏は神妙な顔で話を続ける。

 

「私にはあるわよ、ちゃんとした理由が。その為ならどんな事をする覚悟もね」

 

「奏、お前まだあの時のことを・・・」

 

「あの時?」

 

「ああそうか、茜があの時の記憶が抜け落ちているのか」

 

「?」

 

「こっちの話よ。とにかく王になる大した理由も覚悟もないあんたに私に勝つ道理なんてないのよ」

 

「・・・それは違うぜ」

 

「なんですって」

 

今までのふざけていた様子が嘘のように昴は真剣な表情である。

 

「俺にだってあるぜ、理由。今は言えないけどその為の努力は惜しまないし、妥協もしない、だから俺は姉貴にも絶対に負けない」

 

「言わせておけば・・・大体あんたは・・・」

 

「奏っ!」

 

それまで黙っていた葵が声を上げる。

 

「姉さん?」

 

「奏、生徒会があるから早く行った方が良いんじゃないの?」

 

「そ、それもそうね、ほら修、行くわよ」

 

「俺関係ないだろ」

 

「いいからっ!」

 

奏たちはそのまま走りさっていった。

 

 

「さて俺達も行くか」

 

「待ってよー、まだカメラが・・・」

 

「お前、まだそこにいたのか・・・」

 

先ほどから一ミリも移動していなかった茜に昴は三度目の溜め息を吐く。

 

「お前その調子だとマジで遅刻だぜ」

 

「遅刻!?うーん、ちょっとズルいけどあれを使うしかないかなぁ」

 

「茜、大丈夫なの?」

 

「このままだと私だけじゃなく二人にも迷惑かけちゃうから」

 

そう言うと茜は二人に手を差し出す。二人が手を握った瞬間、三人に足がふわっ、とした感覚で宙に浮き、気づけばカメラのない空高くまで舞い上がった。

 

「相変わらず凄い能力ね、茜の重力制御(グラビティコア)

 

特殊能力

王家に生まれたものだけが持つ不思議な力。生まれた時から一つの能力を授かり、それが王家の証となる。

茜の持つ能力は重力制御(グラビティコア)。文字通り重力を操り、その応用で空を飛ぶことが出来るのだ。

 

「なぁ、今どの辺?目瞑ってる分からないんだけど」

 

「なんで目瞑ってるの?」

 

「いや、見えるとまずいからさ」

 

「何が?」

 

「何がってほら、絶景が、ね」

 

「絶景?・・・は!」

 

その瞬間茜の顔が真っ赤になった。宙に浮いてるため彼女の禁止区域が丸見えなのだ。

 

「見ないでぇ~!!」

 

「だから見ないように目を・・・って振るな振るな!落ちるってば!」

 

能力は使い所に要注意である。

 

 

 

そんな感じで昴達はなんとか学校に着いた。

 

「はぁ、死ぬかと思った」

 

「ご、ごめん」

 

「ごめんじゃねぇよ、落ちたらシャレになんねぇぞ」

 

「うう、反省します・・・あれ?」

 

茜は自分の隣の誰も座っていない席を見る。

 

「白井さん、今日も休みなんだ」

 

「あいつ病弱だからな」

 

「消しゴム、借りっぱなしなんだよなぁ」

 

「別にいいんじゃないの」

 

「よくないよ!見てよこれ、新品だよ!私が返しそびれたから白井さん怒ってるきっと・・・」

 

「はいはい、分かったよ今度学校に行くように言っとくよ」

 

「え、昴白井さんと仲良いの?」

 

「仲良いってわけではないが、まぁ顔見知りだな」

 

「本当!?よかった~これで肩の荷が下りたよ」

 

「どうでもいいもん背負ってんのな」

 

やれやれといった感じで昴は椅子に座る、茜は昔から妙な所で律儀なのだ。それが彼女の良さではあるが

 

「相変わらず妹君と仲良くご登校ですかい?昴『様』」

 

「それわざと言ってるだろ」

 

「そうじゃなきゃお前を様付けになんて死んでも呼ばねぇよ」

 

そう言って話かけてきたのは昴の友人秋原(あきはら) 斗真(とうま)だ。

 

「まぁなんだ、あんまり学校でイチャつかない方がいいぞ。お前だって無闇に誰かの恋心を傷つけたくないだろ」

 

「誰がイチャコラしてるって?こっちは殺されかけたんだぞ」

 

「死と隣り合わせの恋か、悪くないね」

 

「人の話聞いてる!?」

 

会話のボクシングを始める二人だがそれは仲の良い証拠でもあるのだ。

斗真が自分の席に戻り、これでホームルームまでしばらく寝ようかと考えていたが彼の受難はまだ終わらない。

 

 

「おはようございます!昴様!!今日も校舎は異常無しであります!」

 

まるで軍人のような喋り方で挨拶と敬礼をしたのは風紀委員の四葉(よつば) 弥生(やよい)

ストーンガールというあだ名を付けられるほど、几帳面な堅物少女だ。

 

「その敬礼やめろって昨日言ったばかりだよな」

 

「しかし、王国の軍人として王子と王女を守る義務が・・・」

 

「いや、お前軍人じゃないだろ。親父がそうなだけだろ」

 

弥生の父は軍のお偉いさんらしく、彼女が自分達と同じクラスなのも偶然ではないのだろう。

 

「親父になんて言われてるのか知らないがここでは同じクラスメイトだ。その堅苦しい敬礼も挨拶もなしだ分かったか?」

 

「・・・仰せのままに」

 

「全然分かってねぇ!?」

 

「申し訳ありません!罰として校庭十周してきますので!」

 

「だから、それがダメだって言ってんだよ!」

 

(はぁ、何ヶ月続くんだよこれ)

 

昴は深く溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

一方、場所が変わってとある公園で・・・

 

その日、事件が起こり、警察によって封鎖されていた。

 

「ガイシャの状態は?」

 

「死亡推定時刻は三日前といった所ですね」

 

「三日前?こんな目立つ所で三日の間発見され無かったてのはないだろ」

 

「仕方ありませんよ、見つかった場所が場所ですからね」

 

「それはどういうことだ?」

 

「口で説明するより実際に見てもらった方がいいですね、こちらへ」

 

現場を見た刑事は思わず自分の目を疑った。

 

 

何かの間違いだ、こんなバカなことがあって良いのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間が木に埋まっているなど・・・




変身までもっていきたかったのですが長くなりすぎたので二つに分けました。
次回は必ず変身するのでご期待ください。

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