日曜?
あいつは敵ですよ。月曜日のマブダチです。
大地に穿たれた無限に魔物を産み出し続ける大穴。
人はそれをダンジョンと呼んだ。
細かな歴史は知らないが、天より降臨した神々が大穴に蓋をして、モンスターの脅威に喘ぐ人々に加護を与えた。
加護を与えたられた人々は、背中にその恩恵を刻まれ、ファミリアと呼ばれた。
かつて大穴があった場所には巨大な街が作られ、ダンジョンに潜ることで生計を立てる『冒険者』達の拠点として発展を続けている。
……それが、カイトの知るオラリオの歴史だ。
「だからね! オレぁ言ってやったんすよ……経験値がたりねぇな、ってね!」
酒に顔を赤らめた元部下の言葉に、カイトは何度目かもわからないため息をついた。
黒髪にやや浅黒の肌、南方の出だと言う彼は、15と言う歳の割に大きな体躯で胡座をかいている。
右手には酒瓶。透明な液体が、馬車の揺れに合わせて揺れている。
「わかった、わかったよリロイ。だから少し黙ってろ」
先程から、ため息の数だけ同じ数の話を聞かされている。
同い年だが酒に弱く、また調子のいい性格の部下、リロイ・オーガスタは、酔えば毎回こんな有り様であった。
「いやー、のどかだなぁ」
「そうですねー」
そんな酒に呑まれたリロイと絡まれるカイトを余所に、馬車の小窓から外を眺める2人が、穏やかな陽光とどこまでも続く草原を前に会話を交わしていた。
1人はやや燻んだ金髪に色白の肌。座っていても判るほどに長身で、細い。貧弱に見えないのは、相応に鍛えられていることを予感させる筋肉の盛上がりがあるからだろう。
一目で判るほど美形だが、それを台無しにする嘲笑うかのような笑みが口元に張り付いていた。
2人目は少女だった。
黒い癖っ毛が綿毛のようにも見える。眠たげな瞳は外へと向けられていて、カイト達からは窺えない。
小さな身体は、痩せてはいない。前腕や脹ら脛など、用途に併せて鍛えていることが判る。
「セイル、キリカ……お前らそれは無いんじゃないか?」
カイトの視線を受け、2人が振り返る。
「はっはっは、あ、旅人さんですか? ちょっとその酔っぱらいが黙るまで話し掛けないでもらっていいすか?」
「お酒臭い……そいつは隊長の担当」
その目は、どこまでも他人事だった。
「なっはっはっは! 仲良いなぁ兄ちゃん達!」
御者台に座る商人からそんな声が掛かる。
「そっちの酔っ払いの兄ちゃんも、そろそろ醒ましときなぁ。あの丘を越えりゃあ、お目当てのオラリオだぜ!」
その声に、4人は思い思いの方法で行く先へ目を向ける。
「ついにたどり着きましたね」
キリカは呟くように。
「我が栄光のオラリオ、いい女との出会いを!」
セイルはまるで緊張感もなく。
「イエー!! オラリオ、イエー!!」
リロイは馬鹿っぽく。
「オラリオ……今度こそ、俺は……」
カイトは、何かの決意を秘めるように。
元マルネシア王国、戦奴第七小隊所属の4名は、かくはともあれ、オラリオへと辿り着いた。
取りあえず辿り着きました。
主人公と他数名で視点をザッピングしながら進めていく予定です。
ただ、1話内で何度も切り替えるとかはやらないです。
めんどくさい。