ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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更新です。
矛盾が出てきてないか、怖いっス(-_-;)
さて、今回もご都合主義満載ですね(笑)
ちなみに、悠斗君が平静に戻った時、黄龍と麒麟は、具現化を解きました。

では、更新です。
本編をどうぞ。


咎神の騎士Ⅳ

 悠斗が目を開けると、正面では凪沙が微笑んでいた。

 

「おかえり、悠君」

 

「ただいま。 悪いな、暴走しちゃって」

 

「ううん、私の為に怒ってくれたんでしょ?」

 

 悠斗は、そうだな。と頷き、

 

「それにしても、本当に朱雀と融合してるとは……」

 

 凪沙の背からは、二対四枚の紅蓮の翼が付与されているのだ。

 悠斗が付与する守護はなくなってしまったが、悠斗には、先程手に入れた力を使う事ができる。

 

「氷結を司る妖姫よ。 我を導き、守護と化せ!――来い、妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)!」

 

 悠斗は、妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)と融合した。

 本来なら、融合ではなく憑依という形になるのだが、アヴローラの魔力を取り入れた事で、朱雀と同様な事が可能になったのだ。

 悠斗の瞳には蒼が入り混じり、背から二対四枚の氷結の翼が出現する。

 

「初めて見るけど、妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)との融合は綺麗だね」

 

「そうか? まあ、朱雀の蒼バージョン的な感じだしなぁ。 てか、俺らもヴァトラーたちの所に行くか」

 

 悠斗たちがヴァトラーの元へ歩み寄ると、悠斗の目に映ったのは、超小型結脚戦車(マイクロロボットタンク)から顔を出してる浅葱。 リディアーヌの、超小型結脚戦車(マイクロロボットタンク)補助腕(マニピユレーター)に回収された、牙城に志緒、そして緋沙乃。

 ヴァトラーは悠斗に気づき、振り向いた。

 

「おや。 戻ったんだね、悠斗」

 

「まあな。 凪沙たちのお陰だ」

 

 悠斗の姿を見たヴァトラーは、ふむ。と頷き、

 

「その姿は、妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)との融合かイ?」

 

「ああ、そうだ。 ちょっと色々あってな、可能になったんだよ。 で、今の状況は?」

 

「咎神の騎士と、イブリスベール・アズィーズ殿下が戦闘中だよ」

 

「……成程。 咎神の騎士か」

 

 ――咎神の騎士。

 彼らは、聖殲派の武装工作員だ。 だが、悠斗は不可思議に思った事があった。

 “カインの巫女”である浅葱に向かってなぜ矛を向けた? 奴らならば、“カインの巫女”を傷つけようとしないはずだ。

 悠斗が考えた事は二つだ。

 ――咎神の騎士は、浅葱が“カインの巫女”という事を知らなかった。

 ――咎神の騎士が奉る“カインの巫女”はもう一人いる。

 後者の場合は、今より面倒くさそうになりそうだなぁ。と思い、溜息を吐く悠斗。

 悠斗は、まあ今はいいや。と思い、思考を停止させた。

 

「(……それにしても、雷酸の王蛇(メルセゲル)か……)」

 

 イブリスベールが召喚していた眷獣は、飛龍(ワイバーン)の巨体をも凌ぐ、王蛇(コブラ)に似た眷獣だ。 王蛇(コブラ)は猛毒の瘴気を纏っており、生物が触れるだけで絶命するだろう。 王蛇(コブラ)によって支配された空間では、雷酸の王蛇(メルセゲル)の猛毒の範囲内。 相手にすると、苦戦を用いられる眷獣ともいえるだろう。

 雷酸の王蛇(メルセゲル)は、マウィア第二王女()の眷獣のはずだ。 だが、雷酸の王蛇(メルセゲル)はイブリスベールが使役している。 考えられる可能性は一つだけだ。――姉を食らい、イブリスベールは、雷酸の王蛇(メルセゲル)を取り込み戦力を強化したのだろう。

 咎神の騎士は、黒銀の鎧に今はかろうじて護られているものの、力尽きるのは時間の問題だ。

 その時だった。 咎神の騎士は、騎槍を氷原の上に突き立て、其処に落ちていたのは、牙城が投げ捨てた重機関銃だ。 騎槍が機関銃を貫いた瞬間、騎槍の輪郭が歪み、融けた飴のように流動して、鋭利な騎槍が無骨な銃器へと姿を変えていく。

 錬金術師が使う物質変成に似ているが、本質は別物。 錬金術師は物質の組成を自在に操るが、原理の解らない複雑なメカニズムを再現することはできない。

 対しては咎神の騎士は、騎槍の組成は変えないままに、弾丸を撃ち出すという機能だけを模倣した。機関銃という兵器の“情報”だけを奪ったのだ。

 騎槍の先端に新たに穿たれた銃口から、漆黒の弾丸が撃ち出され、隙ができた瞬間に、傷ついた飛龍(ワイバーン)が飛翔した。 飛龍(ワイバーン)は騎士を拾い上げ、そのまま上空へと逃れていく。 魔獣の限界を超えた凄まじい加速だった。

 騎士の姿は小さくなり、消え残る冷気の霧に紛れて消える。

 

「逃げた……いや、より有利に戦える場所を求めて撤退したか。 小癪な奴よ」

 

 イブリスベールが苛立たしげに呟いた。

 咎神の騎士は、近代兵器の能力を模倣する。 だとすれば、周囲に何もない氷原よりも、利用できる兵器の多い場所の方が圧倒的に有利に戦えるはずだ。

 

「首尾はどうだい、キラ?」

 

 ヴァトラーが誰もいない方角に向かって呼びかけると、その場に銀色の霧が集まって、美しい少年の姿を生み出した。 彼の指先には、熔岩に似た琥珀色の糸が結びつけられて、それが上空に向かって伸びている。

 

「問題ありません、閣下。 捕まえました」

 

 キラ・レーベデフが恭しく答えた。

 彼らのやりとりを聞いていたイブリスベールは不満げに鼻を鳴らし、

 

「端から、聖殲派の隠れ家をあぶり出すのが狙いか。 喰えない男だな、蛇遣い──」

 

「我らが戦王の下知でしてね」

 

 ヴァトラーは素知らぬ顔で肩を竦める。

 

「──彼の咎神を滅ぼすことが、我ら戦王の末裔の宿願。 その為の聖域条約だと」

 

「その言葉、今は信じたことにしておこう」

 

 イブリスベールは、冷ややかな目つきでヴァトラーを見上げた。 友好的な口調とは裏腹に、二人の間に流れている空気には、抜き身のナイフのような緊張感が含まれている。

 そんな空気の中に割り込んだのは、有脚戦車から顔を出していた浅葱だ。

「なんだったの、あの黒マント? てか、今気づいたけど、何で悠斗がここにいんのよ?」

 

「凪沙が危険って聞けば、俺がその現場に急行するのは当然だろ」

 

 浅葱は、それもそうね。と納得する。

 

「でだ。 さっきの浅葱の質問だが、奴らは“聖殲派”──咎神カインを奉じる狂信者だ」

 

「テロリストって……何でそんなのが出てくるわけ……?」

 

「奴らの目的は“聖殲”の再現だな。 全ての魔族を滅ぼし、人類の本来あるべき姿を取り戻す。 魔族も魔術も存在しない世界をな。 その為の鍵が、この地にあったんだろうな」

 

 俺の予想も外れてるかもな。と呟く悠斗。

 

「全ての魔族を……滅ぼす……?」

 

「そう、全てだ」

 

「どうして落ち着いてるの、悠斗!? それって、あんたも対象に入ってるんでしょうが!」

 

「あー、まあそうだな。 でも俺、“聖殲” とか興味ないんだわ。 俺は、凪沙と暮らせれば何でもいいし」

 

「……何て言うか、ホントぶれないわよね、あんた」

 

 悠斗の言葉を聞き、溜息を吐く浅葱。

 すると、イブリスベールが悠斗と凪沙を一瞥してから、

 

「時に、神代悠斗。 暁凪沙。 それは眷獣融合なのか?」

 

 イブリスベールが困惑するのも解る。

 眷獣と吸血鬼が融合する。 そのような事は、通常ではありえないからだ。

 

「まあな。 妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)との融合だ」

 

「私は、朱雀とだよ」

 

 イブリスベールは、失笑した。

 

「神代悠斗は“紅蓮の織天使”ではなく、“氷結の織天使”だな。 代わりに、暁凪沙が“紅蓮の姫巫女”って所か」

 

「ちょ、待て。 そういう二つ名はどこで洩れるか解らねぇから、安直に付けるなよ」

 

「私も、“紅蓮の姫巫女”はちょっと恥ずかしいかも……」

 

 だが悠斗は、“紅蓮の姫巫女”は、凪沙にぴったりな二つ名だな。と思っていたのは、彼女には秘密である。

 浅葱は、凪沙の眷獣融合に関して深くは聞いてこなかったが、おそらく予想はしているだろう。 今の凪沙は吸血鬼であり、悠斗の血の従者(血の伴侶)だという事に。

 これまで話を聞いていたヴァトラーが、会話に入ってくる。

 

「では、僕はこれで。――キラ、トビアス」

 

 言葉が全て終わらぬ内に、ヴァトラーは金色の霧と化して姿を消した。

 また、浅葱の話によると、古城と雪菜も“神縄湖”に来ているらしい。

 

「どうする、凪沙? 古城と合流するか?」

 

「そうだね、合流しよっか。……古城君の事だから、過保護を拗らせてるかもしれないし……」

 

「まあ、古城はシスコンだからな。 てか、凪沙。 翼の動かし方わかるか」

 

「えっと、こうかな?」

 

 凪沙が、肩甲骨付近に力を伝えると、紅蓮の翼は羽ばたくように動いた。

 悠斗が、よし。と頷いて、

 

「んじゃ、古城たちの所まで飛ぶか」

 

 悠斗は気配感知で、古城が居る場所は特定していたのだ。

 

「OK-」

 

 凪沙は軽く返事をし、紅蓮の翼を羽ばたかせ、悠斗もそれに続く。

 悠斗は、後は任せたわ。と呟き、悠斗と凪沙は翼を羽ばたかせ飛翔した――。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 悠斗と凪沙が飛翔していると、目の前では戦闘が行われていた。

 其処にいたのは、少女二人と、骸骨に似た人型の傀儡(ゴーレム)だ。 おそらく、少女と対峙している傀儡(ゴーレム)も、“情報”によって造られたのだろう。

 

「……あれは、獅子王機関の剣巫か?」

 

「悠君。 あの子が持ってる長剣は、六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)だよ」

 

「成程。 んじゃ、獅子王機関の剣巫で間違いなさそうだな。 そしたら、あの幼い子は誰だ?」

 

 悠斗の目に映ったのは、鋼色の髪の少女だ。

 傀儡(ゴーレム)たちの狙いは、鋼色の髪の少女に限定されていた。 その証拠に、この場から逃走する自衛隊員には目を向けていない。

 傀儡(ゴーレム)の背後から、銀黒色のローブを纏い仮面をかけた人影が、少女たちと対峙して何かを話、交渉が決裂したかのように六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)を携える少女と戦闘になるが、結果は目に見えていた。

 少女が携える、六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)が無効化されているのだ。 まるで、異能の力など、最初から存在(・・・・・・)しなかったかのように──。

 そして、トラックから生み出された傀儡(ゴーレム)の巨体が、少女目がけて片足を踏み下ろそうとする。

 少女はそれに対抗しようと、六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)の剣身で受け止めようとするが、六式降魔剣・改(ローゼンカヴァリエ・プラス)の障壁が無効化されているので、力で押され潰されるのは時間の問題だろう。

 だが、直後に鋼色の髪の少女が叫ぶと、それは獣の雄叫びに変わる。

 少女のコートが弾け飛び、現れたのは透明な鱗に覆われた龍だった。 異形の翼と禍々しい四肢。 太古の恐竜を思わせる蛇身──。

 悠斗は頷き、

 

「……彼女が“神縄湖”の底に封じられてたものか。 龍って事は“聖殲”が作った護り手。って所だな」

 

「……悠君。 どっちの助けに入るか明白だね」

 

「そうだな。 獅子王機関の剣巫を助けるか。 今後の情報も手に入りそうだし」

 

 悠斗と凪沙は、下降準備に入り、少女たちの場所目掛けて加速する。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ――――傀儡(ゴーレム)の片足が、唯里に踏み下ろされる瞬間、ドンッ!という衝撃音と、少女たちの前のコンクリートが穿たれる。

 そして、傀儡(ゴーレム)は氷漬けにされ、唯里は紅い結界に護られていた。

 

「え!? 凪沙さん!?」

 

 唯里は、巫女装束を纏った凪沙を見て目を丸くする。

 唯里が護衛に就いた時の凪沙は、金髪の髪をした少女だったはずだ。

 だが今の凪沙は、背からは紅蓮の翼が二対四枚、計八枚展開され、僅かに、瞳は朱く染まっているのだ。

 

「……悠君。 コンクリートに穴が空いちゃったよ」

 

「……い、いやー。 カッコよく登場しようと思ったんだけど、加速の加減をミスってな……」

 

 あはは、と笑う少年。 少年の背には、氷結の翼が二対四枚。 此方も、瞳は僅かに蒼に染まっていた。

 緊張感が皆無なやり取りを見た唯里は、

 

「(誰!? この男の子!?)」

 

 唯里から見て、ほぼ同い年と思われた。

 一つだけ解る事もあった。 もし唯里が、全力で少年と戦っても必ず負ける。 強さは、獅子王機関の三聖に匹敵すると思われた。

 ――直後、再び介入する気配があった。

 ローブの者の足元から伸びていた漆黒の薄膜を、銀色の閃光が断ち切った。

 閃光の正体は、青白い神格振動波の輝きだ。 龍族を縛る漆黒の薄膜を、紙切れのように無造作に引き裂いていく。

 圧倒的な力の差。 戦闘とすら呼べない一方的な蹂躙だった。

 実体化した濃密な魔力の塊が、雷光の獅子の姿になって唯里たちの前に着地する。

 雷光の獅子を従えて立っていたのは、どこか気怠げな表情を浮かべた、パーカー姿の少年だ。

 そして、少年の傍らには、銀色の槍を抱いた制服姿の少女が寄り添っている。

 そんな彼らを見て、氷結の少年が、

 

「遅いぞ、古城」

 

「悪ィ、悠斗。 遅くなった」

 

「雪菜ちゃんもお疲れー」

 

「お待たせしました、凪沙ちゃん」

 

 唯里は、少年たちの名前を聞いて確信した。

 雷光の獅子を従えてたのは、第四真祖、暁古城。

 雪霞狼を携える、最強の監視役、姫柊雪菜。

 傀儡(ゴーレム)を氷漬けにしたのは、紅蓮の織天使、神代悠斗だ。

 

「大丈夫ですか、唯里さん!」

 

 雪菜が唯里の名を呼んだ。

 

「……雪菜(ゆっきー)

 

 唯里は雪菜の名を呼び、よかった。と安堵し、もう大丈夫だよ。とグレンダに心の中で呼びかける。

 彼らが揃えば、想定外(イレギュラー)が起こらない限り、安全はほぼ確保されたと言っていいのだから――。




悠斗君がすぐさま融合したのは、何かが起こってるって直感したからですね。
それにしても、妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)と融合(憑依ではない)とかチート染みてる(笑)

てか、凪沙ちゃんにも二つ名がつけられそう(笑)ちなみに、四神の所有権は、この章が終わるまで、凪沙ちゃんのものですね(玄武は除く)

ではでは、次回もよろしくです!!

追記。
グレンダの事は、古城君が助けると、悠斗君は解ってました。
ちなみに、その他のゴーレムも吹き飛ばしましたね。

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