矛盾が出てきてないか、怖いっス(-_-;)
さて、今回もご都合主義満載ですね(笑)
ちなみに、悠斗君が平静に戻った時、黄龍と麒麟は、具現化を解きました。
では、更新です。
本編をどうぞ。
悠斗が目を開けると、正面では凪沙が微笑んでいた。
「おかえり、悠君」
「ただいま。 悪いな、暴走しちゃって」
「ううん、私の為に怒ってくれたんでしょ?」
悠斗は、そうだな。と頷き、
「それにしても、本当に朱雀と融合してるとは……」
凪沙の背からは、二対四枚の紅蓮の翼が付与されているのだ。
悠斗が付与する守護はなくなってしまったが、悠斗には、先程手に入れた力を使う事ができる。
「氷結を司る妖姫よ。 我を導き、守護と化せ!――来い、
悠斗は、
本来なら、融合ではなく憑依という形になるのだが、アヴローラの魔力を取り入れた事で、朱雀と同様な事が可能になったのだ。
悠斗の瞳には蒼が入り混じり、背から二対四枚の氷結の翼が出現する。
「初めて見るけど、
「そうか? まあ、朱雀の蒼バージョン的な感じだしなぁ。 てか、俺らもヴァトラーたちの所に行くか」
悠斗たちがヴァトラーの元へ歩み寄ると、悠斗の目に映ったのは、
ヴァトラーは悠斗に気づき、振り向いた。
「おや。 戻ったんだね、悠斗」
「まあな。 凪沙たちのお陰だ」
悠斗の姿を見たヴァトラーは、ふむ。と頷き、
「その姿は、
「ああ、そうだ。 ちょっと色々あってな、可能になったんだよ。 で、今の状況は?」
「咎神の騎士と、イブリスベール・アズィーズ殿下が戦闘中だよ」
「……成程。 咎神の騎士か」
――咎神の騎士。
彼らは、聖殲派の武装工作員だ。 だが、悠斗は不可思議に思った事があった。
“カインの巫女”である浅葱に向かってなぜ矛を向けた? 奴らならば、“カインの巫女”を傷つけようとしないはずだ。
悠斗が考えた事は二つだ。
――咎神の騎士は、浅葱が“カインの巫女”という事を知らなかった。
――咎神の騎士が奉る“カインの巫女”はもう一人いる。
後者の場合は、今より面倒くさそうになりそうだなぁ。と思い、溜息を吐く悠斗。
悠斗は、まあ今はいいや。と思い、思考を停止させた。
「(……それにしても、
イブリスベールが召喚していた眷獣は、
咎神の騎士は、黒銀の鎧に今はかろうじて護られているものの、力尽きるのは時間の問題だ。
その時だった。 咎神の騎士は、騎槍を氷原の上に突き立て、其処に落ちていたのは、牙城が投げ捨てた重機関銃だ。 騎槍が機関銃を貫いた瞬間、騎槍の輪郭が歪み、融けた飴のように流動して、鋭利な騎槍が無骨な銃器へと姿を変えていく。
錬金術師が使う物質変成に似ているが、本質は別物。 錬金術師は物質の組成を自在に操るが、原理の解らない複雑なメカニズムを再現することはできない。
対しては咎神の騎士は、騎槍の組成は変えないままに、弾丸を撃ち出すという機能だけを模倣した。機関銃という兵器の“情報”だけを奪ったのだ。
騎槍の先端に新たに穿たれた銃口から、漆黒の弾丸が撃ち出され、隙ができた瞬間に、傷ついた
騎士の姿は小さくなり、消え残る冷気の霧に紛れて消える。
「逃げた……いや、より有利に戦える場所を求めて撤退したか。 小癪な奴よ」
イブリスベールが苛立たしげに呟いた。
咎神の騎士は、近代兵器の能力を模倣する。 だとすれば、周囲に何もない氷原よりも、利用できる兵器の多い場所の方が圧倒的に有利に戦えるはずだ。
「首尾はどうだい、キラ?」
ヴァトラーが誰もいない方角に向かって呼びかけると、その場に銀色の霧が集まって、美しい少年の姿を生み出した。 彼の指先には、熔岩に似た琥珀色の糸が結びつけられて、それが上空に向かって伸びている。
「問題ありません、閣下。 捕まえました」
キラ・レーベデフが恭しく答えた。
彼らのやりとりを聞いていたイブリスベールは不満げに鼻を鳴らし、
「端から、聖殲派の隠れ家をあぶり出すのが狙いか。 喰えない男だな、蛇遣い──」
「我らが戦王の下知でしてね」
ヴァトラーは素知らぬ顔で肩を竦める。
「──彼の咎神を滅ぼすことが、我ら戦王の末裔の宿願。 その為の聖域条約だと」
「その言葉、今は信じたことにしておこう」
イブリスベールは、冷ややかな目つきでヴァトラーを見上げた。 友好的な口調とは裏腹に、二人の間に流れている空気には、抜き身のナイフのような緊張感が含まれている。
そんな空気の中に割り込んだのは、有脚戦車から顔を出していた浅葱だ。
「なんだったの、あの黒マント? てか、今気づいたけど、何で悠斗がここにいんのよ?」
「凪沙が危険って聞けば、俺がその現場に急行するのは当然だろ」
浅葱は、それもそうね。と納得する。
「でだ。 さっきの浅葱の質問だが、奴らは“聖殲派”──咎神カインを奉じる狂信者だ」
「テロリストって……何でそんなのが出てくるわけ……?」
「奴らの目的は“聖殲”の再現だな。 全ての魔族を滅ぼし、人類の本来あるべき姿を取り戻す。 魔族も魔術も存在しない世界をな。 その為の鍵が、この地にあったんだろうな」
俺の予想も外れてるかもな。と呟く悠斗。
「全ての魔族を……滅ぼす……?」
「そう、全てだ」
「どうして落ち着いてるの、悠斗!? それって、あんたも対象に入ってるんでしょうが!」
「あー、まあそうだな。 でも俺、“聖殲” とか興味ないんだわ。 俺は、凪沙と暮らせれば何でもいいし」
「……何て言うか、ホントぶれないわよね、あんた」
悠斗の言葉を聞き、溜息を吐く浅葱。
すると、イブリスベールが悠斗と凪沙を一瞥してから、
「時に、神代悠斗。 暁凪沙。 それは眷獣融合なのか?」
イブリスベールが困惑するのも解る。
眷獣と吸血鬼が融合する。 そのような事は、通常ではありえないからだ。
「まあな。
「私は、朱雀とだよ」
イブリスベールは、失笑した。
「神代悠斗は“紅蓮の織天使”ではなく、“氷結の織天使”だな。 代わりに、暁凪沙が“紅蓮の姫巫女”って所か」
「ちょ、待て。 そういう二つ名はどこで洩れるか解らねぇから、安直に付けるなよ」
「私も、“紅蓮の姫巫女”はちょっと恥ずかしいかも……」
だが悠斗は、“紅蓮の姫巫女”は、凪沙にぴったりな二つ名だな。と思っていたのは、彼女には秘密である。
浅葱は、凪沙の眷獣融合に関して深くは聞いてこなかったが、おそらく予想はしているだろう。 今の凪沙は吸血鬼であり、悠斗の
これまで話を聞いていたヴァトラーが、会話に入ってくる。
「では、僕はこれで。――キラ、トビアス」
言葉が全て終わらぬ内に、ヴァトラーは金色の霧と化して姿を消した。
また、浅葱の話によると、古城と雪菜も“神縄湖”に来ているらしい。
「どうする、凪沙? 古城と合流するか?」
「そうだね、合流しよっか。……古城君の事だから、過保護を拗らせてるかもしれないし……」
「まあ、古城はシスコンだからな。 てか、凪沙。 翼の動かし方わかるか」
「えっと、こうかな?」
凪沙が、肩甲骨付近に力を伝えると、紅蓮の翼は羽ばたくように動いた。
悠斗が、よし。と頷いて、
「んじゃ、古城たちの所まで飛ぶか」
悠斗は気配感知で、古城が居る場所は特定していたのだ。
「OK-」
凪沙は軽く返事をし、紅蓮の翼を羽ばたかせ、悠斗もそれに続く。
悠斗は、後は任せたわ。と呟き、悠斗と凪沙は翼を羽ばたかせ飛翔した――。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
悠斗と凪沙が飛翔していると、目の前では戦闘が行われていた。
其処にいたのは、少女二人と、骸骨に似た人型の
「……あれは、獅子王機関の剣巫か?」
「悠君。 あの子が持ってる長剣は、
「成程。 んじゃ、獅子王機関の剣巫で間違いなさそうだな。 そしたら、あの幼い子は誰だ?」
悠斗の目に映ったのは、鋼色の髪の少女だ。
少女が携える、
そして、トラックから生み出された
少女はそれに対抗しようと、
だが、直後に鋼色の髪の少女が叫ぶと、それは獣の雄叫びに変わる。
少女のコートが弾け飛び、現れたのは透明な鱗に覆われた龍だった。 異形の翼と禍々しい四肢。 太古の恐竜を思わせる蛇身──。
悠斗は頷き、
「……彼女が“神縄湖”の底に封じられてたものか。 龍って事は“聖殲”が作った護り手。って所だな」
「……悠君。 どっちの助けに入るか明白だね」
「そうだな。 獅子王機関の剣巫を助けるか。 今後の情報も手に入りそうだし」
悠斗と凪沙は、下降準備に入り、少女たちの場所目掛けて加速する。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
――――
そして、
「え!? 凪沙さん!?」
唯里は、巫女装束を纏った凪沙を見て目を丸くする。
唯里が護衛に就いた時の凪沙は、金髪の髪をした少女だったはずだ。
だが今の凪沙は、背からは紅蓮の翼が二対四枚、計八枚展開され、僅かに、瞳は朱く染まっているのだ。
「……悠君。 コンクリートに穴が空いちゃったよ」
「……い、いやー。 カッコよく登場しようと思ったんだけど、加速の加減をミスってな……」
あはは、と笑う少年。 少年の背には、氷結の翼が二対四枚。 此方も、瞳は僅かに蒼に染まっていた。
緊張感が皆無なやり取りを見た唯里は、
「(誰!? この男の子!?)」
唯里から見て、ほぼ同い年と思われた。
一つだけ解る事もあった。 もし唯里が、全力で少年と戦っても必ず負ける。 強さは、獅子王機関の三聖に匹敵すると思われた。
――直後、再び介入する気配があった。
ローブの者の足元から伸びていた漆黒の薄膜を、銀色の閃光が断ち切った。
閃光の正体は、青白い神格振動波の輝きだ。 龍族を縛る漆黒の薄膜を、紙切れのように無造作に引き裂いていく。
圧倒的な力の差。 戦闘とすら呼べない一方的な蹂躙だった。
実体化した濃密な魔力の塊が、雷光の獅子の姿になって唯里たちの前に着地する。
雷光の獅子を従えて立っていたのは、どこか気怠げな表情を浮かべた、パーカー姿の少年だ。
そして、少年の傍らには、銀色の槍を抱いた制服姿の少女が寄り添っている。
そんな彼らを見て、氷結の少年が、
「遅いぞ、古城」
「悪ィ、悠斗。 遅くなった」
「雪菜ちゃんもお疲れー」
「お待たせしました、凪沙ちゃん」
唯里は、少年たちの名前を聞いて確信した。
雷光の獅子を従えてたのは、第四真祖、暁古城。
雪霞狼を携える、最強の監視役、姫柊雪菜。
「大丈夫ですか、唯里さん!」
雪菜が唯里の名を呼んだ。
「……
唯里は雪菜の名を呼び、よかった。と安堵し、もう大丈夫だよ。とグレンダに心の中で呼びかける。
彼らが揃えば、
悠斗君がすぐさま融合したのは、何かが起こってるって直感したからですね。
それにしても、
てか、凪沙ちゃんにも二つ名がつけられそう(笑)ちなみに、四神の所有権は、この章が終わるまで、凪沙ちゃんのものですね(玄武は除く)
ではでは、次回もよろしくです!!
追記。
グレンダの事は、古城君が助けると、悠斗君は解ってました。
ちなみに、その他のゴーレムも吹き飛ばしましたね。