まあ、オリジナルも加えてみたんですが、上手く書けてるかな?
それでは、本編をどうぞ。
オシアナス・グレイブの船内に設置されているホールに、悠斗、古城、雪菜は案内され、中央のテーブルを囲むように腰を下ろしていた。
その人物は、暁古城、神代悠斗、ディミトリエ・ヴァトラーだ。
その後ろには、姫柊雪菜と煌坂紗矢華だ。
「――今の気配、
古城と悠斗に攻撃を仕掛けておきながら、ヴァトラーは悪びれもせずにそう言った。
「……
古城は、ヴァトラーを困惑の表情で睨みつけた。
ヴァトラーの見た目は二十代前半の青年だが、本来の姿は旧き世代の吸血鬼。
当然、第四真租の眷獣の知識を持っていても不思議はない。
「
淡々と告げられるヴァトラーの言葉に、古城は無言で顔をしかめた。
先代の第四真租。
「あんたとアヴローラ……どういう関係なんだ?」
古城は頭痛に耐えながら、ヴァトラーに聞いた。
ヴァトラーは芝居がかった仕草で胸に手を当て、懐かしげに眼を細めた。
「最初に言わなかったっけ? 僕は彼女を愛しているんだ。 永遠の愛を誓ったんだよ。 要は、血が強ければいいのさ。 だから僕は、彼女の血を受け継いだ君に愛を捧げよう!」
「待て待て待てっ、なんでそうなる!? それに、オレは男だ!」
立ち上がって近づいてくるヴァトラーを制止してから、古城は立ち上がり後方へ跳んだ。
「それがなにか?」
「ま、まじかよ……」
古城は背筋に寒気を感じた。――こいつは、色々な意味でヤバいと感じ取ったのだろう。
このままでは埒が明かないと思った悠斗は、立ち上がり口を開いた。
「俺と古城は学生の身でね。 早く要件を言え」
ヴァトラーは両手を広げ、手を上げた。
「やれやれ、僕は愛しの第四真租と愛を語ろうとしているのに、僕の天使は即急すぎるナ」
「だれが貴様の天使だ。 また半殺しにしてやろうか」
「僕としては、今の君との
「だれが貴様と――」
だが、次のヴァトラーの言葉で、この場の空気が軋む事になる。
「――暁凪沙」
ドンッ、という衝撃音と、ミシミシっと空気が軋む音。
この場が重力がかかったようになり、雪菜、紗矢華は片膝をつけており、古城も立っているのがやっとだ。
ヴァトラーはこれを見て、笑みを浮かべていた。
悠斗の体からは青白い稲妻が迸り、黒い瞳が深紅に代わり、唇の隙間からは牙が覗いた。
古城は、これが
それを、ここで解放したら甚大な被害になるとも。
「……何処でその少女の名を知ったかは知らないが、その子に手を出してみろ。 貴様、塵が残らないように殺してやる……。 貴様の領地も無事で済むと思うなよ……」
「フフフ、イイね。 イイヨ。 今の君となら、最高のダンスが舞えそうダ!」
これを止めようと、雪菜は力を振り絞って叫んだ。
「……神代先輩! ここで無茶な力の解放をすれば、島の皆さんが被害を
これを聞いた悠斗は一呼吸置き、力を収めた。
瞳も黒色に戻り、唇の隙間から見えていた牙も消えていた。
これにより、この場は元に戻り、雪菜と紗矢華は立ち上がることが出来るようになり、古城、悠斗、ヴァトラーは元の席へ腰を下ろした。
「……ここは引いてやる。 ヴァトラー、俺のさっきの言葉を忘れるなよ」
「イイ挑発になったと思ったんだけどな。 僕も、一般の子を巻き込むのは気が引けるしネ。 フフ、暁凪沙は、僕の天使の監視役に近いネ。 君がそこまで力を解放しておきながら、矛を収めるなんてありえなかったしネ」
「……あの子を監視役って言うな。 あの子は、俺の大切な友人だ」
「君は、暁凪沙の守護神といった所かナ。 裏を返せば破壊神だけどネ」
古城は、この話題を引き伸ばしたらやばい。と思い、話を逸らした。
「おい、話しがあるからここに呼んだんだろ。 早く話してくれ。というか、なんで
「ふむ。 愛しの第四真祖も即急だな。 まあいいや、本題はべつにあるんダ。 もちろん、そっちもあるんだけどネ」
古城は苛々しながら、
「本題ってなんだ? 早く教えろ」
「ちょっとした根回しってやつだよ。 この魔族特区が第四真祖の領地だというなら、まずは挨拶をしとこうと思ってネ。 まァ、僕の天使はどこにも領地を持たないけどネ。 もしかしたら、迷惑をかけるかもしれないからねェ」
そう言いながらヴァトラーは優雅に指を鳴らす。
これが合図になって、船内からぞろぞろと大勢の使用人が現れた。
彼らが運んできたワゴンの上には料理皿が置かれ、パーティ会場に出されていた料理が満載されていた。
「迷惑ってなんだ?」
古城がヴァトラーに聞いた。
「クリストフ・ガルドシュという男は知っているかい、古城?」
「いや? 誰だ?」
「戦王領域出身の元軍人で、欧州では少しばかり名を知られたテロリストさ。 黒死皇派という過激派グループの幹部で、三年ほど前にプラハ国立劇場占拠事件では、民間人に四百人以上の死傷者を出した」
その時、沈黙していた悠斗が会話に割り込んだ。
「……死者は出てないから安心しろ、古城。 ヴァトラーの言葉には、嘘が混じってる」
「フフ、そうだね。 傷ついた人は出たが、死者は出てないヨ。 唐突に悠斗が現れてネ、現場を鎮圧したんだヨ」
これを聞いた、古城、雪菜、紗矢華は眼を見開いた。
そして、ある疑問が浮上してくる。
神代悠斗という人物は、過去にどのような経験をしてたんだろうと。
「でも、トップには逃げられたんだよね。 あの頃の悠斗は、爪が甘かったからねェ」
それを聞いた悠斗は、苦虫を潰したように顔をしかめた。
「だから僕が殺した。 少々厄介な特技を持った獣人の爺さんだったけどね。 だから、黒死皇派の残党たちが、新たな指導者としてガルドシュを雇ったんだ。 テロリストとして、圧倒的な実力を持つ彼をね」
つまり、ここにヴァトラーがいる限り、黒死皇派の残党は仇討の為、ヴァトラーに攻撃を仕掛けるかもしれないのだ。
ヴァトラーが猛威を振るったら、最悪の事態になるだろう。
「ちょっと待て。 あんたが絃神島に来た理由に、そのガルドシュって男が関係してるのか?」
「察しがよくて助かるよ、古城。 そのとおりだ。 ガルドシュが、黒死皇派の部下たちを連れて、この島に潜入したという情報があった。――実は、そのガルドシュがある兵器を手に入れたらしんダ」
「おい、その兵器とやらを、この絃神島で使う気じゃないよな」
「サァ、どうだろうネ。 ここは第四真祖の領地だ。 そんなことはしないと思うけど――僕が襲われたら、反撃しても仕方ないよねェ」
すると、悠斗の体から魔力が漏れだしていた。
悠斗が、低い声でこう言った。
「……お前が正式な外交使節使ってここに来たのは、正当防衛の大義名分を使って、黒死皇派と殺り合う為か……。 お前の退屈凌ぎの為に、この島の人々を傷つけるつもりか?」
「さすが悠斗だねェ。 僕がやろうとしてることを理解するなんて」
「テメッ……。 ここで殺してやろうか」
再び悠斗の瞳が真紅に代わり、ヴァトラーの瞳も真紅に変わる。
二人の体からは魔力が漏れだしており、一触触発だ。
古城も迎撃ができるように、瞳を真紅に変え、体の周りから黄金の稲妻が迸っていた。
だが、この状況を、一人の少女が止めた。
雪菜は、冷たく澄んだ声で献言した。
「恐れながら、アルデアル公の心配には及ばないと思います」
「……たしか君は、獅子王機関の剣巫、紗矢華譲のご同輩だね。 それはなぜだい?」
「ここの首領は第四真祖。 ここの火の粉を払うのは領主の務め。 なので、アルデアル公は大人しくしててください」
「ひ、姫柊!?」
古城は、驚きの声を上げた。
だが、悠斗はヴァトラーを睨んだままだ。
「まァ、この件は君たちに一任するヨ。 君たちが処理してくれるなら、僕の手間が省けることだしネ。 これで、君たちの実力を確かめさせてもらうヨ。 悠斗の今の実力が知りたいのが一番大きいけどネ」
「……蛇野郎は黙ってろ」
「蛇野郎とは酷いなァ。 僕の天使よ」
「テメェは口を開くな。 殺すぞ」
「おー、恐い恐い」
悠斗がこう言っても、ヴァトラーは笑みを零すだけだ。
悠斗は深い溜息を吐いた。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
海を見下ろすマンションの一室、七〇三号室。
窓辺から洩れ射す朝日を浴びて、神代悠斗は眼を覚ました。
「悠君! 悠君起きて、朝だよ!」
悠斗の耳元に聞こえてきたのは、暁凪沙の声だ。
悠斗は眼を擦ってから上体を起こした。
「凪沙か、おはよう」
「おはよう悠君。 今日は体調が良くなさそうだけど大丈夫? 熱でもあるの? 学校休んで病院に行く? 今日は学校休んでゆっくりする? それなら凪沙も付き添うよ。 じゃあ、おかゆ作って上げる! あ、そういえば悠君のお家の白米が切れそうなんだっけ。 凪沙のお家から持ってこないと。 やっぱりお飲み物にする? 遅い夏風邪かもしれないし。 えーと、ポカリは悠君のお家の冷蔵庫にあったような?」
「だ、大丈夫だって」
凪沙は、じー、と悠斗のことを見た。
「……悠君。 なにかあったでしょ?」
「……いや、なにもないぞ。 うん、ないぞ」
「悠君」
悠斗は、凪沙には敵わないな、と思いながら口を開いた。
「昨日色々あってな。 一つは、眷獣を無理やり解放しようとして、この島に被害を出そうとしたことだ。 その罪悪感って感じだな。 もう一つは、俺が近くにいることで、凪沙に迷惑がかかる、ともな」
暫し沈黙してから、凪沙は悠斗の顔を見て、静かに呟いた。
「凪沙は悠君と一緒にいて、迷惑だと思ったことは一度もないよ。 もしかして、凪沙をいざこざに巻き込むのが不安なの?」
「ああ、そうだ」
「でも悠君は、凪沙のことを守ろうとしてくれてるんでしょ?」
「そうだな」
凪沙は満面の笑みで、頷いた。
「じゃあ、凪沙は大丈夫。 凪沙には悠君がいるもん。 さ、この話は終わり。 朝からこんなにしんみりしちゃダメだよ。 今日も元気良くいこう!」
「そだな。 そうすっか」
悠斗はベットから降り立ち、中央のテーブルに置いてある、昨日作成したネックレスを手に取った。
「凪沙、これをつけといてくれ」
悠斗はそう言い、ネックレスを凪沙に渡した。
その中央には、紅い小さな宝玉が嵌め込まれている。
その宝玉を、眼を凝らしてよく見てみると、
「これは、凪沙を守ってくれるお守りだ」
そう。 悠斗は帰宅してすぐに、これの作成をした。
嵌め込まれている宝玉には、朱雀の魔力が込められている。
「うん、わかった。 凪沙、肌身離さず首にかけておくね。 じゃあ、悠君。 つけてくれるかな」
「おう」
悠斗はそう言って、ネックレスを凪沙の首へとつけた。
その後二人で朝食を摂り、いつものように一緒に家を出て、モノレールへ乗り学校へ向かった。
悠君。怒ったらまじ怖いっすね。
てか、悠君は昔、ヴァトラーを半殺しにしてたんすね(笑)
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