夕刻。
古城たちは、病院の通路で時計を見上げていた。 人工島管理公社の付属病院。 魔族や攻魔師の治療する“魔族特区”の専門病棟である。
近くのベンチでは、途中で合流した夏音やアスタルテの姿もある。
やがて、診察室に続く扉が開いて那月が現れた。 豪奢なドレスに扇子という、相変わらずの服装である。
「那月ちゃん……セレスタは?」
那月の元へ駆け寄った古城が聞く。 あれから意識を失ったセレスタは、那月の手配で、この病院に運ばれた。
そして検査を受ける事になっていたのだ。 無事に救出したとはいえ、一度は邪神と融合したのだ。 酷く衰弱もしていたので、後遺症や反動の心配もあった。
「簡易的な検査だが、邪神の残留神気は見当たらなかった」
那月が言うには、セレスタはザザラマギウの“花嫁”ではないという事だ。という事は、セレスタは誰にも狙われる事もなく、自由の身だ。
僅かな後遺症が残るかもしれないという事だったが、絃神島で療養すれば完治するという事らしい。
――閑話休題。
これで内戦は終結した。
第三真祖、“
戦闘は呆気なく終了し、民に犠牲は殆んど出る事はなかった。その事で、第三真祖は為政者として評価を上げた。
結果、
また、今回の事件は、直接的には“混沌界域”は無関係だが、戸籍上では“混沌界域”の民という事になるセレスタは、今後の治療費や生活についての資金は、“混沌界域”から支援を受ける事になる。 何故、小娘一人に援助を。と思うが、セレスタのお陰で、
「(……まあ俺は巻き込まれただけで、何の待遇もないけどな)」
そう思いながら、悠斗は深い溜息を吐く。
でもまあ、古城に貸しを作る。という事はできたと思うが。 悠斗は、及第点でいいか。と決め、病院を後にしようとする。 理由は、古城が新しい眷獣を掌握した話題になったからだ。
古城は、全ての眷獣を掌握した訳ではない。 新たな眷獣を支配下におく為には、吸血行為が必要になるのだ。 それも、強力な霊媒の持ち主の血を吸う事が絶対条件でもある。
第四真祖の監視者である雪菜は、当然その事を知っている。 だが、
「んじゃ、俺はお先に」
そう言って、悠斗は病院を後にする。
邪神の脅威が過ぎ去って、“魔族特区”に平和な夜が更けていく――。
この章が完結しました(^O^)
次回からは、新章の開始ですね。
ではでは、次回もよろしくお願いします!!