ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

80 / 117
投稿が遅れて申し訳ない。……約五ヵ月ぶりですね。なので、矛盾がない事を祈りやす。
それと、CVは決まってませんが、容姿は東のエデン、滝沢朗。ですね。その他は、読者様のイメージって感じで(声とか諸々)。オリ設定も書き変えないとですね。

前置きはこれ位にして、投稿です。
では、どうぞ。


冥き神王の花嫁Ⅳ

 清楚なパステルブルーシーツの上に横たわっているのは、スーツケース詰められ送られてきた異国の少女である。 意識の無い彼女を雪菜が自室に運び込んだのだ。

 少女が見に着けているものは、古城が貸したTシャツと短パンだ。 そして、異国の少女の隣には、藍色の髪を持つ人工生命体(ホムンクルス)が、聴診器を片手にちょこんと座っていた。

 世界で唯一の眷獣を宿す、アスタルテである。

 アスタルテの情報によると、人種は人間であり、患者の生体パターンは、既知の如何なる魔族とも該当しない。 人種的にはラテンアメリカ先住民族およびヨーロッパ系コーカソイド。

 肉体年齢は十五歳。

 健康状態は良好。

 身長は百六十一cm。

 体重は四十六kg。

 伝票に記載された情報から、個体名『セレスタ・シアーテ』。

 

「そのまんまじゃねぇか……まあいいや。 とにかくありがとな、アスタルテ。 お前が来てくれて助かった」

 

「まあそうだな。 この手の事は、俺たちは専門外だしな」

 

 アスタルテは、古城と悠斗の呼び出しに、理由も聞かず応じてくれたのだ。

 彼女の医療知識が無ければ、古城たちは今頃、眠り続けるセレスタを抱えたまま途方に暮れていただろう。

 

「謝辞は不要です。 私の診断は簡易的なものであり、正確な検査ではありません。 念の為、正規の医師による診断を推奨します」

 

「……コイツがただの生き倒れだったら、迷わず病院に連れてく所なんだけどな。 送り主がヴァトラーの野郎だからな……」

 

 と、古城が言う。

 あのヴァトラーが、古城を名指しで送りつけてきた少女だ。 もし、危険人物だった場合、彼女を病院に連れ込む事で、無関係な病院関係者や患者に危険が及ぶ可能性も否めない。

 

「ほう。 ディミトリエ・ヴァトラー……戦王領域(せんおうりょういき)の蛇遣いか。 懐かしい名を聞いたな」

 

 不意にのんびりとした声が聞こえてくる。

 

「お知り合いでしたか、院長様?」

 

 その呟きに答えたのは、聖女のような雰囲気を漂わせた、銀髪碧眼の少女だ。 そして、夏音の膝の上には、身長三十センチ程のオリエンタルな美貌な人形が胡坐をかいて座っている。 いや、正確には人形ではない。 ニーナ・アデラードと呼ばれる、古の大錬金術師の成れの果てである。

 

「直接会った百年ほど前に一度きりだがな……。 いや、二百年前だったか……。 紅蓮の織天使、お前さんは過去に会った事があるって聞いたぞ」

 

「……まあな。 数年前に喧嘩を売られて殺し合いをした仲だ。 まあ、俺が半殺しにしたけど」

 

「……知ってた事だが、お前さんはどれだけ規格外な存在なんだ」

 

「さあな。 其処ら辺の理解はお任せするよ」

 

 そう言ってから、悠斗は夏音を眺めて聞く。

 

「んで、夏音の恰好はどうしたんだ?」

 

 悠斗がそう聞くのも頷けた。 夏音が見に着けているのは、彩海学園の制服ではなく、スカートの丈が長い、純白のエプロンドレスだ。 欧州大戦当時の従事看護師を思わせる服装である。

 まさに白衣の天使という感じのその姿は、夏音にはかなり似合っている。――が、流石に看護師のコスプレが、彼女の普段着だとは思いたくない。

 

「ア……アスタルテさんの助手でした」

 

 ナースキャップを押さえ俯き、夏音が照れたように言った。

 

「助手?」

 

 古城がそう言ったら、夏音が、『はい、でした』と頷く。

 夏音とアスタルテは、那月の自宅に居候している。 古城たちがアスタルテに連絡した時、電話を取り次いでくれたのも夏音だ。 とはいえ、中学生に過ぎない夏音に、アスタルテの助手が務まると思えないのだが――、

 

「あまり夏音を責めてくれるな、古城。 此奴は、アスタルテが往診を頼まれたと聞いて、てっきり主が倒れたと勘違いしてな。 主の看病をする気でやってきたのだ」

 

 そう言って、ニーナは夏音を庇うように言った。

 

「い、院長様!」

 

 透けるような白い肌を真っ赤に染めて、あうあう、と夏音が狼狽する。

 ニーナは怪訝そうに見上げて、

 

「なんだ? 真実のことであろう?」

 

「そうか……ありがとな、叶瀬」

 

 縮こまって恥じらう夏音に、古城は素直に感謝した。

 

「い、いえ、お兄さんの為……でしたから」

 

 そう言って幸せそうに微笑む夏音。 すると、二人を交互に見た雪菜が、コホン、とわざとらしく咳払いをする。

 

「それで、先輩たちはこれから彼女をどうするつもりですか?」

 

「……この手の厄介事は、できれば那月ちゃんに任せたかったんだけどな」

 

 古城が顔を顰めて言った。 正直セレスタの扱いは、古城たちの手に余る問題だ。 この件は、悠斗も古城と同感だ。

 しかし――、

 

南宮教官(マスター)は、特区警備隊(アイランド・ガード)の要請を受けて特別警戒任務中です」

 

 アスタルテは事務的な口調で答える。 そして、悠斗が怪訝そうにして目を細めた。

 

「……特別警戒任務だと?」

 

「肯定。 未登録魔族の密入国の痕跡が発見された、との情報があります」

 

「……密入国ってことは、セレスタに関わる事じゃないよな?」

 

 彼女は、箱詰めになって宅配便で送られてきたのだ。 まともな入国手続きを踏んだとは思えない。

 とはいえ、彼女は特別警備が必要なほど危険な人物なのか?ということは、古城たちだけでは判断できない。 それこそ、那月の力が必要になる。

 

「不明。 データ不足により回答不可」

 

 アスタルテの回答に、古城たちは反論する事はなかった。

 悠斗はセレスタを見ながら、

 

「……まあ、暫くは様子見って所だな。 目を覚ませば何かしら情報を聞き出せるだろうし。 アスタルテには悪いが、那月ちゃんと連絡を取ってみてくれないか?」

 

命令受託(アクセプト)

 

 アスタルテは首肯した。 悠斗は、面倒事では無いように。と、祈るだけだ。……まあ、神の一族とも言える彼が祈りとは変な話かもしれないが。

 悠斗は、夏音を見守ってる存在には気づいていたが、無用な騒ぎになるかもしれないと思い、黙っている事にしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 昼食を摂っていないと夏音たちに、雪菜は先程作ったカレーを御馳走し、古城はセレスタの元へ、悠斗はベランダに出てある人物を想っていた。

 悠斗が想う人物。 そう、凪沙の事だ。 そして安堵もしていた。 もしかしたら、何か大きな事が絃神島で起こる予感がしてるからだ。

 

「(……凪沙を本土に連れていってもらって正解だったかもな)」

 

 絃神島から移動していれば、被害を受ける心配はないし、もし面倒事だった場合も、凪沙が帰還するまで解決すればいい話である。

 その時、悲鳴にも似たような声が内部から聞こえてくる。 どうやら、セレスタが目を覚まし、古城が何かをやらかしたらしい。

 悠斗は、

 

「……とんだトラブルメーカーだな、古城」

 

 と呟き、部屋に入って行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……先輩……セレスタさんに何をしたんですか……」

 

「お兄さんの事信じてましたのに……なのに……」

 

「よもや第四真祖ともあろう者が、下劣な性犯罪に走るとはな。 これも若さゆえのリビードの暴走というやつか」

 

「反省。 監督不行届でした」

 

 雪菜、夏音、ニーナ、アスタルテと呟く。

 悠斗は嘆息しながら、

 

「……変態古城。 今度は何やらかしたんだ……」

 

 古城は、ぶんぶん、と擬音が似合うように首を振る。

 

「ち、違う! 待て、お前ら! 黙って聞いてれば好き勝手に、変態やら犯罪者呼ばわりしやがって! 抱きついてきたのは、コイツの方だっての!」

 

「……抱きつかれたんですか……なるほど……」

 

「……なるほどな。 鼻血の理由はそれか……」

 

 温度を感じさせない雪菜の声音に、古城の鼻元を見ながら呟く悠斗。

 そして古城は、『違う、オレは冤罪だ! 鼻血の件は、仕方なくだ!』と頼りなく言ってから、首を振り天井を見上げて絶叫した。

 

「誤解だああああああぁぁぁああああっ!」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 錬金術の極致とも呼ばれる生きた金属、賢者の霊血(ワイジマンズ・ブラッド)は、それ自体が膨大な魔力源であり、自在に姿形を変える高性能な魔具でもある。

 その賢者の霊血(ワイジマンズ・ブラッド)の一部を使用し、ニーナが作り出したのは、銀色の小さなイヤリングだ。 未だ不安げな表情のセレスタの両耳に、ニーナはそれを装着する。

 

「これでよい。 読み書きは無理だが、会話なら通じるはずだ」

 

 ニーナが短い呪文を唱えると、イヤリングの表面に魔法文字が浮かび上がった、翻訳用の魔具が起動したのだ。

 

「ありがとうございます、ニーナさん。 助かりました」

 

 そう言って、床で正座する雪菜が丁寧に頭を下げた。 古城たちはセレスタが目を覚ましたのに、言葉が通じなくて困っていたのだ。 ニーナが言うには、セレスタの言葉は“混沌界域(こんとんかいいき)”の公用語に近いが微妙に違う、との事だ。

 

「院長様、さすがでした」

 

 夏音が微笑みながらニーナを抱き上げる。 ニーナは尊大な表情でふんぞり返り、

 

「うむ。 存分に賛美するがよい。 錬金術の真髄を極めた我には、児戯にも等しい術だがな。……紅蓮の織天使。 貴様も同じような事ができたんじゃないか?」

 

「アホか。 俺は錬金術師でも魔術師でもねぇし、できるわけが無いだろうが」

 

 そう言ったのは、窓際の壁に寄り掛かり立っている悠斗だ。

 悠斗も歳を重ねればニーナのような術を覚える事ができるかもしれないが、現状の力量では不可能だった。

 

「そんな事より、古城は縛ったままでいいのか?」

 

 そう、古城は手足を鎖で縛られ、床に転がっているのだ。 雪菜曰く、怯えるセレスタを安心させる措置だということ。ちなみに、鎖は、古城のパーカーの素材を錬金させてニーナが作り出した。

 

「ふむ。 女子(おなご)の身体を見て興奮する変態真祖はこのままでよかろう」

 

「変態じゃねぇわ! 不可抗力だからな! つーか、さっさと解放しろ! てか、オレのパーカー、ちゃんと元に戻せるんだろうな!?」

 

「問題ない。 二、三割ほど体積が目減りするかもしれんが、案ずるな」

 

「案ずるわ! パーカーが、ニ、三割縮んだらぱっつんぱっつんじゃねぇかよ!」

 

「――先輩、静かにして下さい!」

 

 声を張り上げて抗議する古城を雪菜が咎めた。 彼女は、ベットの上で膝を抱え警戒するセレスタのゆっくり近づき、優しく話しかける。

 

「私の言葉が解りますか、セレスタさん? セレスタ・シアーテさん……ですよね?」

 

 雪菜の呼び掛けに反応して、セレスタがのろのろと顔を上げた。

 セレスタの瞳に浮かんだのは、隠しきれない猜疑(さいぎ)の色だ。 雪菜を値踏みするように全身を眺め回し、フンと嘲けるように小さく笑う。

 

「他人の名前を聞く前に、まずは自分から名乗ったら、地味女」

 

「じ、地味……!?」

 

 怯えていたセレスタから思わぬ場等を浴び、雪菜が一瞬言葉を失くした。 だが、雪菜は素早く自我を取り戻す。

 

「し、失礼しました。 姫柊雪菜、獅子王機関の剣巫です」

 

「ケンナギ? シシオーキカン?」

 

 戸惑ったように小さく首を傾げるセレスタ。 どうやら、ニーナの翻訳魔術には、本人の知識に無い固有名詞までは翻訳できないらしい。

 その事に気付いた雪菜は、首を振って訂正した。

 

「……つまりは巫女です。 戦闘系の」

 

「巫女? あなたも?」

 

 悠斗は内心で、

 

「(……今の聞き方だと、セレスタ自身も巫女って事になる。……てか、空港で何かあったのか? 何か混戦してる感じだけど)」

 

 悠斗は特区警備隊(アイランド・ガード)に任せる事にした。 一学生が飛び込むと、那月に迷惑を掛けるし、凪沙も本土に向かった。 悠斗が心配をする事はない。

 だが、悠斗には気がかりな点もあった。 セレスタの言葉から察するに、セレスタ自身も巫女である確率が高い。 もし巫女だとしても、戦闘系の巫女ではない。 セレスタはどう見ても奉る系だ。

 

「で、そこに転がってる変態は?」

 

「誰が変態だ!」

 

 床に転がったままの姿で、古城がイライラと歯を剥いた。 殆んど初対面な相手に、変態呼ばわりする理由はない。と古城は思う。

 だが、悠斗との出会いに若干似てる気がするのは気のせいだろうか?

 

「変態が気に入れらなきゃ、詐欺師よ。 この犯罪者! 人間のクズ! よりにもよって、ヴァトラー様に成りすまして、私の気を惹こうとするなんて!」

 

「あんな奴の振りなんかするかっ! お前が寝ぼけて勝手に間違ったんだろうが!」

 

「うっさい、変態! クズ男!」

 

 セレスタの罵詈雑言に圧倒されて、古城は、ぐぬっ、と歯軋りする。

 しかし、セレスタもいきなり興奮した所為か、息を切らして軽く咳き込んだ。 冷凍保存の後遺症から、完全に回復しきれていないのかもしれない。

 苦しげな彼女を見かねた夏音が、寝室を抜け出して、コップに水を注いで戻ってくる。

 

「お水、飲みますか?」

 

「あ……ありがとう」

 

 バツ悪そうに頬を赤らめて、セレスタは差し出されたコップを受け取った。 おっとり微笑む夏音に対しては、セレスタも強気に出る事ができないらしい。

 夏音は、雪菜の隣に腰を下ろす。

 

「あんた、名前は?」

 

「叶瀬夏音です。 雪菜ちゃんのお友達でした。 こちらは院長様とアスタルテさんでした」

 

 床で正座をするアスタルテは、ぺこりと頭を下げる。

 

「……アスタルテは解ったけど、院長様って?」

 

 セレスタが困惑したような視線をニーナに向けた。 身長三十センチ足らずの女性。 しかも、自由自在に姿を変え、錬金術まで使いこなす。 セレスタが不審がるのも無理もなかった。

 

「ニーナ・アデラードだ。 古の錬金術師と呼ぶ者もおるがの」

 

「は、はあ……」

 

 セレスタはますます混乱したように表情を浮かべたが、理解できないと悟りすぐに割り切った。

 

「……で、あの変態は?」

 

「あの方は、お兄さんでした」

 

 古城を差すセレスタに、夏音が答える。 セレスタは驚いたように目を大きくした。

 

「お兄さん? あんた、あいつの妹なの?」

 

「いえ、お兄さんは凪沙ちゃんのお兄さんでした」

 

 にこやかな表情で返答する夏音。 苦悩するセレスタの眉間に皺が寄る。

 

「凪沙って、誰よそれ?」

 

「お友達でした」

 

「ごめん……あんたが言ってること、さっぱりわからない」

 

 セレスタがガックリと肩を落とした。 それを見かね、古城が息を吐く。

 

「凪沙ってのは、オレの妹だよ。 叶瀬と姫柊はその友達で、悠斗にとっては世界で一番大切な奴。 で、オレは暁古城。 古城でいい」

 

「ふーん。で、悠斗ってのは」

 

 今までの事柄を見ていた悠斗は、気だるげに話し掛ける。

 

「神代悠斗だ。 呼び方は何でもいい、好きに呼べ」

 

「……アンタ、何気にクールなのね。……ちょっと待って。 悠斗って事は、ヴァトラー様が言ってた天使って、貴方の事?」

 

 悠斗は、余計な事を。と言って、盛大に溜息を吐く。

 

「……まあな。 紅蓮の織天使とも言われてる。 で、何でセレスタは冷凍保存されて送られてきたんだ? 差出人は、ヴァトラーだ。 何か心当たりはあるか?」

 

「……様をつけなさいよ」

 

 セレスタが声を低くして呟く。

 だが、悠斗は――、

 

「いや、俺より弱い奴に様をつけるわけないから」

 

「あ、貴方。 ヴァトラー様より強いっていうの!?」

 

「まあ一応。 半殺しにしたし」

 

「そ、そう。 ならしょうがないわね」

 

 セレスタにとってのヴァトラーは、最強の存在だったらしい。 だが、上には上が居るという事だ。 やはりセレスタは、格上の存在には強く出る事ができないらしい。

 

「んで、セレスタは此処に送られてきた理由とか解るか? ゆっくりでいい、解る事があったら言ってくれ」

 

 セレスタは首を左右に振った。 そして、顔を見合わせる古城たち。

 

「……セレスタ、お前記憶が欠落してるのか?」

 

 セレスタは無言のまま頷いて唇を強く噛み締める。

 古城に対する攻撃的な態度は、不安の裏返しだろう。と悠斗は結論付ける。 彼女の言動を察っするに、ヴァトラーの存在、ヴァトラーが最後に言葉にした天使(悠斗)。という言葉しか覚えていないのだろう。

 

「ふむ、なるほど……記憶の欠落の原因は、間近で強大な魔力を浴びたせいだな。 ディミトリエ・ヴァトラーに出会ったのが、主の最古の記憶と言うわけか?」

 

 夏音からセレスタの頭上によじよじと登るニーナは、原因を言う。

 

「あの方は助けてくれたのよ。 神殿で殺されそうになっていた私のことを」

 

 セレスタの言葉を聞いた悠斗は、内心で溜息を吐く。

 ヴァトラー=神殿=巫女=内戦が勃発してる“混沌界域(こんとんかいいき)”付近。 この事柄から予測するに、セレスタは何かしらの生贄にされそうだった巫女。だという事が非常に高い。

 

「(……ま、俺の予測だけどな)」

 

 だが、悠斗の予測は当たる確率が非常に高かったりもする。

 

「アスタルテ、こいつの記憶を戻せないか?」

 

「頭部外傷や薬物使用の痕跡が認められないため、原因は心因性のものと思われます。 魔術や催眠療法による強制的な記憶回復は、危険を伴うため推奨できません」

 

「そう……か」

 

 無表情のまま首を振るアスタルテの回答に、古城は沈鬱な表情を浮かべる。

 古城もまた、記憶を喪失していたのだ。 監獄結界で記憶を取り戻すまでは、古城は第四真祖になった理由も、悠斗とのコレまでの関係を忘れていた。 もちろん、悠斗も肉親の記憶を封じられていたのだ。

 その真剣な古城の態度に、意表を突かれたのかセレスタは戸惑って、

 

「な、なによ?」

 

「いや、ちょっとな。 オレも似たような経験があるからさ……どんなにつらい記憶でも、自分のことを思い出せないのは苦しいよな」

 

「あ、あんたと一緒にしないでよ。 別に私はヴァトラー様の記憶があれば十分だし……」

 

 懸命に強がるセレスタの頬が、仄かに赤く染まっていく。 そのせいか、彼女の表情から険しさが薄れているようにも感じられた。

 そして、セレスタの緊張が解けたのを合図に、ぐぅ、という健康的で、かつ間抜けな音が発生する。

 羞恥に俯くセレスタに視線が集まるも、夏音が柔らかく呼び掛けた。

 

「あの、セレスタさん。ご飯にしませんか?」

 

 この問いに、反論するものは居なかった――。




次回は、早く投稿できるように頑張りますm(__)m

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。