ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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エピローグですね。なので少し短いです。
てか、先程12巻を読み返していたのだが、雪菜と紗矢華が、チートまではいかないが、かなり強いと解った瞬間だった。

ともあれ、投稿です。
本編をどうぞ。


黒の剣巫Ⅺ

「つ……疲れた……」

 

「……俺も同意だ」

 

「……凪沙も疲れたよぉ……。 今日は、もう動きたくないかも」

 

「……流石に、わたしも疲れました」

 

 古城、悠斗、凪沙、雪菜と呟く。

 今、古城たちは、眠っている結瞳を連れブルーエンジリアムの歩道を歩いている。 ちなみに結瞳は、古城の背に負ぶられ眠っている。

 

「でも、この程度の被害で済んでよかったです。 プールや遊園地も通常通り営業するみたいですし」

 

「だな……。 まあ、絃神島の住人たちは、台風なんかの災害には慣れてるしな……」

 

 理由になってるか解らないな。と言い、古城は勝手に納得する。

 色々あったが、少なくても島は無事であり、結瞳も一緒に帰ってこられた。 今は、それだけで満足するべきなのだろう。

 

「てか、悠斗の最後の眷獣は何だったんだ?……かなりやばい気配がしたんだが」

 

「やばいな。 世界を混沌に陥れる事ができる力を持つ眷獣だし。 まあ、そんな事はしないから心配するな」

 

 雪菜が間髪入れず、

 

「そんなの当たり前です!……何で神代先輩には監視がつかないんでしょうか……」

 

 悠斗は気配感知もできるし、式神の類を見破る事は容易いのだ。

 監視をつけても、上手く交わされるのがオチである。

 

「つけても意味がないからじゃないか」

 

「……そう、なんですよね。 はあ……」

 

 雪菜は溜息を零すだけだ。

 そんな雪菜を励ますように、凪沙が笑顔で言う。

 

「大丈夫だって、雪菜ちゃん。 凪沙がしっかり監視してますから」

 

「……いえ、監視よりも、いちゃついてるようにしか見えないんですが……」

 

 どうやら、雪菜は苦労が絶えないらしい。 この中で一番苦労してるのは、雪菜ではないだろうか?

 

「でも、さすがに今日は遊ぶ気にはなれねーな。……今日はのんびりしたいぜ」

 

 近づいてきたコテージを見て、古城はホッと息を吐く。

 幸いな事に、古城たちの宿泊予定はまだ一泊残っていた。 今夜は何もしないで、翌朝までのんびりと過ごすのだ。

 そんな時、嘆息したのは悠斗だ。

 

「そう考えてる所悪いが古城、俺たちにはやるべき事があるんだぞ。……はあ、疲れてるんだけどなぁ……」

 

 その時、恐ろしいものから逃げ惑うような形相で、浅葱が古城たちの方へ走って来る。

 彼女の狼狽ぶりに、古城は警戒を隠せない。 そんな古城の背中で、ん、と結瞳が覚醒する気配があった。

 

「浅葱、何があったんだ?」

 

「来たの! あ、あれ見て、あれ」

 

 浅葱が指し示す方向に視線を向けて、古城はそのまま硬直し、悠斗は溜息を吐いた。

 コテージの前の駐車スペースに、見覚えがある電動カートが停まっている。

 飾り気がない業務用のカートだ。 助手席のドアには、『ラダマン亭ズ』という店名のロゴが描かれている。 カートの隣に立つのは、タイトスカートを穿いた女性。 プールサイドの売店を切り盛りする女店長である。

 

「チ、チーフ……!?」

 

「……やっぱり来てたのか」

 

「暁くん、神代くん。 お帰り。 ちょうど迎えに来た所だったの、楽しいアルバイトのお時間よ」

 

 基樹と話をしていたチーフが、古城たちの帰還に気づいて、おいでおいでと手招きをする。

 そう、あれほどの騒ぎがあっても、ブルーエンジリアムは営業してるのだ。ということは、必然的に売店も開かれてると言う事である。 その事実に気づいて古城は目眩を覚える。

 

「や、矢瀬――!?」

 

「なんだ? 何かよくわからんが、オレにはどうにもならねーぞ? 今回の旅費等は、お前たちのバイト代から出てるだからな」

 

 いきなり怒鳴られた基樹が、困惑したように言い返してくる。

 宿代は無料(タダ)だが、交通費諸々は古城たちのバイト代から降りているのだ。 なので、基樹の言い分は正しい。 そう、正しいのだ。 悪いのは、朝からレヴィアタンと戦わされる羽目になった古城たちの方だ。 だがしかし、あれだけの死戦を潜り抜けた後に、あのハードなアルバイトというのは、厳しいのも確かなのだ。

 

「待ってください――!?」

 

 絶望の表情を浮かべる古城を庇うように、澄んだ声が基樹に反論した。

 声の主は、古城の背から下り、両腕を広げて割り込んできた結瞳だった。

 唐突な乱入に、基樹とチーフはもちろん、悠斗と凪沙も驚いた。

 

「ゆ、結瞳?」

 

「古城さんは、わたしと一緒に遊ぶんです。 お仕事なんてダメです」

 

「……え? え?」

 

 結瞳の言葉を聞いた古城は、困惑の表情を浮かべるだけだ。

 

「だって、古城さんは約束してくれたんです。 一緒に遊園地とプールに連れてくれるって。 わたし、泳ぐのは得意なんです。 楽しみです!」

 

 キラキラした眼差しで、結瞳が古城を見上げてくる。

 結瞳に敵視される形になった基樹とチーフが、居心地悪そうに古城を見た。

 そして、どういうことかしら、と半眼で睨んでくる浅葱と、あちゃー、と思いながら内心頭を抱えてる悠斗と凪沙。

 古城は、唖然とした表情で結瞳を見返して、

 

「や、約束……?」

 

「はい。 古城さんが言ってくれたんじゃないですか、わたしのこと、一生幸せにしてくれるって」

 

「一生幸せに……って……え!?」

 

 古城は混乱しながら半歩程後ずさった。 そして、なんだそれは、と自問する。 何となく似たような事を口にした記憶はあるが、明らかな語弊があると思う。

 そう。 これはまるで、プロポーズだ。 間違っても、小学生にかける言葉ではない。

 

「オレが……そんなことを言ったのか?」

 

 結瞳は、『はい!』と答え、悠斗と凪沙に視線を向ける。 何故か知らないが、悠斗の額に一筋の汗が流れる。

 

「――お父さん(・・・・)お母さん(・・・・)も、そう聞いてましたよね」

 

 そう言って結瞳は、古城に腕を絡ませて、えへへ。と可愛らしく笑った。

 そして悠斗は唖然するしかない。

 確かに、里親探しは後々考えればいい。と言った記憶はあるが、自分が父親になるなんて一言も口にしてないはずだ。

 

「ま、待て、結瞳。 俺が言ったのは、親の事は後から考えればいいって言ったんだぞ。 だ、だよな、凪沙」

 

 悠斗が凪沙に問いかけるが、凪沙は、『悠君と凪沙の子供……』と言い、顔を真っ赤に染めて、悠斗の言葉が聞こえてないようだ。

 

「……古城……悠斗。 あんたら……」

 

 浅葱が、古城と悠斗に不信感に満ちた視線を向けてくる。 まあ、なんだ。お前ら幸せにな。と無責任な励ましの言葉をかけてくる基樹。

 古城と悠斗は現実から目を背けるように、視線を空に向けた。

 

「「勘弁してくれ……」」

 

 そう呟く、古城と悠斗の声は、澄み切った空に吸い込まれていく。

 魔族特区、絃神島の増設人工島(サブフロート)ブルーエンジアム。

 楽園の名前を持つ島の騒がしい一日は、まだまだ続きそうだった――。




これにて、黒の剣巫は終了ですね。
次回からは新章かな?まあその辺は、追々考えます。

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

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