てか、先程12巻を読み返していたのだが、雪菜と紗矢華が、チートまではいかないが、かなり強いと解った瞬間だった。
ともあれ、投稿です。
本編をどうぞ。
「つ……疲れた……」
「……俺も同意だ」
「……凪沙も疲れたよぉ……。 今日は、もう動きたくないかも」
「……流石に、わたしも疲れました」
古城、悠斗、凪沙、雪菜と呟く。
今、古城たちは、眠っている結瞳を連れブルーエンジリアムの歩道を歩いている。 ちなみに結瞳は、古城の背に負ぶられ眠っている。
「でも、この程度の被害で済んでよかったです。 プールや遊園地も通常通り営業するみたいですし」
「だな……。 まあ、絃神島の住人たちは、台風なんかの災害には慣れてるしな……」
理由になってるか解らないな。と言い、古城は勝手に納得する。
色々あったが、少なくても島は無事であり、結瞳も一緒に帰ってこられた。 今は、それだけで満足するべきなのだろう。
「てか、悠斗の最後の眷獣は何だったんだ?……かなりやばい気配がしたんだが」
「やばいな。 世界を混沌に陥れる事ができる力を持つ眷獣だし。 まあ、そんな事はしないから心配するな」
雪菜が間髪入れず、
「そんなの当たり前です!……何で神代先輩には監視がつかないんでしょうか……」
悠斗は気配感知もできるし、式神の類を見破る事は容易いのだ。
監視をつけても、上手く交わされるのがオチである。
「つけても意味がないからじゃないか」
「……そう、なんですよね。 はあ……」
雪菜は溜息を零すだけだ。
そんな雪菜を励ますように、凪沙が笑顔で言う。
「大丈夫だって、雪菜ちゃん。 凪沙がしっかり監視してますから」
「……いえ、監視よりも、いちゃついてるようにしか見えないんですが……」
どうやら、雪菜は苦労が絶えないらしい。 この中で一番苦労してるのは、雪菜ではないだろうか?
「でも、さすがに今日は遊ぶ気にはなれねーな。……今日はのんびりしたいぜ」
近づいてきたコテージを見て、古城はホッと息を吐く。
幸いな事に、古城たちの宿泊予定はまだ一泊残っていた。 今夜は何もしないで、翌朝までのんびりと過ごすのだ。
そんな時、嘆息したのは悠斗だ。
「そう考えてる所悪いが古城、俺たちにはやるべき事があるんだぞ。……はあ、疲れてるんだけどなぁ……」
その時、恐ろしいものから逃げ惑うような形相で、浅葱が古城たちの方へ走って来る。
彼女の狼狽ぶりに、古城は警戒を隠せない。 そんな古城の背中で、ん、と結瞳が覚醒する気配があった。
「浅葱、何があったんだ?」
「来たの! あ、あれ見て、あれ」
浅葱が指し示す方向に視線を向けて、古城はそのまま硬直し、悠斗は溜息を吐いた。
コテージの前の駐車スペースに、見覚えがある電動カートが停まっている。
飾り気がない業務用のカートだ。 助手席のドアには、『ラダマン亭ズ』という店名のロゴが描かれている。 カートの隣に立つのは、タイトスカートを穿いた女性。 プールサイドの売店を切り盛りする女店長である。
「チ、チーフ……!?」
「……やっぱり来てたのか」
「暁くん、神代くん。 お帰り。 ちょうど迎えに来た所だったの、楽しいアルバイトのお時間よ」
基樹と話をしていたチーフが、古城たちの帰還に気づいて、おいでおいでと手招きをする。
そう、あれほどの騒ぎがあっても、ブルーエンジリアムは営業してるのだ。ということは、必然的に売店も開かれてると言う事である。 その事実に気づいて古城は目眩を覚える。
「や、矢瀬――!?」
「なんだ? 何かよくわからんが、オレにはどうにもならねーぞ? 今回の旅費等は、お前たちのバイト代から出てるだからな」
いきなり怒鳴られた基樹が、困惑したように言い返してくる。
宿代は
「待ってください――!?」
絶望の表情を浮かべる古城を庇うように、澄んだ声が基樹に反論した。
声の主は、古城の背から下り、両腕を広げて割り込んできた結瞳だった。
唐突な乱入に、基樹とチーフはもちろん、悠斗と凪沙も驚いた。
「ゆ、結瞳?」
「古城さんは、わたしと一緒に遊ぶんです。 お仕事なんてダメです」
「……え? え?」
結瞳の言葉を聞いた古城は、困惑の表情を浮かべるだけだ。
「だって、古城さんは約束してくれたんです。 一緒に遊園地とプールに連れてくれるって。 わたし、泳ぐのは得意なんです。 楽しみです!」
キラキラした眼差しで、結瞳が古城を見上げてくる。
結瞳に敵視される形になった基樹とチーフが、居心地悪そうに古城を見た。
そして、どういうことかしら、と半眼で睨んでくる浅葱と、あちゃー、と思いながら内心頭を抱えてる悠斗と凪沙。
古城は、唖然とした表情で結瞳を見返して、
「や、約束……?」
「はい。 古城さんが言ってくれたんじゃないですか、わたしのこと、一生幸せにしてくれるって」
「一生幸せに……って……え!?」
古城は混乱しながら半歩程後ずさった。 そして、なんだそれは、と自問する。 何となく似たような事を口にした記憶はあるが、明らかな語弊があると思う。
そう。 これはまるで、プロポーズだ。 間違っても、小学生にかける言葉ではない。
「オレが……そんなことを言ったのか?」
結瞳は、『はい!』と答え、悠斗と凪沙に視線を向ける。 何故か知らないが、悠斗の額に一筋の汗が流れる。
「――
そう言って結瞳は、古城に腕を絡ませて、えへへ。と可愛らしく笑った。
そして悠斗は唖然するしかない。
確かに、里親探しは後々考えればいい。と言った記憶はあるが、自分が父親になるなんて一言も口にしてないはずだ。
「ま、待て、結瞳。 俺が言ったのは、親の事は後から考えればいいって言ったんだぞ。 だ、だよな、凪沙」
悠斗が凪沙に問いかけるが、凪沙は、『悠君と凪沙の子供……』と言い、顔を真っ赤に染めて、悠斗の言葉が聞こえてないようだ。
「……古城……悠斗。 あんたら……」
浅葱が、古城と悠斗に不信感に満ちた視線を向けてくる。 まあ、なんだ。お前ら幸せにな。と無責任な励ましの言葉をかけてくる基樹。
古城と悠斗は現実から目を背けるように、視線を空に向けた。
「「勘弁してくれ……」」
そう呟く、古城と悠斗の声は、澄み切った空に吸い込まれていく。
魔族特区、絃神島の
楽園の名前を持つ島の騒がしい一日は、まだまだ続きそうだった――。
これにて、黒の剣巫は終了ですね。
次回からは新章かな?まあその辺は、追々考えます。
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!