ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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❀祝、お気に入り100件(^O^)
いやー、軽いノリで書いたのがここまでいくとは、まじでありがとうございます!!
まあ、自分も少しずつ思い入れが出てきたんですけどね(笑)

では、早速投稿です。
本編をどうぞ。


戦王の使者Ⅱ

校門を潜った所で古城と悠斗は、雪菜と凪沙と別れ、高等部の校舎目掛けて歩き出す。

悠斗と古城が昇降口に入ると、そこには藍羽浅葱の姿があった。

 

「おはよ、古城、悠斗。 めずらしいわね。 あんたらが二人で登校するなんて」

 

「ん、ああ、まあな」

 

「今日は都合上な」

 

彼女の隣には、大きなスポーツバックが投げ出されていた。

 

「浅葱? なんだ、その荷物?」

 

「確かに、ずいぶんデカイ荷物だな」

 

古城と悠斗は上履きを取り出しながら、何気なく聞いた。

浅葱は、古城を見てニヤリと笑い、

 

「ちょうどいいところに来てもらっちゃて、悪いわね。 意外に重くて面倒だったのよ」

 

古城にバックを手渡し、上履きに履き替えた。

 

「やー、ホント助かるわ。 ロッカーの前に置いといてくれたらいいからさ」

 

浅葱が、古城に一方的に指示を出す。

 

「……悠斗が持ってくれ」

 

古城は、断るのが無理だと思い悠斗に頼んだが、

 

「ダメよ。 悠斗が荷物持ちするのは、凪沙ちゃんの物だけって決まってるんだから」

 

悠斗はポカンとし浅葱に聞いた。

 

「は? 何それ。 初めて聞いたんだけど……」

 

「そりゃそうよ。 悠斗が居ない所で決まったんだから」

 

昨夜、那月から聞いた事は事実だったらしい。

結局、古城が荷物を持ち、教室向かって歩いて行く。

 

「んで、古城と悠斗はなんの競技に出ることにしたわけ?」

 

「さあな。 築島には、なるべく楽な種目にしてくれって頼んでおいたけど」

 

「俺は、何でもいいから補欠にしといてくれって頼んだぞ。 出なくて済むし」

 

やれやれ、と浅葱が落胆したように溜息を吐く。

 

「あんたらはやる気ゼロなのね。 古城や悠斗は、球技大会の時くらいしか存在価値がないんだから、もっと張り切りなさいよ」

 

「「えー、だってメンドイじゃん」」

 

「……あんたら、ホント仲良いわね」

 

軽口を叩きながら、悠斗と古城と浅葱は教室に入る。

その時、空気がどよめき、クラス全員が振り返って――古城と浅葱を見た。

 

「俺はお邪魔だから、お先」

 

悠斗はそう言い、古城たちの先を歩いた。

 

「このタイミングで、道具を持って登場とは。 やっぱり運命なのかね」

 

教卓の近くにいた基樹が、やけに調子よく声をかけていた。

悠斗は黒板の文字を見て、ああ、なるほど。と納得した。

 

「なに言っての、あんた? 年上の彼女に振られて錯乱した?」

 

「錯乱してねぇし、振られてもねぇよ、縁起でもねぇ! あれだ、あれ!」

 

上擦った声でそう言って、基樹は黒板の方を指した。

意外な場所にある自分の名前に気付いて、浅葱は黒板目掛けて歩き出す。

意外な場所とは、男女混合ダブルスだった。

 

「……なんで、あたしが古城と組まなきゃいけないのよ?」

 

「今年からそういう規定になったの。 シングルスが廃止で、代わりに男女混合ダブルス選手ペアを増やすように。 あ、現役のバド部の子は出場禁止ね」

 

「だがら、なんであたしと古城のペア? 悠斗とクラスの女子を組ませればいいじゃない」

 

「それはムリな話しねぇ。 凪沙ちゃんに怒られちゃうもの。 それに浅葱、前から好きだって言ってたじゃない」

 

「は、はい!? あ、あ、あたしがいつそんなこと……!?」

 

「バドミントンの話よ」

 

いつもの冷静な口調で倫が言い、浅葱は、うぐ、と言葉を詰まらせていた。

 

「暁くんも希望種目はないって言ってたし、いいわよね?」

 

「まあ、楽そうな競技だしな」

 

古城は頷き、浅葱との男女混合ダブルスの出場が決定した。

悠斗はと言うと、

 

「……サッカーね。 休めっかな?」

 

悠斗はどう転がっても、休む気満々だったが。

すると、基樹が悠斗の肩に手を回してきた。

 

「そんなこと言ってと、凪沙ちゃんに怒られるぜ」

 

「うぐっ、……わかった。 ちゃんとやるから、今のは凪沙に言わないでくれ」

 

基樹は、クク、と笑い、

 

「お前、ホントに凪沙ちゃんに弱いのな」

 

「……そだな。 俺もそれは自覚してる」

 

そう。 悠斗は凪沙に頭が上がらない。

これが、尻に敷かれてるっていうやつだろうか?

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗は屋上のベンチの上で横になっていた。

その時、呪力感知した。

 

「ったく、俺に平穏はねぇのかよ」

 

ベンチの上から跳ね起き、屋上から飛び降り呪力の発生源へ向かう。

そこには、呪術で生み出されていた鋼鉄のライオンと狼に前後を挟まれ、奥歯を鳴らしている古城の姿だった。

すると、二体の獣が同時に跳躍した。

 

「――先輩! 伏せて!」

 

ギリギリのタイミングで雪菜が叫び、ライオンを銀色の槍で貫き粉砕する。

狼の方は、悠斗が魔力を纏った回し蹴りを放ち破壊した。

 

「無事ですか、先輩?」

 

「古城、無事かー?」

 

「悪い、助かった。 けど、姫柊と悠斗はどうしてここに?」

 

古城は、全身の土煙を払い落しながら立ち上がった。

 

「俺は、屋上で寝てたら呪力を感知してな。 その発生源がここだった」

 

「先輩を監視していた私の式神が、攻撃的な呪力を知られて来たので、気になって来てみたんですが……」

 

「は? 監視? 式神ってなんだそれ?」

 

聞き咎めた古城から眼を逸らし、雪菜が、ぎく、ぎく、と肩を震わせた。

俯く雪菜の横顔を、古城は無言のままじっと見つめると、雪菜はわざとらしく咳払いをしながら、顔を上げた。

 

「――任務ですから!」

 

「ちょっと待てェ! もしかして、これまでずっとそうやってオレのこと見張ってたのか!?」

 

「先輩のプライバシーは守りますから、安心してください」

 

「安心できるかっ!」

 

古城が頭を掻きむしりながら怒鳴る。

古城は悠斗を見て、

 

「じゃ、じゃあ、悠斗はどうなんだ? 監視対象じゃないのか?」

 

「俺の浄化の焔は、俺の周りを害するものは清めちまうんだ。 だから、俺の事は遠距離監視できないな」

 

「な、なんだそりゃ……」

 

と、古城は肩を落としていた。

 

「そんなことより先輩、誰かに狙われる心当たりは?」

 

雪菜が再び咳払いをして聞いてきた。

古城は渋面で首を振る。

悠斗は破壊した鋼鉄の獣の断面を拾い上げる。

 

「……アルミ箔? これがさっきの獣もどきの正体か?」

 

「これも式神です。 本来は、遠方にいる相手に書状などを送り届ける為のもので、こんなに攻撃的な術ではないはずなんですけど」

 

「なるほど。 使い魔みたいなもんか」

 

詳しい説明をされても理解出来そうに無かったので、悠斗は投げやりに頷いた。

 

「すいません、先輩。 雪霞狼を見られました。 すぐに捕まえて記憶の消去を――」

 

「ま、待った、姫柊!」

 

槍を握って飛び出しそうになった雪菜を、古城が慌てて引き留めた。

 

「そんなことをしなくても大丈夫だから! 心配要らないって!」

 

「どうしてそんなことが言い切れるんです!?」

 

雪菜が余裕のない表情で振り向いたので、悠斗も口を挟んだ。

 

「古城の言う通り大丈夫だ。 チア服でそんなもの振り回してたら、痛いコスプレ趣味の女子だと思われるだけだからな。 だから心配要らん」

 

「う……ぐ……」

 

自分の恰好を見下ろした雪菜が、反論できず沈黙する。

 

「なあ。 姫柊のその服ってもしかして――」

 

「衣装合わせの途中を抜け出してきたんです。 あんまりじろじろ見ないでください」

 

プリーツスカートの裾を押えた雪菜が、上目遣いに古城を睨む。

スカートの丈が短いせいで、ちょっとした動きでも中が見えてしまうのだ。

 

「いや、でも、スパッツ穿いてんじゃん」

 

「それでも先輩は見てはダメです。 眼つきがいやらしいです」

 

「そうだぞ古城。 お前はいやらしいぞ」

 

悠斗も雪菜の言葉に便乗しておく。

 

「いや、ちょっと待て。 悠斗はいいのか!?」

 

「はい、大丈夫です。 神代先輩には――」

 

「姫柊、それ以上は言うな。 てか、言っちゃダメだ。 俺の勘がそう言ってる」

 

「は、はい。 そうですね」

 

雪菜は慌ててこう答えた。

古城が咳払いをし、

 

「さっきの折り紙……手紙を届ける術だって言ったよな」

 

そう言って古城が拾い上げたのは、一通の手紙だった、

金色の箔押しが施された豪華な封筒を、銀色の封蠟が閉じている。

そこに刻まれたスタンプに気付いて、雪菜は顔を強張らせた。

 

「この刻印……まさか……」

 

「姫柊?」

 

動揺している雪菜と、額に手を当てながら悠斗は空を見上げていた。

蛇と剣を模した紋章。 悠斗はこの刻印を知っている。 これはある貴族の刻印だ。

出来れば関わりたくないが、古城にこの手紙が来たということは、悠斗の存在もばれているだろう。

真租に近いアイツなら、悠斗が力を解放した時点でばれているはずだ。

 

「――古城?」

 

その時、誰かが古城の名を呼んだ。

 

「こんなところでなに騒いでんのよ。 あんたがいつまでも練習に来ないから、捜しに来てやったのよ。 まったく、あたしをあんなカップル時空に置き去りにするとはいい度胸……」

 

「あ、浅葱!?」

 

そこには、バドミントンのユニフォームを着た浅葱が無表情のまま、立ち尽くす古城と雪菜を眺めていた。

 

「……その手紙、なに?」

 

「え?」

 

静かな声で浅葱に聞かれ、古城は事態の深刻さを把握した。

放課後の体育館裏で、一眼を避けるようにして会っている男子二人と女子一人。

そして古城の手に握られているのは一通の手紙。

そして少し遠くからこの光景を眺めている悠斗。 これは、悠斗がこの場を設けたと自己解釈されてしまう。

客観的に判断して、どう考えても甘酸っぱい告白の場面だった。

 

「もしかして、邪魔しちゃった」

 

「いや、違う。 オレが姫柊とここで会っているのは予期せぬ事故というか緊急事態というか、決してこの手紙を俺たちが渡したり受け取ったりしてたわけじゃなくて、なあ、姫柊?」

 

「は、はい。 この服もクラスの応援用で、断じて暁先輩の嗜好に合わせているわけでは……」

 

古城と雪菜はこう説得をしていたが、説得力が皆無だった。

息の合った言い訳を続ける古城たちを、浅葱は奇妙に静かな瞳で見つめている。

もういいよ、と浅葱は嘆息し、

 

「べつになんでもいいわよ。 あたしには関係ないことだしさ」

 

そう言って浅葱はにこやかに笑ったが、感情が抜け落ちた不自然な笑顔だった。

その笑顔のまま、浅葱は背を向けた。

 

「あたし、帰る」

 

「お、おい、浅葱……!」

 

古城の制止も空しく、浅葱の姿は建物の陰に隠れて見えなくなる。

 

「あー、これはあれだな。 やっちまったとしかいいようがないな」

 

悠斗は空を見上げ、こう呟いた。




朱雀の真骨頂は、清めです。
悠斗君の体の周りは、見えない浄化の焔を纏っていますナ。
朱雀は、常時展開型の眷獣ですね。
呼ばないと姿は形成しませんが。
後々、眷獣紹介の投稿も出来たら投稿します。

次回から戦闘狂の登場です。
それでは、感想、評価、よろしくお願いします!!
感想欲しいです(>A<。)(切実)

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