ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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物語が、僅かに進みますね。
やっぱ、戦闘を描写するのは難しいです(^_^;)

では、投稿です。
本編をどうぞ。


焔光の夜伯Ⅲ

あれから悠斗は、様々な国を転々としていた。 今悠斗が居る国は、戦王領域(せんおうりょういき)、七十二の眷獣を従える覇王、忘却の戦王(ロストウォーロード)が支配する夜の帝国(ドミニオン)だ。

悠斗は街一角の石段に座り、先程購入したリンゴを口にしてた。

 

『……お前、何個目だ』

 

今話しかけてきたのは、悠斗の中に眠る黄龍だ。

 

「たしか、三個目だっけ?」

 

『四個目だ』

 

どうやら、麒麟が答えを言ってくれたらしい。

あれから悠斗の親代わりになっているのは、眷獣たちなのだ。 特に、黄龍と麒麟がメインである。

 

『今日はどうするんだ?』

 

「違う場所に移動しようか、かなりの情報も手に入ったし」

 

そう、欲していた聖殲(・・)の情報も手に入ったのだ。

 

『はあ、最近の趣味が情報集めだとはな』

 

「溜息を吐くなよ、黄龍。 将来、役に経つ日が来るかもしれないだろ」

 

悠斗は石段から立ち上がり、夜の帝国(ドミニオン)を出る為歩き出した。

ちなみに、現在の悠斗は、茶色のローブを羽織り顔が見えないようにフードを被っている。 夜の帝国(ドミニオン)出て、北の方角へ歩いていたら、純白のスーツを身に纏った青年が佇んでいた。

 

「君かな、第一真祖(爺さん)が感じた魔力の奔流元は?」

 

「はあ、何で真祖にはバレるんだよ……」

 

悠斗は既に、第三真祖にも露見し戦闘になったのだ。

結果は、悠斗の勝利。 だが、止めを刺す事はなかった。 その一番の理由は、世界の均衡が崩れてしまうからだ。

 

「何のようだ?」

 

「ぜひ、君と手合わせしてくてね。 紅蓮の織天使」

 

悠斗は溜息を吐いた。 どうやら、朱雀と融合した所を見られ、この二つ名がつけられたらしい。 悠斗は、あまり好きじゃない二つ名らしいが。

 

「え、嫌だよ。 疲れるし」

 

悠斗は平然にそう答え、踵を返した。

青年はニヤリと笑った。

 

「嫌でも、僕と戦ってもらうよ――娑伽羅(シャカラ)!」

 

青年が召喚したのは、超高圧水流で構成された海蛇だ。 その海蛇は、青年の頭上を旋回するように漂っている。

その蛇は、悠斗に向かって高圧された水流を放った。 並みの吸血鬼なら、一撃で絶命する攻撃だ。

 

「面倒くさいな……。――飛焔(ひえん)!」

 

悠斗は振り返ってから左手突き出し、掌から深紅の焔を放った。 それは水流と激突し、相殺された。

 

「ハハハハッ! 眷獣も召喚せず、攻撃を相殺するとはね! 最高だよ、君!」

 

「……望み通り戦ってやるよ。 でも、お前じゃ俺に勝てない」

 

青年は、好戦的な笑みを浮かべる。

悠斗はローブを仕舞い、左手を突き出した。

 

「――降臨せよ、朱雀、青龍!」

 

悠斗の左側には紅蓮の不死鳥が、右側には天を統べる龍が召喚された。

 

「へぇ、それが君の眷獣か。 僕は――――摩那斯(マナシ)優鉢羅(ウハツラ)!」

 

青年は娑伽羅(シャカラ)と呼ばれた眷獣を異世界へ戻し、青年の背後に出現したのは、荒ぶる海のような黒蛇と、凍りついたような水面のような青い蛇だ。 それは空で絡み合い、一体の龍の姿へと変わる。 全長数十メートルにも達する龍である。

龍は降下し悠斗に襲いかがるが、当の悠斗は平静を保っていた。 相手の攻撃を分析してるようにも見える。

 

「――雷球(らいほう)!」

 

青龍が凶悪な口から雷球を放ち、それは龍と衝突した。

そして、この均衡に敗北した龍は、跡形も無く消え去った。 雷球(らいほう)が――――龍の眷獣を消し飛ばした(・・・・・・)のだ。

 

「なッ!?」

 

青年は心底驚いたようだった。

まさか、消し飛ばされるとは思わなかったのだろう。 悠斗は立て続けに指示を出す。

 

「――飛焔(ひえん)!」

 

青年は朱雀の焔によって弱まり、その場で片膝を突いた。

この勝負は、完全に悠斗が有利に立っていた。

 

「もういいか? 勝負は見えてるぞ」

 

「ふふふ、あはははは! 最高だ、これだよ! この高揚感が、僕が求めてた戦いだよ! 自己紹介が遅れたね。 僕の名前は、ディミトリエ(・・・・・・)ヴァトラー(・・・・)。 戦王領域の貴族サ」

 

「……神代悠斗だ」

 

ヴァトラーは眉を寄せた。

 

「……神代だって。――あの一族の生き残り……。 ハハハッ、これは面白い!」

 

ヴァトラーは一通り笑うと、

 

「安心してくれ。 この事は他言しないヨ。 続きをしようじゃないか。――跋難陀(バツナンダ)!」

 

ヴァトラーが召喚したのは、鋼の刃で覆われた蛇だ。 無数の剣の鱗を持つ蛇は、悠斗に突撃した。

これならば、飛焔(ひえん)の効果は受け付けないのだ。

 

「――炎月(えんげつ)!」

 

悠斗は、正面に結界張って攻撃を防ぎ、大きく後方へ跳んだ。 悠斗がヴァトラーを見ると、歓喜の笑みを浮かべていたのだ。

悠斗はすぐさま反撃に移った。

 

「――閃雷(せんらい)!」

 

「――徳叉迦(タクシャカ)!」

 

青龍がヴァトラーに放った無数の雷撃は、禍々しい緑色の蛇の瞳から放たれた無数の閃光に、全て相殺させた。

地形は、攻撃余波により地面が抉られ、あちこちに巨大なクレーターが生まれていた。 最早、最初の原型は留めていない。

 

「君も、そいつら以外に召喚したらいいじゃないカ?」

 

ヴァトラーは挑発的にそう言ってくる。

悠斗は、このような挑発に乗る事はないのだが、今は違ったのだ。

 

「――降臨せよ、白虎、玄武!」

 

ヴァトラーが命じ、徳叉迦(タクシャカ)は再び無数の閃光を放った。 眷獣の攻撃により、大地が割れ、衝撃で空気が揺れる。

悠斗も、白虎に命じる。

 

「――切り裂け!」

 

白虎は、次元切断(ディメンジョン・セェヴァル)により空間を切り裂いた。 無数の閃光は、その空間に吸い込まれるように消滅し、その直後、空間が元に戻る。

だが、悠斗の攻撃はまだ終わっていない。

 

「――無色(むしょく)!」

 

玄武がヴァトラーを無に還えす為、巻き付いた蛇を動かし空間の一部を食らった。 だが、それを察知してたかのようにヴァトラーは後方に大きく跳び回避。

 

「ッチ」

 

悠斗は始めて舌打ちをした。

今の一撃でヴァトラーを無に還し、勝負を決めて終いたかった。 ヴァトラーは合掌していた。 楽しくてしょうがない。と言ってるようにも見える。

悠斗はこのままでは埒が明かないと思い、言葉を紡ぐ。

 

「紅蓮を纏いし不死鳥よ。 我の翼となる為、我と心を一つにせよ――来い、朱雀!」

 

悠斗と朱雀は融合し、悠斗の背部からは、二対四枚の紅蓮の翼が出現した。

その姿は、天界に住むと言われる織天使(セラフ)だ。 天使化により、守護の向上、神力が付随された。

 

「行くぞッ!」

 

「フフッ、こっちこそ」

 

悠斗とヴァトラーは眷獣を連れ、同時に飛び出した。 序盤は拮抗していたが、悠斗が徐々に圧していくようになった。 悠斗は、ヴァトラーの反撃を強引にねじ伏せ、防御を粉砕し、容赦なく攻撃を叩き込んでいく。 ヴァトラーが身に纏うスーツは、無数の斬撃で傷が生まれ、裂けた皮膚から鮮血が噴き出る。

ヴァトラーと悠斗は、一旦距離を取った(仕切り直し)。 悠斗も無傷ではなく、所々に切り傷が刻まれていた。

 

「君は今まで殺ってきた中で、一番強いよ、悠斗。 それに、まだ余力を残しているのだろ?」

 

「まあな」

 

「フフ、そうでなきゃね。 こいつを召喚するのは、久しぶりだネ。――難蛇(ナンダ)跋難蛇(バツナンダ) 阿那婆達多(アナバダツタ)!」

 

ヴァトラーが召喚した三体の蛇が螺旋状に絡み合い、一体の龍へと変わった。

剣の鱗と、炎の鬣を持つ龍だ。この龍は、先程ヴァトラーが創り出した龍とは次元が違う。 その龍が旋廻するだけで、大地に深い傷が穿たれる。

 

「こいつは、君のそれ(天使化)じゃ防げないよ。 若干弱まってもいるしネ」

 

「ああ、その通りだ。――降臨せよ、黄龍!」

 

悠斗の隣に召喚されたのは、黄金に輝く龍だ。

ヴァトラーも、黄龍を見て目を見開いた。 黄龍は、四神たちを凌ぐ力を有しているのだから。

 

「――浄天(せいてん)!」

 

ヴァトラーの蛇と、黄龍が凶悪な口から放った黄金の渦が衝突した。

状況は拮抗したまま変わらない。 だが――、

 

「まだだ!――黄龍!」

 

黄龍の黄金の渦が勢いを増し、拮抗が崩れ、眷獣を消し飛ばし、黄金の渦ヴァトラーに直撃した。 ヴァトラーは片膝を突けたが、まだ戦意を消滅させていなかった。

だが、黄龍の一撃を受けたので、最早、体力が底を尽きかけてるはずだ。

 

「ふふ、アハハハハハハハッッ! 最高だヨ!」

 

高笑いするヴァトラーを見て、悠斗は眉を寄せた。

この状況でのヴァトラーの態度は、明らかに異常なものだ。

 

「……お前、狂ってるな」

 

「僕も自覚してるサ。 これが僕の最後の眷獣ダ。――――原初の蛇(アナンタ)!」

 

ヴァトラーはそいつを召喚した。 そいつは、大地を突き刺さる樹木。 根元には蛇の尾。 九体の蛇の眷獣が絡み合い、全長数百メートルの樹を作り上げている。 ヴァトラーは最後の力を振り絞り、蛇の鎌首に登って片膝を突けた。 そう、美しい黄金の障気が漂っているのだ。

悠斗は顔を歪めた。 また、こいつは真祖以上の眷獣なのだ。

 

「……お前、とんだ隠し玉を持ってたのな」

 

「……フフ、凄いだろ」

 

「……なら、こちらも切り札を使わせてもらう」

 

悠斗が左手を掲げると、大地が揺れ、雷鳴が轟いた。

 

「――全てを司る神獣よ。 今こそ我と一つになり、黄金の輝きを与えたまえ。 四神の長たる黄金の龍よ!――来い、黄龍!」

 

悠斗と黄龍は融合し、悠斗は黄金の衣に包まれた。

その背からは、朱雀から付与された紅蓮の翼。

 

「――降臨せよ、麒麟」

 

悠斗は、黄龍と同格の麒麟も召喚させ、再び左手を掲げると、目を奪われるような、美しい龍が召喚される。

悠斗は左腕を振り下ろした。

 

「――天舞(てんぶ)!」

 

火、水、風、雷、地が入り混じった龍は、原初の蛇(アナンタ)の攻撃と衝突し爆発を起こす。

 

「――嵐光(らんこう)!」

 

麒麟は光の渦を創り出し、追撃を下す。

天侯が回復し、爆炎の煙が晴れると、原初の蛇(アナンタ)は姿は完全に消滅していた。 悠斗はあの眷獣を完全に消し去ったのだ。

だが、悠斗も片膝を突けた。 黄龍との融合攻撃に、麒麟の攻撃。 悠斗の魔力(体力)は、かなり削られたのだ。 悠斗は融合を解き、眷獣たちを異世界へ還した。

 

「はあ……はあ」

 

悠斗は、荒い息を吐いた。

数メートル先には、この勝負を仕掛けたディミトリエ・ヴァトラーが横になっていた。 悠斗は、呼吸を整えてから立ち上がり、その場へ歩み寄る。

 

「……俺の勝ちだ、蛇野郎」

 

「……君の勝ちだ、悠斗。 ふふ、魔力(体力)も枯渇したヨ」

 

ヴァトラーは、満ち足りた笑みを浮かべていた。

今のヴァトラーは、半殺し状態にある。 なので、追撃は不可能だろう。 悠斗は、そうか。と頷き、ローブを羽織りフードで顔を隠した。

 

「僕を殺さないのかい?」

 

「まあな。 無防備な奴を殺すのは気が引ける」

 

ヴァトラーは、喉をくっくっと鳴らした。

 

「君は優しいネ。 誰譲りだい?」

 

悠斗には、肉親に関する記憶がないのだ。

このような質問をされても、わからない。としか言いようがない。 なので悠斗は、言葉を濁した。

 

「さあ、誰だろうな。 俺に勝ったら教えてやるよ。 つーか、救援が来るまで、そこで大人しく寝てろ」

 

「フフ、悠斗には借りができたネ」

 

「なら、後で返せよ。 その借りってやつを」

 

悠斗は踵を返し歩き出した。

紅蓮の織天使vsディミトリエ・ヴァトラーの勝負は、紅蓮の織天使の勝利に終わったのだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗が旅をしていると、ある一ヵ所に吸い付けられるように移動していた。 そこには、岩場の麓。 祭殿と思しき石造りの洞窟だ。 その洞窟は、赤茶けた石灰岩は雨嵐に侵食させ抉れており、周囲には破壊された車両の残骸が散らばっている。

だが、そこからは、ただならぬ気配が漂っていたのだ。――王気にも似た威圧感が。

 

「あれは……何だ? いや、聖殲の遺産(・・・・・)か?」

 

『その通りだ。 調べてたものに、すぐに会えるとはな』

 

黄龍がそう言った。

あの洞窟は、聖殲の遺産で間違えない。 悠斗が洞窟に近づくと、三人の中の一人が口を開く。 それは、この洞窟に関するものだった。

 

『……――十二番目(・・・・)……妖精……柩だ』

 

「……十二番目……」

 

悠斗は、静かにそう呟いた――。




蛇遣いとの戦闘を書いてみました。
上手く書けただろうか?不安です(-_-;)
悠斗君、この時から聖殲の知識を持っていたなんて、驚きですね(笑)
てか、黄龍の攻撃を受けたのに消滅してないヴァトラー凄ぇ。ま、何かで身を守ったんでしょうね。

ではでは、感想、評価、よろしくお願いいします!!

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