ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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いやー、更新が遅れて申し訳ないm(__)m
違う作品を考えながら執筆してたもので。
今回は、蒼き魔女の迷宮編に行く前に番外編を挟みました。
うむ。上手く書けているだろうか。

では、投稿です。
本編をどうぞ。


日常編
赤い糸


テーブルの上には、凪沙と雪菜が作った手料理が並べられた。

まあ補足として、料理を運んだのは男性陣だ

それから、悠斗、古城、雪菜は、それぞれの席へ着席した。 凪沙は飲み物を取ってくると言って席を外している。

 

「明日は待ちに待った休みだ。 ここ最近は疲れがハンパなかったからな」

 

特に、模造天使(エンジェル・フォウ)事件とかで。 これは凪沙に聞かれたらまずい言葉なので、悠斗は心の中で呟いた。

 

「ま、特にやることはないから、家でゴロゴロするだけなんだがな」

 

悠斗の向かいに座っている古城は頷いた。

 

「悠斗の気持ちわかるぞ。 休みの日は家でゴロゴロしたり、寝るに限るよな」

 

「だろ。 あれはいいものだな」

 

古城の隣に座っている雪菜は息を吐いた。

 

「先輩方は、もう少し有効な休日の使い方はないんですか」

 

「「ない」」

 

「何でそんなに息が合ってるんですか……」

 

雪菜はがっくりと肩を落した。

こう話していたら、台所から麦茶の入った1.5ℓの瓶を持ち、悠斗の隣に座った。

悠斗の隣に座った凪沙は、古城、雪菜、悠斗のコップに麦茶を注ぐ。

悠斗は麦茶を一口飲み、

 

「で、凪沙は休日何してるだ?」

 

凪沙は、うーん、と考え込んだ。

 

「そうだね。 部活に行ったり、本を読んだり、勉強したり、悠君のお部屋を掃除し行ったり……。 あとは、夕飯の食材を買ったりかな。 あ、そう言えば、悠君のお家にあるお肉が明日までだった。 明日は、悠君のお家でお料理を作るね。 何がいい、やっぱりしょうが焼かな? そう言えば、悠君の好物ってしょうが焼だよね?」

 

「まあ、そうだが」

 

凪沙胸を張り、

 

「悠君の好きな物は大体抑えてるからね。 サバの味噌煮、焼き鮭、昆布のお味噌汁に、白いご飯だよね。 悠君は、和食が好きなんだね」

 

「……よ、よく覚えてるな」

 

「へっへー、凄いでしょ。 悠君のことは、凪沙が責任を持って一生面倒を見てあげるから心配しなくていいよ」

 

「そ、そうか。 それは助かる。 ありがとうございます」

 

今の言葉は逆プロポーズに聞こえたんだが、気にしたら負けだ。

ここは素直に感謝の気持ちで伝えておくのが吉なはずだ。 何故なら、鋭い視線を悠斗に送るシスコンの兄の姿が映っているのだから。

だが、天然を発揮した雪菜に、爆弾が落されてしまう。

 

「凪沙ちゃんは、神代先輩のことが大好きなんですね。 そういえば、凪沙ちゃんの首に下げてる宝玉のネックレスと、太陽のネックレスはどうしたんですか?」

 

悠斗は瞳を閉じた。

 

「(……アウトー、アウトですよ。 姫柊さん、天然を発揮しちゃいましたか。 それは核爆弾に等しいものですよ。 はい。)」

 

それを聞いた凪沙は、えへへと笑い、悠斗は、ふぇぇぇ、と心の中で叫んでいた。 先程より古城の視線が鋭くなったのだ。

だが、凪沙が更なる核爆弾を落とす。

 

「宝玉は、悠君からの御守りで、ネックレスは悠君とお揃い、ペアネックレスなんだ」

 

「そうなんですか。 神代先輩がいつも首に下げてる月のネックレスは、そういうことでしたか」

 

雪菜はうんうんと頷いていた。

だが、悠斗の背からは、嫌な汗が噴き出していた。

 

「えーと、古城さん」

 

「……なんだ」

 

悠斗は、古城がまじで怖いと思っていた。 先程の言葉は、とても低かったからだ。

怖い、まじで怖いのだ。 具体的に言うと、模造天使(エンジェル・フォウ)より怖い。

 

「……その話は、二人でじっくりしませんか。 その時に色々打ち明けるので。 特に、俺の想いとか」

 

「……わかった」

 

取り敢えずは、古城と悠斗の間にあった剣呑な雰囲気は消えたのだった。

悠斗は、危機が去ったので安堵の息を洩らしていた。

紅蓮の熾天使といえど、この手の事では、ただの男の子なのだ。

悠斗は、ふぅと息を吐いた。

 

「古城も周りをちゃんと見てやれよ。 でないと、お前いつか刺されるぞ」

 

古城は眼を点にした。

 

「は? どういう意味だ?」

 

これには、悠斗と凪沙は溜息を吐いた。

 

「これはあれだな。 凪沙さんや」

 

「うん、あれだね。 悠君」

 

悠斗と凪沙は、示し合わせたように答えた。

まあ、悠斗は凪沙の考えてることはほぼ解り、凪沙も悠斗の考えていることがほぼ解るのだ。

 

「まあ、俺も最低限の手伝いはするぞ」

 

「うん、凪沙もお手伝いするよ」

 

この二人の言葉は、悠斗の向かいに座る雪菜に向けられた言葉だ。

当の雪菜も、コクコクと頷いていた。

 

「取り敢えず、メシ食おうぜ。 料理が冷めちまう」

 

「だな」

 

「そうですね」

 

「凪沙が音頭をとるね」

 

四人は手を合わせた。

 

「いただきます」

 

「「「いただきます!」」」

 

悠斗は眼前の箸を握り、唐揚げを掴み口に運ぶ。

唐揚げを噛むと、肉汁が溢れ絶妙なハーモニーを口の中で奏でた。

悠斗は顔をほっこりさせ、

 

「うん、旨い」

 

「だな。 凪沙と姫柊の料理は、店で出せるレベルじゃねぇか」

 

悠斗の言葉に、古城も同意していた。

 

「悠君と古城君のお口に合ってよかったよ。 ね、雪菜ちゃん」

 

「はい、先輩方がそう言ってくれると、作り甲斐がありますね」

 

これは、凪沙と雪菜の感想だ。

まあこのようにして、この日の暁家の夜食は終わりを告げた。

 

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

翌日。 悠斗は暁家に行く為、玄関に立っていた。 悠斗の今の服装は、黒い短パンに黒いVネックTシャツと真っ黒カラーだ。

今日悠斗は珍しく朝早く起き、散歩をしてたら凪沙からメールがきたのだ。

『お昼は凪沙の家で摂ろうね。 サプライズも用意してるから。』だそうだ。

部屋を出てたら、ラフな恰好の凪沙が現れた。

 

「お、来た来た」

 

「隣なんだから、家で待っててくれてもよかったのに。 てか、サプライズってなんだ?」

 

凪沙は笑みを浮かべた。

 

「秘密だよ。 じゃあ、行こっか」

 

「おう」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗が凪沙の背を追いながら暁家の玄関に入ると、ひょっとこの仮面を被った人物が待ち受けていた。

 

「ナイステューミートュー」

 

悠斗は一歩引き、

 

「えっと、誰?」

 

悠斗は困惑な表情を浮かべた。

 

「んふふ、大成功~♪」

 

悠斗の事を困惑させた人物が、上機嫌そうに仮面を取った。

現れたのは、童顔で、長髪の色は古城と同じ色だ。 年齢は二十後半くらいだろうか。

凪沙は靴を脱いでから、長髪の女性の隣に立って溜息を零した。

 

「もう、深森ちゃん。 悠君が困ってるじゃない」

 

「こういうのは、最初の印象が肝心でしょ♪」

 

悠斗は、ないな。と思いながら、自信なさげに呟いた。

 

「もしかして、古城と凪沙の母親(・・)だったり……?」

 

「ピンポーン。 暁深森(あかつき みもり)です~。 よろしくね♪」

 

「………………まじか」

 

「まじだよ~」

 

どうやら、凪沙のサプライズとは、母親と会えるという事だったらしい。

 

「深森ちゃん。 ここじゃなんだから、椅子に座ろうよ」

 

「OKー」

 

悠斗も靴を脱ぎ廊下に上がってから、一行はリビング兼ダイニングのテーブルの椅子に座った。 配置は、悠斗の隣に凪沙。 向い合せになるように深森だ。

最初に悠斗が口を開いた。

 

「それで深森さんは、俺を一目見るため帰宅したと」

 

深森は片手を振った。

 

「深森さんじゃなくて、お義母(・・・)でもいいのよ」

 

「は? 何でそうなる。 てか、お母さんのニュアンス違ったよな」

 

深森は笑みを浮かべ、悠斗を正面から見た。

 

「んふふふ、だって悠斗君は、凪沙の将来の旦那さんなんだから」

 

凪沙は顔を真っ赤に染め、悠斗は、ガタ、と椅子から立ち上がった。

 

「ちょっと待て!? 何でそうなる!?」

 

「ふふふ、母には知らないことなどないのだよ、少年」

 

何処で悠斗の想いを知ったのか解らないが、悠斗の想いはバレていたのだ

悠斗は椅子に座り脱力した。 そして悟った、この母親には一生勝てないだろうと。

 

「……俺は凪沙のことを、一生守ると誓っている。 まだ、面と向かって言葉にしたことはないが」

 

「で、凪沙はどうなの?」

 

「う、うん。 悠君は凪沙のとても大切な人だよ」

 

深森は頷いた。

 

「よし、私は君たちを認めよう。 ま、古城君と牙城君に認めてもらうのは、ちょっと骨が折れそうだけどね」

 

「何ていうか、あっさり認めてくれたな」

 

「凪沙が選んだ男の子だもの。 認めるに決まってるじゃない~」

 

悠斗は真剣な表情になり、一番重要なことを打ち明ける。

 

「……俺は吸血鬼だぞ。 それに、真祖たちと同等か、それ以上の力を持つ紅蓮の熾天使だ」

 

ちなみにだが、凪沙は悠斗が紅蓮の熾天使であることを知っている。

 

「でも、否定されても、凪沙のことは一生守るんでしょ?」

 

「ああ、そうだが」

 

そう。 悠斗は凪沙の家族に否定されたら、この手を離す覚悟なのだ。

そして、凪沙の幸せを願いながら、影から見守ろうと決めているのだ。

 

「じゃあ、問題ナッシングだね」

 

「……いや、何が問題ナッシングなんだ」

 

「色々だよ、少年。 それに凪沙は君と離れても、君を想い続けるだろうしね」

 

「そ、そうなのか」

 

悠斗は困惑しながら、隣に座る凪沙を見た。

 

「そ、そうだよ。 もし、悠君と離れることになっても、凪沙は悠君を想い続けるよ。 一生ね」

 

深森は、ほらねと言い、

 

「悠斗君と凪沙の間には、切っても切れない絆があるのよ。 それを引き離そうなんて、親のすることじゃないわよ」

 

たしかに、凪沙と悠斗は強い絆で結ばれているのかもしれない。

その証拠が、眷獣と話が出来たり、眷獣の精神世界にリンク出来ることが物語っていた。

深森は、げへへと笑い、

 

「それで、悠斗君と凪沙はヤッたの? 孫の顔は見れるのかしら?」

 

悠斗は再び立ち上がり、凪沙は顔を俯け完熟トマト以上に真っ赤にしていた。 頭から煙が上がりそうだ。

 

「今までの言葉が台無しだな! てか、俺と凪沙は中学生と高校生だ!」

 

深森はつまらなそうな顔をした。

 

「ちぇー、その様子だとまだなのね。 早く孫の顔が見たいわ~。 古城君はどうかしら」

 

「って、おい! 人の話を聞け!」

 

「そういえば。 悠斗君は、凪沙とアレをやったんでしょ?」

 

深森が言うアレとは、悠斗が凪沙の血を吸ったことだ。

この母親には、隠し事は不可能なのかもしれない。

 

「ま、まあな」

 

深森はにやにや笑いながら、

 

「で、どうだった? 我が娘の血の味は」

 

「う、うま……。 あーもう! とても美味しかったです!」

 

悠斗はやけくそに叫んだ。

 

「これからは、どんどん吸っていいわよ。 母親の私が許可してしんぜよう」

 

悠斗は眼を丸くしたが、すぐに反論した。

 

「も、もしかしたら、凪沙を俺の血の従者にしちまうかもしれないんだぞ」

 

「ん~、それはそれで、この子も構わないと思ってるわよ。 たぶんだけど。 ね、凪沙?」

 

――女性の血の従者は、その吸血鬼の伴侶になる。 そして二人は、何十年、何千年、共に生きるのだ。

凪沙は、両頬に赤みを帯びたまま顔を上げた。

 

「う、うん。 悠君と一緒に生きられるなら、凪沙は全然構わないよ」

 

悠斗は額に右手を当てた。

 

「まじか……。 あの時の言葉は嘘じゃなかったんだな」

 

「凪沙は、悠君に嘘つかないよ」

 

「……そうか。――俺も凪沙に嘘はついたことないぞ」

 

「そ、そっか」

 

これを見ていた深森が呟いた。

 

「今度、婚姻届(・・・)もらってきてあげようか?」

 

これを聞いた悠斗と凪沙はフリーズした。

そして、思考を回復させた悠斗が首を左右に振った。

 

「い、いやいやいや、俺と凪沙は籍を入れられる年齢にはなってないから」

 

「ん? それは、籍を入れられるようになったら、入れるってことよね?」

 

「だ、だから――」

 

「うん、わかった。 その時がきたら入れるね。 ゆ、悠君もそれでいいよね?」

 

遮ったのは、凪沙の声だった。

それも耳を疑う言葉だった。というか、話がぶっ飛び過ぎてる気がするが。

悠斗は口籠りながら、

 

「ま、まあ、俺は構わないけど。 凪沙が嫌じゃないならな」

 

「凪沙も異論はないから大丈夫」

 

「じゃあ、決まりね~。 悠斗君と凪沙は、籍を入れる年齢に達したら籍を入れてね。 あ、親の印鑑諸々は心配しなくて大丈夫よ」

 

そう。 未成年が籍を入れる時には、保護者の承諾が必要になるのだ。

深森は、さて、と言ってから立ち上がった。

 

「私はそろそろ戻らないと。 婚姻届は私が貰っておくから心配しないでね。 それじゃあ、アデュー」

 

深森は嵐のように去っていった。

悠斗は深く息を吐いた。

 

「何ていうか、嵐のような人だな」

 

凪沙は相槌をうった。

 

「そうだね。 でも、深森ちゃんだから」

 

「いや、まあ、うん、そうなのか。 てか、俺と凪沙って婚約者? でも、古城と親父さんのお許しが出てないぞ」

 

「うーん、それはなんとかなると思う。 根拠はないけどね」

 

悠斗は心の中で、ないのかい!と叫んだ。

 

「俺ってこれからメッチャ大変だったりする? 古城と親父さんに、娘さんをくださいイベントがあるもんな」

 

「悠君。 凪沙の将来のために頑張って!」

 

悠斗は凪沙の頭に手を置いた。

 

「おう、任せろ」

 

「任せました」

 

と言い、凪沙はニッコリ笑った。

悠斗もつられて笑みを零した。 それから昼食を摂り、悠斗は暁家を後にしたのだった。

悠斗は、今日という日を一生忘れるとこはないだろう。




きゃー、ついに古城君に本格的にばれちゃいました(笑)
そして、母親登場っす。母親は悠斗君に会うために帰ってきたんす。

悠斗君と凪沙ちゃんの間に変化がありましたね。
婚約者?ですね(^O^)
さてさて、今後はどうなるんだろうか?

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

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