ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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ひゃはー、連投だぜ。
以外に筆が進みましたです。

今回は独自設定も含まれていますね。
そこはご容赦くださいm(__)m

では、投稿です。
本編をどうぞ。


天使炎上Ⅳ

翌日の土曜日。

悠斗はマンションに帰らず、外で朝日を迎えることになった。

外で仮眠を取った悠斗は、在る場所へ足を向けていた。

 

「やっぱり拾ってきたのかよ」

 

悠斗は苦笑した。

そう。 悠斗が今現在居る場所は、夏音が子猫を保護してた修道院だ。

修道院の中の一番奥。 キリスト像の下に置いてある段ボールの箱の中には、三匹の子猫が戯れていた。

悠斗を見た子猫たちは、段ボール箱を倒して、悠斗の足元に殺到してきた。 悠斗は、事前に用意してあったキャットフードを開け、子猫たちの前に置いていく。

それを幸せそうに食べる子猫を見て、悠斗は優しい笑みを零していた。

悠斗は、無意識に言葉を洩らしていた。

 

「おまえらは、叶瀬の帰りを待ってるのか?」

 

子猫たちは相槌を打つように、ミィ、と鳴いた。

悠斗は猫の言葉が分らないが、頷いていた。

 

「そうか。 俺たちが絶対に助けるから、おまえらは、叶瀬の帰りを待ってやってくれ」

 

悠斗は、新しいキャットフードを開け、修道院を後にしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗は一度深く息を吐いてから、凪沙のスマートフォンに電話をかけた。

理由は、叶瀬夏音の自宅の場所を教えてもらう為だ。

 

『もしもし、悠君。 どうしたの?』

 

「あ、ああ。 実は、叶瀬夏音の自宅の場所を知りたくてな」

 

悠斗がこう言うと、暫しの沈黙が流れた。

 

『うん、わかった。――悠君。 もしかして、悠君の戦いに夏音ちゃんが関係したりするの?』

 

悠斗は目を見開いた。

まさか、バレると思っていなかったからだ。

 

「あ、それは……その」

 

『ううん、無理に教えてって言ってないよ』

 

「ごめんな、凪沙」

 

『いいの。 悠君、夏音ちゃんを助けてあげてね。 子猫ちゃんたちも、夏音ちゃんの帰りを待ってると思うから。――凪沙も、悠君の帰りを待ってるからね』

 

最後の凪沙の声は、どこか寂しさを帯びていた。

悠斗は、優しい声で答えた。

 

「ああ、わかった」

 

『悠君、メモの準備とか大丈夫?』

 

悠斗は、事前に用意していたメモ帳を開き、片手にペンを持った。

 

「いいぞ」

 

『じゃあ、夏音ちゃんの自宅の住所を言うね。 夏音ちゃんの自宅の住所は――』

 

悠斗は、凪沙が教えてくれた夏音の住所をメモ帳に書き留めていった。

 

「凪沙、助かったよ。 ありがとう」

 

『どういたしまして。……悠君、無事に帰ってきてね』

 

悠斗は、一呼吸置いた。

 

「ああ、必ず帰るよ」

 

『うん、待ってるね』

 

この言葉を最後に、悠斗が通話を切った。

悠斗は、凪沙の言葉を胸に仕舞い、夏音の自宅に足を向けるのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗は、夏音の自宅に赴く為、絃神島北地区(アイランド・ノース)の駅でモノレールを降りた。

絃神島北地区(アイランド・ノース)研究所街(マギア・バレー)で有名な場所であり、人口島らしさを色濃く残した未来的背景の街である。

メモ帳を見ながら目的地に到着した悠斗は、

 

「デカイな。 ここでいいんだよな」

 

其処は、鏡面加工されたガラスで、壁全体を覆った佇まいの建物だった。

生活感を削ぎ落したような、冷たく殺風景なオフィスビルである。 そしてここは、メイガスクラフト社の社宅でもある。

メイガスクラフト社は、ビルの清掃現場で見かける床磨き機や、家庭用の自動洗浄機ロゴを扱っている企業の名称である。

ここが夏音の自宅だというのなら、企業の研究施設の中に住んでいる、ということになる。

悠斗は、腑に落ちなかった。 もしかしたら夏音は、本当はここから逃げ出したかったじゃないかと、悠斗はそう思っていた。

その時、後方から声がかけられた。

 

「ゆ、悠斗!?」

 

「な、なんでここにいるんですか?」

 

声の主は、暁古城と姫柊雪菜だった。

 

「叶瀬のことが心配でな。 凪沙に住所を教えてもらって、来てみたんだ」

 

「そうか」

 

「そう、ですね」

 

古城と雪菜が昨日の事を思い出して、そう呟いた。

古城と雪菜は、悠斗の隣に並び立った。

 

「とにかく、行ってみるか」

 

古城たちが扉を潜ると、受付窓には、人間を模して造られたロボット――機械人形(オートマタ)が座っていた。

 

「いらっしゃいませ」

 

受付窓に座る、女性機械人形(オートマタ)が声をかけてくる。

悠斗は動じることなく、用件を伝えた。

 

「叶瀬夏音に会いたいんだが」

 

「二〇四号室の叶瀬夏音は、外出中です」

 

手元の端末を操作しながら、女性機械人形(オートマタ)が淡々と答える。

 

「いつごろ戻るか、わかるか?」

 

「わかりかねます」

 

礼儀正しくも淡々と対応する女性機械人形(オートマタ)に、悠斗は眉を寄せた。

機械人形(オートマタ)なら、インストールされている行動や仕草で対応するはずだ。

だが、この女性機械人形(オートマタ)は、人間そっくりに振舞っているのだ。 悠斗は、それが引っかかったのだ。

沈黙する悠斗に変わって口を開いたのは、雪菜だった。

 

「叶瀬賢生氏は、ご在宅ですか?」

 

叶瀬賢生という人物が、おそらく夏音の保護者なのだろう。

 

「失礼ですが、お客様」

 

「獅子王機関の姫柊雪菜です」

 

受付係りに、雪菜が自身の所属する組織名を告げる。

そのことに、古城と悠斗は少々驚いた。 獅子王機関の名前を出す行動は、生真面目な雪菜らしからぬ行動に思えたからだ。

それに対する受付係りの回答は、古城たちの予想とは少し違ったものだった。

 

「――承っております。 あちらで少々お待ち下さい」

 

この回答に、悠斗は再び眉を寄せた。

雪菜はこの施設を始めて訪れたので、予約を取る事などはしていないはずだ。

この島には、獅子王機関の舞威媛、煌坂紗矢華がいるが、彼女はディミトリエ・ヴァトラーの監視役の任についているので、予約など取れるはずがない。

一度通信を切り、何処かに連絡していた説も拭えない。

もしかするとこの施設は、夏音のあの姿と関係してる可能性があるかも知れない。

古城たちは、受付係が指差したソファーに腰を下ろした。

 

「承ってるって、どういうことだ?」

 

「わかりませんけど、好都合でしたね」

 

悠斗が、静かに口を開いた。

 

「古城、姫柊。 ここはきな臭い。 充分注意しろ」

 

「悠斗、きな臭いってどういう――」

 

古城の言葉が途中で切れたのは、ロビーのエレベータから、誰かが降りてくるのが見えたからだ。

ワインレッドのスーツに身を包んだ、華やかな金髪の外国人女性だ。

 

「登録魔族ですね」

 

「ああ、そうだな」

 

雪菜の呟きに、悠斗が応じた。

赤いスーツの女の左腕には、幅五センチほどの金属製の腕輪が装着されていた。

人口島管理公社から支給される魔族登録証である。

その女性は、古城たちの前まで歩み寄った。

 

「ごめんなさい。 お待たせしてしまったかしら」

 

「いえ……こちらこそ、突然すいません」

 

凛然と立ち上がって雪菜が答え、それに倣って、古城、悠斗も立ち上がった。

獅子王機関の肩書を名乗ってしまった以上、弱みを見せる訳にはいかないと思ったのかもしれない。

二十センチ近い程の身長差にも、気後れをしてる様子はなかった。

 

「あなたたちは、昨日の――」

 

「え?」

 

「いえ、ごめんなさい。 獅子王機関の攻魔師が、こんなに若い方だと思わなかったので」

 

何事もなかったように首を振り、女は事務的な口調で答えた。

 

「あらためまして、開発部のペアトリス・バスラーです。 叶瀬賢生の……そうですね、秘書のような仕事をしております。 本日は、叶瀬にどのようなご用件で?」

 

「申し訳ありませんが、今は言えません。 ご本人と話がしたいので」

 

雪菜が硬い口調でそう告げ、ペアトリスと名乗った女性は頷いた。

 

「わかりました。 でも、困りましたね。 本日、叶瀬は不在なので」

 

「不在?」

 

「ええ、叶瀬は現在、島外におりますの、弊社は、魔族特区の管理区域に、独自の研究施設を持っていますから、そちらに」

 

悠斗は心の中で、それはあり得ないと呟いた。 悠斗が旅をしていた時は、そのような施設は島外には無かった。

僅か一年で研究施設を建築し、機材を島外に持ち出して設置することなど不可能だ。

この言葉は嘘で、古城たちを島から追い出す算段なのかもしれない。

 

「絃神島の外に? もしかして叶瀬夏音さん……。 娘さんも一緒、ですか?」

 

「はい。 そのように聞いておりますわ」

 

ペアトリスは愛想よく微笑んで首肯した。

 

「二人が絃神島に、いつ戻ってくるかわかりますか?」

 

古城が緊張混じりの声で聞く。ペアトリスは首を振った。

 

「未定です。 叶瀬が現在関わっているプロジェクトの詳細については、私どもにも知らされておりませんので……」

 

「そう……ですか」

 

落胆する古城を見て、ペアトリスは楽しそうに笑った。

 

「ですから、もしお急ぎのご用件なら、研究施設を直接訪ねていただいたほうが早いかと思いますね」

 

「……そんなことができるんですか?」

 

目を丸くした古城が聞き返す。

 

「ええ、もちろん。 一日に二往復、連絡用の軽飛行機を飛ばしていますから、そちらに同乗していただければ。 今からなら、まだ午前中の便に間に合うと思いますわ」

 

「じゃあ、それで研究施設に連れて行ってもらえますか」

 

悠斗が罠と分かっても、この提案に乗った。

現状では、情報が一つもないのだ。

もしかしたら、連れて行かれた場所に、なにかの手がかりが残されてるかもしれない。

空振りだった場合は、朱雀か青龍の背に乗って、絃神島に戻ってくればいい話だ。

 

「かしこまりましたわ。 では、こちらへ」

 

手招きして、ペアトリスが歩き出す。

彼女を追い掛けて、悠斗と古城が彼女の背を追いかけて歩き出すが、雪菜はその場で俯き目を伏せたまま、呟いていた。

 

「飛行機……」

 

「姫柊?」

 

「どうしたんだ?」

 

怪訝な顔で、古城と悠斗が振り返った。

 

「いえ、なんでもありません。 行きましょう」

 

雪菜はぎゅっと拳を握りしめて首を振った。 その唇が、微かに青ざめて震えている。

それに気づいた悠斗は、姫柊は強がりだなー、と思っていた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

飛行機の横で古城たちを待っていたのは、革ジャン服の長髪の男だ。

男が手を上げて、古城たちに挨拶をした。

 

「オレがあんたたちを島まで運ぶように頼まれた。 ロウ・キリシマだ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

代表して、悠斗が挨拶をする。

悠斗は助手席に座り、古城と雪菜は後部座席に座った。

離陸し、震える雪菜の手を握った古城を見た悠斗は、バカップルが、と思っていたが、これを聞いた雪菜は、そっちこそ、と言い返してやりたいと思うだろう。

悠斗と凪沙も、バカップルの域なのだ。 見てる此方が恥ずかしくなるほどの。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

島に到着すると、なにもない緑の森が広がっていた。

先に降りた悠斗はこの状況を一目見て、ああ、やっぱり嵌められた。と思っていた。

ふらつく雪菜の手を引きながら、古城も飛行機の後部座席から降りる。

 

「こんなところに、叶瀬たちがいるのか?」

 

無人島を見て、古城がキリシマに聞いた。

キリシマは笑みを零した。

 

「さあな。 そのうち会えんじゃねぇか……それまで無事に生きられたの話だが」

 

古城たちが飛行機から離れたのを確認してから、キリシマが機体のドアを閉めた。

再び飛行機のエンジンが勢いよく回りだし、小さな機体がゆっくりと走り出す。

 

「悪いな、恨むなら、ペアトリスを恨んでくれ」

 

窓越しに手を振って、キリシマがそう言い残す。

その言葉を理解した古城は、愕然と表情を凍らせた。

 

「ちょ……待てコラ、オッサン!」

 

「誰がオッサンだ、クソガキ! オレはまだ二十八――――!」

 

飛行機が離陸して、キリシマの怒鳴り声が小さくなっていく。

青空に吸い込まれ、遠くなっていく小さな機体を見て、古城は呆然と見送った。

悠斗が、古城を見ながら嘆息した。

 

「古城。 いつでも絃神島に帰れるから心配するな」

 

「で、でも、飛行機が!?」

 

「俺の眷獣を忘れたか?」

 

「あ!」

 

古城は思い出したように声を上げた。

 

「そうだ。 朱雀と青龍は、空が飛べるんだぞ。 絃神島まで数時間あれば移動できるから心配するな」

 

古城は安堵の息を洩らした。

 

「ま、一応連れて来てくれたんだ。 この島の探索をしてから帰っても遅くはないだろう」

 

「お、おう」

 

南国の強い陽射しが反射して、海が青く輝いていた。




次で皇女さまと邂逅ですかね。
それにしても、悠斗君は頭が切れますね。

悠斗君を心配する凪沙ちゃん、うん。悠斗君のお嫁さんだね。
てか、愛されてるといっても過言でないような(笑)

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

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