ストライク・ザ・ブラッド ~紅蓮の熾天使~   作:舞翼

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やばい……。こっち書くの楽しくなってきた。
実は、メインはこの小説じゃなかったり(汗)

まあ、これは置いといて、本編をどうぞ。


聖者の右腕Ⅱ

悠斗、古城、雪菜が訪れた場所は、絃神島南地区にある、大手チェーンのハンバーガーショップだ。

一行は、窓際のボックス席に腰を落していた。

悠斗の向かいに側に座る雪菜は、行儀よく両手でテリヤキバーガーを掴んで、幸せそうにかぶりついていた。

 

「姫柊もハンバーガーを食べるんだな。 こういう店とは縁がなさそうなイメージだったから」

 

高神(たかがみ)(もり)がある街は都会じゃありませんが、ハンバーガーくらい売ってますよ」

 

「高神の杜? 姫柊が前にいた場所か?」

 

「はい。 表向きは神道系の女子校ということになってます」

 

「表って事は、裏があるのか?」

 

「……獅子王機関の養成所です。 獅子王機関のことは知っていますよね?」

 

「いや、知らんが」

 

古城の言葉に、雪菜は眼を数回瞬いた。

どうして知らないの?と言いたげな表情だ。

 

「いいか、古城。 獅子王機関っていうのは、国家公安委員会に設置されている特務機関だ」

 

「神代先輩の言う通りです。 獅子王機関は、大規模な魔導災害や魔道テロを阻止する為の、情報収集や謀略工作を行う機関です。 もともとは平安時代に宮中を怨霊や妖から護っていた滝口武者が源流(ルーツ)なので、今の日本政府よりも古い組織なんですけど」

 

「……要するに、公安警察みたいなものか」

 

古城も、一応納得したみたいだった。

 

「養成所から来たってことは、姫柊も獅子王機関の関係者なわけだ」

 

「はい」

 

今の説明で、古城は雪菜が携えていた槍が、ただの槍ではないことに気付いた。

あれは、獅子王機関で開発された、対魔族用の特殊兵器なのだ。

 

「だったら、姫柊がオレを尾けてたのはどうしてだ? その機関っていうのは、魔導災害テロの対策が仕事なんだろ。 オレは関係なくないか?」

 

「え? もしかして、暁先輩は、ご存知ないんですか?」

 

「何をだ?」

 

悠斗が、雪菜が言おうとしている事を口にした。

 

「真祖は、存在自体が戦争やテロと同じ扱いなんだよ。 一国の軍隊と同格の存在だからな。 教えるのを忘れてた、スマン」

 

悠斗の言葉を聞き、古城はがっくりと肩を落とした。

 

「人間扱い、生物扱いしてもらえないのかよ……」

 

「真祖以外にも適応される存在もいるんです。 紅蓮の熾天使といいます。 暁先輩はご存知ですか?」

 

「いや、それも知らんが」

 

「……暁先輩は、本当に何も知らなかったんですね。――神代先輩はご存知ですか?」

 

「まあ、知ってるな。 真祖と同等な力がある奴だろ。 眷獣も使役出来るんだっけ」

 

「そうです。 紅蓮の熾天使も対象に入ってる事も覚えてて下さいね。 暁先輩」

 

「お、おう。――そいつと、他の真祖はともかく、オレはそんな扱いされる覚えはねーぞ。 オレは何もしてないし、支配する帝国なんかどこにもねーし」

 

雪菜は静かに頷き、攻撃的な眼差しを古城に向けた。

 

「そうですね。 私もそれを聞きたいと思っていました。 暁先輩は、ここで何をするつもりなんですか?」

 

「何をするって……って、なんだ?」

 

「正体を隠して魔族特区に潜伏してるのは、何か目的があるからじゃないですか? 例えば、絃神島を陰から支配して、登録魔族たちを自分の軍勢に加えようとしてるとか。 あるいは、自分の快楽の為に彼らを虐殺しようとしてるとか。……なんて恐ろしい!」

 

何処か思いつめたような、あるいは妄想しているような口調で雪菜が呟いた。

古城は、何でそうなる、と低く唸り。 悠斗は雪菜を見て苦笑した。

 

「いや、だから待ってくれ。 姫柊は何か誤解してないか?」

 

「誤解?」

 

「潜伏するもなにも、俺は吸血鬼になる前からこの街に住んでいた訳なんだが」

 

「……吸血鬼になる前から……ですか」

 

雪菜は悠斗に、本当ですか、と眼で聞いてきた。

そう。 古城は、生まれついての吸血鬼ではない。

約三ヶ月前までは、古城は一般の人間だった。

だが、ある事件に巻き込まれ、古城の運命は変わった。

古城はそこで第四真祖と名乗る人物に出会い、その能力を奪ったのだ。

 

「ああ、そうだ。 古城は、約三ヶ月前までは人間だった」

 

悠斗の言葉に雪菜は、信じられない、という風に首を左右に振った。

 

「そ、そんなはずありません。 第四真祖が人間だったなんて」

 

「え? いや、そんなこと言われても、実際そうなんだし」

 

「普通の人間が、途中で吸血鬼に変わることなどあり得ません。 例え吸血鬼に血を吸われて感染したとしても、それは単なる“血の従者”――擬似吸血鬼です」

 

「いやいや、コイツは正真正銘、第四真祖だぞ」

 

雪菜は、再び首を左右に振った。

 

「ありえません。 真祖というのは、今は亡き神々に不死の呪いを受けた、もっとも旧き原初の吸血鬼のことですよ。 普通の人間が真祖になる為には、失われた神々の秘呪で自ら不死者になるしかないんです。……ま、まさか、暁先輩は真祖を喰らって、その能力を自らに取り込んだとでも……」

 

雪菜の表情から柔らかさが消えていた。 その代わり、恐怖の感情が浮かんだ。

真祖になる事は不可能でも、真祖の力を手に入れる方法が一つだけあるのだ。

それは、真祖を喰らって、その能力と呪いを自らの内部に取り込むことだ。

 

「いや、古城は真祖を喰らってないぞ。 うーん、そうだな。……押しつけられた。の方がしっくりくるかもな」

 

「そうだな。――詳しい事は説明出来ないが、オレはこの厄介な体質を、あの馬鹿に押しつけられたんだ」

 

「押しつけられた……? 暁先輩は、自分の意思で吸血鬼になったわけではないんですか?」

 

「誰が好きこのんで、そんなもんになりたがるか」

 

「あの馬鹿とは、誰ですか?」

 

「第四真祖だよ。 先代の」

 

「先代の第四真祖!?」

 

雪菜は愕然と息を呑む。

 

「まさか、本物の焔光の夜伯(カレイドブラッド)のことですか!? 暁先輩は、あの方の能力を受け継いだとでも? どうして第四真祖が暁先輩を後継者に選ぶんですか? そもそも、なぜあの焔光の夜伯(カレイドブラッド)なんかと遭遇したりしたんです?」

 

「いや、それは……」

 

言い掛けた古城の顔が、激しい苦痛に襲われたように歪ませた。

 

「古城! それ以上は思い出そうとするな!」

 

予想外の古城の反応に、雪菜がうろたえたような声を出した。

 

「神代先輩、これは?」

 

「古城は、その日の記憶が欠落してるんだよ。 思い出そうとすると、今みたいな激しい頭痛に見舞われることになる」

 

「そう……なんですか? わかりました……それじゃあ、仕方ないですね」

 

頭痛から解放された古城が、悠斗に聞いてきた。

 

「……悠斗は、何でオレが真祖になったかを知ってるのか?」

 

「――知ってる。 俺もその場に居合わせたからな。 古城は覚えていないと思うが」

 

「「なッ!?」」

 

古城と雪菜は、驚愕の声を上げた。

 

「だが、俺の口からは何も言わない。 一時期、俺は部外者でもあったしな」

 

雪菜は顔をぐいっと近づけ、

 

「その日、何があったんですか!? 教えてください」

 

「口が裂けても、言わん」

 

悠斗が絶対に話さないと悟った雪菜は、何か言おうとしたが、その言葉を飲み込んだ。

 

「私、獅子王機関から先輩、暁先輩のことを監視するように命令されたんですけど……それから、もし先輩が危険な存在なら抹殺するようにとも」

 

「ま……抹殺!?」

 

平然と告げられた言葉を聞き、古城は硬直してしまった。

 

「その理由がわかったような気がします。 先輩は少し自覚が足りません。 とても危うい感じがします。 なので、今日から私が先輩を監視しますから、くれぐれも変なことはしないでくださいね。 まだ、先輩を全面的に信用したわけではないですから」

 

「監視……ね」

 

まあいいか。と古城は肩の力を抜いた。

雪菜は悪い人間ではないし、古城は、監視されても困る点はない。

 

「そういえば、神代先輩って何者なんですか? 素手で眷獣を吹き飛ばしたんです。 微弱ですが、魔力も感知しました」

 

「俺は、ちょっと強いだけの吸血鬼だ。 まあ、悪い事はしないから、心配するな」

 

「……釈然としませんが、今はそれで納得しておきます」

 

「おう、それで頼むわ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗の自宅があるのは、アイランド・サウスこと、住宅が多く集まる絃神島南地区、九階建のマンションの七階の七〇三号室だ。

悠斗は部屋着の上に灰色のパーカーを羽織り、帰りに買ってきた2ℓのペットボトルのはいったビニール袋を片手で持った。

玄関で靴を履き、扉を押し開け外に出てから鍵を閉めた。

悠斗は、古城、凪沙が住む七〇四室へ向かった。

 

「ん?」

 

七〇五号室の前で、彩海学園の制服を着て、ギターケースを背負った少女を見かけた。

その人物とは、悠斗が今日知り合った、姫柊雪菜だった。

 

「おう、姫柊。 こんな所で何してんだ?」

 

雪菜はゆっくりと振り返った。

 

「あ、神代先輩、こんばんは。 えっとですね。 引越しの荷物等が運び終わった所なんです。 暁先輩に手伝ってもらいました」

 

「なるほど。 古城が俺より早く帰ったのは、この為か。――ん、待て。 引っ越す部屋って七〇五号室であってるよな」

 

雪菜はきょとんとし、

 

「はい、あってますけど」

 

「それは、監視の為?」

 

「そうですけど」

 

なぜわかりきった事を聞くのか、とでも言いたげな表情であった。

どうやら、古城の私生活まで監視する気満々らしい。

 

「まあ、なんだ。 頑張れよ」

 

「はい、頑張ります!」

 

雪菜は、満面の笑みで頷いた。

悠斗はこれを見て、

 

「……古城、ドンマイ」

 

「神代先輩はどこに行くんですか?」

 

「ああ、七〇四室だ」

 

「暁先輩のところですか?」

 

「おう、そうだ。――んじゃ、俺は行くな」

 

「はい」

 

俺は七〇四号室のドアノブを捻り、引き開け中へ入った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

玄関で悠斗を迎えてくれたのは、凪沙だった。

 

「悠君。 こんばんは。 今からお鍋開始する所だから。 さっき、外から悠君の声が聞こえたんだけど、なにかあったの?」

 

「明日、中等部に転校してくる奴と少し話をな」

 

「え、え、どこにいるの? その子、ゴハンまだだよね。 凪沙、ちょっと行ってくるね」

 

凪沙は、玄関でサンダルを履き、外へ出た。

 

「凪沙は、ホント、行動力があるよな」

 

悠斗は呟いてから、玄関で靴を脱いで、廊下に上がってからリビングを目指した。

テーブルの椅子に腰をかけながら、古城は、ガスコンロの調整をしていた。

調整が終わり、試しに火を付けてみた。

 

「よし、これでOKだ」

 

「お邪魔してるぞ。 これ買ってきた飲み物」

 

悠斗は片手に下げていたビニール袋をテーブルの上へ置いた。

 

「悪ぃな」

 

「気にすんな、こんなのお安い御用だ」

 

古城はぐるりと回りを見渡した。

 

「凪沙は?」

 

「姫柊と会ってると思うぞ。 まあ、十中八九、姫柊も一緒に来ると思う」

 

「姫柊は引っ越した直後だから、飯とかねぇんじゃねぇか。――まあ、凪沙は誰とでも仲良くなれるからな。 それは悠斗も例外じゃなかったし」

 

悠斗は古城の隣の椅子に腰を下ろした。

 

「凪沙には感謝してるよ」

 

旅をし、ある事件後、また、学校の屋上で出会った少女と知り合ってから、悠斗の生活が劇的に変わった。 少女は、悠斗を何かと気にしてくれ、悠斗がぶっきら棒に答えても言葉を返してくれ、食事の誘いもしてくれたのだ。

少女の暖かい笑顔は、悠斗の心の氷を溶かしてくれたのだ。

少女の名は――暁凪沙。

何にも変える事が出来ない、大切な存在だ。

 

「あの頃の悠斗は、荒れてた感じだったからな。 最初は、オレの事も警戒してたし」

 

「あの頃は、俺に友人と言える存在はいなかったからな。 俺がここに居られるのも、全部、凪沙のおかげだ」

 

「そうか。――でも、凪沙はやらんぞ」

 

「いや、何でそうなる? 意味が分からん」

 

「最近、凪沙の奴どこか行ってるんだが、どこか知らねぇか?」

 

「あー、たぶん、俺の部屋だな。 何かと世話になってる。 特に、朝起こしてくれるとか」

 

「おい、それはd「古城君、雪菜ちゃん連れて来たよー」」

 

と、凪沙が古城の言葉を遮った。

 

「ま、この話はまたにしようぜ。 とにかく、今はメシを食おうぜ」

 

「……おう、わかった」

 

悠斗の向かいに、雪菜が着席した。

凪沙は台所から、鍋に入れる材料を持ってきた。

白採に椎茸、蒲鉾、しめじ、豚肉など、様々な食材が盛られていた。

凪沙も雪菜の隣の椅子に座った。

 

「じゃあ、いただきます」

 

「「「いただきます!」」」

 

凪沙の音頭に、三人が続いた。

四人は箸を取り、食材を鍋の中に入れ、火が通った食材に味ポン、ゴマだれをつけて口に運ぶ。

 

「凪沙。 昆布のだしが効いてて旨いぞ」

 

「お、悠君、気付いたんだ。 今日は、昆布のだしを使ってみたんだ」

 

「そ、そうなのか? オレは全然気付かなかったが」

 

「わ、私もです」

 

それからは、談笑しながら鍋を減らした。

話していたら、雪菜はドジっ子だという事が発覚した。

 

「さて、オレは勉強の続きをやるわ。 悠斗は、ゆっくりしてけよ」

 

「そ、そういうことなら、私は先輩の勉強を手伝うということでどうでしょうか? 一応、高校二年までの学業は収めていますので」

 

古城は一瞬迷ったが、ありがたくこの提案を受け入れる事にした。

 

「ごめんね、雪菜ちゃん。 古城君のこと、よろしくね。 出来の悪いお兄ちゃんですけど」

 

「古城。 姫柊と二人きりだからって、手を出したらダメだぞ」

 

古城は、声を上げた。

 

「し、しねーよ。 そんなこと」

 

「……しないんですか、そうですか。 私に魅力がないということですね」

 

「いや、姫柊さん。 そういうことじゃなくて……」

 

雪菜はクスッと笑い、

 

「冗談ですよ。 行きましょうか」

 

「お、おう」

 

そう言って、古城と雪菜は自室に消えていった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

悠斗と凪沙は、向かい合わせに座りながら話をしていた。

 

「もう、悠君はイジワルなんだから、古城君にそんな甲斐性はないよ」

 

「古城は弄りがいがあるからな。 まあ、俺も甲斐性はない方だが」

 

「えー、そうかな。 そんな風には見えないけど」

 

「俺は女の子と接した……この話題はやめよう。 地雷を踏みそうな気がする」

 

「ちぇー、あともう少しだったのに」

 

悠斗は壁に掛けてある時計を確認した。

今の時刻は、午後十時を回ろうとしていた。

 

「そろそろ御暇しようかな。時間も時間になってきたしな」

 

「凪沙は、玄関まで送るね」

 

「おう、頼むわ」

 

悠斗と凪沙は立ち上がり、玄関へ向かった。

悠斗は玄関で靴を履き、

 

「じゃあ、また明日」

 

「うん、また明日」

 

悠斗は手を振ってからドアノブを捻り、扉を押し開けた。

 

「俺はどうなるんだろうな。 色々と」

 

悠斗は空を見ながらこう呟いた。

その時、強大な魔力の塊を察知した。――眷獣が召喚された時の感覚だ。 真祖レベルの眷獣と思われた。

 

「っち、今度はなんだよ」

 

悠斗は悪態をつきながらも、魔力が奔流となる現場へ走り出した。




時系列が変わってるかも。
ここらへんも、眼を瞑ってちょ<m(__)m>
描写にはありませんでしたが、古城たちは、コンビニに行ってますよー。
後、引っ越しなどは、前の日にほぼ終わらせてますね。

ではでは、感想、評価、よろしくです!!

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