てか、FINALの制作が決定していたなんて、最近知りました。
完結までアニメでやってくれるなんて、結構珍しいですよね(たぶん)
四十分後。
古城たちは絃神島中心部に程近い地下通路の入り口に立っていた。通路を下りた先は、長いトンネルになっており、人工島の地下に流れ込んだ雨水を海に排出する為の放水路となっていた。
ただし、それは表向きの話であり、このトンネルの真の目的は別にある。
キーストーンゲート内に設置された機密区間――キーストーンゲート、第零層への物資搬入路。それが真のトンネルの用途なのだ。
「キーストーンゲート第零層、この先に浅葱が幽閉されているのか?」
明かりの無い通路を覗きつつ、古城がリディアーヌに確認を取る。
『左様でござる、彼氏殿。なので、第零層に辿り着くまでの経路は拙者から指示を出すでござる』
リディアーヌの声は古城が持つスマホから流れる。
リディアーヌ本人は、壊れかけた赤い
「それは助かる。……けど、お前の戦車をここまでぶっ壊すような奴らが相手か」
古城はボロボロになった
幾ら小型とはいえ、リディアーヌが乗る
そんな中、凪沙が口を開く。
「問題ないよ、古城君。凪沙が使役する朱雀で
古城は、お、おう。と言い、右頬を引き攣らせる。……何時の間に凪沙は、こんなにも戦闘狂?になってしまったのだろうか。
そして、現在の
「リディアーヌは、オレたちは手助けして大丈夫なのか?もしまた
古城の言う通り、今の“膝丸”には戦う力は残されていない。そして、“膝丸”を失えば、リディアーヌは只の小学生なのだ。
そんな危険に晒してまで、リディアーヌに協力を仰いでいいかどうか――と、葛藤する古城に、“膝丸”の上部に座るイブリスベールが、
「案ずるな、第四真祖。この騒動が収まるまでは、オレがこの娘の面倒を見ておいてやろう」
イブリスベールの案に、ポカンとする古城。
まさか、彼からその提案が挙がるとは思ってもいなかった。
「任せてもいいのか?」
「ふん。ここで貴様らに貸しを作っておくのも悪くあるまい。オレの巨下も、間もなく絃神島に到着する頃合いだしな。それに、人工管理公社とやらの企てには些か興味がある」
古城は、そうか。と安堵の息を吐く。
「一応礼は言っとくけど、あんまり派手な真似はしないでくれよ」
「貴様の言葉とは思えんが、まあいい、一応心に留めておこう」
「ああ、頼んだ」
ともあれ、リディアーヌのことはイブリスベールに任せるとして、古城たちは暗い通路に向かって歩き出す。
古城、悠斗、凪沙と並んで歩くが、その後にぴったりとくっついて来たのは雪菜だった。
当然のように着いてくる雪菜を、古城は呆れるように見て、
「姫柊はここで待ってろよ。体調だって万全じゃないんだし、この先は何があるのか解らないしな」
古城の言う通り、雪霞狼があるとはいえ、人身である雪菜が不意な爆発等に巻き込まれたら只では済まないだろう。
「も、問題ありません!私は第四真祖の監視役です!一緒に行くに決まってますっ!」
「いやでも、しかしだな」
そんな古城たちを見た悠斗は、
「諦めろ古城。姫柊は駄目つっても付いてくるぞ。ブルエリ事件を思い出せ」
古城は、あー……。と言いながら、頭をガシガシと掻いて上を見上げる。
確かあの時も、古城が反対意見を出しても、雪菜はそれに反して一緒に来た筈だ。
古城は溜息を吐き、
「……まあ、先走ったり無理したりしないって約束できるなら構わないぞ」
「はい。というか、最初からそう言えばいいんですっ」
そう言って、雪菜は唇を小さく尖らせる。ともあれ凪沙の、じゃあ、行っこか。という合図と共に、古城たちは地下通路を歩き出す。
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延々と続く地下への階段を下りると、その先には長大なトンネルが伸びていた。トンネルの直径は四、五メートル程。床には物資輸送用の線路が敷設され、壁や天井には、送電線や光フェイバーなどのケーブルが這い回っている。
『彼氏殿!』
通路を歩いている時に、古城の胸元でリディアーヌの声が届く。スマホの画面に映っているのは、地下トンネルの地図である。
その地図のあちこちには、赤い点が複数浮かび上がっている。
「リディアーヌどうした?この点滅はなんだ?」
『警戒めされよ。防衛機構の作動を確認したでござる』
「防衛機構だァ……。監視カメラや警報装置は、そっちで何とかしてくれんじゃなかったのか!?」
『おそらく、地下トンネル内部で完結している、
リディアーヌのハッキングが期待できないとなると、古城たちに残された手段は強行突破だけだ。
地下トンネルに敷設された線路を使って、何か滑るように近付いてくる。ゴムバケツをひっくり返したような形の金属製の円筒だ。
直径は八十センチ程で、高さは百二十センチ程だろう。その胴体部分には、対人用のマシンガンが装備されている。
「古城君下がって。――
凪沙は僅かに前に出て、右腕を掲げ叫ぶ。
奴らの頭上に降り注ぐのは、蒼い稲妻だ。――これは青龍の雷である。凪沙は眷獣の技を生身でも引き出せるように特訓していたのだ。
「さすがだな、凪沙。青龍たちの技を完全に制御するとはな」
感嘆な声を上げる悠斗。
確か悠斗は、眷獣の技を完璧に制御するのに、一年は掛かったはずだ。
「でも、朱音ちゃんの協力もあってこそなんだけどね」
えへへ。と笑う凪沙。そして悠斗は、なるほど。と納得する悠斗。
古城と雪菜は「朱音ちゃん?」と首を傾げる。まあ確かに、悠斗から話を聞かない限り、“朱音”と呼ばれる者が、悠斗の姉など夢にも思わないだろう。
『……姫巫女殿、大変言いにくいのでござるが、修繕費は大丈夫でござるか?あの警備ロボット、安く見積もっても一台二千万は下らないのではないかと』
リディアーヌの言葉を聞き、顔を青くする凪沙。
そんな凪沙に助け舟を出したのは、悠斗だった。
「それは心配いらない。正当防衛が成立しなかった場合、俺が自腹で弁償するさ」
まあ確かに、使用されず口座の中に眠っている金も、何かの役に立てた方が嬉しいだろう。
それにまあ、一億単位の金なんて高校生が持つ金額ではない。
「先を急ごう。
悠斗の言う通り、自律制御システムが起動しているとなれば、再び見つかり攻撃されるのは時間の問題だ。
悠斗の言葉を聞き、リディアーヌが、
『承知。第零層への道はあと僅かである。参るでござる』
幸いにも、自律制御システム以外の侵入者対策は、リディアーヌが問題なく解除できる。
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「これが……第零層、なのか?」
古城は目の前に現れた光景を見回し、困惑して足を止める。
そこにあったのは、ただの広い空間であり、直径は凡そ十メートル。深さ十五メートル程の円筒形の空間。それが、キーストーンゲート第零層を呼ばれる場所の正体であった。
目の前に聳え立つ垂直の壁は、頑丈な金属で造られ、外壁に扉や繋ぎ目は無く、よじ登る為の足場すらない殺風景な空間だ。
だが、この場所が古城たちが目指した場所で間違えはないだろう
そして、第零層には先客がいた。黒い道士服を着た青年。青年が握るのは漆黒の槍。両先端に穂先持つ、歪な形の長槍だ。
「やはり来ましたか、第四真祖、紅蓮の織天使」
ゆっくりと古城たちに視線を向けて、青年は語りかける。
その青年の名を古城は知っていた。一度だけ監獄結界が破れ、波朧院フェスタの日に監獄結界から脱走した、七人の魔導犯罪者の最後の一人。――元獅子王機関の、“廃棄兵器”を持つ男。
「絃神……冥駕」
古城の呼びかけに、冥駕は不機嫌そうに顔を顰めて、それを聞いていた。