ハリー・ポッターと生き残りのお嬢様 作:RussianTea
その日のスリザリン寮の談話室は、普段の薄暗さと対照的に活気に満ち溢れていた。今年最後のスリザリンVSハッフルパフの試合の結果は240対60。快勝であった。
クィディッチ優勝杯を手にした喜びで、クィディッチチームのメンバーを中心にして、普段は気取った生徒でさえも、今日ばかりは騒いでいる。
皆が家から呼び出した屋敷しもべ妖精に食べ物や飲み物を準備させ、用意が整うとキャプテンのフリントが即席の台の上に立った。
「皆の応援のおかげで今日、我らスリザリンは王者の座を勝ち取ることが出来た。本当にありがとう。そして、俺の元で共に戦ったチーム諸君にも、お礼を言いたい。あえて言おう……お前らは最高のチームだ!」
歓声が上がり、部屋が割れんばかりに揺れる。今までに無い程の騒ぎである。何せこの勝利のおかげで、今年の寮杯がほぼ確実となったのだ。一足早いかもしれないが、それに対しての喜びもあるし、何より試験勉強の鬱憤を晴らしていた。
「皆、グラスを持て。いいか? それでは、我らの勝利に、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」
皆が一斉にグラスを煽り、宴が始まった。途中でスネイプが程々にしろと言いにきたが、その顔はニヤけており、説得力の欠片もない。寧ろ、もっと騒げとでも言いたげであり、注意の言葉が賞賛の言葉に変わっていた。
「教師が煽ってどうするのですか」
何故か差し入れまで持ってきたスネイプに、セフォネはやや呆れ顔である。
「別に良かろう。校則にはないのだからな」
「あらまあ」
スネイプはかなり上機嫌のご様子だ。フリントから渡された飲み物を飲み干すと、ニヤけたまま研究室に戻っていった。
さて、気兼ねなく馬鹿騒ぎを出来たのもここまでで、今年の大目玉、学年末試験がやって来た。
3年生の1日目の科目は、順番に変身術、呪文学と実技の後に魔法史の筆記試験。
変身術の試験はティーポットを陸亀に変えるというものであった。この試験では恐らく、2,30センチくらいの普通サイズの陸亀が期待されているのだろうが、それでは面白味にかけるので、セフォネはセーシェルセマルゾウガメという甲長138センチメートルの、現存する陸亀の中で最も大きいものに変身させ、マクゴナガルを驚かせた。
呪文学の試験は"元気の出る呪文"を上手く掛けられるかどうか。
セフォネはこの呪文に思い入れがある。幼き頃、廃人と化した母親を蘇らせるべく、様々な方法を試していた時、この呪文も使ったことがあるのだ。
そんなことを思い出しながら試験を受けたせいか、力が入り過ぎたようで、相手役のクラッブが暫く笑い転げていた。
2日目は数占いと魔法薬学、夜に天文学。
魔法薬学は多くの生徒にとって変身術と並ぶ1番の難関である。スネイプが睨みを効かせる中、限られた時間でそらで魔法薬を調合しなければならないのだから。
天文学の試験は居眠り者が続出していた。
試験最後の3日目は、薬草学と闇の魔術に対する防衛術、そして古代ルーン文字学。
闇の魔術に対する防衛術の試験は障害物競争という、今までにない独特なものだった。通り道に魔法生物が配置されており、それを躱わして進んで行き、最後にボガートと戦う。
セフォネは片手で器用に杖をクルクルと回しながら、散歩でもするかのように普通に歩いた。途中魔法生物とすれ違うと、電光石火の速さで呪文を打ち込んで無効化、何事も無かったかのように進む。そして、最後のボガートは変身直後に追い払い、あまりに余裕そうなセフォネにやや呆然としつつ、ルーピンは満点を言い渡した。
古代ルーン文字学の筆記試験を受けて、全ての試験が終わった。
ハリーは今、今学期最後の試験である占い学の試験を受けていた。きついお香の煙で咽せ込みながらも、何も見えやしない水晶玉を覗き込み、それらしい占いを当てずっぽうに言った。
「それでは、ここでお終いにいたしましょう。少々残念ではございますが、きっと貴方はベストを尽くしたのでしょう」
トレローニーが溜め息混じりにそう言い、ハリーはやっと開放される、と立ち上がって扉へ向かったが、その時、背後から野太い荒々しい声が聞こえた。
「"事は今夜起こる"」
ハリーが振り向くと、トレローニーが虚ろな目をして、口を開いて椅子に座ったまま硬直していた。
「な、何ですか?」
ハリーは聞いたが、トレローニーには何も聞こえていない様子だった。目がギョロギョロと動き始め、得体の知れないものに対する恐怖がハリーを襲う。
トレローニーはいつもとは違う、先程のような荒々しい野太い声で言った。
「"闇の帝王は、夜もなく孤独に、朋輩に打ち捨てられて横たわっている。その召使いは12年という年月の間、鎖に繋がれていた。今夜、真夜中になる前に、その召使いは一度囚われる。しかし、すぐに自由の身となり、主人の元へ馳せ参ずる。闇の帝王は召使いの手を借り、再び立ち上がるであろう。以前よりもさらに偉大に、より恐ろしく………"」
首が異様に傾き、何かを無理やり捻り出しているかのようだった。これで終わるかと思いきや、トレローニーは続けて言った。
「"闇の帝王の復活と時を同じくして、
トレローニーは頭を垂れ、僅かに呻き声を上げながら、いつもの調子に戻った。
(…一体何だったんだ? ヴォルデモートが復活するとか、女神がどうとか……)
ハリーは訝しげな表情になりながらも、部屋を後にしてグリフィンドールの談話室に戻った。そして戻った途端、ハーマイオニーとロンが駆け寄ってきた。
「ハリー! 見て!」
興奮気味のハーマイオニーが差し出した手紙には、震えた文字でこう書いてあった。
『控訴には敗れた。でも処刑は無しだ! 戒告処分だけだ! いや、本当は罰金もあるんだが、ともかく、お前さんたちには本当に感謝している。ブラックの娘にも感謝してもし尽くせねえ。礼が言いてえから、飯が終わった後ブラックも連れて来てくれ。俺が城まで迎えにいくから、一応マントも持って玄関ホールで待っててくれ。絶対に子供だけで出ちゃなんねえからな』
「やったじゃないか! でも、ブラックの娘ってセフォネのことだよね? 何で彼女が出てくるんだ?」
「あー、それは、2人は絶対反対するだろうから秘密にしておいたんだけど、セフォネにマルフォイを説得して貰ったのよ」
ハリーはその返答に、開いた口が塞がらなかった。去年、自分に狂気を向けて来たセフォネが、まさかハグリッドの為にルシウス・マルフォイを説得するとは、思いもよらなかったし、何よりあのルシウスを説得出来るなんて、只者ではない。
ロンはハーマイオニーの策に不満でもあり、バックビークが助かったのが嬉しくもあり、微妙な表情だったが、最近お得意の"セフォネ、シリウスの協力者説"を語りだした。
「でもさ、あのマルフォイを説得出来るってことは、あいつも"例のあの人"に関わってる一味なんじゃ……」
「ロン。セフォネは私のお願いを聞いてバックビークを救ってくれたのよ? そんな風に言うのは止めて。それよりも、どうやってセフォネを連れ出すかだけど」
セフォネの周りには常にスリザリン生がいる。彼らに嫌われている自分たちは近づけない。
ちょっと考えた後、ハリーが言った。
「クリスマスの時にいた、あのレイブンクロー生に伝えて貰えばいいんじゃないかな?」
「黒いリボン付けてた銀髪ちゃん? そういえば、何であの子セフォネとかエリスと仲良かったんだろ?」
「セフォネのこと"お嬢様"って呼んでたから、多分家同士が仲良いとか、そんなんだと思うけど」
セフォネとの関係は3人には謎だったが、夕食時に声をかけることになった。その後、ハリーが置き忘れた透明マントを取りに行かなければならないので、少し早めに談話室を出た。
その日の夕食は、試験から開放された生徒たちの活気で満ち溢れていた。もう勉強はしなくていい。そう考えると、ここ暫く勉強漬けだった生徒たちの顔に自然と笑みが浮かび、残された学期をどう楽しもうか話し合っている。
そんな中、スリザリンテーブルで、セフォネが眉根に皺を寄せていた。
「ミスター・ファッジが?」
「そうなの。セフォネと分かれた後、大臣が話しかけてきてさ。セフォネとの関係はどうかとか、怪しい所はないかとか」
「ああ、なるほど。聞き込みですか。彼は私をシリウス・ブラックの共犯者だと思っていますからね」
「共犯者……って、えええええぇぇ!?」
エリスが驚きのあまり絶叫した。
「いくら何でもそれは無いでしょ!? だって、あの人魔法大臣だよ!? そんな馬鹿なこと考えるわけが……」
「1年近く消息が掴めない今、藁にも縋りたいのでしょう。不愉快極まる行為ですが」
その台詞を言った途端、彼女が持っているスプーンが真っ二つになった。セフォネは特段力があるわけではないが、思わず放出した魔力で折れてしまったのだ。杖で叩いて何事も無かったかのように修復しているセフォネを見て、エリスはセフォネが相当お冠であることを悟り、引き攣り気味の苦笑いを浮かべた。
「でも、大丈夫なの?」
「心配せずとも、既に手は打ってあります」
セフォネは不敵な笑みを浮かべると、グラスを煽った。
「お嬢様」
後ろから声がかかり、セフォネが振り向くと、ラーミアが1枚の羊皮紙を持って立っていた。
「どうしたのですか?」
「ミス・ハーマイオニー・グレンジャーより、お手紙が」
そう言ってハーマイオニーからの手紙を渡すと、一礼してレイブンクローテーブルに戻っていった。
セフォネが受け取った手紙には、バックビークが処刑されないことと、ハグリッドが礼を言いたいらしいので玄関で待ってて欲しいことが書いてあった。
「何だって?」
「夕食後に玄関で待て、と」
「呼び出し? 何かやったの?」
「まあ、少し。悪いことではありませんよ」
ヒッポグリフを殺せばドラコの為にならない。怪我を負わされたことに対して怒るのは分かるが、ここは彼の成長の為にも、処刑してはならないのではないか、とそのような内容の手紙をルシウスに送っただけだ。
息子の為に圧力を掛けているルシウスに対し、ドラコの我儘に付き合えば彼はロクな大人にならない、という趣旨の内容であるが、ルシウスはそれを読んで頭を冷やしたらしい。訴えを取り下げはしなかったものの、飼い主に対する戒告処分と罰金刑で手を打った。
「だからドラコがやや不機嫌なのね」
ムスッとした顔でパンを齧っているドラコを見て、エリスは納得したように頷いた。
夕食後、セフォネは玄関にやって来た。既にハリー達3人がいた。ロンは警戒心剥き出しで、ハリーは良く分からない微妙な表情で、そしてハーマイオニーは満面の笑みである。
「セフォネ!」
いきなりハーマイオニーが抱きついてきた。アステリアに度々抱きつかれているラーミアの気持ちが少し分かる。自分からやるのはいいが、やられるとびっくりするのだ。
「ハーマイオニー、落ち着いて下さい」
「ああ、貴方って本当に最高よ!」
「セフォネ」
興奮状態のハーマイオニーを引き剥がしているセフォネに、ハリーが躊躇いがちに話しかけた。
「その、本当にありがとう」
「何故貴方方がそこまで礼を言うのですか?」
「僕らの友達を助けてくれたからさ」
まったく、実にグリフィンドールらしい博愛主義ぶりである、とセフォネは溜め息をつき、そんな彼らに協力した自分もまた酔狂なものだと、自嘲的な笑みを漏らした。
「まあ、ハーマイオニーの頼みでもありましたし、貴方には去年楽しませて貰いましたからね」
「遅れてすまねえな」
その時、顔を赤らめたハグリッドがやって来て、4人を外に連れ出した。道中、ハグリッドは今日の裁判の様子を語った。
「裁判が始まった途端な、奴ら、今までの言い分をそっくり変えやがったんだ。バックビークがマルフォイの倅を襲ったのは飼い主である俺の責任だっつってな。そんでもって俺に戒告処分と、50ガリオンの罰金が言い渡されたんだ」
そう語るハグリッドのろれつはもたついており、既に酔っていることが伺える。
小屋の外では、頭・前足・羽は大鷲で、胴体・後ろ脚・尻尾は馬という、奇怪な動物が生肉の御馳走を平らげていた。
「ブラック。こいつがおめえさんが救ってくれたバックビークだ」
「MOM分類XXX、ヒッポグリフ。直に見るのは初めてですわ」
「美しかろう?」
「まあ、中々面白そうな生き物ですね」
小屋に入ると、セフォネが去年入った時よりもゴチャゴチャしている印象を受けた。酒の瓶があちこちに散らばっている。
「座ってくれや」
ハリーとロン、ハーマイオニーとセフォネがそれぞれ隣り合って座った。ハグリッドはおぼつかない手つきで紅茶を入れ、4人に出した。
「ほんっとうに感謝してるぞ、おめえさんたちには。ハリー、ロン、ハーマイオニー。試験中だっつうのに、控訴の準備を手伝ってくれてありがとうよ。そんでもって、ブラック。おめえさんは去年も俺に、アズカバンで正気を失わねえ方法を教えてくれたし、今年はバックビークを助けてくれた。感謝してる」
「大したことではございません」
「ファッジはおめえさんをシリウス・ブラックの仲間じゃねえかと疑ってるけどよ、そんなわきゃねえ。おめえさんは俺が見てきたスリザリンの連中の中でも一等良い奴だ」
「恐縮ですわ」
その後、酔っ払ったハグリッドは、バックビークをどうやって育ててきたかを3回ほど話し、やがて机に突っ伏して寝てしまった。
「寝ちゃったわね。暗くなる前に帰りましょうか……って、ロン! 信じられないわ! スキャバーズよ!」
ハーマイオニーは小屋の隅にいた鼠を指差して絶叫した。ロンはそれに飛び掛かると、逃げないようにガッチリ捕まえた。
「アイタッ! こら、噛むなよ!」
よく分からないが、ロンのペットは執拗に彼の指に噛み付いている。それをどうにか押さえ込むと、ハリーが3人にマントを被せ、それと同時にセフォネも目くらまし術を掛けた。
小屋を出ると、日がもう殆ど傾いており、空は暗くなりはじめていた。
校庭に出る頃には辺りは闇に包まれていた。セフォネは城に向かって歩いていくが、後ろからロンが騒いでいる声が聞こえた。
「こら! いうことを聞け!」
その時、猫の鳴き声が聞こえた。オレンジ色の猫だ。
「クルックシャンクス!」
ハーマイオニーが悲鳴を上げる。すると、彼らがいるであろう場所からスキャバーズが飛び出し、クルックシャンクスはその後を追う。
「ロン!」
ハーマイオニーが呻くが、ロンは透明マントをかなぐり捨てて、2匹を追って闇へ消えていった。
「姿が見えないと、何かのパントマイムみたいで滑稽ですね」
その後、ロンを追って2人も駆けていく。まあ、いずれ見つかるだろう、とセフォネは思い、そのまま城に帰った。玄関に辿り着き、扉を開けようとすると、その前に勝手に開き、中からルーピンが随分と慌てた様子で出てきた。
(ルーピン教授? 一体何処へ?)
疑問に思って彼を目で追うと、校庭のある場所、暴れ柳が埋まっている方向へと真っ直ぐに歩いていった。
気になったセフォネは、その後をつけていく。歩く音は消音呪文で消えているだろうが、芝生につく足跡は消えない。気付かれないように、ある程度の距離は取っておく。
ルーピンは近くの石に浮遊呪文を掛け、それを暴れ柳の幹にあるコブに当てた。すると、暴れ柳はまるで普通の植物であるかのように動きを止め、その隙にルーピンは暴れ柳の根元に近づき、やがて姿を消した。どうやら、そこに穴があるようだ。
(どうしましょう?)
再び動き出した暴れ柳を眺めながらセフォネが行くか行かないか迷っていると、今度は血相を変えたスネイプがやって来て、ルーピンと同じようにして暴れ柳の動きを止めた。そして、何故かそこに捨てられていた透明マントを拾ってそれを被り、その根元にあると思われる穴に降りて行った。
(あれはハリーのマントですよね。では、彼らもこの先にいる……)
ここまでお膳立てされて、何もせずに談話室に帰るわけは無い。セフォネは2人と同じく石をコブに命中させて暴れ柳の動きを止めると、すぐ側まで接近し、根元に大きく空いた空間に体を滑り込ませた。
中の通路は暗く、追跡しているという状況から明かりを灯せない為、セフォネは超感覚呪文を使って周囲の状況を把握して歩いていた。かなり長い道のりだった。急に上り坂になり、やがて道はねじ曲がり、小さな穴から漏れる光が見えた。
穴をくぐり抜けると、そこは部屋だった。壁紙ははがれ、調度品は破損しており、窓には板が打ち付けられている。
(叫びの屋敷……ですか。まさか、このような抜け穴があったとは)
頭上でガタン、と何かが倒れるような音がした。そして、何者かが怒りの唸りを上げている。階段は軋むであろうから、セフォネは飛行術で一気に2階の踊り場まで行く。黒い煙から体を再構成し、中の会話に耳を傾けた。
「口を出すな!」
スネイプの怒号が聞こえてくる。そして、今度はセフォネに聞き取れるかどうか分からない程の微かな声で、囁くように言った。
「復讐は蜜より甘い。お前を捕まえるのが我輩であったらと、どれ程願ったことか」
今度は聞き慣れぬ声が、スネイプに言った。
「お生憎だな。しかしだ、この子が鼠を城まで連れていくのなら、私はお前に大人しくついて行こう」
「城までだと? そんなに遠くまで行かずとも、暴れ柳を出たらすぐに
"ブラック"の名を持つ者は、この英国魔法界には2人しか存在しない。1人はセフォネ。そしてもう1人は、誰であろうシリウスである。つまり、今扉の向こう側にいるのは、かの脱獄囚だ。
スネイプが
「聞け……最後まで私の話を……」
「黙っていろ。来い、全員だ。人狼は我輩が引きずって行こう」
スネイプが扉へ向けて歩く音がするが、その前に誰かが扉の前に立ち塞がった。
「退け、ポッター。お前は誰に命を救われたと思っているのだ?」
「ルーピン先生がもし、本当にブラックの手先だったら、僕はとっくに死んでいるはずだ。何度も2人きりで
「人狼の考えなど知ったことか。もう一度だけ言おう、ポッター。退け」
スネイプはドスの効いた低い声でハリーを威嚇する。だが、ハリーは意を決したように叫んだ。
「恥を知れ! 学生の時にからかわれたくらいで――」
「黙れ! 貴様の首が繋がっているのは我輩が助けてやったからだ。地に伏して感謝するがいい! にも関わらず! 蛙の子は蛙だな。ブラックのことでは親も子も判断の間違いを認めようとはしない。こいつに殺されれば自業自得だったろうに! 貴様を見ていると、虫唾が走る。まるであの男そっくりの高慢さだ! さあ退け。退くんだ、ポッター!」
いよいよスネイプは理性を失ったように狂い叫び、セフォネは止めに入ろうとドアノブに手をかけた。だが、セフォネがドアノブを回す前に、3人の叫び声が聞こえた。
「「「エクスペリアームス!」」」
ドアが揺れる程の振動が起き、ドン、ドシャっという嫌な音がした。吹き飛ばされたスネイプが、壁に激突して倒れた音だろう。
「こんなこと、君がしてはいけなかったのに……」
縄が解けるような音がして、誰かが立ち上がったようだ。推測だが、スネイプによって拘束されていたルーピンの縄が解かれたのだろう。
「先生を攻撃してしまったわ……私…私……物凄い規則破りになるわ」
半分泣きかけているような声のハーマイオニー。
そろそろいい頃合いだろう、とセフォネは口を開いた。
「それ以前の問題として、夜間に外出している時点でもう規則破りではないですか」
扉の奥が静まり返る。その反応に薄く微笑むと、セフォネは扉をゆっくりと開けた。
その先に立っているのは、2人の男性と2人の生徒。部屋の隅には足から血を流しているロンがおり、5人のさらに向こう側には、気を失ったスネイプが倒れている。セフォネがここに来る前に取っ組み合いでもしたのか、それとも暴れ柳にやられたのか、ハリーとハーマイオニーは随分と荒れた格好だ。
「デメテル!? 何故…生きている!? 死んだはずでは……」
落ち窪んだ目を見開き、シリウスは驚愕している。他の4人は突如現れたセフォネに言葉も出ない様子だった。
「残念ながら、私は貴方の妹、デメテル・ブラックではございません」
スカートの両端を摘み、足を交差させて優雅に一礼する。そして、まるで演劇の舞台役者であるかのような、芝居がかった声音で、その名を告げる。
「私は聖28一族に連なるブラック家現当主、ペルセフォネ・デメテル・ブラック。お初にお目に掛かります、シリウス・ブラック……親愛なる、我が伯父上よ」
学末試験………作者もつい2,3週間前に受けました。結果は爆死。
バックビーク生存ルート………この作品ではこの子使わないので。生かしておくことでセフォネとシリウスの対面までの話運びを作りました。
ついにシリウスがセフォネとエンカウント。次回で終われるといいなぁ……