もう一つの千里山女子   作:シューム

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今回はサクサク考えがまとまったので早くあげられました。
また、今回の内容は咲と照の関係がメインになってきますのであまり試合の方は進まないです。


第6話「決意」

 南2局

 北:愛宕洋榎 27400

 東:荒川憩 33200

 南:宮永咲 15200

 西:園城寺怜 24200

 

(結局、南入した後は洋榎が満貫で和了って、連荘を憩が安手で阻止したって形やったな。宮永さんは最初の1局以来和了れてないけど...まぁ、無理もないか。怜が和了らせないように一巡先を読んでるんやし。)

 

 竜華はここまでの流れを振り返っていた。そして残りの3局、どうなっていくのかを考えていた。

 すると突然、洋榎が咲に話しかけてきた。

 

「そう言えば、宮永照について話すって言うててまだ話してなかったなぁ。」

 

 すっかり忘れていたと言わんばかりに洋榎が切り出した。

 

「とは言うても、どこから話せばいいんやろ...なにか知りたいこととかあるか?」

「知りたいことですか?...じゃぁ、今お姉ちゃんはどこの高校にいるんですか?」

「なんや、それも知らんかったんか。」

 

 洋榎はどこか呆れたような言い方をした。

 

「まぁええわ。今宮永照は東京都の白糸台にいるんや。ちなみに、白糸台は今全国大会で2連覇していて、全国ランキング堂々1位の高校や。」

「そんで宮永照はそこの大将をしてるんよ。」

「お姉ちゃんが大将ですか...」

 

確かに、あんなにも強い姉であるため大将という座にいることに不思議と違和感わなかった。

 

「せや、そんでエースって言うんやからほんま手がつけられんわ...って、今『連続和了や打点上昇』って言うてたけどもしかして照って昔からその能力があったんか!?」

「ありましたよ。ただ、今ほど強くはないと思いますけど。」

「そんなやつと昔から打ってたなんて...それが原因で姉ちゃんと仲が悪くなったんか?」

 

 洋榎の質問に咲はどこか暗い顔をした。思い出したくない過去を思い出してしまったような。

 

「そうですね...それが原因でお姉ちゃんと仲が悪くなっちゃったかもしれないです...」

「...そう言えば、この前の宮永照についてのインタビューをまとめた本に『戦いたい相手』ってあったけど、あれって宮永さんのことなんやないか?」

 

 ふと思い出したかのように怜が言った。

 

「その本、今どこにありますか!?」

 

 咲が食いつくように問いかけてきた。

 それを見て泉がカバンの中を漁りながら言った。

 

「その本なら今うちが持ってるで。ほら、これや。」

 

 泉はその本を咲に渡した。

 

「真ん中らへんにその記事について書いてあるところあった気がするから。」

 

 咲はそのページを見つけた。大きく照の写真が載ってあり、タイトルには『高校生のトップに立つ宮永照さんにインタビュー!!』と書かれていた。

 

 ────────────────

 

 ─今回は宮永照さんに来ていただきました。宮永さん、宜しくお願いします。

「宜しくお願いします。」

 ─まずは、インターハイでの団体戦2連覇、個人戦での優勝おめでとうございます。

「ありがとうございます。ここまで結果を残せたのも皆さんの応援のおかげです。」

 ─いやぁ、しっかりしてますねぇ。

「そんなことないですよ。普段はのほほんとした感じですし(笑)」

 ─意外な一面ですね。試合中はものすごい気迫のある印象を受けますけど。

「試合になると集中してあんな風になってしまうんです。それがキズになる事もあるんですけどね...」

 ─昔何かあったんですか?

「はい。まだ私が幼い頃に仲の良い子がいたんです。その子は私よりも麻雀が強かったんです。」

 ─宮永さんよりも強いひとですか!?

「そうですね、私じゃ相手にならなかったです。それで私は勝てないことに少し苛立ちを感じたんだと思います。そしてその子はそれを察してわざと手を抜いて負けるようになったんです。当然私は自分がなめられているような感じがしてそれにもひどく腹を立ててました。」

 ─勝っても負けてもその子にとっては辛かったでしょうね。

「今考えてみれば本当にその子には申し訳ないことをしたと思います。結局、その子はある日を境にして麻雀をしなくなりました。」

 ─という事は、今その子は麻雀をやってないという事ですか?

「分からないです。ただ、何となくですけどその子は帰ってきてくれる気がします。ですから私はここで待つしかないんです。ここで待って彼女がここに来た時、仲直りをしてその子も楽しめるような麻雀を打ちたいと思ってます。私は、今その子と戦いたいです。」

 

 ────────────────

 

「お姉ちゃん...」

 

 実の姉がこんなことを思っていたなんて咲は全く知らなかった。お姉ちゃんは私と仲直りをするためにずっと待っているんだ、麻雀という舞台で。

 

「私...私、お姉ちゃんと戦いたい!」

 

 自然と出た言葉だった。しかし、そこには強い意志が込められていた。

 

「やっぱりその記事の子は宮永さんやったんやな。まぁ、感慨に耽るのもいいけど、今はこっちの方にも集中せなあかんで!」

 

 怜はそう言って牌を引いてくる。いつの間にか怜の前にはリー棒が置かれていた。

 

「ツモ。立直、一発、門前、断幺九、ドラ1の2000、4000や。」

 

 怜が和了ったことで次は南三局、咲の親からになる。

 

(お姉ちゃんと戦いたい。お姉ちゃんに勝ちたい。だから、今この試合も勝たなくちゃいけない!)

 

 咲の強い思いが形になったのか、咲から禍々しいオーラが放たれた。

 

(なんやこの感じ、今までとは明らかに違う。)

(リミッターが外れたみたいな感じやな。)

(これはなかなか厄介そうですぅー。)

 

 3人はこのオーラを感じ取っていた。そしてこうも思っていた。この南三局が一番の山場だと。




次回でいよいよ決着がつくと思います。

ところで、Vitaの咲-Saki-のゲームをつい最近買ったんですが育成ってなかなか楽しいですね。洋榎を育成していったら淡ちゃんのようなダブリー、咲のような槓の多さ、終いには天和なんか決めちゃうのに全く振り込まない。無能力って何だっけ...みたいな感じになりました(笑)

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