それでは本編をお楽しみください。
宮永咲は二条泉と柳楽風香(なぎらふうか)と弁当を食べていた。
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咲が二人と知り合ったのは入学式のあった日である。入学式を終え、クラスで自己紹介も済ませた後、隣の席に座っていた風香が咲に声をかけてきた。
「宮永さんも私と同じで大阪に引っ越してきた人だったんだ!東京から来たばっかりでちょっと心細かったけど、なんか同じ境遇の人がいてちょっとホットしちゃった!」
いきなりこんなにハイテンションで話しかけられたため咲は少しばかり戸惑った。
「わ、私も、まさか他のところから来る子がいるとは思ってなかったからビックリしたよ。でも、私は柳楽さんと違って長野だけどね。」
「あ、私の名前覚えててくれたんだ!あと、私のことは『柳楽』じゃなくて『風香』でいいよ!」
「あ、じゃぁ、私のことも『咲』でいいよ。」
「うん、よろしくね咲ちゃん!」
これが咲と風香の出会いであった。
そうして、その後も二人はいろいろと話をした。最初は少し抵抗はあったものの話しているうちにその感情はなくなっていた。お互いの過ごしていたところがどんな感じだったのかとか、大阪での生活はどんな感じかとか、そんなたわいもない話をした。そんな時、風香がある質問をしてきた。
「咲ちゃんって麻雀できる?」
「えっ!?」
咲はその質問に対する答えを躊躇った。
昔は家族でよく麻雀をしていたが、あの時の家族麻雀を最後に咲は麻雀と関わることを極力拒んできた。しかし咲にとっては不幸なことに、今この世の中は麻雀がブームとなってきている。高校は中学と違い麻雀経験者は多い。いくらここで嘘をついたとしても今後の学校生活でその嘘を貫き通す自信が咲にはなかった。そこで咲はどうせバレるのならと、本当のことを言おうと決心した。
「う、うん、できるよ。」
「本当!じゃぁさ、一緒に麻雀部入らない!?」
流石にこの質問には入るとは答えられなかった。今の咲は麻雀を打ちたいと思ってはいなかったからだ。
「今のところは...部活はいらないかな。他にもやる事あるし。」
「...そっか、咲ちゃんにも咲ちゃんなりの事情があるからね。無理に誘ってごめんね。」
「うんうん、私もなんかごめん...」
何だか少し気まずい雰囲気になってしまった。とりあえず咲は話題を変えることにした。
「あ、それよりも、風香ちゃんって麻雀できたんだね。」
「あ、うん、麻雀できるよ。これでも私中学は『下井草中』だったからね!」
「下井草やて!あの東東京都代表で全国常連のか!」
突然、風香の後ろに座っていた女の子が大声を上げてこっちに話しかけてきた。
「う、うん、そうだよ。とはいっても代表のメンバーには入れなかったけど。」
「いやいや、十分スゴイで!そんなところで打ってたなんて!...って...」
ここでようやくその子は自分がどんな大声で話していたのかを自覚し、顔を赤らめながら静かに席についた。
「な、なんかごめんな。つい大声で話してもうて...」
「いや、大丈夫だよ!えっと、確か二条さんだっけ?」
「せや、うちの名前は二条泉や。別に名字で呼ばなくてもええで。」
「うーん、じゃぁ、下の名前が泉だから『いずみん』とか!」
「おお、いきなりあだ名か。」
「なんかそれが呼びやすかったから!で、もしかしていずみんも麻雀やってるの?」
「やってるで。一応中学では代表メンバーやったしな。せやけどここの麻雀部は強いからそう簡単には大会に出られんかもな。」
「え、ここの麻雀部って強いの?」
「強いなんてもんじゃないよ!全国二位の実力を持ってるんだもの!」
「へぇ、そうだったんだ。」
これは麻雀と極力関わらないようにしようとする自分にとってはなかなか厳しいのでは、と咲は内心思うのであった。
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「咲ちゃんボーッとしてるけど大丈夫?」
不意に風香にそう尋ねられ、咲は我に返った。
「え、あ、何が?」
「なんや咲、その慌てようは。」
「もしかして咲ちゃん恋でもしてたり!?」
「ほんまか、咲!いつの間に...」
「いやいや、違うからね!そもそもここ女子高だから男子いないし。」
そんな話をしていると教室のドアがガラリと開いて人が入ってきた。
「このクラスに『宮永咲』って子はおるか?」
その発言をした人に咲は見覚えがあった。
「あの人って、確か麻雀部の部長さんの...」
そこにいたのは昨日知り合ったばかりの愛宕洋榎であった。
という訳で、二条さんとオリキャラの柳楽ちゃんは咲さんの親友ポジになってもらいました。なかなか5人しかいない状態だと進めにくいところもあったもので...
柳楽ちゃんの名前の由来は特にこれといったのはないです(笑)ただ、名字は少し珍しいものにしようとは思ってたのでこれにしてみました。
そして、後書きでもう一つお詫びとして言わせてもらいたいことがありまして、次回の投稿からは少し投稿期間が空いてしまうと思います。その分1話の文章量を増やせられるように努力しますので、気長に待っていただけると幸いです。
次回は洋榎たちが咲と打った後の様子から書いていくつもりです。