もう一つの千里山女子   作:シューム

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今週妙に忙しかったのであまり長くはかけなかったです...


第12話「前夜」

 照たちと別れた後、咲は偶然にも泉と風香を見つけた。

 

「咲!どこ行ってたたんや、探したで!」

「咲ちゃん具合悪そうだけど大丈夫?」

 

 2人は心配そうな顔をしていた。今までずっと自分のことを探していてくれたんだと思うと申し訳なく感じた。

 

「私の体調は大丈夫だよ。心配させちゃってゴメンね、2人とも。」

 

 そうは言うものの、咲の顔は暗かった。

 咲の姉である照は大将戦に出てくると考えて、あえて中堅までで方をつけようとした千里山であったが、その作戦は外れてしまった。また、もうオーダーを変えることは不可能であった。

 

(とりあえず、先輩たちにもこの事実を伝えないと。)

 

「ねぇ、先輩たちってもうホテルに戻ってきてるかな?」

「どうやろ。帰ってるなら連絡の1本くらい入っとるやろうけど。」

「あ、さっきメールで『咲たちが帰ってき次第ミーティング始める』ってきてたから、多分もう戻ってると思うよ。」

「そっか。それじゃぁ、私たちも帰ろうか。」

「もう見なくていいんか咲?」

「うん。今はそれより大事なことがあるから。」

 

 咲はそう言って足早にホテルを目指した。

 

 ****

 

「ただ今帰りました。」

「おぉ、おかえり。」

 

 自分たちの部屋へ荷物を置いてきた咲たちは、先輩たちのいる部屋に来た。先輩4人に加えて監督も既にいた。

 

「そう言えば、先輩方はなんでもう帰ってきたんです?まだお昼頃ですよ?」

「あぁ、怜が食べ歩きしたせいで眠くなったって言ってな。」

「いっぱい食べたし、歩き疲れたんやもん。それに、うちはやっぱり竜華の膝で寝転がってた方がええわ。」

「怜...」

「あぁ、もう十分ですから。十分分かりましたから。」

 

 咲はそこで話を止めに入った。これ以上続けてると、また竜華と怜でイチャイチャしだしそうであったし。

 

「ほな、ミーティング始めるで。」

「監督、その前に報告があるんですが。」

 

 咲は割って入った。言うなら今しかない。

 

「どないしたんや咲?なにか重要なことか?」

「はい、実は────

 

 咲は今日、照と会ったときのことを事細かに話した。白糸台の照と菫にあったこと、照が大将でなく先鋒として出ること、そして、今まで話さないでいた照との過去も包み隠さずすべて打ち明けた。

 

 ────ということだったんです。」

「なるほど、宮永照が先鋒戦に出るとなるとかなり計画が狂うことになるな...」

「それに、咲ちゃんにそんな過去があったなんて...想像もつかなかったですぅー。」

 

 咲が話終えると、皆思い思いのことを言った。

 

「まぁ、咲の過去のことは当事者同士でしっかり話がついたんやから問題ないやろ。それより、照とあたる怜の方がうちは心配や。」

 

 監督は怜の方を見ながら言った。

 本来先鋒、次鋒、中堅でケリを付けるつもりでいたものの、照が大将に来ると先鋒で点を多く稼ぐことはおろか、場合によっては先鋒戦だけで試合が終わる可能性がある。また、照は本気で先鋒戦だけで終わらせるようであるから、その可能性は高いだろう。

 そう考えると、春季大会で優勝するためのカギとなるのは先鋒戦でどれだけ耐えしのげるかにかかっている。

 

「心配ないです、監督。確かに宮永さんは強いけど、最悪2位で通過できればいいんですし。それに、うちは一巡先が見えるから振り込むことはまずないと思います。むしろ、いけそうやったら宮永さんのツモをずらすくらいしますよ。」

「そうは言うけど、一巡先を見るだけで対応できるか分からんで。」

「分かってます。せやから憩、宮永さんのうち方とかについて知ってることを、うちに教えてくれんか?」

「うちですかぁー?」

「せや。憩だけはこの中で唯一、高校生の宮永さんと対戦しているからな。」

「・・・・分かりました。伝えられる限り伝えます。」

 

 憩のその言葉を聞いて、怜は満足そうな顔をした。

 

「よし、怜の方も話はまとまったな。そんじゃ、ミーティングを始めるで。まずは確認のために大会のルールをもう一回説明するで。」

 

 そう言って監督は紙を取り出した。そこには大会のルールが書かれていた。

 

「ルールはここに書いてある通りや。赤ドラあり、ウマやオカはなし、ダブル役満もなし。他にもいろいろとあるけど、一番大きく変わったところとして大明槓のときの嶺上開花で責任払いが発生することやな。」

「あんまり採用しているところもないですしね。うちらも最近取り入れるようになったし。」

「お陰で咲ちゃんに倍満食らわされたからねぇー。」

「・・・・その後槍槓で国士無双直撃でしたけどね...」

 

 咲は苦々しい顔をしていた。あれが原因で最下位になってしまったのだからたまったもんじゃない。いつかこの雪辱果たそう、と思った咲であった。

 

「そしてもう一つ大きく変わったこととして、『人和』を取り入れることや。」

「監督、人和って何です?」

「あぁ、泉や風香はいなかったか。まぁ簡単に言うと『天和』や『地和』と似たような役やな。出現率はそうとう低いから出てくることは滅多にないけどな。」

「それって別に採用するほどのことでもない気がするんですけど...」

「運営の決めたことやからな。もしかしたらどこかで役に立つかもしれんし。」

 

 監督がそうは言うものの、そんな出現率の低い役に助けられるものかと全員内心で思っていた。

 

「それじゃぁこれから練習に入るで。明日から春季大会は始まるけどうちらはシードやからまだ先や。せやからその間に詰められるところまで詰めていくで。それじゃぁ、解散!」

 

 監督の声とともに各自卓へと向かった。

 

 ****

 

『ふくよかすこやかインハイレディオー!!今週もふくよかじゃない福与恒子と、』

『えっと、すこやかじゃない小鍛治健夜がお送りします。』

『今日から待ちに待った春季大会だね!この番組名はインハイってなってるけども!』

『別に気にしなくてもいいと思うよ、そのへんは...秋季大会のときもそうだったし。』

『今回は秋季大会を勝ち上がってきた強豪が揃っているからかなり激戦になりそうだしね!』

『そうだね。どこも強いから楽しみだな。』

『ちなみに、20年前にインハイで優勝した小鍛治プロから見て、今回の注目どころは!?』

『いや、10年前だよ!...って言ってて悲しいな...まぁ、やっぱり昨年のインハイの優勝校の白糸台をどこまで抑えられるかかな。特に、個人戦優勝した宮永照選手を。』

『なるほど、確かに昨年のインハイは凄かったからね。ちなみに、すこやんは宮永選手と戦って勝つ自信は!?』

『うーん、やっぱり戦ってみないとわからないかな。ただ、まだ詰めが甘いところとかあるからね...』

『流石は史上最年少八冠保持者。アラフォーになってもまだまだ現役ですもんね!』

『アラサーだよ!...って何言わせるの!』

『さーそれでは、春季大会開幕です!』




『人和』はローカル役なため、多少ルールに曖昧なところがあるので、ここで少し解説していきます。

人和:子が配牌の時点で聴牌していて、自分の最初のツモより前にアガリ牌が捨てられ、それをロンすることで成立しする。満貫、跳満、倍満、役満と扱いがいろいろ違いますが今回は役満扱いにします。また、一巡目の定義として今回は、「誰も鳴いていない状態で自分の第一ツモより前にロンアガリすること」とします。

ローカル役は和了り方のバリエーション増やしてくれるんで個人的には結構好きだったりします。(なんでかは知らないですが、自分はオープンリーチの方が普通にリーチかけるより和了る確率高いですし...)

そして、秋季大会や春季大会はオーダー変えられるとかなんとかあったような気がしますが、ここでは変えられない設定でいきます。

さて、今回はオマケのところを使って、春季大会が始まる前にこの作品の千里山の主力キャラの現時点での解説をちょっと入れていこうと思います。(原作と多少異なるところもあるので)

・宮永咲(1年)
能力:嶺上開花(王牌の支配?)、点数調整
一応ここでの主人公。父親の仕事の都合で長野から大阪に引っ越してきた。ちなみに中学は高遠原中という設定にします。なので、和、優希、京太郎とは中学からの知り合いということになります。(ただし、麻雀部には入ってない。)オマケは主にツッコミをしている。

・愛宕洋榎(3年)
能力:なし
千里山女子麻雀部の部長。怜や竜華とは中学からの付き合い。ほぼ全試合プラスで終局する。また、憩に弄られることが多い。オマケはボケもツッコミも。

・清水谷竜華(3年)
能力:無極点竜華(実際に竜華の能力が使われるのはまだまだ先になるかと思います。)
千里山女子麻雀部の副部長。怜とよくイチャイチャしており、怜に、膝枕をしてやっている。オマケはボケ担当。

・園城寺怜(3年)
能力:一巡先を見る
千里山女子麻雀部のスコアラー。現段階では体力や精神力の関係で一巡先までが限界。竜華に膝枕をしてもらっているが、最近は咲の膝も使うようになっている。オマケはボケ担当。

・荒川憩(2年)
能力:他家が和了ると次の自分の手牌がよくなる
昨年の個人戦で2位という結果を残した実力者。終始笑顔。意外と負けず嫌いな一面がある。

ざっくりこんな感じです。このタイミングで書いたのは伏線はっとくためだったり...

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