OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・   作:ラルク・シェル

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セバスの拾い物

セクフィア帝国が地震で大変なことなって次の日。リ・エスティーゼ王国では、昨日のセクフィア帝国の地震の話題でいっぱい。仮にも2つ友好国なので当然だが、あんまり大事にはならない様子。

そのリ・エスティーゼの王都本通では、潜入しているセバスが歩いていた。セバスの人柄や顔立ちは、貴族マダムの虜になっていたが本人は気にしていない。魔術師組合本部に到着すると受付に行く。

 

「魔術組合へようこそ。セバス様」

魔法の巻物(スクロール)のリストを見せてください」

 

受付の人がリストを出して貰うと、セバスはマジックアイテムのメガネをかけて読み始める。ちなみにこの様子を、女性受付の何人が見惚れる。

 

「この浮遊板(フローティング・ボート)の説明を聞かせていただきますか?」

「畏まりました浮遊板(フローティング・ボート)は、半透明の浮遊する板を作り出す第一位階魔法で、板の大きさと重量は術者の魔力で左右されますが、魔法の巻物(スクロール)からの発動の場合は1m四方と50キロが限界になります」

 

セバスは受付の浮遊板(フローティング・ボート)の魔法の説明を聞く。

 

「基本的には運搬の土木工事用の魔法ですが、如何です?」

「分かりました。では、その魔法の巻物(スクロール)を1本売っていただきましょう」

「ありがとうございます。金貨1枚と銀貨10枚を」

 

料金を払って魔法の巻物(スクロール)を手に入れたセバスは組合本部を出る。

 

影悪魔(シャドウ・デーモン)、ソルシャンに伝えてください。少し帰りが遅くなると」

 

自分の影の中にいる影悪魔(シャドウ・デーモン)に、家にいるソルシャンに家に帰るのが遅くなると伝言を頼んだ。

 

「さてと、今日はあっちに行きますか」

 

それからセバスはさっそく町の探索に向かった。

路地裏を歩いて行くが、もう夕方で太陽が沈み始めで少し暗くなる。すると店らしき建物の裏口の扉が開いて、誰かが辺りをキョロキョロと見回すと大きな袋を投げ捨てるのが見えた。

 

「…影悪魔(シャドウ・デーモン)!」

 

セバスは影悪魔(シャドウ・デーモン)に指示して袋の結び目を切り裂く。しかしなにも起きなさそうなので、そのままセバスは歩き出したが足が掴まれたので下を見た。

そこで目にしたのは、全身打撲やあざに切り傷だらけの金髪の全裸な女性。

 

「……手を離してはいただけませんか?」

 

関わると面倒なことになると思い、女性に手を放してと言う。

 

「おい、ジジイ!アンタ、なにしてんだ?」

 

さらに巨体で小太りの髭を生やした男が裏口か出てきてセバスに怒鳴る。

 

「とっとと失せな!無事で帰りたいのならな」

 

脅すようにとセバスに言いながら近づく男。だが

 

「そうですか…では」

「あ?うっ!?」

 

セバスは男の服の首元を掴むと持ち上げた。これには男もビックリして、顔色が恐怖で青くなる。

 

「彼女は何ですか?」

「えっと…うちの従業員だ……」

 

持ち上げられながらも男はセバスの質問に答える。

 

「では、なぜこのような?アナタは、彼女を人間として見ているのですかな?」

「…色々あんだよ!こんなご時世に」

「なるほど…それでは質問を変えますが、彼女をどうすると?」

 

殺気の怒りに満ちた目で質問するセバスに男はもっと顔色が悪くなった。

 

「教会に治してもらおうと…」

「正直に言ってください」

 

威圧感をかけながら、さらに首元を強く握りしめて正直に言えと要求。

 

「く…苦しっ!」

 

男は苦しさのあまりセバスに殴りかかったが、片手で止められる。

 

「正直に言った方が、身のためですが?」

 

そのまま服を離すと男はセバスの目を見てもっと怯える。

 

「だから…本当に教会に!」

 

それでもなおウソを着く男。これは相当、この男のボスが恐ろしくて正直に言ったら殺されてしまうのだと分かる。セバスは男を離すと彼女を見ながら言う。

 

「では、私が彼女を連れて行こうとも構わないという事ですね」

「待て!コイツは法律上俺達のモノだ!そのまま連れて行ったら誘拐になるぞ!大体、執事が主人に厄介ごとを抱えて良いのかよ?」

 

男は勝ち誇ったかのように連れて行くと誘拐になると脅し文句をつけてきた。とりあえずセバスは、彼女を優しく抱きかかえて声をかけて見た。

 

「助けて欲しいですか?」

「…た……け…て…くだ……」

 

なんとも弱弱しい声でセバスに助けを求めた。

 

「…たしかに、法律は大切なものです。けれども、時と場合によっては破る為のものでもありますな」

「え?」

「なので、彼女は私が助ける」

 

そのままセバスは女性をお姫様抱っこして連れて行こうとする。これには慌てて男が止めに入る。

 

「いやいや、待て待て!そいつを連れていかれるとヤバいんだ。アンタだって、知ってるだろ?八本指の事を!」

「八本指…あの?」

 

八本指という言葉を聞いた途端、セバスは思い出す。この王国を裏で牛耳る犯罪組織で、麻薬栽培と密売を中心に、奴隷と暗殺と密輸と窃盗と軽微と金融と賭博の8つを行っている。巨大すぎてボスや幹部が謎に包まれているらしい。

 

「そうだよ…このままじゃあ、俺もアンタもヤバい目にあるんだよ!だから、何も見なかったことにしてくれ」

 

男は女性を連れていかれたらセバスは勿論、自分も大変な目にあると警告。

 

「…連れて行きます。殺されるのが嫌なら、逃げれば良いだけ」

「無茶言うな!逃亡費はもちろん、追っ手を避ける為の用心棒を雇う金もねぇし!」

「では、私が出しましょう」

 

などと言って男に逃亡費の金貨を七,八枚ぐらい与えて、そのまま彼女を抱きかかえて屋敷に帰宅。

 

「お帰りなさいませ、セバス様」

 

屋敷には黄色いドレス姿のソリュシャンが出迎える。じつは人間として行動調査する時には、ソリュシャンはわがままで高飛車なお嬢様で、セバスはその執事という設定でいた。

 

「セバス様…その人間は一体?」

 

ソリュシャンはセバスが抱きかかえている女性を見て質問してみる。

 

「拾いました」

「そうですか。私のお土産ではないのは分かりますが、どうなされるのですか?」

「…では、彼女の傷を癒していただけますか?」

 

とりあえずソルシャンに彼女の傷を見るようにと指示。

 

「傷ですか…教会に頼んだ方がいいのでは」

「それもそうでしたな」

「今から、教会に捨ててきますか?」

「いえ、とりあえず彼女の肉体の健康状態を見ていただきたい」

「はぁ…分かりました」

 

ソルシャンは嫌々ながらも彼女を見ることになり、さっそく寝室でベッドの上に彼女を寝かせた。

 

「では、お願いします」

「畏まれました」

 

セバスはソルシャンに彼女の体の様子を調べるように頼んで部屋から出た。

 

[私は愚かですね…なぜ、あの時無視しなかったのですか…]

 

セバスは自分に疑問を持つ。普通なら潜入調査の為ならほっておくのだが、どうしても気になって助けてしまった。そんな自分の行動がどうしても気になって仕方がない。

 

[やはり…たっち・みー様の意志、というよりは呪いのようなものでしょうか?]

 

たっち・みーはかつてナザリックを作る前のアインズ改めモモンガを助けたプレイヤーで、職業・ワールド・チャンピオンの至高の四十一人の1人。座右の銘が「誰かが困っていたら、助けるのが当たり前」をモットーにしている。

なので、きっとセバスの人助けはたっち・みーの影響じゃないのかと思う。

 

[御方の御意思を顧みず…彼女を助けた行動は間違っていたのでしょうか?]

「セバス様」

 

思い悩んでいるセバスにソルシャンが調べ終わったのか、部屋から出て声をかけた。

 

「ソルシャン、どうでしたか?」

「はい、まず梅毒に性病が二種類。あばら骨の数本及びに指にヒビに加え、右腕と左足の腱は切断され、前歯は上下が抜かれています。内臓の動きも悪くなっていると思われ、裂肛もありました。何らかの薬物中毒になっている可能性もあります。打ち身や裂傷などが無数にあり」

「分かりました。もう結構です」

 

などとソルシャンの説明から聞いて、女性は全身が酷い状態だと分かる。一体なんで彼女がこんな目に合わなければと、セバスは心底憎悪を感じる程に。

 

「…治りますか?」

「容易く。ペストーニャ様をお呼びしますか?治癒系魔法が得意な」

「ソルシャン、治癒系の魔法の巻物(スクロール)を所持してますね?」

 

ナザリックから治癒魔法を使うペストーニャを呼んだ方がいいと言うソルシャンだが、彼女が持っている治癒系の魔法の巻物(スクロール)を使えとセバスが命令。

 

「しかしあれは、至高の御方々が私達に与えてくださったもの!人間に使うなどと…」

「やりなさい」

「ッ…畏まりました。では、あのような状態になる前の体に戻すという事で良いですね」

「私は食事を買ってきますので、治療が終わったらお湯を沸かして体を拭いてもらいますか?」

 

次から次へと指示を出すセバスにソルシャンは納得いかない。彼女にとっては人間は捕食対象で、しかも至高の御方の魔法の巻物(スクロール)を使えと言うので尚更。

 

「セバス様!精神の治療もするならば、アインズ様をお呼びした方が!」

「アインズ様に来てもらう必要はありません」

 

ソルシャンの提案を却下するセバスは買い物しに出かける。

 

「回復させてから私の玩具にするのなれば、セバス様の対応には理解できたのですが…」

 

納得いかないまま再び部屋に行くソルシャンは、自分の掌をスライムにして収納していた魔法の巻物(スクロール)を取り出して、さら人差し指と中指を治療器具みたいな形にする。

 

「普通なら食べてしまいたいのですが…ここは我慢しなければですね」

 

などと怖い笑みを見せながらも治癒を始めた。

それからしばらくして、セバスが買い物から帰って来るとソルシャンが彼女の治療と体を綺麗にし終わったところ。

それからセバスは体に優しいお粥を作って彼女の所に持ってくる。彼女は全身の痣や傷がなくなって、全身が健康状態になってソルシャンが持ってきた寝間着姿。けれども、目は虚ろで精神は安定していないのが分かる。

 

「体の傷は治ったみたいですね。とりあえず、食事を持ってきましたので食べてくださいね」

 

優しく言いながらもセバスは彼女にお粥の入ったお椀をお盆ごと渡した。女性は目が死んだまま、スプーンでお粥をすくい一口食べる。すると女性は久々にまともなものが食べられたのか、お粥をがつがつ食べていき途中で少しむせながらも完食。

そしてセバスに目を向けて

 

「あの…」

「此処にいれば、なにも危ない事はありません。私が保証します。目を覚ましても、このベッドの上にいますよ」

「あ……ありが…とう……ございま」

「お気にすることはありませんよ。私がアナタを拾い上げたからには、アナタの身の安全は出来る限り保証します」

「うう…うっぐ!あぁぁぁぁぁ…うう!」

 

セバスが優しい目でここにいれば安全だと念押しすると、女性は目から涙を流してそのまま泣き出した。今までの辛い日々の恐怖を思い出しながらも、こうして体が治って優しくされた喜びが混じっていた。するとセバスは優しく彼女を抱きしめる。

 

「もう大丈夫です。大丈夫です」

 

それからしばらくセバスの胸の中で泣き続ける。




本当に久しぶりの投稿で、セバスとツアレとの出会いの話で伊丹達ゲートは出ませんでした。しばらくはセバス目線で進めるかもしれません。

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