OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・   作:ラルク・シェル

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テュカたちがハムスケをどんな風に感じるのか?


対決、森の賢王

カルネ村で休息を終えたアインズと伊丹達一行。しばらくするとンフィーレアの薬草集めの手伝いをする事になった。

 

「なんかすみませんね。アナタ達にも手伝わせて」

 

申し訳なさそうに伊丹達に謝罪するンフィーレア。

 

「いえいえ、テュカとレレイも薬草が欲しいって言っていたから、ついでみたいなものですよ」

「ええ、この辺りの薬草は結構効くって噂ですから」

 

するとレレイは目の前の森を見てある事を思い出した。

 

「そういえば、ここら辺って森の賢王のテリトリーじゃあ?」

「森の賢王?」

「聞いた事あるわ。たしか、数百年も生きている魔獣だって。長い尾と白銀の体に、優れた英知と魔法が使えるみたいよ」

「ふへ~~~なんというチート設定」

 

自衛隊員で伊丹と同じオタク趣味の倉田武雄は森の賢王に少し引いたりした。

 

「ですが、殺さずに追い返してくださいね」

「え?なんでよ?」

「元々カルネ村がモンスターに襲われなかったのは、この辺りが森の賢王のテリトリーなので」

「つまり、ここの主を殺したらモンスターが好き勝手に暴れて村を襲うかもしれないって事だな?」

「そういう事です」

 

理解する伊丹にンフィーレアが返事をする。

 

「あの、ナーベはアラームに似た魔法が使えるので、少し2人で周囲を一回りして来ても?」

「構いませんよ。ですが、あまり離れないようにしてくださいね」

「分かりました」

 

こうしてアインズとナーベラルは少しの間、別行動をとる事になった。

それからンフィーレア達も薬草集めを開始した。しかし伊丹はアインズ達が心配になってきたので。

 

「やっぱ、アイツらだけじゃあ危ないからな…俺、探しに行っていいかな?」

 

伊丹は全員にアインズとナーベラルを探してもいいか尋ねてみた。

 

「別に構いませんけど、気をつけてくださいね?」

「分かってるって。とりあえず今持ってる装備で何とかするから」

「だったら、私もついて行きましょうか?」

「大丈夫だよ。すぐに戻ってくるし、それにこれ以上減ったらダメだろ?」

 

レレイやみんなにそう言ってアインズ達が行った方向に向かって進んだ。

 

「と言ったものの…こんなに深くちゃ何処探せばいいのか……?」

 

 初めて来た別世界の森で、半ば迷子になってしまう伊丹。

 

「は~~~これならテュカか栗林も連れてくるんだった」

 

少し後悔してると、どこからかアインズの声が聞こえてきた。

 

「ん?この声はモモンさんか?もしかしてこの近くに…」

 

 さっそく声がした方に行ってみると、林の向こうにアインズとナーベラルを見つけた。でもその2人が、何者かと会話しているところだったので木の陰に隠れた。

 

「では、その森の賢王をけしかければいいんですね?」

「そうだ。頼んだぞ、アウラ」

「お任せください!」

 

 木の枝で座っているのは、金髪ショートヘアーのオッドアイで、男の服装をしたダークエルフの少女。彼女は、ナザリック地下大墳墓・第6階層守護者のアウラ・ベラ・フィオーラという。

 

「多分アイツの事だと思いますので、待っててくださいね。アインズ様♪」

 

そのままアウラは枝から枝へと飛び移りながら離れていった。

 

「さてと、そこにいるのは分かっている。出てこい!」

「は…はい……」

 

アインズに勘付かれたので伊丹は姿を見せる。

 

「貴様は!」

 

つかさずナーベラルが剣を抜こうとしたので伊丹は思わず尻餅をついてしまう。

 

「待て待て!落ち着けって…」

「そうだ。ナーベ、今は引け」

「…はい」

 

ナーベラルは納得しないまま後ろに下がる。

 

「伊丹さん、アナタは先程の話を何処まで?」

「え~~~と…アナタがエルフと話していたところまで」

「……そうですか」

「んで、さっきのエルフの子がアインズって言ってましたけど…まさか?」

 

ここまでだとアインズは仕方ないと感じ、伊丹に本当の事を話した。

 

「いかにも私の真の名は、アインズ・ウール・ゴウン。かつてカルネ村を救った魔法使いだ」

 

アインズは自分の正体を伊丹に告白した。すると伊丹はそのまま地面に座り込んで考え始めた。

 

「なぁ、さっきレレイが第5位階から先は伝説になっていると聞いたけど…」

「はい…私は第10位階まで使えます…」

「10って…なんだかよく分からないような…」

 

そしてアインズはこう思った。この男なら自分の本当の名前や今までの事を話せるのではないかと。なにやら自分と似た雰囲気を持っている感じがするので。

 

「ナーベラル!」

「はい、なにか」

「しばらく、この男と2人っきりにしてくれ」

「で、ですが!」

「良いな!」

「……はい」

 

納得しないままナーベラルはこの場から離れた。

 

「あの、なにか?」

「今から見る事と聞く事を信じてくれないか?」

「信じるって何を?」

 

アインズはさっそく精神を落ち着かせて、頭部の兜を解除して伊丹に素顔を見せた。

 

「うわっ!?」

 

素顔を見た伊丹はまた驚いてしまう。なぜならアインズの素顔は頭蓋骨そのものだった。

 

「アンタ、スケルトンか!?」

「いや、私はアンデッド。いや…正確には死の支配者・オーバーロードだ!」

 

こうしてアインズは伊丹に全てを話した。自分の正体とかつて住んでた世界と、ここにいる理由も全て。

 

「つまり、アンタは俺達で言うところの未来人で…本名は鈴木悟。オンラインゲームの終了の時に、自分とNPC全員がこの世界に転移したって事?」

「そういう事になる。そして、ゲームの仲間達もこの世界に転移してないかと思って、冒険者になったという訳だ」

 

オタク趣味の伊丹はアインズの話にかなり興味を持ち始めた。

 

「じゃあ、ナーベさんとさっきのダークエルフの少女は?」

「仲間達と作ったNPCですよ。ナーベの正体はドッペルゲンガーで本名はナーベラル・ガンマ。ダークエルフはアウラ・ベラ・フィオーラ」

 

恥ずかしそうにしながらも話を続けるアインズ。

 

「なるほど、第10位階の魔法ってのはゲームでの経験値によるものだな」

「ええ、努力してここまでレベルを上げたので」

 

2人はなんとなく笑ったりするけども、しばらくしたら笑うのを止めた。

 

「それで…この事は…」

「はい、秘密にしますけど…もし喋った場合には…」

「そちらでお任せします」

 

こうして2人の会話はここでストップした。

 

「ナーベラル、もういいぞ」

「はい」

 

そしてアインズに呼ばれてナーベラルは林から出てきた。

 

「先程、どんな…?」

「気にするな。単なる世間話だ」

「はぁ……」

「じゃあ、一度戻りましょうか?」

「そうだな。心配されたら些か面倒になる」

 

3人はンフィーレア達の所に戻って薬草集めをした。

しばらくすると突然大きな走る音が鳴り響いた。

 

「ん?なに、この音は?」

 

いち早くテュカが音に気付くと、ルクルットは地面に耳をつけてた。

 

「こりゃ…デカイのが来るな…」

「まさか、森の賢王!?」

「そのようですね。では、みなさんは下がってください。私とナーベでなんとかします」

 

この時を待っていたアインズは全員を引かせようとした。

 

「モモンさん。無理しないで、なるべく殺さないように」

「分かってる」

 

 ンフィーレアと約束をするモモン。その後ろでは伊丹が栗林達に指示を出していた。

 

「お前らもなんとかンフィーレアさん達を守れよな?」

「隊長は?」

「俺か…もちろん、2人を残して引けないだろ?」

 

伊丹もアインズの隣に立つ。

 

「伊丹さん。なんで?」

「同じオタクとして見逃せないからな」

「そうですか」

 

小声で話をする2人の隣でロゥリィが入ってきた。

 

「ロゥリィ!」

「私も、一度森の賢王に会ってみたいからねぇ♪」

「あははははは、そうか。という訳だ!引け!!」

「では、隊長。ご無事で!」

 

栗林とンフィーレアを逃がして、アインズとナーベラルと伊丹とロゥリィは森の賢王を待ち構えた。

 しばらくすると、猛スピードで走ってくる影が近づいて来る。

 そしてアインズ達がいる事に気づくと長い尻尾で攻撃してきた。

 

「ふん!」

 

だが、ロゥリィが愛用のハルバードで防いだ。

 

「ほぅ、某の攻撃を防ぐとは見事でござる」

 

木の影に隠れながらロゥリィの実力を絶賛するかのように声が鳴り響いた。

 

「ござる?」

「さて…今逃走するのであれば、先の見事な防御に免じ、見逃してやってもよいでござるよ?」

 

 まるで見下しているかのようにアインズ達に逃走しても良いぞと言いだした。負けずにアインズも挑発し始める。

 

「笑止!そちらは姿を現せないのは、臆病だからか?それとも恥ずかしがり屋か自信がないのか?」

「言うではないか?良かろう、某の姿を見るが良い!」

 

アインズの挑発に乗ったのか、ついに森の賢王が姿を現した。

森の賢王の姿に、アインズと伊丹は言葉を失ってしまう。だから、伊丹は賢王に質問をしてみた。

 

「あの、ちょっと良いですか?」

「なんだ。言ってみるでござる!」

「もしかして、アナタはジャンガリアンハムスターって種族名?」

 

それは大熊と同じサイズで、まるで蛇と甲殻類を合わせたような長い尾のハムスターだった。

これが数百年生きたとされる伝説の魔獣の姿。

 

「なんと!お主らは某の種族を」

 

驚いたかのように巨大ハムスターは彼らに返事を返す。

 

「まぁ、知り合いがお前とよく似た生き物を飼っていてな」

「そうなのか!では、もし同族がいるのであれば教えて欲しいでござる!」

 

巨大ハムスターはアインズの話に興味を持ち始めた。

 

「とにかく子孫を作らねば、生物として失格でござるので」

「いや…それは、サイズ的に無理だろう?」

「そうでごさるか…」

 

残念がる巨大ハムスターだが仕方がなかった。掌サイズのハムスターとクマサイズのハムスターでは完全に無理だった。

 

「ならば、無駄な話は止めて命の奪い合いをするでござる!」

 

巨大ハムスターは両手の鋭い爪を構えながら戦闘に入ろうとした。

 

「と言ってるけど、どうする?とりあえず、威嚇射撃でも?」

「ふん!そちらは妙な武器を持っているようだが、某の前では全くの無意味でござるよ!」

「なんだかな~~~」

 

アインズは森の賢王が想像とは全く違っていたことに、呆れてため息を吐いてしまった。

 

[もう良いや…]

 

すると剣を巨大ハムスターに向けると、アインズはそのまま投げやりな感じに言った。

 

「スキル・絶望のオーラ!レベル1」

 

剣先から黒いオーラを放った瞬間。

 

「うひゃああああああ!!」

 

巨大ハムスターは全身の毛が逆立ちながら震えてそのまま倒れた。

 

「降伏でござる~~~某の負けでござるよ~~~」

 

涙目になりながらも巨大ハムスターは負けを認めた。

 

「なんだか、違う意味で疲れたな」

「たしかに…所詮獣か」

 

呆れたり苦笑いをするアインズと伊丹。

しかしロゥリィは倒れる巨大ハムスターを見ながら口を開く。

 

「まさか…こんなにも強いオーラを纏って、気品と気高さを兼ね備えた魔獣を何もしないで降参させるなんて…アナタ、やっぱり普通じゃないのねぇ!?」

「「えっ!?気品と気高さ!?」」

 

 なんとロゥリィは巨大ハムスターを倒した(?)アインズに驚きを隠さない。

 それからアインズと伊丹とナーベラルは、巨大ハムスターを連れて森の外に出た。結局巨大ハムスターをアインズの配下にする事にした。ちなみに、巨大ハムスターを嗾けたアウラは任務が終わったので帰った。

 

「これが、森の賢王ですか?」

「なんだかイメージと違う……」

「俺、てっきりクマとか狼のモンスターだと思ってましたよ」

 

 当然、栗林達は森の賢王の姿にイメージが崩れたりしていた。

しかしンフィーレアは

 

「なんて、立派な魔獣なんだ!」

「「「「「え!?」」」」」

 

さらにテュカ達も巨大ハムスターを見て。

 

「うん、想像以上だよ!」

「たしかに、優れた英知と力を感じるのである!」

「それになによりも、恐ろしいほどの気迫も」

「これだけの偉業を成し遂げるとは、ナーベちゃんを連れて行く程の実力者って事だね♪」

「私達だけでは、皆殺しになっていましたよ。やはりモモンさんは凄いですね!」

 

 全員がロゥリィと同じように巨大ハムスターを恐れたり、または賢王の姿を見て興奮したり。さらにはそれを連れてきたアインズに感動したりする。しかし、アインズと伊丹達自衛隊は巨大ハムスターが、それ程凄い存在なのか全然理解できなかった。そこで栗林は現地の人間である冒険者に尋ねてみた。

 

「あの、本気で言ってるの?」

「本気とは一体」

「だって、これって可愛いって単語が似合いそうな?」

「可愛いだなんて!こんな恐ろしくも勇ましい魔獣の何処にそんな言葉が!」

「いやいやいや!なんでもない…」

 

ぺテルに迫力に負けてしまう栗林だった。

それから巨大ハムスターの協力も得て、薬草集めは早くも終わる事ができた。

 

「本当にありがとうございました」

「いえいえ、困ったときはお互い様ですから」

 

ンフィーレアとぺテル達は自衛隊にお礼を言った。ただし、アインズはまた伊丹とこっそり話をした。

 

「なんだか、色々とお世話になりました」

「別に、俺も形は違えど日本から来た人が居てちょっと安心しましたよ」

「と言っても、アナタにとっては過去から来たという形ですからね」

「たしかに、とりあえずこれでも」

 

アインズが青い水晶のバッジと風の形をしたペンダントを伊丹に渡した。

 

「これは?」

「マジックアイテムですよ。貰ってください」

「そうですか…では」

 

伊丹はさっそくマジックアイテムを2つ貰った。

 

「では、我々はこれで!」

「じゃあ!またどこかで!」

 

伊丹達は高機動車と軽装甲機動車と73式大型トラックに乗って、アインズ達と別れた。

 

「では、我々も」

「は~~~」

 

 しかしなぜかアインズは乗り気ではなかった。なぜなら巨大ハムスターの背中に乗ってエ・ランテルに帰るからだ。

そして巨大ハムスターはハムスケと名づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アインズ達と離れた伊丹達。しかし車内でロゥリィの発言が混乱を呼んだ。

 

「ねぇ、伊丹」

「なんだ?」

「あのモモンって人。彼が、アインズ・ウール・ゴウンでしょ?」

「いっ!!」

「「「「「「え?!」」」」」」

 

その言葉にテュカやレレイ達、高機動車に乗っている全員が驚いた。

 

「モモンさんが、アインズ・ウール・ゴウン!!」

「それ本当?!」

「ええ。あの鎧かは分からないけど、どうやら魔力を抑えていたみたいよ。それに、彼から死者の臭いもしたわ」

「死者?」

「つまり、アンデッド?」

「そういう事ねぇ?」

 

次々と当てられるので伊丹は頭を抱えてしまう。

 

「てか、隊長。モモン…いや、アインズさんを探したりしましたよね?」

「え?あの…」

「先程、アインズ殿とも会話してましたし?」

「だから…え…と」

 

結局伊丹は全員に問いかけられてしまったので、仕方なくアインズとモモンが同一人物だと話した。

ただし、アインズが未来の日本からから来たというのは話さなかった。アインズと伊丹の2人だけの秘密という事なので。




伊丹はモモンがアインズだと知り、ロウリィもアインズだと気付きましたね。元々ロウリィもアンデッドに近い存在なんで分かるかもしれませんね。
次回は、ンフィーレア篇やイタリカ攻防篇じゃないかもしれませんが待っていてください。

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