OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・   作:ラルク・シェル

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ヤオの協力奮闘

駐屯地にたどり着いたヤオ。さっそく緑の人改め自衛隊に自分の故郷を救ってほしいと頼み込もうとした。

歩いて行くと丁度よく、自衛隊3人を見つけて駆け寄る。

 

「すまない!」

「「ん?」」

「はい?」

「私はシュワルツの森出身のヤオ・ハー・デュッシという者だ!数ヶ月前に炎龍が故郷の森を襲い、部族は滅びの道に向かおうとしている。我が一族に救いの手を差し伸べて欲しい!」

 

深々と頭を下げて自衛隊員3名にお願いした。そして3人の口から出た返事は

 

「「「ハジメ、マシテ…」」」

「え?」

 

じつはこの3人は特地の言葉にはまだ慣れていなかった。それから他にも自衛隊員を見つけても、言葉が通じないものが殆どで話にならず。

おまけにチャラそうな男に声をかけられて路地裏に連れて行かれたけど、強く相手の股間を蹴り付けて追い払う。それからしばらくすると【PX】という店に入ってみる。

 

「こんなに品揃えが…」

 

店内の商品に興味を持ち始めるヤオだったが

 

「ありがとうございましたにゃ♪」

 

レジ打ちをしているキャットピープルの女性、メイアが隊員相手に日本語で接客していたことに気づく。

 

「お前、さっき緑の人と喋っていたが!?」

「え…はいにゃん!私達には赤本がありますにゃん」

「赤本?」

 

赤本とはアルヌス共同生活組合で発行している日本語手引書。組合の従業員か語学研修生にのみ支給されている。ヤオはこの本を使えば、自衛隊と話が出来ると期待を持った。

 

「これを売ってはくれないだろうか!」

「ダメです。勝手に人に売ったりしたら私がクビになってしまいますにゃ」

「そこを頼む!なんとしても緑の人に依頼を伝えなければならんのだ!今朝から何十人とも声をかけたが、誰も話にならんのだ!この通りだ!」

 

頭を深々と下げてお願いするヤオだったが、メイアもこれでクビにされたら仕送りが出来なくて困る。そんな時

 

「どうしたの?メイアちゃん」

 

そこに巡回中の警務2人が店に入って来た。

 

「困っていることあんの?」

「大丈夫ですにゃ。ただ…」

「ん?カラメル色の肌に銀髪にエルフ耳で、マントに革鎧の」

 

すると警務がヤオの姿を見てあることを気づいた。ダークエルフの女性に恐喝されるという話で、ヤオの姿がそれにピッタリ。

 

「…なぁ、ちょっと来てくれへんか?」

「話が…話が分かるのか!」

「え?ああ、まぁな」

 

会話ができると目を輝かせるが、なにか勘違いしながらも2人について行くヤオ。

それからレレイが呼ばれて取調室の前に来た。

 

「私に何か?」

「ええ、じつは…」

 

窓から中の様子を除くレレイ。取調室にはカツ丼出されて恐喝の事情聴取をされているヤオの姿で、本人は全くの期待外れに落ち込んでしまう。それは取り調べをしている隊員も同じで、話がかみ合わずに困っていた。

 

「どうしたの?」

「丁度良かった!」

 

だが、レレイが代わりに事情聴取をすることになり、さらにヤオに対して被害届を出した男も自供したので無罪になった。けれども、ヤオはレレイがスラスラと日本語をしゃべっている様子を見て彼女に声をかける。

 

「なぁ!お前は彼らの言葉は分かるのだな!」

「うん、分かるし話せる」

「だったら緑の人に伝えてくれ!我が一族が炎龍に襲われているのだ!」

「炎龍?」

 

この話を聞いてレレイはかつて襲ってきたが、伊丹達の活躍で片腕を失い追い払った炎龍を思い出す。

 

「まさか、片腕がない?」

「そうだ!だから緑の人と話がしたいのだ!この通り!」

 

ヤオは必死でレレイに頭を下げてお願いする。

 

「…つまり、日本人に助けて欲しいって伝えれば良いのか?」

「ああ、出来れば口添えも」

「分かった」

「かたじけない」

 

ようやく自衛隊にお願い出来て安心するヤオ。それからレレイはヤオを会議室に案内して、狭間達にシュワルツの森に現れた炎龍退治をお願いする。手始めにシュワルツの森はどこにあるのか、特地の地図を広げて調べた。丁度外は雨が降り出したが、森の場所を確認すると

 

「申し訳ありませんが、ヤオ・ハー・デュッシさん。協力することは出来ません」

「え?つまり…」

「協力できない」

「なっ!?」

 

なんでもシュワルツの森はセクフィア帝国から遠いエルベ王国という国の領内。他所の国に、大量の軍が入ってきたら宣戦布告の危険性が高くなる。自衛隊はあくまでも日本の組織なので無理。

 

「諦めた方が良い。彼らの理屈はあっている」

「別に大群でなくてもいいのです!緑の人は十人程でも、炎龍を倒せると」

「滅相もない!部下に死地へ赴けなんて命令は出せません!」

 

狭間が言っている事は正しい。期待を持ってようやく自衛隊に助けを求めたが、彼らにはルールを守って動いている。ヤオは酷く落ち込んでしまう。

 

「遠路はるばる、本当に申し訳ありませんが、仕方ないのです」

「…では…1つ聞きたいのだが」

「ん?」

 

激しく振り続ける雨が降る外だが、ヤオは口を開いて尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落では壁の補強や、武器の用意が大急ぎで進められていた。なぜなら明日が約束された日。なんとしても準備しなくてはならない。

 

「おい、あれは!?」

 

1人のリザードマンが空を見るとUH-1とCH-47が飛んできた。

 

「空飛ぶ船だ!」

「まさか、奴らが?」

「そんな訳ない!たしか明日の筈」

「とにかく非常事態だ!」

 

リザードマン達は慌てて警戒して戦士は急いで武器を持ち始めたが、UH-1とCH-47は地面に着地。

ザリュース達も機体の周りに立って警戒する。

 

「あれは一体…」

「分からない。だが、危険な物なのは分かる」

「まっ、戦ってみればわかるじゃねぇのか?」

 

するとCH-47のドアが開くと最初に出てきたのは伊丹とレレイ。

 

「えっと…ここが、アナタが言ってた場所ですか?」

「ああ、たしかにそうだ」

 

次に出てきたのは少し元気のないヤオだった。

 

「ヤオ!」

「ザリュース…連れてきた。緑の人だ」

「緑の人?本当にいたのか!」

 

まさかヤオが自衛隊を連れてきたことに驚くザリュース。

どうやら鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落は、ギリギリなぐらいセクフィア帝国の領内なのでOKだった。しかし伊丹は未だに何の状況か分からないままザリュース達の所に近づく。

 

「あの…私達、自衛隊でアナタ達の話を聞きに来ました」

「「「え?」」」

 

自分達が改めて敵ではないとザリュース達に話す伊丹。




次回はリザードマン達が自衛隊の協力を受けるかどうかですが、このままアインズ達と戦う事になるというリスクが生まれる可能性。
どうなるかはお楽しみに。

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