OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・ 作:ラルク・シェル
ザリュースはダークエルフのヤオと一緒に
翌日、ザリュースはヤオとロロロは村の外で野宿をしていた。しばらくすると彼らは目を覚まして、ヤオが池の水で顔を洗ったりする。
「おはようございます」
「ん?」
「えっ?」
いきなり2人の前に現れたのは、全身草や葉をくっつけた姿のクルシュ。
「しょ…植物のモンスター!?」
「違います。これは私の姿を隠して日除けの為の恰好。太陽の光は私には辛いので」
クルシュは顔だけを出してヤオに説明をした。
「そうか…私は一応、今は彼と同行しているヤオ・ハー・デュッシ」
「私は
2人はお互い自己紹介と握手をする。
「ところで…違うと思いますけど、アナタはザリュースとどういう?」
「え?」
しかしクルシュは、もしもヤオがザリュースとは愛人関係なのかと疑って尋ねてきた。
「まさか…一緒に行くつもりじゃあ?」
「もちろん、
「だが、本当に行くのか?危険かもしれんぞ」
いくら族長の代理として交渉に行くとしてもでも、
「あら?これからもっと危険な戦争が起きるかもしれませんよ?」
「……たしかにな。では、お願いしよう」
「任せて頂戴、ザリュース」
こうしてクルシュも一緒に
「緑の人に助けを?」
「ああ、私は森の代表として緑の人に会いに行く為に旅をしている」
「その途中で、ザリュースと出会ったのですね」
ロロロの背でヤオは自衛隊を探して旅をしているとクルシュに話した。おまけに会話している内に、2人は親友関係になっている。
それからしばらく経って、
「俺は
「私は
「シュワルツの森出身のヤオ・ハー・デュッシ!一応2人の付き添いの者だ」
「よく来たじゃねぇか。
3人が自己紹介すると、地響きを鳴らしながら1人のリザードマンが前に出てきた。それはまるでワニのような姿で、左手の薬指と小指がかけて槍を持っている。しかしザリュースが目にしたのは胸に自分と同じ旅人の刻印をしている事に。
「……お初にお目にかかる。俺は」
「別に名乗りは良いから。しかしダークエルフのメスに、植物系のモンスターか?」
「違います!」
ヤオと同じことを言われて少し怒るクルシュ。
「冗談だよ。俺が
「ならば、俺もザリュースで構わない。それで話が」
「言わなくてもあれだろ?この間、偉大なる御方の使いだと言う奇妙なモンスターが来た事だろ?」
やっぱり
「だが、俺達が信じるのは強者のみ!剣を抜きな。勝負しようぜ」
するとゼンベルは槍を構えて勝負を挑んだ。
「ま…待て!ザリュースはお前達と同盟を組む為に来たんだぞ!それなのに、なぜこんな無用な事を」
「ダークエルフのメスは黙ってろ」
「なっ!?」
同盟の話し合いが戦い合いになろうとしたので止めようとするヤオだが、ゼンベルは睨みながら黙らした。
「そうだ。ここからは俺達の問題であり、時間を無駄にすることのない判断だ」
「さすがは
ザリュースはさっそく
「あれが、前の戦争に負けてうちに吸収された」
「
「殺す気で来い。俺はお前が今まで戦ってきた奴らとは明らかに上だ」
「了解した。だが、俺が死んだら」
「応よ!お前のメスは2人共無事に帰してやる」
「ヤオは同行だけでなんの関係もない。クルシュは…まだ、俺のじゃないがな」
その言葉にクルシュは少し顔を赤くする。
「めちゃくちゃ狙ってるみたいだが、そんなにいいメスなのか?」
「非常にな」
「はわわわわわ!!」
「ん……」
2人の会話にクルシュはもっと顔が赤くなって丸くなってしまう。そしてヤオは2人のやり取りとクルシュの反応の仕方に呆れて何も言えない。
「こりゃあ、俺が勝ったら解放する前にはぎ取って顔を拝みてぇな」
「ふっ…絶対に負けたくないな」
「むちゃくちゃホレてんだろうな?」
「ああ…むちゃくちゃな」
「うう……」
勝負する前に変なムードになっていくのでヤオは堪忍袋の緒が切れた。
「全く、勝負するなら早くしろ!」
「おっと!そうだったな。あのダークエルフのメス、少し堅そうだからやるか!」
「俺も、すっかり忘れてた。勝ってやるつもりさ」
「勝てるものならなっ!」
最初に動いたのはゼンベルで槍を大きく振るうので、すぐに避けて
「うりゃっ!」
「おっ!」
それでもなんとかゼンベルの手から槍を弾き飛ばして、そのままザリュースの一撃が決まろうとした。だが、何かを切る音がして一度は離れるとザリュースの頬に切り傷が出来ていた。するとヤオは何かに気づく。
[あれはたしか、気で体を強化するアイアン・ナチュラル・ウェポン]
すぐにゼンベルが強化した両手で攻撃しまくるが何とか耐えるザリュース。
「生き残ったか」
「
「言っとくがな。俺は昔、
まるで挑発するかのようにして左手を見せて言う。しかし
「悪いが、あれを使うつもりはない」
「そうかよ…なら、本気を見せろ!」
強化した足で蹴り付けるが避けて
しかし2人の戦いは激しさを増していき、一時間が経つ。ザリュースは体の至る所に傷が、ゼンベルは手足が冷気で凍っていて、2人共かなり体力を消耗している。するとゼンベルは手を上げると
「俺の負けだ!」
「え?」
負けを認めた。これにはヤオは驚くが、ザリュースは体力と傷でその場に座り込む。
「ザリュース!今治癒魔法を」
クルシュはすぐにザリュースに治癒魔法のミドル・キュアウーンズをかけた。するとヤオはゼンベルに近づいて尋ねる。
「其方は彼と互角な勝負をしていたようだが、なぜ降参したのだ?それを聞きたい」
どうやらさっきの勝負で降参した理由を知りたいらしい。
「なんていうかな…アイツの意志が俺以上っていうか…色々とめんどくさそうって感じかな」
「はぁ…」
「まっ、とにかく俺の負けは俺の負けだ!」
変な説明の仕方でヤオは納得出来ないが、ゼンベルはすぐクルシュに手足の治癒を頼む。
それから夜になるとゼンベルの指示で宴会が始まった。
「へ~~~お前さんの森を救う為に、その緑の連中に頼みに行くってのか?」
「その途中で、ザリュースに出会ってここまでな」
ゼンベルにもこれまでの経緯を話すヤオだけど、ここでクルシュが話に入る。
「それで、同盟は?」
「もちろん組むさ。元々、戦いたかったからな!」
「根っからの戦闘狂ね」
「ほめんなよ。照れちまうから♪」
「やれやれ、ほめているんじゃないぞ」
笑い出すゼンベルに呆れてしまう2人。
「んでだ、前の
[そういう事か]
ゼンベルが旅人になった訳を聞いてザリュースは理解する。
「んで、勝てるのか?」
「それは分からないが、相手は油断しているから、そこを上手く使えば」
「どういう事だ?」
「えっと、モンスターの言った言葉を覚えている?」
「すまん…その時寝てた」
大胆なのか鈍感なのか3人は何も言えなかった。
「必死の抵抗を見せよと、奴は言った」
「つまり、その場から見た戦力と兵力で予想し言葉という訳か?」
「なんかむかつくな。初めから下に見ている感じで」
「つまりだ。それだけの兵をそろえている事になる」
怒り出すゼンベルだけど、ザリュースも静かな怒りを見せる。
「だから…奴らの思い上がりを叩き潰す!5部族を集めて、こちらが準備できる最大の力を示す」
「良いね!分かりやすい」
ザリュースの考えに賛成するゼンベルだが、クルシュは少し心配になる。
「ねぇ、ザリュース。避難が難しいと分かってるつもりだけど…たとえ自由が奪われても命があるだけマシだと思います」
「……目の前を見て聞こえるだろ?」
「え?」
クルシュは楽しく飲んだりして騒ぐリザードマンの様子を見る。
「やっと手に入れた平穏を…破壊されてたまるか」
ザリュースの意志が強く戦って勝利する気持ちでいっぱいだと理解するクルシュだった。
「分かった。それでも死なないでね…ザリュース」
「死なないさ。答えを聞くまで」
2人が良いムードになっていて少し居心地が悪そうと感じるヤオとゼンブルだった。
次の日。ゼンブルを連れて
「本当にこの辺りで良いのか?」
「ああ、この川をまっすぐ進めば緑の人達のいるアルヌスと呼ばれる地の、近くの森に着くらしいからな。もし可能であれば、お前達の事も頼んでくる!」
「では、お前達の森が救えることを祈っているぞ」
こうしてヤオは小舟に乗ってザリュース達と別れた。そしてザリュース達も
かなり頑張った気がします。次回はリザードマン篇とアルヌス篇を合わせようと考えています。