OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・ 作:ラルク・シェル
アインズとナーベラルにンフィーレアと漆黒の剣達は、伊丹達陸上自衛隊と遭遇する。
「え~~~と、我々は此処とは違う。別の世界から来ました…そしてこうして、調査をしています…」
ぎこちない喋り方をする伊丹の隣で、魔法使い・
ただし、アインズやナーベラルはちゃんと通訳なしで伊丹の言葉を理解していた。
「では、お尋ねしますが」
するとアインズは手を上げながら質問してきた。
「アナタ達の世界は…一体どういう世界なのですか?」
そんな質問に逆に伊丹は不思議そうに尋ねる。
「あの…なんでそんな質問を?」
「いや別に…ただ本当に別の世界に来たというなら……」
「まぁ、良いけど。それなりに平和な世界で、たしか…平成って時代の2010年くらい」
その言葉にアインズの中で衝撃が走る。
[2010年? たしか…俺が居た年は2138年だった筈…]
アインズがこの世界に転移する前の鈴木悟という人間だった頃の時代は、2138年の環境汚染が問題とされて屋内での娯楽が当たり前となっていた世界だった。
即ち、伊丹達が来たとされる平成23年の2010年は、およそ128年前の過去という事になる。
[だが…考えられるかもしれない。彼らの装備が大昔のものだ!]
じつはアインズ改め鈴木悟が人間だった頃に、ネットで少し過去の自衛隊の事を調べて装備の種類とかを知ったのだ。
[という事は…私か彼らが時間軸のズレた存在なのか……]
「あの、アイ…いや、モモンさん」
「ん?」
深く考え事をしていたアインズだったが、ナーベラルに呼びかけられているのに気付いた。
「あの、なにか考えてたのですか?」
「あ…ああ、少し…」
「そうですか。では、そのカルネ村まで我々も同行しましょう」
「はぁ?」
伊丹の発言についアインズが間の抜けた声を出す。
「あの…すみません、うまく状況が読めないのですが…」
「いえいえ、じつはアナタ方が向かうカルネ村が丁度俺達と同じ道だったので」
「それに炎龍を追っ払った緑の人達なので、色々と話も聞けますし」
「はぁ、たしかにそうですな…」
こうして自衛隊も一緒に行くことになった。
「へ~~~そんな夢が?」
「はい、チーム名もそこからです」
「それにしても、そちらさんも美人揃いですな♪」
「あんまりいやらしい目で見ないでくださいよ」
「まさか、神官様まで一緒とは!」
「ふふふふふ♪なんだか楽しそうだからねぇ♪」
道中楽しく会話を続けながら進んでいった。
しばらくしてアインズと伊丹達は目的のカルネ村に到着する。しかし、村の周りには柵が出来ていた。
「隊長?あの村柵がありますね?」
「随分と用心深い村ってことだな?」
女性自衛隊員の栗林志乃が村の様子に疑問を持つ。
「あ、あれ?」
「どうしました?」
「いや、あんな頑丈そうな柵…前にはなかった筈?」
そしてンフィーレアも村の異変に気付き始めたが、いつのまにか柵の門と周りの草原からゴブリンが現れた。
「なんだっ!」
「ゴブリンだな?」
「おお!なんだ、やる気か!」
「栗林さん、なに興奮してるんですか?」
すぐさま武器を構えるペルテ達と自衛隊員。そしてやる気満々の栗林に富田章が呆れたりする。
[あのゴブリンはまさか…]
だが、アインズはゴブリン達に何かしらの違和感を覚えた。
しかもゴブリン達もまるで戦おうとしない雰囲気で、1体のゴブリンがアインズ達に向かって喋り出した。
「すいやせんが、武装を解除してもらいませんか?」
「とくにそっちのフルプレートと、黒服の女からヤバイ臭いがするんでね」
しかもアインズとロゥリィの実力を見抜いたりする。
「なっ、なんだ?コイツらは…」
「たしかに、ただのゴブリンじゃありませんね?」
ロゥリィやレレイと同じく付いてきたエルフの少女、テュカ・ルナ・マルソーも不審に思う。
「あの、どうしたんですか?」
「おっ!姐さん」
「姐…さん?」
すると1人の少女が別のゴブリンと一緒に門の前にやってくる。
「え、エンリ!」
「ん?あっ、ンフィーレア!」
ンフィーレアが叫ぶとエンリという名の少女も彼の名前を言って返事をした。
「あっ!もしかしてあの娘が!」
「であるな?」
ニニャとダインはなにか理解したようだが、伊丹達は全く理解できずに戸惑っていた。
「え……と、どういう事で?」
「どうやら彼女が、ンフィーレア氏が言っていた親友らしいである」
「へ~~~なるほど」
するとアインズもエンリの顔とゴブリンではっきりと理解した。
[そうか、やはりあの角笛のゴブリン達か!そして彼女の言ってた知り合いが…]
アインズがカルネ村で最初に救った村人が、エンリ・エモットと妹のネム・エモット。その時にマジックアイテム・小鬼将軍の角笛を渡して、魔法詠唱者の知り合いがいると話してくれた。その魔法使いがンフィーレアだった。
「あの、すみませんが…良いですか?」
そこに伊丹が割り込んできた。
「アナタは…?」
「この人は緑の人達のリーダーみたいなんだ」
「緑の人って、あの炎龍を倒した!」
「ええ、そうですね…んで、良いかな…村に入って?」
そして伊丹達も少しの間カルネ村で一息つく事になった。さっそく伊丹とレレイと桑原惣一郎が村長にそれぞれの事を話したりする。
「なるほど、スレイン法国に襲われたのですか」
「良くご無事で」
「それはあるお方のおかげですよ」
「あるお方?」
村長は話を続けた。
「そのお方は、ある地の魔法使いで少々世間知らずのようでしたが、魔法は第4位階か第5位階を超えると思われます」
「第5位階!?」
その言葉にレレイは驚く。
「なぁ、レレイ。前から思ってたんだが、その位階ってなんだ?」
伊丹は位階という意味についた尋ねた。
「簡単に言えば魔法の引き継ぎ。一般的には精霊魔法を含めた魔法を扱えるのは第1位階から第3位階まで、それからの第4位階から第5位階は天才か個人の限界となっていて、第6位階は伝説になっているの」
レレイの真剣な説明に伊丹と桑原はなんとか付いていけた。
「で…では、その人の名前は?」
「はい、なんでもアインズ・ウール・ゴウンと名乗ってました」
「アインズ……ウール・ゴウン?」
その頃、テュカとロゥリィと栗林は村人がゴブリン達に剣や弓矢の特訓の様子を見ていた。
「熱心ですね…」
「そりゃ、また村が襲われても大丈夫なようにねぇ」
「しかしまさかゴブリンが人を助けるなんて、信じられないね」
すると話が終わったのかレレイがやってきた。
「あっ!レレイ」
「レレイ、どうだったの?」
3人はレレイにどんな話だったのか聞いてみた。
「うん、この村はアインズ・ウール・ゴウンっていう人が救ったって」
「アインズ・ウール・ゴウン?どんな人なの?」
「それは分からないみたい。仮面をかぶっていたみたいだけど、どうやら第5位階を超えた魔法を使えたみたいなの」
「「第5位階を超えた!?」
テュカとロゥリィも先程のレレイ同様に驚いた。
「それって凄いの?」
「凄いのなんのって限界の域ですよ!」
「アインズ・ウール・ゴウン…一度会ってみたいわねぇ…」
アインズという存在に興味を持ったロゥリィだったが、当の本人が近くにいることなど気付かずにいた。
[やれやれ、早くも話題になったか]
「モモンさん!」
「む?」
ンフィーレアが走ってアインズとナーベラルの所にやってきた。
「どうした」
「あの!モモンさんって、アインズ・ウール・ゴウンさんなのですか!?」
「なっ!?」
自分の名を当てられて少し驚いてしまった。
「ありがとうございました!村を救ってくれて」
そのままンフィーレアはお礼を言い始めた。しかし面倒な事になるかもしれないので否定しようとする。
「違う!私は」
「名前を隠されてるのは、何かの理由がありますよね。ですが、この村を!僕の大切な人を救ってくれて…ありがとうございました!」
さすがのアインズもこの状況ではお手上げのようだった。
「それで、ゴウンさんに隠していた事があったんです」
それはンフィーレアの依頼の理由の事だった。この前、アインズが宿屋でブリタという女冒険者のポーションをダメにした事で、赤いポーションを渡したことから始まった。不思議に思いンフィーレアの祖母のリィジー・バレアレにポーションを調べて貰ったら、通常の製法では決して出来ない希少なものだった。だからその製法と持ち主が知りたくて依頼したのだった。
「なるほどな…だがここでは私はモモンという冒険者だ! アインズという名は誰にも言っていないのなら嬉しいが?」
「はい、誰にも言ってません!それでもエンリを救ってくれて、ありがとうございました!」
再び頭を下げてお礼を言うンフィーレアはこの場から去った。
これからはオリジナルのマジックアイテムを出しますし、また全く違った話の進み方になるかもしれません。たとえば、シャルティア暴走が東京帰還の後になるかもしれませんので理解してください。
そして次回は自衛隊と一緒に森の賢王=ハムスケ探しになるかもしれません。