OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・   作:ラルク・シェル

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アインズの黒い歴史

アインズはシャルティアの洗脳を解こうとしたが失敗して一度撤退する。しかし伊丹達は未だにシャルティアの見張りという名の監視を続けた。

 

「未だに動く気配なし…か?」

「そうですね…」

 

伊丹は全然動こうとしないシャルティアの見張りを続けたのか、暇になって思わず欠伸をしてしまうのだった。

 

「はいはい、文句言わないの!ほら、隊長の食事ですよ」

「おっ、サンキュー」

 

栗林からレトルトカレーを渡されたので夕食に入る伊丹。テュカや富田達もパンやレトルトカレーやカップ麺を食べていた。

 

「あの…」

「え?」

 

するといつのまにか伊丹達の前に愛用の魔銃と、日本でナーベラルからお土産で貰ったライフルを装備したシズが現れた。

 

「え…と…君は?」

「どうも……私はCZ2128・Δ…シズ・デルタで」

「はぁ、もしかしてアインズさんの?」

「うん…万が一の為に」

 

シズが全員に挨拶するとレレイが近づいてきてジロジロし観察し始める。

 

「アナタ、もしかして人形?」

「うん……自動人形…」

 

レレイの質問にすんなりと答えるシズであった。

 

「自動人形ってロボットか?」

「そう言える」

「ねぇ、ろぼっとってなに?」

「つまり、ゴーレムみたいなのかな?」

 

全員はシズに興味を持ち始めるのだった。

 

「へ~~~動くお人形さんなのねぇ」

「あっ、この武器って」

「アインズ様とナーベラルが……お土産でくれた」

「武器がお土産ですか?」

「とりあえず、座りましょうよ」

「うん」

 

シャルティアの見張り中だけども、いきなり歓迎ムードに包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ナザリックではアインズがアルベドとユリを連れてある場所に来た。そこはナザリックの宝物殿で山のような金貨と宝石があった。じつはアインズが地球に持ってきて、高値で売れた宝石はここから持ってきたのだ。

 

「ここが、ナザリックの宝物殿ですか?」

「そうだ。しかも宝物殿のこの辺りは侵入者を撃退する為の猛毒が散布されている」

「ですからボク…いえ、デュラハンの私をお選びに?」

「その通りだ」

 

アインズ達は真っ黒な壁の前に立つ。この壁の先がナザリックの武器庫に続くのだが、あんまり行ってなかったのでパスワードを忘れていたのだ。

 

「まず合言葉は、アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!」

 

ヒントの合言葉を言った途端、ラテン語の文章が出てきた。

 

[ラテン語がヒントか?あんまり行ってなかったからな…]

 

これをヒントにアインズはそりなりにパスワードを思い出す。

 

「ええ~~~たしか…“かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう”…だったかな?」

 

少し不安だったが、黒い壁が消えて扉が現れた。さっそく3人は扉を開いて武器が並べている通路を進みながら、辿り着いたのは応接室みたいな部屋だった。

 

「この先は霊廟だ」

「霊廟…で、ございますか?」

「霊廟を知らない…では、パンドラズ・アクターは知っているか?」

「実際会ってませんが、それなりに知っています。宝物殿の領域守護者にして、私やデミウルゴス達と同等の力を持つ。そして…」

 

その時、アルベドからなにやら殺気が漂い始めた。

 

「アインズ様自ら創造されたとか!!」

「あ…まぁな」

 

少し引いてしまうアインズだが、3人の前に何者かが現れた。それは軟体生物のような頭部に、まるでボンテージのような衣装を着込んだ魔物。するとアルベドは驚いた表情になってしまう。

 

「そんな…タっ、タブラ・スマラグディナ様!?」

 

なぜならこの魔物はアルベドの製作者で至高の四十一人の1人、タブラ・スマラグディナであった。だが、すぐに偽者だと気づく。

 

「違う!何者!?たとえ姿と気配を真似ようとも、創造してくださった御方を間違えることなど!!」

 

アルベドとユリはすぐ構えながらも偽タブラに尋ねるが答える気配はない。

 

「そう…では殺せ!」

「待て」

「「え?!」」

 

偽タブラに攻撃をしようとする2人を止めるアインズ。そしてアインズが偽タブラに近づいてこう言う。

 

「元に戻れ、パンドラズ・アクター」

 

突然偽タブラが溶け始めると別の姿に変わっていく。

 

「ようこそ、御出で頂きましたね」

 

そして黄色の柄をしたナチス親衛隊制服を着込んで、顔はまるで埴輪のような目と口だけのドッペルゲンガーになって敬礼した。

 

「私の創造主である、モモンガ様!」

 

これこそがアインズが作ったNPCのパンドラズ・アクター。するとアインズはなんだか少し恥ずかしそうになる。

 

「お…お前も元気そうだな?」

「はい、元気にやっております!それでどんな御用?」

ワールド(世界級)アイテムを取りに来た」

「おお!ワールド(世界級)アイテム…世界を変える!強大な力…至高の御方達の偉大さの証。切り札とされるアイテムをご使用の時なのですか!?」

 

なんとも大袈裟なアクションとウザいくらいに喋るパンドラズに、もっと恥ずかしくなってしまうアインズ。かつてアインズがカッコいいという理由で設定したため、本当の意味でパンドラ(黒歴史)という形になっていた。

 

[うわぁ…改めて見るとダサいわぁ…!]

 

その為、それを目の当たりにしたアインズはかなり心にダメージを受けてしまう。後ろのアルベドとユリも少し引いた目をする。しかしすぐに本題に入る。

 

「ああ、強欲と無欲とヒュギエリアの杯と幾億の刃と山河社稷図を持っていこうとな」

「なるほど…了解しました」

「それから私の名は今後、アインズ・ウール・ゴウンだ」

「おおっ!こちらも承りました…我が創造主のアインズ様!!」

[止めてくれよ…マジで……]

 

ますます自分のセンスや黒歴史に羞恥心を痛めるアインズであった。それでもなんとか切り替える。

 

「では、行くぞ。これからも宝物殿の警備を頼む」

「行ってらっしゃいませ、アインズ様。そしてお嬢様方」

「お嬢様?」

 

するとパンドラズにお嬢様呼ばわりされたのが気に入らなかったのか、アルベドとユリは再び敵意ある目で睨んできた。

 

「おっと、申し訳ありません。お美しいのでつい言葉を誤りました」

 

また変にカッコつけながらも2人に謝罪するが、ついに我慢していたアインズの限界であり。

 

「パンドラズ…ちょっとこっちで…」

「はい!なにか?」

 

アインズはパンドラズを連れて部屋の端に行くと、そのまま顔を近づけてこう言った。

 

「私…いや、俺はお前の創造主なのは分かってるだろ?」

「はいっ!当然、分かっておりますが?」

「そうだよな?お前の忠儀を一身しているよな?」

「ええ、それも分かっていますが?」

「だったら主人の命令でも頼みでもいいから!敬礼は止めないか?」

「ええ?」

 

設定した以上変えることが出来ないと分かっているので、せめてパンドラズには敬礼だけはしなくも良いと命令した。

 

「でも…それはアインズ様が、この軍服も含めてカッコいいと?」

「たしかにそうだけど…今はもう変わったから!」

 

念入りに命令というより頼んでくるアインズに、パンドラズもそれには応じなければとして

 

Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!」

「ドイツ語もやめろ!」

「あ…はい」

 

ドイツ語で返事するがそれも却下された。これはかつてハムスケに乗った時以来に恥ずかしい思いをするアインズだった。

なにはともあれ、さっそく霊廟に行こうとする。

 

「そうだ、アルベド。お前に与えた、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをパンドラズ・アクターに預けておけ」

「え…」

「この先に指輪を着けて入ると、ゴーレムに襲われて大変だからな」

「そんな…」

「そしてユリはここに残れ」

「はい」

 

アルベドは仕方なく指に着けたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをパンドラズに預けて、ユリを置いて2人で霊廟に入った。

そこには異形な魔物の姿をかたどった像・ゴーレムが飾られていた。

 

「これは、至高の御方達の?」

「良く気が付いたな?これはかつての仲間達を模ったのだが、不格好だろ?」

「そんな事はございません!ですが、霊廟という名や像といい…もしや、至高の御方々はお亡くなりに?」

「…正解かもしれないな?」

 

返事をするアインズだったけども、本当は仕事や家庭の事情や飽きたという理由で、他のメンバーは装備とアイテムを置いて引退した。しかしそれはアインズにとっては亡くなったという事になっていた。

 

[みんな…本当に亡くなっているかもしれないけど、この世界にいると思いたい]

 

するとアインズは気分転換にと思って、像のない空白の席に指を刺して説明する。

 

「じつはな。あの空白の席には、私の像が置かれる予定なのだよ」

 

その言葉にアルベドは悲しそうな声でアインズに向けて口を出した。

 

「そ…そのような事は…言わないでください!!」

 

アルベドの目からは薄っすらと涙が出ていた。まるで大切な人と別れたくないという気持ちが詰まったような表情で。

 

「アインズ様。最後までお残りになられた慈悲深き御方…いつまでも私共の上に君臨してくださいまよう…心よりお願いいたします!!」

 

泣きながらアルベドが土下座するかのように、頭を垂らしてアインズにお願いする。ただ自分がふざけ半分に書き換えた設定だが、それがここまで真剣とは思いもよらなかった。

アインズはすぐさまアルベドの顔を起こして涙を拭く。

 

「許せ」

 

そして悲しい思いをさせたアルベドに謝罪すると、再びアインズにお願いし始める。

 

「アインズ様…お約束してください。私達をお捨てになって、この地を離れないと…」

「すまんな、しかし」

「どうして?なぜ約束してくれないのですか!?一体何が不満なのですか!?ならば私はこの場で自害を!!」

「違う!!」

 

なんとかアルベドを落ち着かせるとアインズはこれからどうするのか話し出した。

 

「シャルティアの精神支配しているのが、恐らくワールド(世界級)アイテムだ。同じくワールド(世界級)アイテムを所持しなければならないと」

「ですから、このワールド(世界級)アイテムを?」

「そうだ。だが、それらは守護者達に」

「え?」

ワールド(世界級)アイテムの中でも、“二十”と呼ばれる破格のアイテムがあればな。しかしこの世界にどのような脅威があるのが分からんからな」

 

その為、むやみにワールド(世界級)アイテムを使うのは危険というのだ。仮に自衛隊の伊丹とは親友同士になったとはいえ、それでもワールド(世界級)アイテムの使用は危険という訳だから。しかも“二十”は使い捨てな為、一回しか出来ないとされている。

 

「だからアルベド…私は1人でシャルティアと戦う」

「はっ!!」

「もしかしたら生きて帰れないかもしれない…」

「シャルティアと戦うのはよく分かりました。ならこそ、我らも一緒に戦いますので!数で押せばなんとか!」

「悪いが出来ない…理由が3つもあるからな」

 

アインズが1人でシャルティアと戦う3つの理由。

1つ目はアインズ自身が本当に主人として相応しいのか疑問という事。2つ目はシャルティアが1人でいるからと言って罠とかがある可能性が高い。そして3つ目はアインズがこの手でシャルティアを倒す為であった。

 

「お前も知っているだろう?シャルティアの戦闘力はナザリック1…一騎打ちならば私しかいない」

「たしかに…そうですけど」

「そしてなにより…」

 

アインズはバードマンをモチーフにした像を見つめる。

 

[ペロロンチーノさん…]

 

この像のモデルになったペロロンチーノがシャルティアの製作者。

エロゲーを愛するオタクで、アインズとは良く相談し合ったりしている仲であった。そしてアウラとマーレの製作者のぶくぶく茶釜は彼の姉で頭が上がらないらしい。

 

「分かりました…ならば」

 

するとさっきまで涙を流したアルベドの目は、決意に満ちた目になってこう約束した。

 

「必ず生きて帰ってください!!」

「約束しよう…私はシャルティアを倒して、必ずここに戻ってくると!!」

 

洗脳されたシャルティアを倒す為と、アインズも強く決意して約束した。




ついに違う意味でアインズの弱点のパンドラズ・アクターが登場。そしてシズも伊丹達と仲良くしています。
次回は本気のアインズとシャルティアの戦いをやります。

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