OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・ 作:ラルク・シェル
アインズ達が日本に来て3日目の朝。
全員が目を覚ましてテレビを見ると、緊急放送が流れていた。内容は、入院していた総理大臣が辞意表明したというもの。
「ありゃ、やっぱりこうなるだろうと思った」
伊丹がこのニュースを見て、既に分かっていたかのような口振りをする。
「というと…?」
「だって…突然銀座に現れた兵隊に、ゲートに突入した自衛隊と、さらにそのゲートからやって来たテュカやアインズさん達。これだけの騒動に総理もきっと体を壊してると思うだろ?」
「たしかに、そしてそんなプレッシャーやストレスに耐えきれなくて辞任か…」
首相辞任の理由を理解したアインズは再びニュースを目にする。今度はゲートのある銀座の様子であったが、テレビからも分かるかのようにたくさんの人集りとなっていた。
「なんだか、たくさん集まっているみたいですが…これは一体?」
「もしかしてお祭りって奴ですかね?」
「違うな…これは恐らく」
丁度その時、テュカとレレイと葵が大量の花束を持って帰って来た。
「今、帰ったわよ…」
「ほら!こんなに綺麗な花をたくさん買ってきたよ♪」
「おっ、そうか。じゃあ、俺達も行くかな」
さっそくアインズがテレビに映った場所にゲートを繋げた。すると葵は伊丹に話しかける。
「ねぇ、次はいつ頃戻ってこれるの?」
「分かんねぇな。でも、年末には休暇を取れるようにしてみるけど…それよりも借金を返せよな!」
「うん、分かってるって」
「元気でな」
まるで二度と帰ってこないようなセリフを言いながらも、伊丹はアインズの開けたゲートを通る。
それを葵はただ見守るしかできなかった。
その頃、銀座の近く。そこは今、ニュースで見たとおりに大量の人でいっぱいなのが分かる。ほとんどが銀座事件の遺族やテュカやロゥリィは勿論、アインズ達の姿を間近で見たい人達で溢れかえっていた。当然テレビ局も動いていて、さらに各国のスパイも待機している。
「ん?おい、これ?」
「え?」
するといきなり道の真ん中にゲートが展開すると、アインズ達と伊丹達が先程買った花束を持って現れた。周りの集まった通行人は驚きを隠せずにいて写メを撮る程に。
そしてロゥリィは通行人にまとめてこう発言する。
「ねぇ、私達…銀座まで通りたいんだけどぉ?」
ロゥリィがお願いした途端、ぎゅうぎゅう詰めだった道がいっせいに開き。綺麗な一本の道が出来上がった。
さっそくアインズ達がまっすぐ銀座まで歩き出した。
「これはまさしく、支配者にふさわしい扱いと言えるでしょうね」
「ああ、そうだな」
とりあえず返事を返したアインズ。だが、その時いきなりアインズの前に1人の男が、十字架とナイフを持って現れた。
「「ふん!」」
「あぅっ!」
しかしアルベドとナーベラルのダブルアッパーでノックアウト。そして警護していた機動隊が男を取り押さえる。すると男は先程のアッパーが効いたのか、顎に強い痛みを感じながらも口を開いた。
「うぐぐぐ、貴様らのような異端の化け物を野晴らしには…」
「い…異端?」
「多分、どっかの宗教の信者でアナタ達の存在が危険だと感じたのでしょ」
「そうか…」
伊丹の話を聞いたらアインズは男が持っていたバックに手を付ける。開けて中を見てみると、水の入った瓶と草と石が入っていた。そこで少し尋ねてみた。
「これはなんだ?」
「貴様のような悪しき化け物を抹殺する為に、我らの教祖が用意してくれた聖水と霊草と霊石さ!」
質問に答えながら男は機動隊に連行された。
「昨日のもそうだが、この聖水は完璧に偽物だな?この霊草もハーブだし、この霊石もただの石ころだ」
アインズは男が持ってきた装備が昨日の工作員が持ってきたものより、かなり粗悪品だと理解しながらも機動隊に渡す。そんなトラブルがありながらも、なんとか慰霊碑に持ってきた花束を置いた犠牲者にお祈りをする。
「なぜ、我々が下等生物共に」
「アルベド様の言う通りです」
「は~~~」
相変わらずのアルベドとナーベラルにアインズはため息を吐く。その時、栗林は取材に来たニュースキャスターが妹の菜々美だと気づいて近づいた。
「菜々美?なにやってるの」
「なにってテレビの中継!お姉ちゃんこそ?」
「ちょっと休暇。それよりも私、早く特地に帰らなきゃ!」
「え?ちょっと、なんで?」
「だって私達、なんかアメリカか中国かロシアに狙われてるみたいだから」
カメラの前で自分達が3ヶ国に狙われていると告白する栗林。それによって作戦が大きく失敗しアメリカ大統領のディレルは悔しさのあまり癇癪を起し、ロシア大統領のジェガノフは日本に対して賞賛し、中国の国家主席の董徳愁は悔しそうになりながらもスパイの撤収を指揮する。
「じゃあ、年末には戻ってくるね♪」
「あっ、ちょっと待って!?」
栗林がみんなの所に戻ろうとした途端に、丁度銀座名物の和光本館の鐘が鳴り響いた。被害者の祈りが終わり、さっそくゲートに行こうとしたその時。
「「「「「アルベドォォォ!!」」」」」
「ん?」
「「「「「テュカ!テュカ!テュカ!」」」」」
「え?」
「「「「「レレィ!レレイ!レレイ!」」」」」
「「「「「ロゥリィ!ロゥリィ!ロゥリィ!」」」」」
「「「「「ナァァァァーベラル!!!」」」」」
「「「「「アウラ!アウラ!アウラ!」」」」」
「「「「「マーレ!マーレ!マーレ!」」」」」
いきなり集まった通行人たちがいっせいにしてこの7人の声を大きく叫びながら見送った。まるでアイドルかオリンピック選手の声援みたいだった。
当然、戸惑ったりしたがなんとか無事にゲートを通ることが出来た。
[やれやれ、なんだか彼らがアイドルみたいだな?]
特地に戻ってきたアインズはナーベラル達を見ながらも少し苦笑いをする。そしてアインズはゲートを展開する。
「では、我々はこれで」
「あれ?もう帰っちゃうの?」
「はい…我々も忙しいですので」
「そうですか。もしなにかあったら」
「はい、その時には」
嫉妬マスクを外し素顔をさらしたアインズと伊丹が握手をする。それからナーベラル達も栗林達にお別れをする。
「本来なら下等生物相手に握手なんてしたくないけど、アインズ様がやっているならば」
「あはははは…」
「はいはい、分かってますよ」
なんとなくアルベドの性格を理解した栗林と富田だった。
「じゃあね、2人共。また会おうね」
「もちろんだよ!今度はアタシのペットを紹介するね!」
「本当に…お世話になりました」
「いや、こちらこそ」
「うふふふふふ、また着せ替えをしましょうねぇ」
アウラとマーレはすっかりティカとレレイとロゥリィと仲良くなってた。
「では、これを」
「良いのか?」
「ええ、既に我らが気に入ったのはここに」
「そうですか…ではありがたく」
なぜかナーベラルはピニャとボーゼスが葵の所から持っては来た、BL同人誌を譲り受けた。じつはナーベラルもBL物に興味を持っていたのだ。
そして最初にアルベド達をゲートで送って、アインズは伊丹達の前で頭を下げる。
「この度は、日本に招き入りて感謝する」
「いやいや…こっちこそ色々と助かりましたから」
「それもそうですね」
アインズもゲートに入って一度伊丹達と別れた。
無事にナザリックに戻ってきたアインズは、まずマジックアイテムを開いてそれぞれの手に入れたお土産を仕分けする。それが終わったら普段着のローブ姿になって自室に腰を下ろした。
「ふ~~~私は本当に日本に来て過ごしていたのだな?」
未だに自分が日本に3日間もいた事を改めて自覚するアインズ。それから日本で大人買いしてきたマンガを読もうとした時。
「アインズ様、お帰りなさいませ」
するとそこにデミウルゴスはなぜか少し浮かない顔でやって来た。
「どうしたデミウルゴス?なにかあったのか?」
「じつは…」
「なんだ?早く言ってみろ」
「シャルティアが反逆を起こしました」
「……え?」
それはあまりにも突然すぎて理解できなくなる程の事だった。
ついにアインズ一行の日本観光が終了しました。
次回はついにシャルティア編に入ります。当然、伊丹達も出すつもりですのでご期待を!