鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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対峙

 

あの後、時間は潰れ 6時になった。

礼を言った後、交代式が終わった門番2人に酒瓶を届けさっさと寝た。

ちなみに寝床だが、あいつら5人は自衛官と同じ寮だが、俺は野宿だ。

場所は鎮守府内のどこか……長年施設内で寝ることがほとんど無かったからかこっちの方がよく寝れる

そもそも寝ること自体が珍しい。

だが、流石に疲れが溜まったのか眠かった……誰にも場所を教えないのも習慣だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は久しぶりに話す気がする

いや、数時間くらい前まで話をしていたはずだが。

……まあいい。

ここ一週間は時間がとても長く感じた。

……あんなに様々な事があれば、まあ 長くも感じる。

時刻は20:00時

鳳翔との作業で最低限以上の作業まで終わらせた。

彼女は今、自身の居酒屋“鳳翔”をやり始めたところだ。

 

 

ー今の状況を頭で整理するー

 

今日からスネークによる訓練が始まった。

衛生科からの話だと訓練後の隊員の状態だが、誰も関節や骨を痛めておらず

明日も訓練は可能だという。

……ドクターストップをかけたのは全員が気絶したからだそうだが。

しかし、今日来た彼の部下いわく

 

「BOSSの訓練はキツイです 気絶するのも当然です。しかし、怪我をさせるような事はしません。

もし、BOSSが怪我をさせたなら訓練ではなくそれは、“指導”です」

 

だという

彼らも明日から指導に入る。

あの様子だと、ここにいる隊員は1カ月あれば前より良くなるらしい。

1人だけ技術屋だったので彼には明日から工廠の出入りを自由にした、

すでに夕張にも話は通してある。

 

 

 

……しかし、大本営からの読みにくいものが来た。

 

 

 

その内容も厄介だった

 

「・・・ふぅ」

 

溜息をつく。

 

3日前、第一艦隊が帰ってきた

……いろいろと面倒は起きたがすぐに出撃させ、明日の朝 帰ってくる。

特殊な任務だがコレは・・・幸いなことに発動まで時間を取るらしい

その時までには彼らがいる状態も馴染んでいるだろう

 

今のところ、問題は発生していない。

この一週間のうちは問題が発生したが、全て解決している。

……書類はマシになっただけで焼却処分をしたい、実際鳳翔と仕分けたところ半分以上が

「プールをください」「食事量を増やして欲しいです」という、彼女達からの改善要望書(?)だった。

 

……メモを作って本人達に口頭で話した方が早いな

 

今にして考えてみるとそうだ、量は多いが全てに返答の書類を書くよりその方が良い。

今日徹夜すればできるだろう、さっそく取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

眼が覚める

そうは言っても時刻は04:32 まだ朝日は昇らない。

辺りはまだ暗い。

とりあえず寝床を片ずけ鎮守府を歩く事にする。

念のため暗視ゴーグルを持っていく……もうすぐ夜明けだが、邪魔でも無い

そう思いながら、気の向く方に歩く。工廠の方は明るい。あそこは常に何かしら作業をするらしい

……実際、うちの研究開発班の連中も常に作業していた。

今日来た中にも開発班の奴がいた、近いうちにスプレーを作ってもらった方がいい。

あの2人がしつこくなる前に済ませたい。

 

そう思っていると意外な人物に遭遇した

 

「あら、どうしたんです?」

 

鳳翔だ

 

いつの間にか“鳳翔”に来ていたらしい。

……何故ここにいる?

 

「もう お店は閉めましたよ?」

 

「この時間から呑んだり 食べたりはしない……何故ここにいる?」

 

「ふふ、なんでだと思います?」

 

もうすでに、

いや、とっくに店は閉めているはずだ。

顔を見てみると額が赤い……どうやら寝ていたらしい

 

「俺みたいに、理由もなく歩いているわけでは無さそうだしな……」

 

「そうですか?」

 

それはそうだ。

こんな時間に何故わざわざ起きて、ここにいる?

 

「……誰か帰ってくるのか」

 

「ええ、その通りです。 第一艦隊の娘達がやっと帰ってくるんです」

 

「……そうか」

 

第一艦隊の艦娘達とは会っている。

初見に、色々と問題があり争いはしたが……

 

「でも大丈夫ですよ、彼女達には私から事情を説明しましたから」

 

「ああ、あの時は助かった」

 

「いいえ、いいんですよ」

 

詳しいことを話すには……少しやる気がない。

2人で海の方に向かって歩く。

 

「しかし、すぐに出撃になったな。疲れは無いのか?」

 

普通、出撃したら少しでも時間を取らせ休息はさせる。

それをしなかったわけでは無いだろうが、帰ってきたその日に出撃させるのは戦争でもない限り異常だ。

 

「いいえ、私たちはお腹も空きますし眠くもなります。もちろん、疲れも感じます。

確かに、普通の人とは私たちは違います。しかしそれは海の上でだけです。丘では私たちは少し丈夫なだけなんですよ」

 

「……血も流すのか?」

 

「ええ、もちろんです」

 

「……提督も辛いだろうな」

 

「何でです?」

 

彼女は聞く。

そう思うのは初めてあの提督に会った時から感じたことだ。

 

「……やつの目に、悔いの念が強く出たことがある。出来れば自分で出撃したいタイプだな」

 

「……何故、そう思うんです?」

 

一呼吸置いて、鳳翔は聞いた……俺はあの目を知っている。

 

「……俺や 俺の仲間がそうだからだ」

 

俺や俺の仲間達がそう思っていた。

 

「そうですか」

 

 

横を見ると

 

彼女は 笑っていた

 

……すぐに前を見る

 

 

「来たみたいだな」

 

「え?…………あぁ、本当ですね」

 

映画のように 第一艦隊の6人の艦娘達は昇り始めた朝日を背に浴びて港湾の入り口に入って来た

 

「おかえりなさーい!」

 

鳳翔は手を振る、同じように6人も手を振り返していた。

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

「……あなたですか、何の用ですか?」

 

随分と冷たい艦娘は 加賀だ

初めて会った時、いろいろと誤解され攻撃をされた。

……まだ それだけなら良かったんだが、やり方が奇襲だった。

おかげで 手加減せずに————報復してしまった。

 

「加賀、ダメですよ。何ですか その態度は?」

 

「鳳翔さんの言う通りですよ、加賀さん」

 

そして 鳳翔とともに加賀をなだめている(はず)の艦娘が 赤城だ。

彼女達 2人は一航戦と呼ばれ、空母の中で実績・実力が一番あるという。

……まあ、強いのはよくわかっている

 

「第一艦隊、ただいま帰投しましたー……あ どうも」

 

「 鳳翔さんただいまー。あれ 提督じゃないや」

 

挨拶をしたのは 蒼龍

提督と勘違いしたのは 飛竜

この2人も、赤城 加賀と同じように二航戦と呼ばれる空母、航空戦力の主力だそうだ。

そういえば、弓道場で会ったあの姉妹も五航戦とか言っていた。

 

「帰ったぞ! あ 鳳翔さん、後で呑ませてくれ。提督も………じゃない!?」

 

「あ……」

 

元気が良いのは、那智

人見知りらしく、律儀に頭を下げたのは羽黒

この2人は重巡洋艦だ。

……提督が言うには武術に長けている姉妹らしい

 

「……そこまで俺は提督に似ているか?」

 

「それはない。だが、朝日を背に人を見ても顔は見えない」

 

「つまり、あの提督はいつも帰ってくるとここにいるのか?」

 

「あ、いえ…その……提督だけ、なので……もし、いるなら」

 

そもそも彼女達が帰ってくる時刻を知っているのは提督以外なら 秘書ぐらいなのだろう。

そう考えていると加賀が俺に聞く

 

「で、何故ここにあなたがいるのですか?」

 

「ん? いや、目が覚めた、歩いていたら鳳翔に会った、話していたらここに来て、お前達がちょうど

帰ってきた」

 

「………本当ですか?」

 

なぜか、俺を睨みながら聞いてきた。

……別に何もしていないんだが

 

「ええ、そうですよ」

 

鳳翔が微笑んで答える。

…… 前も思ったが、彼女は空母の娘達にとって 艦娘にとって母親のような存在らしい。

 

「では 皆さん、ケガも無いようですし まずは提督に報告しましょう」

 

『はい!』

 

第一艦隊の全員が艤装を下ろし終わり返事をする。

俺もそろそろこの場を離れるか……

 

「あ、スネークさんも来て下さい。」

 

俺の名前が呼ばれた。

……昨日、あいつら何かやらかしたか?

 

「……何故、俺も?」

 

「事前に提督から言われていましたから」

 

「つまり、提督が俺に用があるんだな」

 

なら、行くしか無い……厄介事はごめんだが

 

「では 皆さん、改めて 提督に報告しましょう」

 

『はい』

 

全員が提督室に向かう

 

 

 

 

「 失礼します 第一艦隊が帰投しました 」

 

「んあ、ああ入れ」

 

眠そうな声だ、徹夜か?

そう思ったが、鳳翔がドアを開ける

 

「失礼します」

 

そう言って7人が一礼してから入る

俺は最後に「失礼する」と言ってから入った

 

「ん? ああ、スネークか」

 

なぜいるんだ?と顔が言っている

 

「……鳳翔と一緒に迎いに行くことになってな、ついでに用があると聞いて来たんだが」

 

「…ああ、その通りだ」

 

「失礼ですが提督」

 

加賀が発言する

 

「このまま彼がいる状態で帰還報告をしてもよろしいですか?」

 

「……俺が邪魔なら一旦外に出るが?」

 

それはそうだ。

ここは鎮守府、任務も国が絡んだ極秘事項であってもおかしくはない。

極秘でなくとも第三者に聞かれたいものではない

 

「いや、構わない」

 

……これには俺も驚いた

他の艦娘も同じく驚いた顔をしている

しかし、鳳翔だけはいつも通りの優しい顔だ

 

「……わかりました」

 

そう言って加賀が報告を始めた。

 

 

 

内容は大した事は無かった

他の鎮守府からの艦隊と合流後

南西海域で戦闘、その後帰投したという

最も大した内容なら提督も俺を外させるはずだ。いや、外させる

 

「ご苦労だった。怪我がなくて何よりだ」

 

「ええ、小破も出ませんでした」

 

「……さて本題だ」

 

そう言って俺を見る。

むしろ俺が本題なのか……厄介事はごめんなんだが

 

「艦隊の帰還報告より俺が重要か」

 

どうやら、その艦隊の面々も同じ気分らしい

この前見たような逮捕劇ではないが、気味の悪い雰囲気がかすかに感じる

 

「ああ重要だ、結構な」

 

その雰囲気を提督の貫禄ある声が亡き物にする

一瞬にして今度はその提督に疑問の視線が向けられる

……ただ1人、秘書を除いて

 

「そうか。で、その内容ってのは?」

 

「提督としての依頼、いや命令だ」

 

どうやら任務らしい。

 

「ここに提督として命令する

スネークとその仲間の鎮守府着任を祝い 第一艦隊旗艦 加賀に

スネークとその部下との 交流戦を命じる 以上」

 

 

 

……一波乱あるな、これは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命令書を読んだ後、スネークと加賀に 睨まれる。

まあ スネークはいい、単なる疑問を目で訴えているだけだ。

加賀のは 答え次第では殺されかれない視線で 俺の次の発言を待っている。

正に 蛇に睨まれた状態だ、しかも二匹…………想定済みだがな。

 

「まあ、疑問を持つのは当然だ。まずは話を聞いてくれ

まず理由だ。

これに関してはシンプルだ、この前の衝突の原因は私にある。

あの時は、鳳翔のおかげでどうにかなったが 未だに加賀はスネークを嫌っている……違うか?」

 

加賀の目を見る

 

「……ええ。嫌っている というより苦手です」

 

加賀にはストレートに物事を話した方が理解してくれる

本人も正直に返す

 

「要するにその解消だ。

これからは、当分スネーク達に指導をしてもらう。

だが、我が鎮守府のエースである 第一艦隊旗艦の加賀がスネークを嫌っているとなると、

それは士気に関わる。しかし、単なる歓迎会で加賀がそれを解消できるとは思えない。

そんなことで注意力が低下して轟沈されたら俺は自分で死ぬ」

 

オーバーな表現に思われるかもしれないが、私の気持ちはその通りだ。

そんなことで彼女達が沈んだら生きていられない

 

「……わかりました、それが提督のお考えなら」

 

まずは、説得できた。

一番の問題点はここだった。

ここで加賀が納得してくれなければ先には進めない

 

「……加賀以外も納得してくれたか?」

 

念のため確認する。

赤城・蒼龍・飛竜・那智・羽黒 は頷いた。

鳳翔は元から聞いていたが、笑顔で返してきた。

 

「質問いいか?」

 

次はスネークだ。

彼女達が一斉に不安そうな顔をする。

 

「いや、このような機会を設けてくれた事に感謝する。もちろん俺も納得した。

俺も気まずいのは勘弁だ。だがな—–」

 

「どうやって交流戦を行うか だな?」

 

「そうだ」

 

スネークの言葉に全員 予想外だったらしい

確かにどのようにして 交流戦を行うかは命令書に書いていないし

そもそもどうすればいいのか すぐに出てくるはずがない

 

「で、どうするんだ?」

 

それについてはメモを作った後、考えた

 

「簡単だ、今から話し合いをここでしてもらう。その方が 私が勝手に決めるよりいいだろう?」

 

「……確かにな」

 

どうやら、実行する事が出来そうだ。

 

「もちろん、これは交流の一環だ

魚釣り大会でも大食い大会でも、何でもやっていい、予算は考慮する」

 

「大食い大会!!」

 

やはり赤城があからさまに食いついてきた。

予算で食い放題なら、まあそうなるだろう。

飛竜・蒼龍も目が輝いている。

 

「大食い大会か……」

 

「那智姉さん、常識的に酒飲み大会は出来ませんよ?」

 

「そんなことは無い、ドイツでは日常らしいぞ」

 

「ドイツの子達の情報ですか……」

 

那智と羽黒は真面目に話し合っている。

内容がコントだが

 

「……質問して いいですか?」

 

「ん、俺か?」

 

今度は加賀がスネークに質問する……何を考えている?

 

「貴方の部下は何人いますか?」

 

「男が2人 女が3人だ」

 

「…………」

 

加賀が考えている。

鳳翔を見ても、彼女もわからないらしい……本当に何を考えている?

1分ほど経っただろうか、加賀が発言した

 

 

 

「では、6対6で戦いましょう こちらは艤装 そちらは銃で」

 

 

 

………………………………………マジか

 

 


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