鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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交流

着いた

2日前にここに来ると良いと誘われた。

……近くで見ると実に妙だったが、あの矢の違和感は未だに消えない

そう思いながらも、時間を潰すために弓道場に入った。

 

 

 

「誰かいるか?」

 

呼びかけるが返事が無い、だが確かに案内された時 誘われた。

午後になったら行くかもしれないが、おそらく無理だと俺が言ったら

 

「訓練は午後まで続きませんよ」

 

と、予言のように断定されたから よく覚えている。

……実際にそうなった、まさに予言だ

ここの弓道場は、門を入るとすぐに的があるわけでは無い。

入ると目の前には横に長く天井が広い屋敷が存在し、その入り口がある。

そこに入り 靴を脱いだ後、一つ段差を上がった所に横開きのドアがある。

そこを開けると、左のだいぶ離れた所に的がある。

また、的の先は崖だ。

 

何せ飛んで行った矢は戦闘機になる。

 

……操縦は妖精がしていたが、そもそもなぜ矢が飛んで戦闘機になるのか見ても仕掛けがわからない。

右側にも広いスペースがある。

そっちでは紙が戦闘機になっていた。

……艦娘が不思議な存在だと改めて実感したのをよく覚えている。

何せ やっていることがまるで魔法だ、

それで彼女達はあの深海凄艦を相手にしている。

わけのわからないものを わからないもので攻撃すれば効果があるはずだと

思えば 科学も何もない考えで納得していた。

 

 

ここなら俺でも時間が潰せるし、仮に五人が来ても これだけ広ければ問題ない

 

だが

 

「誰かいないか?」

 

なにも反応が無い、それどころか音もしない。

とにかく門をくぐる。

 

「………………」

 

本当に音が無い、……誰も居ないのか?

とりあえず入り口に行く。

俺は全身スニーキングだが、意味は無くとも靴を履いている、一応靴を脱ぎ並べる。

 

「………………」

 

音が未だに無い。

一段上がり、ドアに手をかけながら

 

「……誰もいないか?」

 

声をかけるが 物音もしない。

そして俺はドアを開けて入った。

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

……いや、正しくはナイフを抜いて一気に入りそのまま走る

 

そして目の前には弓を引いているのが3人、顔は見え 驚いているのがわかる。

 

特に右のやつは口まで開けている。

まずはそれだ、

ドアから3人までは10メートルはある

 

 

 

 

矢が放たれる

ナイフで三本叩き落とす

ついた

 

右のやつに足かける

 

右側に転ばす

弓をついでに奪う

左の二人はこっちに手を伸ばす

 

体を横にそる

二人が前を通り過ぎる

手前に来た方バランスを崩す

手を前に出しそのまま右に押し倒す

 

倒れた

同じように手に持っている物を奪う

残った奴はまだコッチに体を向けていない

 

後ろから羽交締めにする

 

 

「ドアから動くな!」

ドアに四人いた

拘束しているのが声を上げる

 

 

 

「ぉぉおおららああぁぁ!!!」

 

 

 

左から一人向かって来る

 

最初に転ばしたやつだ

すぐ膝を蹴り拘束を解放

やつが来る方に

 

向き

構え

避ける

「ヘ!?ァァアアアアア!!」

 

立っているの ぶつかる

 

そのまま倒れ3人 重なる

弓 ドアに投げる

 

「動くな!!」

 

 

出ようとした一人が頭に弓を食らう

 

残りは止まっている

 

右にも左にも 誰もいない

 

 

全てスローモーションのように感じる、視覚も聴覚も、

だが自分の動きだけが早く感じる、いや周りより早くなっている……おかげで感覚もいつもと違う。

 

「……全員、手を上げてそこに集まれ。」

 

ドアにいる四人に声をかける。

気絶しているのはいない

 

「は、ハイィィ」

 

今にも泣きそうだが、すぐに3人が重なる所に ドアにいた4人が集まった。

どうやら終わったら——

「動かないでね〜、首が飛ぶわよ〜」

 

……どうやらまだ続くらしい、良い加減疲れる、というか最初から出てこい。

それならこっちは直ぐに諦めた。

 

「こっちを向きなさ〜い~。あ、抵抗したら首は本当に飛ぶから~」

 

こんな所で死ねるか。

そもそもこっちは呼ばれてきただけなんだが…………

だが言う通りにした方が身のためだろう、口調から言ってまず本気らしい

物を置き、ゆっくり振り向くと……案の定 艦娘がいた

 

しかも二人いた

 

一人は先程から話していた者、手には槍らしい物がある……その矛先は俺なんだが。

もう一人はこっちを見て黙っている

腰に長い刃物、恐らく刀だ。

 

「さ~て、どうしましょうかね~?」

 

「どうするも何も、やることなんて何もねーだろ竜田」

 

「そうね~確かに仕掛けたのはこっちだものね~」

 

「……発言していいか?」

 

様子を見る。

 

「そうね~、逃げたら殺すわよ~」

 

「いや、死ぬような事はしない……まず、あの子達をどうにかしたらどうだ?」

 

そう言って、後ろ側にいるはずの7人に指を指す。

 

「……そうね、天龍ちゃん」

 

「ん?ああったく、俺は子守役じゃねーのに」

 

「——誰が子供だってー!?」

 

…… 後ろが騒がしくなった。

 

「…………で俺はいつまでこうすればいい?」

 

いつまでも首に刃物があるのは良い気がしない

いくら何でも、ずっと俺に槍を向けるわけでもあるまい。

彼女の右肘を見ながら質問する。

 

「そうね~わたしの気がすむまで?」

 

笑いながら言われても困るんだがなぁ……しかし、槍は首から離れ床に向いた。

 

「………そうか」

 

 

そう言って

 

俺は一瞬

 

彼女に近づき

 

右手に触れ

 

離れた

 

 

向こうは驚いて動けないらしい、目も見開いている

 

「……何を、したのかしら?」

 

目が細くなった。

さっきとは違い、言葉に殺気がこもっている

 

「お前の肘はいま消耗して炎症している。だから刺激を与えた、それだけだ」

 

バネ指と言われる 一種の腱鞘炎みたいなものだ。

一定の負荷を超えると物は壊れる、体も基本同じだ。

彼女の右肘も壊れかけていた。だから刺激し、正常に動けなくした。

彼女の右肘は完全に壊れ、曲げようとするとバネの様に真っ直ぐになろうとする

 

そんな状態では槍は暴れる、思った風には仕掛けられない

今は左手が添えられている。

 

「そういうわけだ龍田。諦めろ」

 

いつの間にか、天龍とかいう艦娘も俺の話を聞いていた。

 

「……俺とやり合うならまずはそれを治してからだ、話しにならん」

 

「……そうか~、やっぱり治して からじゃなきゃダメね~」

 

「というか、よく仕掛けようと思うよなー」

 

「ま~ね~」

 

確かに、その怪我をしてまでやり合おうとするのは気が知れない

……無茶にもほどがある

 

「……しかし、その怪我は全治二週間はかかるな」

 

「?あぁ、お風呂に入れば治るわよ〜人より長いけどね〜」

 

……そういえばそうだった。

彼女達は人とは違う徹底的な所は、風呂に入ると怪我が治るという。

その風呂を元は船だったことからドックと呼んでいる……が、

 

「痛いだろう?」

 

「ええ、けど慣れてるわ〜。あいつらを斬ったりすればこうなるわよね~」

 

「まあ、あいつら硬いからなー」

 

……アレは斬れるのか。

 

「……手を貸せ」

 

「 え?」

 

龍田と天龍がこっちを見る。

 

「痛いだろう?それでも」

 

「……まあね〜」

 

「応急処置をするから手を貸せ」

 

そう言って後ろに手をまわす。

大体の応急処置は出来るはずだ。

 

「ナイフで切り落とさないわよね~?」

 

「……そんな死に行く事を俺はしない。冷たいぞ」

 

取り出したスプレーをかける。

約5秒後

 

「…………」

 

「どうだ?」

 

「……すごいわ、痛みが消えてる」

 

「さっき俺がやった肘も動くだろう?」

 

実際 動いている。

龍田は驚きながら俺に聞く。

 

「これ、一体なんなの?」

 

「これか?うちが開発した応急処置用のスプレーだ。」

 

「どのくらいまでの治るの?」

 

……どうやら、気に入ったらしい。

 

「龍田!?お前どしちまったんだ?!口調が変わってるぞ!!」

 

言われてみれば確かに変わってる。

だが、肩を強く揺する必要はあるのか?

 

「ただのアイシングスプレーだろ!? 何もそこまで興味を持たなくても……」

 

「天龍ちゃん、これはね 痛みだけじゃなくてダメになった私の関節も治したのよ?

で、どのくらいまで治るの?これ」

 

……結構迫力があるな。この二人には一瞬ひるむ。

だが、言わないと恐らく口論が始まる、

いや、拘束されるか?

 

「……今までの経験だけだから当てにするな。

確か・・・ああ 戦車の至近弾?いや、装甲車の直撃を腹に食らった時に使ったが元に戻ったぞ」

 

『…………』

 

二人が黙る。

口がただ、上下している。

 

「まあ、そんなことより俺はしばらくここにいさせて貰いたいんだが……」

 

話を聞いているであろう後ろの7人に声をかける。

答えは

『嘘だ!!』 と 「うあぁぁぁぁ!!」

……嘘も言っていないが、女が叫ぶ事もしていないんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度は20分かかりながらも 混乱は治り、状況も把握できた。

今は、俺を含め10人が 丸い机を中心に座って 喋っている

 

今回の事態は計画された物とは少し違かった。

 

まず、最初の3人は計画をしていた

内容は俺の実力を知りたかったらしい、それで2日前俺を誘ったという。

 

計画はドアに2人を配置

俺が入ったら2人で拘束

3人の前に引きずり出す予定だったそうだ。

 

だが、今日の午後になってから天龍と竜田らがやって来た

……どうやら輸送任務から帰ってきた時に、俺が訓練で第五小隊を行動不能にしたのを見ていたらしい

 

思い出してみると

確かに2日前、この弓道場の右奥で竹刀を振り回していたのも居たな

 

……とにかく計画は変更された

ドアでは4人で俺を拘束し、弓で彼女達3人は出待ちする事になった

そして万が一のために後ろの物置きで2人は待機していたそうだ。

 

……結果は

 

拘束できず

弓当たらず

3人が玉突き事故

 

というものだった

 

 

 

 

「——いつ 私たちが事故たって言うのよ!!」

 

……今 発言したのは瑞鶴 という空母、

一番最初に俺が転ばし、俺を誘った艦娘の妹だ

 

「いや、実際あれは事故だ。お前が突っ込んで当たって、3人重なっていただろ」

 

「天龍の言う通りよ瑞鶴、私 結構痛かったのよアレ。

そもそも叫びながら突っ込むのは自殺行為よ、 何よ “ぉぉおおららああぁぁ!!!”って」

 

今、正論を言ったのが彼女の姉で、今回の計画の第一人者 翔鶴

 

「……お前、死ぬ気だったのかー」

 

「違うわ天龍!私はこの男から翔鶴姉を助けようとして——」

 

「そのお姉ちゃんにぶつかったのね〜 よかったじゃない~ 解放はされたんだから〜」

 

「……私は2人に押しつぶされました……」

 

今のは今回の事故で最も被害があったであろう艦娘

他の2人とは違い、弓ではなくボーガンで矢を放った空母 大鳳だ。

いや、正しくは装甲空母だそうだが……一部装甲は薄い。

 

「!! それは、その……」

 

顔を赤くし黙る瑞鶴。

……今触れると爆発するとされ しばらく放置となった。

 

「そういえば、頭は大丈夫なの 暁ちゃん」

 

「ええ、痛くはないわ。 だって、私は一人前のレディだもの!」

 

「……誰よりも早く逃げようとした結果だけどね」

 

残りの4人は、

俺に弓を投げ 当たった 暁

他に、龍鳳 瑞鳳 響 。

瑞鳳と龍鳳は軽空母だが、暁と響は天竜達が連れてきた駆逐艦だ。

暁の答えに対して瑞鳳が突っ込む

 

「! いいえ、怖くなかったもん!!」

 

いや そもそもレディなら危険を冒すな……

あと走るな……というか 見た目がレディじゃない

言うならガールだろう

 

「だってさ、響」

 

「まあ嘘だろう、いつも通り」

 

「だな」

 

「そうね~」

 

「無理しちゃダメですよ、暁さん?」

 

順に響 天龍 龍田 龍鳳 が言う。

「……そもそも、なんで弓を投げてきたのよ!レディに投げるもんじゃないでしょう!?」

 

武が悪くなり、俺に八つ当たりしてきた……やはりまだ子供だ

 

「そうよ!なんで私の弓を投げたのよ!?」

 

さっきと同じようにまた俺に食ってかかる瑞鶴

……こっちにも子供がいたか。

 

「……お前、復活が早いんだな」

 

「あなたと違って艦娘なんでね! で、なんで投げたの 私の弓!!」

 

艦娘の方がメンタル面は強いのか……新しい事を知った。

だが…………その質問は少しためらいがある。

 

「……聞かない方がいいぞ?」

 

「なんでよ! 私の弓がぶん投げられたのよ!?」

 

「分かった、それは謝る、すまん。」

 

「え…………うん」

 

謝ると、気が済んだのか静かになった。

しかし、どう話すべきか……素直に話すか。

 

「……それに助かった しな」

 

「……どういう意味よ、それ。」

 

「俺があの時持っていたのはその弓とボーガン、そして」

 

「……あんたまさか!?」

 

回転が早いらしい、おかげで手間が省ける

まあ最初に俺が手に持っていたならわかるか

 

「あぁ、頭は狙わないだろうが あのドアにナイフが刺さっていた」

 

「……手元が狂ったらどうすんの!!」

 

……こういう奴は見せれば納得する

 

 

すぐ横からナイフを取り

 

そのまま投げる

 

ナイフはドアに刺さらず

 

鈍い音を立て

 

床に落ちる

 

全て一瞬だ

 

スローモーションも必要無い

 

カーンと音を立て、ナイフは床に落ちた

 

 

「……ドアに刺さってないわよ」

 

「ドアを傷つける意味がないからな。プラスチックでできている黒い部分に当てた」

 

『……………………』

 

全員がドアを見ている。

暁だけ、瑞鶴を見ていた。

 

「とにかく助かった。ありがとな」

 

もう一度礼を言う。

 

「……ぇええ、瑞鶴 役に立ったわね」

 

「そうだぞ、瑞鶴 うん」

 

「役立ったわね~」

 

「すごいです 瑞鶴さん」

 

「……ハイ、すごい です」

 

「……すごいわ」

 

「……ハラショー」

 

「本当にありがとう!! 瑞鶴姉ちゃん!!」

 

何故か全員がそれぞれ瑞鶴に感謝している。

 

「そ そうね。 うん、よかったね 暁ちゃん」

 

 

 

…………………………………………………何がよかったんだ?

 


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