鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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第一印象……を得る前に対象の情報は出来だけ入手するのは悪手だ

もし、仲間が何かしらの相手を“尋問”するなら、そいつにあまり情報は与えなくて良い

その相手が明確な敵、あるいはすでに過去に自分に被害を被らせた事のある者なら自然だ。

だがそうで無いなら、その行為は拒絶以外の何物でもなく……何も起こらない

生まれるのは互いのすれ違いか嫌悪感であり……無駄な悪意と情報


・あいつは俺を信用していない
・あいつは〇〇と思っているだろう
・あいつは□□するだろう
・あいつはそういう人間なんだろう


情報とはその人物に関するありとあらゆる事柄

特に人との第一印象がもたらす情報は相手の“人物像”

その人の“人格”に関する情報がもたらされる訳ではない……与えられた“人物像”がその人の“人格”を曇らせる

その曇った“人格”も実際は主観である人物が勝手に作ったその人の“人物像”でしか無い

……そんな簡単な勘違いすらこの様に客観的に描かなければ気付くことすら無い人間もいる


そんな勘違いが人付き合い程度なら良い


だがそれがビジネスなら?


企業なら?



怠慢な新入社員を雇用し

信用に足る雇用相手を訝しみ

自身の上司を、同僚を、部下を見下し

ふと気が付いた時に自分自身を無下にする



……実際は誰もが無価なのだがそれはそれとして、無意味で無価値な情報を採用する。
真実、本来の意味を捉えられず……価値があるかはそのモノによるが……その結果、致命的なミスに繋がる。




それが戦場なら?


軍隊なら?



上官が複数の“人物像”を曇らせれば、粛清が起きるかもしれない

同僚が勝手に“人物像”を曇らせれば、背中から ふと撃たれる

部下が唐突に“人物像”を曇らせれば、一休みの間に発狂するだろう



……俺か?


俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・すでにやらかした









——198〇年,○月,〇〇日, カズヒラ・ミラー——


《題名:世界を●●●た———》テープより



















大規模作戦 会談

 

 

 

 

 

「…………………………………」

 

「……良いんですか、彼女さっきから黙りっぱなしですよ?」

 

「構わんだろう、こっちは別に苦労する訳でも無いしな」

 

「艦娘が苦労すると思うんですが……」

 

「それまでには機嫌も治ってると思うがな」

 

「…………………………………」

 

練習巡洋艦:鹿島

旧日本海軍の航海練習艦として建造された彼女は、かの大戦を航行可能な状態で生き抜き解体された。

そんな彼女はなぜか気が付くとラバウルに流れ着いていた、しかも情報を扱うノウハウまで持った状態で。

 

そんな彼女にも……いや、そんな彼女だからこそだろうか、深海凄艦は押しかけた。

 

しかし一方で、ラバウルには同時に一匹の蛇と一種の天国が招かれようとしていた。

その蛇達に導かれた鹿島は話を聞き出し、自分と同じ様な存在……艦娘がいる事を知り、紹介してもらう事になった。

 

 

………………………………………………バルーンに引っ掛けられて

 

 

 

「いや待て、あんた何の説明も無しにフルトンで回収したのか?」

 

「ああ、たまたまフルトン回収装置があるのを思い出してな」

 

そして現在、鹿島は空へ釣られ ヘリに吊られ スネークに連れられた後、キャッチャーボートに案内された。

キャッチャーボート……平和丸には普通(?)に着艦、すると甲板には一人の男が居た。

金髪にサングラス 緑のジャケットを着ている男、名前はミラーだと簡単に説明されながら部屋へ案内された。

スネークとクロードの2人も遅れて部屋に入って来た。

 

「……たま・・・たま?」

 

「ん?」

 

「……たまたまですか!?たまたま思い出しちゃったから私はあんな怖い目に遭わされたんですかぁ!?」

 

「やっと喋りましたよ……」

 

「なんだ、思ったより元気そうだな」

 

「元気そうだな、じゃないですよ!なんで事前説明も無しにあんな酷いことしたんですか!!」

 

そう、案内されたまでは良かったのだ

……………が、移動の最中から余りの衝撃からか口が利けないでいた。

 

考えてみても欲しい、合わせたい人が居ると言われて相手に付いて行ったらいつの間にか空を飛んでいた。

何を言ってるかわからないと思うだろうが、私にも何を言ってるかわか(ry

 

……実際、スネークらMSFが採用している人員回収装置〈フルトン回収システム〉は慣れていなければ怖い。軍人ですら心の準備が出来ていてもある程度喚き立てる。何せ人体に影響が少なく、かつ地上からの携行火器や重火器の脅威から迅速に離れるために高度3000mまで一気に対象を空へ吊るし上げる代物だ。

 

訓練された人間なら高度5000mでの回収も不可能ではないがヘリの制限高度や気圧差を考えてそのほとんどが高度3000mで行われる。

 

「……思ったより余裕そうですね、彼女」

 

「ああ、どうやらそうみたいだ」

 

「酷くないですか!?」

 

「カシマさんのボケはこの場で炸裂するタイプじゃないから」

 

「クロードさんも!?っていうかボケてません!!

っいや本当になんでいきなりあんな事したんんです!?事前に説明してくれたって——」

 

「言ったら自分で飛ぼうとしたのか?」

 

「それはっ…………わかりませんけど!それでも切羽詰まった状況では無かったハズです!!」

 

高度3000mと簡単には言うが、ピンと来ないだろう。

あの富士山と似た様な高さだ、と言われても分かりにくい。

 

強いて言うならば、

・地上より約18度ほど寒く

・秒速5〜10mの風が良く吹き

・周りは雲と地上の土の色が広がる世界

 

・・・そして足場がなく、自分を支えているのは頭上にある頼りなさそう(そう見えるだけ)のロープと風船

 

一体どうして安心できると言うのだろうか、いや無理だろう

それならまだ高度3000mから降下する方がましだろう……それでも怖いのに間違いは無いが。

 

「確かに、俺もてっきりランディングゾーンでピックアップするもんだと思ってましたが」

 

「最初からそのつもりだったからな、説明するタイミングが無かった」

 

「……さっき、“たまたま”思い出したとか言ってませんでしたか?」

 

「………………」

 

「確信的ですね!?意図してやりましたね!!?」

 

「スネーク、あんた仮にも彼女はゲストなんだぞ?もう少し丁寧にだな——」

 

「無視ですかぁ!?」

 

 

 

「・・・なんデスかコレ」←金剛

「ははは……」←長良

「何コレ……」←五十鈴

 

 

 

 

そして、部屋に呼ばれた艦娘の75%が唖然としていた。

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

『新たな艦娘を保護した、事情を聞くために同伴してくれ』

それはつい30分ほど前にルイを通して艦娘達に伝えられた。

すでに湾内の掃海に出ていたメンバーの反応はわからないが、平和丸に残っていた彼女たちの反応を見る限り相当驚いていたに違い無い。

さらに、その保護したという艦娘の名前を聞いた時、彼女たちは驚愕した。

 

 

練習巡洋艦、鹿島

 

その名は駆逐艦の背筋を伸ばし、長良と五十鈴が驚嘆の声を上げ、摩耶は昔を思い出した。

そして金剛や霧島、千歳・千代田も驚いた。

 

元々鹿島は練習巡洋艦としての建造計画が有り、そこから何隻かの姉妹艦の建造も計画されたいた。

……されていたが竣工は1940年、緊張状態になりつつあった日本近海は既に公海と言うにはあまりにも厳しく航海の安全や資材や燃料の貯蔵等の兵站的な理由、何より政治的な理由から竣工したのは僅かだった。

 

 

それが香取、そして鹿島だった

 

 

彼女たちが(当時は艦船だったが)練習巡洋艦として働いたのはたったの一度、それも途中で中断された。

その後、練習などでは無く戦場へとそれぞれ駆り出されて行った。

 

姉である香取は第六艦隊(潜水艦隊)の旗艦として通信・補給を担当し、船速18ノットとという鈍足にも関わらず太平洋を最前線ではないにせよ後方で静かに駆けぬけた。

 

そんな彼女は現在、艦娘として、練習巡洋艦として日本に合流し広島の呉で教導を専門に新たに加わった艦娘やこれから加わるであろう新たな仲間、さらには改二改装を受けた艦娘の実地試験や訓練を担っている。

 

一方、鹿島は姉以上の忙しい艦歴を辿った。

練習艦隊が解散した後、姉と同じ様に南方海域へ派遣されたがその任地はトラック島。

 

そして、トラック島で任されたのは第四艦隊旗艦

 

もっとも、第四艦隊は第一艦隊や第二艦隊とは違い警備部隊として組織された艦隊のため鹿島の指揮下に所属した艦は天龍や龍田・睦月型駆逐艦など、言ってみれば開戦当時には既に時代遅れとなっていた二線級の戦力だった。

姉の香取とは違い、目立つ戦果を挙げた訳ではないが第四艦隊旗艦と同時に南洋部隊の全作戦も指揮した。

それでもウェーク島の戦いや大規模作戦等の指揮を担当した事もあった。

晩年には船団護衛や戦争を生き抜き復員船として従事しその後解体された。

 

 

 

そして艦娘として新たに生を受けた鹿島は一体どうなっているのか?

 

 

 

同じ練習巡洋艦として先に着任した姉の香取の様な、お姉s……教師の様なタイプで、訓練に厳しそうだと思うのが自然だろう。

それに加え、香取の場合は潜水艦隊の指揮を執っていた事もあり潜水艦に慕われていたと同時に親の様な存在としてある意味で恐れられていた。

 

鹿島の場合は

 

・第四艦隊旗艦

・指揮下には保育園こと天龍や龍田を初めとした軽巡

・長良や五十鈴も鹿島の指揮下に居たこともあり、長良に至っては旗艦を鹿島から引き継いでいる

・重巡洋艦も古鷹・加古・青葉・衣笠の古鷹型に妙高や羽黒、五航戦の翔鶴・瑞鶴も編入の形で指揮下に

・更に摩耶は終戦間近の輸送作戦で共にしたり、鳥海とは共同で南洋部隊を率いた

・さらに加えて比叡と縁があったり等、彼女たちにして見れば何かと縁がありそのほとんどが指揮艦

 

上記からわかる様に武勲を挙げた武官と言うより、鹿島はあらゆる所にツテがある文官と表現した方が近い。

さらにそのツテのほとんどが元部下という強力な関係が築かれていた。

それらに加え、第四艦隊や南洋部隊が戦時中担当した地域は一時は

拠点としたトラックを始めとした マーシャル諸島,ソロモン諸島,ラバウルという広大な地域の作戦・補給を

指揮していた。

 

 

それが何を指すか

 

 

・・・・・つまるところ、どこかの連合艦隊旗艦を担った軽巡洋艦の様に事務作業の手練れだと言う事だ

 

 

香取がすでに着任している事から、練習巡洋艦……もとい香取は火力や装甲が高く無いのは艦娘たちや各提督らは把握している、だがそれと同時に教導と事務処理に関しては他の追随を許さない……どころか圧倒的であった。

特に教導に関しては…………戦艦が駆逐艦に同情し軽巡洋艦の仕事が8割減ったと言っておこう。

 

言っておくが、

 

たった一隻の、

 

艦娘によって、

 

各鎮守府から呉に研修を受けた艦娘(駆逐艦)が、

 

戦艦が駆逐艦に同情し、軽巡洋艦の仕事が8割減る

 

……そういった待遇を受ける事になったと言っておこう。

たった一隻の練習巡洋艦、たった一人の艦娘によってである。

 

 

 

 

 

それが一体、部屋に入るとどうだ

 

 

 

 

「確信的ですね!?意図してやりましたね!!?」

 

「スネーク、あんた仮にも彼女はゲストなんだぞ?もう少し丁寧にだな——」

 

「無視ですかぁ!?」

 

「別にわざとはやっていない、たまたま俺が道具を持っていたから使った。

ある物を活用しない手は無いからな、それにヘリを降ろすより確実で安全だったからな」

 

「アレのどこが安全なんですか!?」

 

「俺ら以外の誰にもバレずに港から離れられただろ」

 

「いやっそうですけど!随分と乱暴じゃありませんかぁ!!」

 

 

 

・・・(´-`)(-.-;).。oO〔…………乱暴な方法なぁ…………〕〕

 

 

 

「……何ですか、お二人してその顔は。

まるであんな物まだマシで むしろアレが一番マシで もっとヒドイのがあると言いたそうな顔は何ですか?

何ですかあんなもの乱暴じゃ無いと、むしろ安全で確実な方法だとでもおっしゃりたいんですか?

それとも何ですか一番マシな方法を選んでやったんだから感謝しろと、あんなもの乱暴じゃ無いと?」

 

「いや……まぁ……何と言うかなぁ……確かに一番確実なのはフルトン回収よりヘリによるピックアップだが」

 

「ええ、ヘリによる回収が一番確実ではありますけどそれと同時に一番攻撃されやすい、リスクもある」

 

 

少しヒステリックになっている鹿島(?)

その発言に教師の雰囲気や貫禄と言ったものは皆無、

少女らしさは感じる物の 興奮や憤怒といった感情が先行しているせいか、

物々しいというか禍々しい物を感じる、むしろそういった負の“ナニカ”が見える気がした。

 

更に周りには屈強な男が3人

 

第一印象で特に目立つのは金髪でサングラスをかけた男、それがこの部隊の副リーダーであるミラーである事は艦娘ならすでに仮本部での会議で全員知っている。

だがそれを含めても、屈強な男3人が女性を取り囲んでいるという絵はナニカ違和感や背徳的な物を感じる。

 

その女性がヒステリックな状態なら尚更である。

 

しかもその内の2人は彼女が若干……どころかだいぶおかしくなっているのに気が付いていないらしい。

 

「……おい二人とも、とりあえず彼女の性格が捻じ曲がって今にも切れそうな方をどうにかしてだな——」

 

「カズ、お前もヘリのピックアップは反対だったな?」

 

「・・・はぁ……………まあな。

ジャングルなんかは着陸や接近すら出来ない事も多い、撃たれれば修理費も掛かる。

それならある程度費用をかけて被弾数を減らし回収の機会を増やした方が良いからな」

 

「……しかし、今回の場合は発砲してくる敵は居ませんでしたよ?」

 

「だが戦場に安全地帯なんぞ存在しない、今回は大丈夫だ、なんぞ慢心以外の何物でも無い」

 

「……それは……そうですけど」

 

「まあ突然やられた事を不服に思うのは当然だ、その点に関しては非を認める。

だがあの方法は別に乱暴でもマシな方法でも無い、俺たちが取る脱出方法の1つだと理解してくれ」

 

「……それにしたってもう少し穏便に事を進める事は出来たハズですけどねぇ」

 

「だがクロード、お前も事前に説明できたハズだが?」

 

「それは……そうですが」

 

「だが俺は責任の所在追求に興味は無い、フルトンを知ってるとは思っていなかったがまさか安全や確実性に関して追求されるとは予想外だった、悪かった」

 

「……何かすいません、取り乱してしまって……」

 

「気にするな、むしろ淡々と会話を続けられる奴の方がおかしい。

まあ俺も最初はフルトン回収をヘリでやるのには余り気乗りじゃ無かったしな」

 

「ふふ、そうなんですね」

 

「おお〜カシマさんが元に戻った」

 

「・・・良いのか、コレで?

いやっ彼女が元に戻ったのは確かだ、それならまぁ……良いか、だがこの二人の態度は少々気に喰わん……」

 

 

……以上が呼ばれて入ってきた4人の艦娘が聞かされた会話である。

入ってくる以前にも会話は多少あったのだろうが、鹿島が話していたようには思えない。

もっとも、呼ばれて来たのに蚊帳の外に置かれている時点でそもそもおかしいのだが。

 

 

「おいおい、何だ随分といい感じだな、おい」

 

「……これを見ていい感じだと言える摩耶の精神を少し尊敬する」

 

「いやクロードさんよ、これいつも通りだろ」

 

「それはそうだが、普通は大抵後ろの3人みたく惚けると思うが……」

 

「あん?……ああ、私は何だかんだマーリンなんかと良く絡んでるからな」

 

呼ばれて部屋にやって来た艦娘は、旗艦:長良,五十鈴,金剛,そして摩耶の4人だ。

この中で唯一、このなんとも言えない会話に抗体があったのは横須賀でなんだかんだマーリンやティムという面子とつるんでいた摩耶だけだった。

 

そして…………さっきの会話が大したことすら無いことも知っていた。

 

「えっと……摩耶さん?色々とツッコミたい所が盛りだくさんなんですけど……止めなくて良いんですか?」

 

「止める必要があったらとっくに止まってるだろ、それにクロードさんが諦めてるからなぁ」

 

「それって話し合いの場としてどうなの……」

「イスズと同じネェ……」

 

「……とりあえずスネーク、面子は集まったみたいですが」

 

「ん、わかった」

 

「ちょっと!?まだ話は終わってませーーんっ・・・!って・・・この方達は…………?」

 

「さっき名前が出ていたがな、それも含めて話し合いを始めるとするか・・・カズ」

 

「了解だ……やっと始められる」

 

「まあ丁度いいアイスブレーキングだったろ」

 

「……氷以前に別の物が壊れそうだがなっ」

 

「それ位にしておきましょう副司令、あなたが辛くなるだけです」

 

「……ならとりあえず全員座ってくれ」

 

カズヒラの合図でようやく全員が座る事になった。

壁側の奥の方にカズヒラ,スネーク,クロードの3人が、

手前のドア側に鹿島,長良,五十鈴,摩耶,金剛の5人が、それぞれ向かい合うように座った。

もちろん人数の関係上、摩耶と金剛の2人は向かい側に誰も居ないが。

 

「とりあえず、今回集まってもらった理由は彼女だ」

 

「わかるわ、香取さんの妹の鹿島さんでしょ?」

 

「香取姉ぇを知ってるんですか!」

 

「もう日本にいるわ、今は呉で色々と指導とか教導とかしてるわよ」

 

「そうなんですね……」

 

「それは確かか?」

 

「ええ、トラック泊地で見つけた時に私も居たからね」

 

「そうか……ならお前たちの自己紹介が先だな」

 

「その必要なら無いと思いマース」

 

「…………何?」

 

カズヒラの進行で始まったこの会談は、早速暗礁に乗り上げそうになる。

が、続く金剛の解説で回避する。

 

「私たちは艦娘デスが、そもそもbattle shipでシタ、だから初めて見た艦娘でもそれなりにわかるヨ〜」

 

「そうなのか……なら彼女は間違いなく」

 

「練習巡洋艦、鹿島に間違いないわ、もっとも鹿島さんの方も私のことはわかるんじゃない?」

 

「えっと……五十鈴ちゃん?」

 

「そうよ」

 

「それと隣が長良ちゃんかな?」

 

「はいっ!」

 

「それなら……摩耶さんと、金剛さんですか」

 

「そうだぜ、もっとも“さん”付けされるのは慣れねぇけど」

 

「That's right!」

 

「・・・なんで金剛さんはカタコトの日本語を?」

 

「……気にするな……ついでに聞きたいんだがそれは昔関わりがあったからわかるのか?」

 

「うーんなんて言うんでしょう……それこそ直感的にわかるとしかわかりません」

 

「……産まれた時、というのが正しいかわからんが元からアナライズ機能が有るのか?」

 

「聞いた限りじゃ膨大な経験から来る直感な気もしますが」

 

「それで名前までわかるか?」

 

「…………無理ですね」

 

「おいっ2人とも、今は議論を深めるな、それは別の連中の役目だ」

 

「……そうだったな、悪かったカズ」

 

「……それなら続けるぞ。

とりあえず彼女が鹿島だというのは確定した、それなら改めて鹿島からの質問を受けたい。

島でも色々と話してたみたいだがもう少し込み入った話でも構わないぞ」

 

「込み入ったこと……ですか?」

 

「まあお互い腹割って話そう、と言った所だな」

 

「……えっと、私としては香取姉ぇのことがわかれば他に特には無いんですけど」

 

「そうか?ならこちらから質問しても構わないか?」

 

「ええ」

 

「なら……いつ頃お前はラバウルに居たんだ?」

 

「……えっと、スネークさん達にも言ったんですけど私がいつ頃この体でこの世界に居たのかはわからなくて」

 

「それは聞いた、いつの間にか体があったそうだな?」

 

「はい」

 

「それは他も同じなのか?」

 

「……まあそうです、けど私たちの場合はある程度まとまっていましたけど」

 

「まとまっていた?」

 

「ああっと、念のために聞くけど話して大丈夫なのか?」

 

「そこは大丈夫だクロードさん、別に機密でもなんでもねぇ。

それに話した所で話してる私たち自身意味がわかって無いことだしなぁ……」

 

「……なら別段、鹿島が特殊って訳じゃ無いんだな?」

 

「イエスッ!その通り——」

 

 

 

「って訳でも無さそうだが?」

 

 

 

突如口を挟むスネーク。

口を挟まれた金剛は面白く無いため、顔をムッとさせようとしたがスネークの目を見て止めた。

その言葉や声音に変化は無く至って普通の言葉、声。

表情にも特に変化は無さそうで、端からは単なる嫌がらせにしか見えない。

 

 

 

だがその目に容赦は無かった

 

 

 

「…………スネーク、ワタシのセリフが盗られたのデスケド?」

 

「ん、すまんな……所で今は何時だ?」

 

「…What?」

 

「今は何時かと聞いている」

 

「……ナゼ?」

 

「良いから言ってくれ」

 

「……12:50デスよ」

 

「お前らもそうか?」

 

「えっ?あっ12:50ですね」

「12:50よ」

「12:50だな」

「えっと時計は……あっあった、12:50・・・いま12:51になりましたね」

 

「カズ」

 

「俺もか?」

 

「ああ」

 

「……まあ、確かに鹿島の言う通り12:51だ、あんたの後ろにある掛け時計に俺の腕時計もそう指してるぞ」

 

「クロード」

 

「……ええ、副司令の言う通り後ろの掛け時計には12:51を指してますが」

 

「………………」

 

「スネーク……時計が一体どうしたって言うんだ?」

 

「…………俺が横須賀で艦娘と交流したのはこの場にいる鹿島以外の全員が知ってるな?」

 

「それはあんたがやった交流戦のことか?」

 

「そうだ」

 

「まぁ知っているが?」

 

「その時、色々と艦娘と話もしてその後も何だかんだ話す機会があってな」

 

「それで?」

 

「ふと思い出したんだが、艦娘は腕時計をしていない」

 

「……確かにそうだな」

 

「言われてみれば……そうですが、何故いまそれを?」

 

「良いから聞けクロード、まぁ他にも無線機を持っていないにも関わらず無線が使えるとか色々と気になる事があってな、試しに夕張に聞いてみた」

 

「夕張さんも居るんですか……」

 

「そうよ、私は舞鶴だけど彼女は横須賀の工廠で技術屋モドキみたいなことしてるわ」

 

「そうなんですか」

 

「それで、聞いてどうだったんだ?」

 

「……聞いた俺も予想外だったが、何でも“備え付け”らしい」

 

「“備え付け”……って言うのはどういう意味だ?」

 

「そのままの意味だ。

体、と言うより先天的に時刻を知る事や通信するための手段と言った物が備わっているらしい。

海上で艤装を展開する事で火力もそうだが通信手段もより強固な物に……感覚としてはよりしっかりした感じになるそうだ、それに間違いは無いだろう?」

 

「そうねぇ……まあ確かに意識してみた事は無いけど、時間は頭の中で勝手に浮かんでくるし、通信に至っては妖精さんがやってくれてるわ」

 

「便利だな妖精は」

 

「実際その通りですからね……あっ出てきた」

 

「……全くわからないが」

 

「えっと…………どこに?」

 

「長良の右肩に乗っかっているじゃないか」

 

「「全く見えない」」

 

「…………そうか」

 

話を聞いて思うところがあったのか、随分とアナクロな(そして小型な)無線機を持った妖精が長良の肩の上に立っている……のかはこの場にいるカズヒラ以外の人間にはわからない。

そしてスネークを通して〈妖精が見える人間は例外無く変人〉という事実はカズヒラの心に影を落としていた

 

……もっとも、それは生存に致命的な物と言うよりプライドに傷をつける類の物だが。

必然的にカズヒラが自身に傷を付けて来る物を回避するため沈黙は不味く、話題を転換するのにそう時間は

かからなかった。

 

「……まあ無線機や時計が体に備わっているって言うのは随分と便利そうだ、ただメンテナンスが大変そうな気もするが」

 

「いままでズレた事はないデスけどネー」

 

「それはそれで凄いな」

 

 

 

「…………………………………………………………あっ」

 

 

 

「ん、どうしたクロード?」

 

「……気付いたかクロード」

 

「ええまぁ……もっともこれは随分とまた面倒になりそうですけど」

 

「まあな、だが聞く必要はある」

 

「ですね」

 

「何だか俺だけはぶられている気がするが……一体どうしたって言うんだ?」

 

「……副司令、さっきスネークに時間を見るように言われましたよね?」

 

「ああ、彼女たちにも聞いてたな」

 

「ええ、そして俺たちは“俺たちの後ろにある壁時計”と腕時計を見て確認しました」

 

「……そうだな」

 

「ですが、彼女たちは違いました」

 

「・・・言われてみれば確かに壁時計を見ていなかったな、だがそれは————おい待て」

 

「気付きましたか」

 

「あの……えっと……私たちが時計を見てなかったのは確かですけど、そんなに気にするほどじゃ——」

 

 

 

「違う」

 

 

 

「・・・えっ?」

 

「長良、“私たち” じゃない、“お前たちだけ”、だ」

 

「ちょっと!いくらなんでも言い過ぎじゃない!?」

 

「だな、いくら何でも言葉の綾くらいでそんな言わなくてもよぉー——」

 

「いいや、長良には悪いが事実だ」

 

「・・・へ?」

「ちょっと!?」

「……おいおい」

「…………………」

 

一気に空気が悪くなる

 

突然たかが言葉の間違いで一介の兵士に細かく指摘されれば

 

ましてや正式な場で仲間がいる場であればなおさら険悪なムードというのは重いものになる

 

 

 

だが

 

 

 

 

「だがそれでも言わせてもらう……確かにお前たち“4人は”時計を見ていない、

 

さっき時計を見ていたのは俺たち“3人”、カズヒラ・クロード・そして………………鹿島だ」

 

 

その瞬間、鹿島が席を立とうとする

 

 

……だがここは艦娘だけが、味方だけがいる場では無かった

 

 

クロードのMK.22を引き抜かれ寸分狂い無く鹿島の頭を捉える

 

 

カズヒラの体はすでにドアの前に陣取り誰1人通ることを許さない

 

 

 

間が1つ開き

 

 

 

遅れて席を立とうとする4人

 

 

しかしそれは余りにも遅かった

 

 

「全員動くな」

 

 

彼女たちが動くより前に声が場を制す

 

 

「とりあえず鹿島は席に着け、クロードは銃を下げろ」

 

「しかし——」

 

「下げろ」

 

「……失礼」

 

鹿島に向かって一言詫びを入れるとクロードは銃を下ろす。

同時に鹿島も席に着く…………その表情は誰がどう見ても優れているものでは無かったが。

 

「……どうやら思っていたほど体は鈍っていないみたいだな、カズ」

 

「……まあな、これでもあんたに着いて行くって決めた身だからな」

 

「それは構わんがお前も席に戻れ、別にここで力を使う相手はいない」

 

「……みたいだな」

 

スネーク言葉に従い、カズヒラも席に戻る。

その足取りは随分と軽く……一体いつドア前に移動していたのか彼女たちにはわからなかった。

 

「……でだ、俺がさっきお前に言ったみたく、お前はわざわざ時計を見て確認した訳だが………どうして時計を見たのか教えてくれ」

 

「…………それは」

 

「理屈はわからないだろうがそれでも言葉に出して説明してくれ、でないと……こっちも相応の手段をとらざるを得なくなる」

 

そう言ってスネークは葉巻を取り出し口に咥え、懐からライターを取り出し火を着ける。

 

火が着いた事で口内に煙が溜まる、溜まる。

その煙はやがて渦を巻き、フゥーと吐き出され、部屋に飛び出し、船の空調によって空気と混ざり循環する。

 

 

もっとも彼女……鹿島の頭の中も最高速度で循環し、グルグルと渦を巻いているだろうが

 

 

スネークの言った“それ相応の対応”の意味はそのままだが、具体的にどうする気なのか。

その内容は一切この場、この間ではスネークは語る事無くただ葉巻を吸うだけだが……早い話が形上の“尋問”

無論、その“尋問”は手段を問われず、人権は遥か彼方へおいて置かれ、話をするまで“相応の対応”を取る物だ

人によってはその“尋問”のあと、跡形も無く体が消えていたり身体が壊れていたりする。

 

……しかもその“尋問”を担当するのは諜報班に所属する専門家が行う

 

あまり鹿島に……女性にオススメするような代物では無い

 

 

「……えっと、まず最初に言いたいんですが」

 

それを知ってか知らずか、スネーク達が願っていた通り、無事に鹿島は言葉を紡ぎ始めた。

言葉が出始めれば後はトラウマでも無ければ物事を語るというのは止まることは無い。

……その言葉が、情報が真実か嘘か、はたまた良くできたカバーストーリーかは聞いたものが判断する必要があるのだが。

 

「ああ、何だ?」

 

「まず……そもそも私の頭には勝手に、というか自然に時間を見る術が有りません」

 

「えっ無いのか?」

 

「ちょっ摩耶、その言い方……」

 

「はい、無いんです」

 

「……ちなみに聞くが今のところ、艦娘で時間がわからない奴は居たか?」

 

「NOネ、いままでそんな娘聞いたコトもありまセーン」

 

「あの鹿島さん、今も日付がわからないまま?」

 

「いえ、さっき1974年の12/11の金曜日だと教えてもらったので日付はわかっています」

 

「……鹿島さん、今は1975年で木曜日です」

 

「・・・えっ!?」

 

「……という具合に、鹿島は少なくともお前たちと違って“記憶や経験”を元に日付や時刻を認識している。

あたかもお前たちの体の中に時計がある様な感覚で“頭から直接”日付を確認出来ていない」

 

「そう……なるんでしょうか?」

 

「そもそも1974年の12/11は水曜日よ!」

 

「……クロード」

 

「確認済みです、五十鈴さんの言う通り木曜日でも金曜日でも無く水曜日です」

 

「という訳だ」

 

「…………あの〜」

 

ついさっきまで、一触即発の空気はすでに流れ至って普通……というより若干寝ぼけた会話を始めたこの会談

日付や時刻を把握していない事が、一体どうしてこんな真剣に話し合われているのか解らないのは当然の結果で手を挙げる者が出てきてもおかしく無い、現に長良がそっと手を挙げた。

 

「確認なんですけど……なぜわざわざ鹿島さんに日付や時間を自然と確認出来ない事を聞くんですか?

ただ単に日付や時間を知る術が無くていままでわからなかっただけなんじゃ無いんですか?

現に鹿島さんは時計を読めてますし……」

 

「そうよ、そもそもこの場で確認する事でも無いじゃない」

 

「……それはだな——」

 

「いやっ結構重要……つうか重大なことだと思うぜ?」

 

「……何だわかってたのか」

 

「まあなっ……って言ってもなぁ……」

 

罰が悪そうに頭を掻く摩耶はため息を吐きながらもスネークの言葉に答える。

だが隣にいる長良や五十鈴がその答えに食ってかかる。

 

「……じゃあ摩耶はこの人達が何をしたいのかわかるって言うの」

 

「いやっ、何がしたいかって言うよりどう“したかった”かだな。

って言っても私が気付いたのはクロードさんが違うってはっきり言ったからだけどなぁ……」

 

「えっと……どういうこと?」

 

「確証は無ぇけど……多分、鹿島がそもそも艦娘なのかってのを疑ってたんじゃねえか?」

 

「はあ!?どういう意味よそれっ!!」

 

「いやっそのまんまの意味だっ。

まず考えてもみろよ、私は艦娘ですって言ってる奴が艤装も無くて海にも浮けなかったらどう思うよ?」

 

「……絶対そんなの艦娘な訳ないじゃない」

 

「んだろ?

そんでもって鹿島は……なんつうか…………こう……アレだ………あれ…………頭の中に時計がねぇんだよ」

 

「……それが何だって言うのよ」

 

「言われてみれば私らは自然に、あたかも当然のことだと思ってたけどよ……私らは知りたければ時計を見なくとも今が何時何分かなんてすぐわかるだろ?それも金剛も言ってたみたいに今までズレたこともねえ」

 

「……そうですね」

 

「だろ?それってつまり私ら艦娘って言うのは“時刻を知ることの出来る存在”って事にもなる。

まあ暦をいちいち確認しなくても良い存在だ、なんて言えるかもしれねぇけどっ」

 

『・・・それって艦娘って言う?(言うデスカ?)(言いますか?)』

 

「しょうがねえだろ!っつうか私の考えじゃねえし!!」

 

「……まあ摩耶の言ってる事で大体あってる」

 

流石にこのままでは色々と進まない、それと摩耶がいたたまれない。

話を進展させるためにもここでスネーク自ら話を始める。

 

「もっとも摩耶の言った例えが一番わかりやすいがな。

鹿島が日付や時刻を知る術が無い、ある意味“艦娘に備わっているべき機能”とでも言うべき代物が欠如してた

……まあ考え過ぎかもしれんが、艤装の無い艦娘とある意味では同じだ、印象は薄いがな。

だが俺たちは傭兵である以前に軍事組織で集団だ、できる限り不安因子やリスクを取り除く必要がある。

だからこそ、こうしてお前たちに彼女がそもそも艦娘なのかっていう事を確認してもらう為の場を設けた」

 

「そう意味が有ったんですか……」

 

「……じゃあクロードさんやそこの副司令さんも知ってた事なのね?」

 

「「いいや、まったく」」

 

『ハイ!?』

 

「……あのな、いちいち怪しい奴がいるが仲間かもしれないからそいつの味方と一緒に話をしようと言われて贔屓無しで物事を判断できるか?」

 

「それは……」

 

「……随分と驚いているから俺からも言わせてもらうが、身内への情報の秘匿はこういった場では常套手段だ

ましてやよくわからない対象と話をする時は第一印象が何よりも重要になる。

どんな非道で下種な奴でも、顔見知りから“いい奴だ”と一言言われるだけで印象は変わる。

通常なら毛嫌いしたり胡散臭いと断定できる様な人間が、そういう人間だ、と断言出来なくなる。

それが単なる人付き合いだけなら良いが借金絡みになったら途端に問題になる、ましてやそれがビジネスなら目も当てられない………言いたい意味ことはわかるな?」

 

『…………………』

 

カズヒラが言いたい事……つまりこの場は戦場になりうる場所だということ。

そんな場で保護した対象が怪しい、もしかしたら何か隠しているかもしれない、などと言われて会談に臨めば相手の怪しい仕草や、何の意味もない言葉に余分な印象をもたらす、目に入る情報が絞られる。

 

それは単純に必要な情報を隠し、不必要な情報を捏造する

 

……それが致命的なミスに繋がることがあること位、彼女たちですらわかる

 

「もっとも鹿島がどうやら本物みたいなのはわかったがな。

それはそれとして、何故鹿島にだけ時刻や日付がわかる機能……とでも言うのか?とにかく便利な能力が無いのかは気になるところだが……」

 

「それは彼女たちの領分、俺たちが関われる事じゃない。

それが身体的な障害だって言うなら俺たちも手伝う事が出来るが、そういった類の物では無さそうだからな」

 

「そうですね……詳しい事は日本に戻ってからじゃないとわかりませんし、鹿島さん自身の人事の問題も起きますからスネークさんたちが出来る事は無い……ですね」

 

「まあ俺たちの仕事はお前たちの援護だ、鹿島の身柄に関してどうこう口を出すつもりは無い」

 

「…………ほんとうにデス?」

 

「ああ、そりゃ研究畑の連中が知ればどうなるかわかったもんじゃ無いが、あいつらに知らせた所でここでは問題が起きる以外の未来が視えない」

 

「「・・・確かに」」

 

「あっもうそう言うレベルなんですね……」

 

「まあ、島であったあの研究者を見る限り、ね……」

 

「あいつはそれなりに極端だがな、それでも問題が有るのは否定しない」

 

((((アレでそれなりって……))))

 

「?」

 

「ああ、鹿島は出来ればどころかまず知らなくて良い、いや認知しなくて良い」

 

「だな」

 

「ですね」

 

「はぁ……?」

 

「…………まあ何だ、とりあえずコレで会談は終わりだ」

 

「えっもう終わりなの?」

 

「言っただろ、俺はあくまで鹿島が本当に艦娘なのかが気になっていた……がそれも杞憂だった様だしな。

実際、彼女が申告している通り練習巡洋艦鹿島に間違い無いんだろう?」

 

「はいっそれは私たちが保証します、艦だった時の記憶からも鹿島さんに違いありません、それに香取さんと服装も似ていますし」

 

「そう言えば姉妹艦は服装が同じだったな」

 

「そうよ、だから間違い無いわ」

 

「私らはいらなかったみたいだけどよ」

 

「そんなこと無いデスよ、マヤーが居なかったら私のランチタイムが遅れてまシタよ?」

 

「マヤー言うなッ!」

 

「……カズ、何かお前が聞きたい事はあるか?」

 

「いいや、俺はあくまで行方不明者発見と同じ手順で対象が過ごした状況が知りたかっただけだからな。

だがそれも別に急ぐ事でも無いだろう、それに日付がわからないって言うなら整理する時間も必要だろう。

なら、後でパッツィーにでもまとめて報告させた方が良い」

 

「そうだな……クロード、お前は?」

 

「特にありません、鹿島さんの体は検査した方が良いとアドバイスする以外には」

 

「それもそうだな……なら名取、この後は掃海か?」

 

「えーと……掃海はいま出てる娘たちがやってくれますけど、その後にすぐ哨戒で出ますね」

 

「ならパッツィーの所に鹿島を案内してやれ、あそこに検査機器があるからな。

ついでに空いてる奴にこの船の案内でもさせてやってくれ、何ならパッツィーでも構わん」

 

「そうですね……あれっ?けど鹿島さんの部屋は?」

 

「問題無い、そこら辺も寮母に任せておけ」

 

「わかりました」

 

「ならここらでお開きだな、誰も文句は無いか?」

 

その言葉に鹿島も含め全員が頷く。

 

「それならクロードとスネークはこの後残ってくれ、今後の展開について話したい。

それと今日中に荷物は降ろし切る、その後の同時展開中の機動部隊援護に関してアドバイスが欲しい、金剛と摩耶も残ってくれるか?」

 

「あん?じゃあ高雄とか霧島も呼ぶか?」

 

「いやアドバイスが欲しいだけだ、支援艦隊全員を呼ぶ必要までは無い、それに何人かは海に出てるしな」

 

「あー……それもそうだな」

 

「それならなら確実解散だ、名取は案内を頼む」

 

「はい、なら鹿島さん行きましょう」

 

「あっ私も行くわ、どうせ何人か一緒に哨戒に出るし」

 

「五十鈴ちゃんも一緒に行こうか、それじゃ失礼します」

 

「あっえっと……ありがとうございました?」

 

「なんで疑問形なんだ?」

 

「……スネーク、この場で何と言って別れれば良いかは俺にもわからないぞ」

 

「そうか?普通に失礼しましたで………ああ、確かに気まずいな」

 

「だろ?」

 

「あの!?すっっっごく恥ずかしいんですけど!!?」

 

「ほらっ行くわよ鹿島、これ以上ここに居たらもっと大変な目に合うわよ」

 

五十鈴が随分と力強く引っ張りながら鹿島を外に連れて行った。

……その間に、だいぶ抑まっていた癇癪が復活していた気がするがおそらく気のせいだろう。

仮にまた再燃していたとしても、パッツィーあたりがどうにか上手く処理するだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ソレで、一体何の様デス」

 

「……まあそう構えないでくれ、色々と言いたい事は有るだろうがな」

 

「……金剛?一体どうしたんだ?」

 

出て行った直後からこれか……まあ我慢していたなら無理もないか。

それに今回はさすがに俺にも問題はある、そこら辺は我慢するしかないだろう。

 

「惚けないでくれマスか、私たちからアドバイスなんてあなた達には必要ないデショ?」

 

「……まあさっきのが方便なのは認めるが」

 

「んじゃ……私らに用があるってことか?」

 

「ああ」

 

「……鹿島や名取たちにも知られたくないのか?」

 

「まあな、もっとも名取たちには話しても問題自体は無いが…………鹿島にはマズい」

 

「……とりあえず、聞くだけ聞きマス」

 

「そうしてくれ、カズ」

 

「わかってる、既に鍵は閉まってるさ」

 

「おいおい……一体何だよ」

 

……実際、話がわかる奴にだけしか話せない。

駆逐艦にも話せなくは無いが、周りに回って鹿島の耳に入ればどうなるかわかったもんじゃ無い。

とりあえず金剛にだけでもと思ってたがちょうど良かった。

 

「……まず、さっきの話し合いで不自然な事が有るだろう」

 

「あん?不自然なこと……クロードさんが銃を抜いた事か?」

 

「……確かにそうだな」

 

「勘弁して下さいよ、それに弾は元から抜いてあったんですから……」

 

「まぁそれはそれとして、俺が取り押さえてたがなっ」

 

「2人ともなかなかだった……でだ、確かに鹿島に銃を向けたのは随分とイレギュラーなイベントだった訳だがそれとは別にいささか鹿島に怪しい点があった」

 

「……ワタシとしてはナゼ鹿島が逃げようとシタのかが謎デスネー」

 

「あっ確かに言われれば……そもそも逃げる意味も無えよなぁ……何でだ?」

 

「ああ、その点に関しては俺らから話がある、くれぐれも鹿島にはどうして逃げたんだ、なんて言うなよ」

 

『…………………』

 

この件に関しては既にパッツィーに船に戻ってすぐクロードを通して頼んである。

おそらくフォレストも呼んでどうにかするだろう…………が、刺激は与えるべきでは無い、長良たちにも処置は施すだろう。

 

 

 

 

 

 

「こんなことを言うのも何だが………鹿島は何者かにあの島に放り込まれた可能性が高い」

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習巡洋艦鹿島

 

彼女が自称艦娘である線は消えた

 

だがおかげで一番面倒な案件に変わった

 

 










えー……皆様にお知らせが。

去年からお伝えしている通り、執筆時間が受験によって大幅に削られております。

それに加え、第一志望合格のためにはこれからさらに執筆時間が削れると思われる。

そのため、この大規模作戦が終わり次第、《鎮守府警備部外部顧問スネーク》は一旦執筆作業を止めさせて頂きたいと思います。

もちろん、受験が(無事に)終われば執筆活動は再開したいと思ってます

また、まだ執筆活動はもう少し続けようとも思っております。

大規模作戦途中で休止する可能性もあります……が、中途半端な形で放り投げたいとは私自身思っております。

作者の私情ではありますが、ここで皆様にご報告させて頂きます。
次回作は……また1ヶ月ほどかかりそうですが、気楽に待って頂けると幸いですm(_ _)m

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