鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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皆々さま、大変お久しぶりですm(_ _)m

……様々なテストが終わり、後はテスト結果を待つのみとなりました。(まだ高2ですが)
もっとも昨日先生から「やばいねぇ〜」って言われたんですけどねっ!!
この小説の投稿ペースもヤバいんですがねぇ……


そんな訳で、とりあえず私情がひと段落ついたので今月は3〜4本出すことが出来そうです。
……いつまで大規模作戦なのか作者自身も分かりませんが、お時間の許す限り付き合って頂ければ幸いです。

それでは本編をどうぞ





大規模作戦 ラバウル

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・ココハ、ドコ?

 

 

 

 

 

 

・・・・・・オトガキコエル

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・ナミのオト?

 

 

 

 

 

・・・ワタシは・・・・・・ドウシテイタンダろう?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・けど、海がチカイミタイ

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・マダワタシは浮いてイルの・・・・・・カナァ?

 

 

 

 

 

 

・・・ドウデモイイカナ

 

 

 

 

 

 

・・・すこしネヨウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12/11 05:53

 

朝日が昇り、南西諸島の海面は照らされ水平線が輝く

 

そんな美しい風景に3つの影が海面上に高速で移動していた

 

それは昇ったばかりの朝日を浴びていた3機の攻撃ヘリコプターだった

 

「……流石に眩しいな」

 

「朝日を背にしているとはいえ射し込んできますからね」

 

「……念のために確認するがお前の調子は」

 

「絶好調、とまでは言いませんがグリズリー相手なら三頭くらいは余裕です」

 

「俺は五頭だ」

 

「そう来ますか……」

 

「まあこんな暑いところにグリズリーなんざ居ないだろうがな」

 

そして一番機とも言える先鋒を飛ぶヘリは2人を後方キャビンに乗せて航行していた。

パイロットはマロイ、コードネーム“ベア”、今現在MSFに所属しているヘリパイロットの中で一番の腕を持ち、帰還率が100%の男。

 

その後方キャビンに乗っているにはクロード

衛生兵としての高いスキルと歩兵としての高い戦闘能力を併せ持ち、特に近接戦闘術CQCに関しては総司令官を除いて負け無しという実力を持つ。

また、医療班のドクと共に〈患者を治すのも作るのも得意な人間〉の1人に数えられている。

 

 

そして彼らが所属する民間軍事組織、MSFの総司令官でありBIG BOSSの称号を持つ戦士スネーク

 

 

この2人を筆頭に現在3機のヘリは次なる新天地であり自分たちの家となるラバウルへの上陸のため先行して上陸地点の確保・及び周辺状況の偵察の任務を遂行するため精鋭を乗せて新天地ラバウルへと飛んでいた。

その表情に不安や懸念といった物は一切見えない。

 

 

「まあこんな暑いところにグリズリーなんざ居ないだろうがな」

 

《……後ろで何を言い合ってるんです》

 

「・・・そう言えば俺たちはベアに連れて来られたんだった」

 

「大丈夫だクロード、こいつ一匹ならそう手間はかからない」

 

「確かに」

 

《……お二人共、俺が機体を操縦してるの忘れてませんか》

 

「冗談だ、それにお前を相手に対ヘリ戦闘演習は骨が折れる」

 

「BOSSの言う通りだ、お前に無誘導のミサイルを当てるのは難しい」

 

《…………他の奴らが泣きますよ》

 

 

 

 

さて、ここでラバウルに関して簡単に説明する。

この小説を読んでくださってる読者の大半はメタルギアソリッドや艦これを、少なくとも存在くらいは知っている方達だろう、そしてラバウルは旧日本海軍の航空基地があった事も映画化などで知っている人も多い

 

…………かもしれない

 

そこでラバウルの位置に関して簡単に説明する。

そもそもラバウル島という島は無い、正しくはニューブリテン島(現パプアニューギニア独立国領)の北東部には先端が僅かに入り組み、そしてビスマルク海に続く小さな湾がある。ここが古くから良港として政庁なども設置され栄えたラバウルという都市だ。

 

良港、というのも天然の港としては珍しく大型船が問題無く受け入れる事が海底の深さから簡単であった事。

立地としては気候が高温多雨ではあるものの、陸地に深く入り込んだ湾のため高波や暴風雨によって船や港に被害が出る恐れが少ない事が挙げられ、漁港というより物資や人の往来で栄えた港町だ。

しかし、1975年時点ではオーストラリアの委任統治領であり、また深海凄艦の攻撃によって島民が避難したため、現在はただ湾があるだけにとどまっている。

 

旧日本軍の飛行場はラバウル市内にあった、今はその名残は直接にはわからないが航空写真で見るとその名残として市内が滑走路の様に2kmほど一直線になっているのがわかる。

そしてスネーク達はこの港町…………………では無く装甲車が上陸する湾口付近を制圧する。

 

 

 

《……ピークォードから全機、間も無く目標地点を視認する。

このまま高度を落とし海面を這いながら島に接近、降下地点の安全を確認次第降ろす》

 

《深海凄艦がいた場合は?》

 

《海上に展開していた場合は降ろさず即離脱だ、攻撃も自衛以外では行わない。

それ以外の場合はBOSSの判断のもと柔軟に対応、良いか?》

 

《了解》

 

《よろしい、ならついて来い》

 

そう答えるとピークォードが急降下

 

高度150mから一気に海面スレスレまでに降下し言葉通り海面を這いながら速度を上げる

 

その機動に遅れることなく後続の二機も海面を這いながら島に接近していく

 

「……マロイ、到着まであと何分だ」

 

《あと五分もかかりませんが……何か?》

 

「なら後続の二機だけ先に降ろさせろ、俺らは一旦偵察がてら周辺を上空から観たい、援護も兼ねてだが」

 

《……直前に伝えますか》

 

「ああ、俺が直接指示する」

 

《了解です、ならこのままアプローチします》

 

「頼む、それとクロード」

 

「はい」

 

「罠の設置があらかた確認でき次第俺とお前で斥候に行く、準備をしておけ」

 

「他の面子は?」

 

「罠の解除に回す、もし罠が少なければ何人か残して小隊を編成するかもしれないが」

 

「了解、なら解毒剤を多めに持ってくか……」

 

三機編隊が海面をなぞり島に近付いていく

 

レーダーには一切の反応が無く穏やかな海が広がっている……様に見える

 

そしてその前方右手に山の大きな影が見え始めた

 

《全機攻撃態勢、射線を開けてやれ》

 

そう言ってピークォードのパワースライドが自動で開く

 

そして当然の様に右にスネーク・左にクロードが座りベルトを掛ける

 

「こちらスネーク、全員よく聴け、到着まであと1分ほどだ。

後続の二機は先に上陸地点周辺を制圧射撃、その後隊員たちを降ろせ、俺たちは空からお前たちを援護した後上陸地点周辺を上空から軽く港を偵察する、質問はあるか?」

 

《敵が対空砲を設置していた場合BOSSたちが危ないのでは?》

 

《すぐに俺が回避行動を取るがな!》

 

隊員からの質問に瞬時にベアが吠えた。

 

「そういう事だ、それにこっちがダウンしても損害が少ない、もっとも死ぬ気は一切無いがな」

 

《……了解だ、良いかお前ら!もしBOSSが襲われたら俺たちが迅速に敵地を制圧する!》

 

()()()()()()()()()()》》》》》》

 

「……だから死ぬ気は無いと言っただろう」

 

「良いじゃ無いですか、士気に問題無いと思えば」

 

「……そうか」

 

いま隊員が言ったことがスネーク達が直接港に直接上陸しない理由だ。

艦娘がトラック島を代理で収めているとはいえ占領し前線基地にしている様に、深海凄艦がラバウルをそれこそ拠点化・要塞化していてもおかしく無い。

 

湾内には機雷などが設置されている可能性が高いため、艦娘による掃海の後でなければ海上からは湾内に侵入できないためもし深海凄艦がいればそれこそ船団全滅の可能性もあり、艦娘にも被害が出る可能性があった。

 

そのため上陸地点を港の手前である湾口に選定、その上陸地点を少数精鋭の人員をもって先行偵察、敵がその時点で攻撃してきた場合は即離脱、船団に合流する。

上陸が可能であればそのまま上陸地点を制圧、装甲車が乗り上げられる状態に仕上げる。

その後船団からの援軍を待ち、陸と海から同時に北上、さらに空からの支援のもと港を制圧・占領する。

これにより仮に深海凄艦が居たとしても、少なくとも艦娘と船団の被害を最小限に抑える事ができる。

 

 

 

仮に敵が増援前に仕掛けてきた場合は・・・12人だけで殲滅する必要がある

 

 

 

 

《こちらワモン、これよりグリーズと共同で海岸線の制圧射撃を開始します、援護を》

 

《こちらピークォード、援護を引き受ける、派手にやれ!!》

 

そう言ってピークォードが急上昇

 

同時に機首を左に向けスネークの射線を確保、後続の二機に道を開ける

 

スネークの足元を2機のヘリが通り過ぎそのまま直進して行く

 

《グリーズ、射撃準備よし》

 

《制圧射ッ!目標前方海岸線、FIRE‼︎》

 

左右に展開した二機がそれぞれ30mm機関砲をぶっ放す

 

 

BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!

BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!

 

 

遅れて重低音が海上に響き、ヘリのローターでも充分うるさい機内でそれは体に響く

 

そして海岸沿いの土が舞い上がり、地形がえぐれる

 

だがそれを見ているだけにはいかない

 

すぐに双眼鏡を取り出し制圧地点の状況を確認する

 

「……どうやらトラップらしき物は無いな。

スネークから制圧部隊、射撃を中止し隊員を下ろしてやれ、周辺に深海凄艦も居ない、引き続き援護する」

 

《ワモン了解、射撃を中止し降下地点に急行します》

 

「ピークォード、レーダーに反応はあるか」

 

《周辺100kmの周辺空域に反応はありません、後方にも脅威無し》

 

「了解だ」

 

そう答え、ある程度の距離と高度を保ちながらホバリングするピークォード。

すると先ほどまで制圧射撃をしていた地点で二機のヘリが急停止。

同時にその真下で幾つかの爆発、海岸の砂が舞い上がる、その後に隊員たちがロープで垂直に降下する。

 

《BJからスネークへ、降下地点クリア、上陸地点周辺を警戒する》

 

「ああ、くれぐれも気をつけろ、ワモンとグリーズの二機は引き続き上陸地点周辺を警戒してやれ、港の様子を見てからそっちに合流する」

 

《了解》

 

そう答えると機体が再び傾き島へ向かう、

ただ仲間がいる方ではなく島の北側へ回りながら接近する。

 

《BOSS、とりあえず流す感じで良いですか?》

 

「ああ、周り全体が見渡せる程度の高度で良い、沿岸沿いに飛んでくれ」

 

《了解です》

 

「クロード、周辺警戒を怠るなよ」

 

「わかってます」

 

《熱源反応無し、生物はいない模様です……生き物は》

 

「気を抜くなベア、相手が俺らの知っている生命体だとは限らないからな」

 

《プレデターですか……あながち間違えてませんね》

 

そう無線で言い合いながら人の手が入らなくなったお陰で少しずつ荒廃している少しの建物と鬱蒼とした森林地帯を眼下にピークォードは高速で通過して行く。人が住んでいたとはいえその数は少なかったらしく、建物は目につく限りでも幾つか有るくらいで目に入る景色のほとんどが熱帯雨林だった。

 

だがある所で突然熱帯雨林が消えた

 

《ここが……ラバウルですか》

 

「結構立派な港町じゃないか」

 

「…………砲弾の後さえ無ければですけど」

 

そこは森が切り開かれ人工的にできたであろう空間だった。

カズが言っていた滑走路というのが街の真ん中を突っ切る不自然な形で建物も何もない直線の事だろう。

港には思っていたより損傷は無く、海岸沿いにも停泊できる場所があったため島そのものへの上陸は見た限り不可能ではなかった。

 

 

しかし港の奥にある家や建造物は……砲撃によって欠け、崩壊し、そして荒廃していた

 

 

ヘリは滑走路だったであろうものをフライパスし港に入る、その間に上陸地点周辺の状況を無線で確認する。

 

《上陸地点周辺の周辺状況を現在確認中……だが地雷らしき物の反応は無し、金属探知機には反応があるため反応物の確認、回収する》

 

「わかった、そっちには何かいる気配はあるか?」

 

《沖に出れば魚は居るだろう……が、海岸線には何もいないようで》

 

「そうか、こっちも家畜が何か残ってるかと思ったんだがな……何もいない、木とガレキだけだ」

 

「しかしこっちは飛行場跡地と港は有りました、何か痕跡があるでしょう」

 

《こっちは引き続き上陸地点周辺をクリアリングします、何かあればすぐ駆けつけます、アウト》

 

上陸地点には聞く限りでは脅威が無く、罠の類も無さそうだった。

だが無さそうだったから負傷した、死亡したなど言い訳にも成らない、そのことをよく知っている隊員たちは引き続き上陸地点周辺を隈なく警戒する。

 

《……とりあえず対空砲の類はない様です、東の山側には飛行場が見えましたが使われてた痕跡はありませんね》

 

「……特に何もないな」

 

《こっちに全員下ろしますか?その方が早そうですが……》

 

「万が一の可能性がある以上危険は最小限に抑える、行くとしても12人引き連れて歩いていく」

 

《なら合流します、そろそろ燃料がビンゴです》

 

「わかった」

 

そう答えると機体は旋回し、来た方向に戻って行く。

 

《こちらピークォード、間も無くそちらに合流する、めぼしい物は無かった》

 

《了解、こちらもあらかた捜索終了、トラップらしきものは上陸地点周辺には無かった》

 

「わかった、俺がそっちに合流次第全員で港に行く、三機は俺らが港に向かう事をカズに伝えといてくれ」

 

《出来れば援護したいんですがね》

 

《安心しろ、俺たちが代わりにBOSSを守る》

 

「……まだお前らにおもりされる程歳を食っちゃいない」

 

「そう言わないで下さいよ、頼り甲斐のある部下じゃないですか」

 

「まだ負けないがな」

 

「そりゃそうですが」

 

そう言い合っているうちにピークォードが上陸地点に着き、機首を上げて機体を降下させる。

そのままロープを使わず体を落下させ地面に着地する。

同じ要領でクロードも着地し、自分の装備を確認していた。

 

《周辺に脅威無し》

《だがそろそろビンゴです》

《空中給油でも出来れば話は早いんだがなぁ》

 

「スネークから全機、輸送に感謝する、さっさと戻ってこっちに帰ってこい」

 

《了解、どうかお気をつけて、BOSS》

 

 

 

ピークォードが上昇し機種を曲げ海に飛んで行く

 

それに続いて二機のヘリが自分たちの上空を一度旋回したあと同じ様に飛んで行く

 

恐らく3時間後にロケットポッドとハイドラ・ミサイルでもあらん限りに搭載して戻って来るだろう

 

 

 

「……BOSS」

 

「おお、久しぶりだなBJ」

 

「どうもです、最も今回は派手に暴れられそうに無いですが」

 

「せいぜいお前が暴れる必要がない事を祈るか」

 

スネークに声をかけて来た男、BJ。

体つきはヤッコ程では無いがゴツく、身長はスネークより少し大きい。

しかし決して人を見下す様な風に喋らず、驕らず、敬意と距離を持ってスネークに接する。

歳もスネークより一回り上だが実力・カリスマ性ともにスネークの方が上であり、その戦士としての姿に感服しスネークの元で1人の兵士として付き合っている。

 

「全くです、お前に暴れられると俺の仕事が増える」

 

「それがお前の仕事だろう、クロード」

 

「お前が言うな、突貫するお前が一番俺の世話になるだろうが」

 

「だが部下たちがその分戦いやすくなる」

 

「……そうだな、だが俺の仕事は増えるんだ」

 

「それがお前の役割だからな」

 

「お前が言うな、お前が」

 

ちなみにクロードもスネークより歳は上なのだが、人としても戦士としても心から尊敬しているために砕けた敬語を使いながらも1人の戦友としても接する。

 

「2人ともそこまでにしておけ、他の奴も引き連れるんだ」

 

「「「「「「「「「「お久しぶりですッBOSS!!」」」」」」」」」」

 

「お前達、わざわざ俺に付き合ってもらって悪いな、なんなら1人でも良かったんだが」

 

「……それを副司令が許すとは思えないんですが」

 

「何だお前わからなかったのか、だからBOSSの付き添いに俺らが選ばれたんだぞ?」

 

「……何か何とも言えないっす」

 

「光栄なことだぞ?ヤッコさんがわざわざBOSSのために選んだぞ」

 

「そうなんですか!?」

 

「そうですよねBOSS?」

 

「ああ、ヤッコが選りすぐりを寄越してくれたと言っていた」

 

「へぇ……俺が選ばれたんだ」

 

「おおっ?お前は嬉しいのか?」

 

「そりゃ嬉しいですよ、BOSSの役に立てるって認められた様な物ですから」

 

「その気持ちを忘れるな、俺たちは自分が生き残るために戦うがBOSSのためには動くんだ」

 

「わかりましたッ!!」

 

「…………全員言いたいことは言ったな?」

 

スネークが全員を見渡しそう言う。

先ほどまで緩やかな雰囲気だった集団は引き締められ、一瞬で静かになり視線を一点に集中した。

 

「よく聴け、現在時刻は06:10だ。

船団がラバウル沖に着くのは早くて12:00過ぎ、さらに湾内の掃海を踏まえると本格的な上陸は14:00だと見込まれる。

俺たちはそれまでに上陸地点周辺のトラップの捜索・無力化、そして周辺状況の偵察が俺たちがすべき事だ。そこで俺は一旦3つの小隊を編成し一分隊を海岸線のトラップ解除、残りを周辺状況の偵察に繰り出す。

10:00に再び全員集合、その後港のクリアリングをかける、何か意見はあるか?」

 

「BOSS、よろしいですか」

 

「構わんBJ、続けろ」

 

「先ほどまで海岸線の状況をある程度確認しましたがトラップらしきものは確認できませんでした。

また、何者か……まあ人とは限りませんが、何らかの“モノ”が上陸した形跡は少なくとも1週間はありません。上陸地点周辺の偵察には賛成しますがトラップの捜索に関しては全員で行えば30分で終わるかと」

 

「……他のやつもそう思うか」

 

「はい、わざわざ一個小隊の人員を割くより全員で一気に終わらせた方が色々と都合が良いです」

 

「わかった、なら今から30分でトラップの捜索・解除を終わらせる、不審物も探しておけ。

その後ここら一帯を偵察、10:00から港に移動しクリアリングをかける、それで良いか?」

 

『異議なしッ!!』

 

「よしっなら行動開始だ」

 

『YES BOSS‼︎』

 

そう答えると11人の部下達は一斉に海岸へ走り出し、徹底的な捜索を始めた。

 

「……さて、俺も作業するか」

 

そして伝説の傭兵も体を後ろに反り、体を伸ばしながら後海岸へゆっくりと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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同時刻、西方海域に展開する連合艦隊機動部隊

 

 

1週間前の強襲によって完全に復旧中の港湾施設を破壊、および再建中の泊地を中破まで追い込んだ。

だが後者の泊地、もとい泊地水鬼への攻撃は港湾施設の破壊時点で航空戦力の半分以上を消耗していたこと、泊地へ接近する間に敵空母機動部隊の攻撃を受け三式弾を消耗したことから撃破する火力を発揮する事が出来ず、さらに泊地へ進行中に潜水艦の襲撃を受け大鳳と青葉に魚雷が命中、幸い駆動部に被害は無かったものの湾内にて敵輸送艦と駆逐艦を確認、砲撃戦は不可能と判断しトラックまで撤退する事となった。

 

 

第1艦隊旗艦 加賀と翔鶴・大鳳・利根・青葉・衣笠らが後衛

第2艦隊旗艦 由良を筆頭に・阿武隈・川内・神通・陽炎・不知火ら6人が前衛を務め、現在破壊しきれなかった泊地へ決戦を仕掛けようとしていた。

 

「由良、周辺の状況は」

 

《対空電探に感無し、潜水艦もこの前みたいに攻撃はさせません》

 

「そう、ありがとう」

 

「泊地水鬼はすでにワシらが仕掛けることをわかってるようじゃ、偵察機からの報告じゃと湾内に駆逐ロ級にPT小鬼群がウヨウヨいるそうじゃ、泊地水鬼もある程度回復しておる、こりゃ骨が折れるのぉ」

 

「そうですけど、青葉たちの役割は港湾施設と泊地の破壊にありますから。

それに、派手に暴れて友軍の上陸支援も兼ねてますからちょうど良いんじゃないですか!」

 

「……そんなこと言ってまた中破するんじゃないの、青葉」

 

「ああ!衣笠は青葉がフラグを立てたと思ってますね!?

残念ですがこの青葉、事件の臭いをたどり記事を書くという壮大な命運を背負っているのでフラグの1つや2つどうということはないのですよっ!!」

 

「……それがフラグな気がするがのぉ、それに青葉、何か忘れてないか?」

 

「はい?」

 

「前回もお前さんがロクでもないことを言って、縁起でもない事が起きたんじゃが」

 

「…………………」

 

「そういうこと、あんたは何とも思わなくても周りに被害出たら何の意味も無いでしょうに」

 

「ううぅぅ……」

 

青葉が碌でもないことを発っするとそれが現実化する。

前回は暇では無くなっただけとはいえ、その後半ば強引に港湾施設へ突入する事となった。

それが作戦の想定内、どころか作戦通りではあるのだがだいぶ無茶をしたのも事実。

幸い周辺警戒に務める艦に被害が無かったため危険な綱渡りをせずに済んだものの、連戦によって疲労した体に鞭を打ち、どうにかラバウルまで後退した彼女達にしてみれば青葉は八つ当たりの対象になっていた。

 

……まあだからと言って連携が崩れるほど柔な信頼関係は築いていない彼女たちだが

 

「お喋りはそこまでにしてくれるかしら、うるさい」

 

「「「……………………」」」

 

信頼関係は崩れない……ハズだッ

 

「か、艦載機の発艦準備完了しましたッ!」

 

「……私と翔鶴で泊地水鬼を、大鳳は烈風隊を作戦通りに、前衛はタイミングに合わせて湾内へ突入、突入の指揮は第2艦隊に任せるわ、私たちは泊地を撃破次第残存戦力の殲滅に移行するわ、何か質問は?」

 

《じゃあ私らは加賀たちの侵入ルートを確保すれば良いんだね?》

 

「そうね、そうすれば利根たちも泊地へ攻撃を仕掛けられるから」

 

《なら露払いは任せてッ!やっっと魚雷が撃てる!!》

 

《姉さんは自重して下さい、帰りの護衛も有るんですから》

 

《わかってるって神通》

 

《こちらの指揮は任せて下さい、必ず皆さんを泊地の目に前に届けますから》

 

《……由良さんって地味に恐いこと言うよね……》

 

《陽炎ちゃん?何か私に落ち度でも?》

 

《ナニモアリマセン、っていうかそれ不知火のセリフ!》

 

「……全艦に通達、ここで私たちの存在を知らしめるわ、第一次攻撃隊発艦始め」

 

 

もはや咎める必要も無く、加賀は艦載機発艦の指示を出す

 

その指示のもとつがえられた矢は風上に向かって発射され攻撃機に変形していく

 

大鳳が射出したボーガンからも次々と戦闘機が空へ舞い上がり多くの影を朝早い海面に映し出す

 

艦上攻撃機5機編隊が24隊

 

直掩機3機編隊が10個小隊

 

その間に第2艦隊が突撃準備に入る

 

 

 

さて、突然だが戦術的な説明をしよう。

(そんなもんとっくに知ってるわっ!という方は次の会話まで飛ばして読んでも構いません)

 

歩兵戦での突撃は集団で行うことで敵の射線を分散させ味方の消耗を抑える、単独では敵に肉薄し急所を突くことで敵を効率良く裁くことに意味が…………いや、理想である。

一方、艦隊戦においての突撃は引き撃ちによる敵の牽制、又は必殺の魚雷による一撃離脱が主な運用になる。

また歩兵・艦隊戦の両方に共通する突撃に付随する効果として敵が相討ちを嫌って通常通りに攻撃が出来ない点、あとは奇襲による運用が極めて効果的な点だろうか。

 

そして、どちらの場合も囮としての役割を担うことも多い。

敵としては隠れながらならまだしも、正面から接近してくる相手を見逃す訳がなく攻撃するしかない、それが大規模集団なら なおさら。

 

しかし、その間に遊撃部隊(別働隊と行った方がわかりやすいだろうか)、そういった部隊が敵の思わぬところから攻撃することで敵は正面からくる相手を処理しきれなくなり、結果倒すことが容易になる。

 

MSF戦闘班の主な戦術は正面からの徹底した面制圧、大火力による敵戦術兵器の破壊、そして潜入部隊によるゲリラ戦と情報撹乱、これら3つを基本軸として戦術を立てている。

これにより少数でもある程度の規模なら相手をする事が出来る……まあ例外的な逸材もいるのだが。

もっとも今説明した突撃の意味は兵士に実力があり、密な連携が取れる場合でなければ意味を成さない。

 

 

 

さて、艦娘と深海凄艦の戦闘においてはどうか

 

 

 

艦船という兵器の性質を持ちながら人の形をしているという特徴を持つ彼女たち。

その特異的な側面を持つことから、艦隊戦とも歩兵戦とも言えない両方の特徴を持った戦闘が行われる。

 

例え駆逐艦の砲だとしても人ひとりを10kmも離れたところからピンポイントで狙撃できる程の精度は持ち合わせて居ない。そのため視界圏外………海上では水平線の向こう側にいる敵に砲撃を加えるには質より量で攻撃しなければならない。

それで決着が着かなくも無いが、大体の場合水平線の手間側になる5km前後が基本的な間合いになる。

 

そしてさらなる接近は彼女たちの戦闘に歩兵戦の特徴を持たす。

本来艦隊戦での突撃となると魚雷の有効射程と敵の回避軌道を踏まえて3〜5km前後が普通だ。

だがすでに5km圏内にいて、ましてや敵が自分と同じように人ひとり程度の的であればさらに接近する必要がある、必然的にそれは距離を保った砲撃戦より肉薄しタコ殴りもとい肉弾戦を仕掛けた方が倒しには効率が良い、必然的に火力が低い駆逐艦や軽巡は接近・もとい突撃することで砲の貫通力を補い、一撃必殺の雷撃を喰らわせ、時には殴る。

 

威力と間合いがだいぶ桁違いだが、基本的に単発火力の高い戦艦の主砲などは携行ミサイルやライフル銃の様にある程度の距離を保った状況でのメインツール。

一方で火力の低い駆逐艦の火砲は、互いに相手が見える状況でさらに接近した際に威力を発揮するハンドガンと魚雷という名のナイフ。

さらにハンドガンですら取り回しが効かない近接戦闘ではそれこそ錨や拳という武器で殴る。

 

 

突撃は必然的に相手へ接近する行為

 

視界の効かない夜などでは奇襲として有効

 

だが視界の開けた真昼間での突撃は…………敵へのわかりやすいエサとしての役割を担う

 

 

 

「みなさん、準備は良いですか?」

 

「私はいつでもいけるよっ!」

 

「姉さん、今回は朝日を背にはしていますけど夜戦では無いですからね」

 

「ははは……旗艦じゃないから何も言わないけど、由良姉は頑張ってね」

 

「……できるだけ期待に応えますっ」

 

「それはあたし的にダメですッ!」

 

「ほら川内さん!由良さんが困るからそろそろ止めにしましょう?」

 

「……良い加減私たちの出番も欲しいです」

 

「不知火、それは言っちゃダメ」

 

「そもそも艦娘である私たちのための小説のハズなのに、艦娘がほとんどでてk——」

 

「それ以上はダメだよ!?それこそ本当に消されるわよ?!」

 

「不知火に落ち度でも?」

 

「堕ちるところまで落とそうね、あんた……」

 

そう言いながらも自身の主砲に弾薬を装填し安全装置を解除する、そして魚雷の信管に不備が無いことも確認する、もっとも既に魚雷発射管に固定されている魚雷は妖精たちによって完璧な感度に設定されており、高波さえ無ければ射手の技量によって狙い通りに敵の喫水線下に穴を作る。

 

「……ではみなさん、加賀さんの合図があり次第全速力で湾内へ突入、敵中に空母部隊が通る道を作ります」

 

「要するにできるだけ相手を掃討するんでしょ」

 

「……いつも通り、ですね」

 

「もっとも目の前に鬼がいたりするけど」

 

「陽炎っ、それ神通のこと?」

 

「・・・・・・」

 

「違いますよ!?泊地水鬼のことですからね!っていうか川内さんはなんでこのタイミングで神通さんを煽るんですか!!別に神通さんが鬼なわけないじゃ無いですか!!」

 

 

 

「しかし陽炎、この前神通さんが教導の元で訓練した際に神通さんのことおn——」

 

「あああぁぁそれ以上は言わないでええええぇぇぇ!!!」

 

 

 

「……相変わらず、神通は駆逐艦に効果抜群だねぇ」

 

「本当ね、私じゃ全然怖がらないのに」

 

「けど鬼怒姉も結構怖がられてるよね、私は全然だけど」

 

「阿武隈は……ほら、ねえ」

 

「なんですか!?」

 

「……というか、私が怖がられる原因は姉さんに半分はあると思うんですが」

 

「さあね、けど私たちがあの娘たちにできるのは技術を教えるくらいだし」

 

「…………“前”みたいにはいかないもの、そう簡単に……負けて、消耗して、沈むわけにはいかないもの」

 

「私も……強くなったんですけどね」

 

「……まっ昔は昔でしょ、今は徹底的に暴れなきゃ!」

 

「……そうね、川内の言う通りいまは囮として、連合艦隊第二艦隊としての任を全うしましょう」

 

「さすが“元”水雷戦隊旗艦ですね」

 

「やめてよ阿武隈、あんたもやったことあるんでしょ?」

 

「夜戦バカほどじゃありません」

 

「夜戦バカって誰よ」

 

「「「川内(姉さん)のことよっ!!」」」

 

そんな頼れる先輩とも言える軽巡4人がやり取りをしている間でもなんだかんだで対潜・対空警戒に務める

駆逐艦2隻が居るあたり、それは鬼の花百合のおかげなのかもしれない。

 

そんな6人の上空を朝日に照らされた銀翼の翼が幾つもの集団を保って西へ向かって飛んでいった

 

その先に有るのは……様々な“モノ”の権化だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・キタノカ

 

太陽が昇ったばかりの空を見るソレ

 

その先には何も無い……様に見えるだけでソレが感じ取った物は確かに存在し、実際脅威として接近していた

 

周りにいるのは護衛……とも言えない脆いモノ達に指示を出す。

 

指示と言っても自分とは違い魚雷しか攻撃手段が無い魚雷艇と申し訳程度の火砲しか搭載していない駆逐艦。

 

 

 

これで一体どうしろと

 

そう思う心というものが有るのかは測りかねるが少なくともソレはこの役回りを快く思ってはいない

ただ淡々と、まるで決められた役割を担うだけでやる気が無い

 

 

ソレはただここに居るだけで良いのだから

 

 

だからと、黙ってその場に居座っていたところで敵がハイそうですか、と見逃してくれる訳でもない。

 

だからと、言って自分には空を確保する術も無い、空の自由は向こう側に既に譲ることが決められている。

 

だからこそ、真の意味が出てくるのだろうが……ソレにとってはまるで意味がない、少なくとも損するだけだ

 

 

 

それでも野生の本能から敵を迎え討つための準備はする

 

対空機銃を展開し、対空砲も用意する

 

あとは敵を追い払うための固定砲台に砲弾を込める

 

 

 

…………それ位だ

 

あとは徹底して魚雷艇と駆逐艦に相手の邪魔をさせる、とにかく相手の目をこちらに向けさせる。

 

ソレ自身は勝手にやられるだろう、だがそれさえすれば後は向こうが勝手にやってくれる、

 

それでもただ敵に向かって撃ち続ける、ただ海の藻屑へ還す、それだけ。

 

 

 

視界に粒が見え始める

 

それはやがて影となり、ついに翼となった

 

それに向かって固定砲台で射撃を始める

 

近くにいる駆逐艦も機銃を撃ち上げるが精々進路を妨害する程度の効果しかない

 

少なくともここに居る駆逐艦では撃墜は難しいだろう

 

それでも無視はできない、ただひたすら敵に向かって撃ち続ける

 

それでも敵は進路を曲げない

 

ただ真っ直ぐこちらに向かってくる

 

堪らずその進行方向に向かって対空砲を撃ち出す

 

だが突如として敵機が急降下

 

対空弾幕を避け、その真下にいる駆逐艦や魚雷艇に向かう

 

駆逐艦ならまだしも敵機の機銃だけで十分な損害を被る魚雷艇からすればいい迷惑だ

 

唯一の持ち味である回避能力と機動力で脆いモノ達はその降下地点から逃れる

 

だが敵機はそれ以上の機動力で機首の向きを変え適確な射撃を行い何隻もの魚雷艇を破壊した

 

駆逐艦も見た目にはさほど影響はなさそうだがそれなりのダメージを受けているらしく妙に弱々しい

 

 

 

いや妙なのは敵機の方だ

 

 

 

なぜ急降下したのに爆撃を仕掛けなかったのか?

 

 

 

そもそも所詮魚雷艇、わざわざ航空戦力を振る価値がない訳でもないがそこまでの脅威でもない

 

それなのに今も何度も急降下・反転・離脱を繰り返し離れたところで攻撃を続けている

 

本来ならこちらの方に戦力を振ってくるハズなのに

 

見ると敵機の数は2,30機ほど

 

前回の空襲時は60機くらいだったのにその半分ほどしかまだ来ていない

 

それはつまり別働隊があるという事

 

 

すぐに護衛から目を離しあたりを見渡す。

 

周辺は港町だった様だが幸い見通しは良い、後方以外に山無いため射線も視界も確保できている。

 

正面は東、今まさに敵機が相手をしている、こっちは駆逐艦も相手をしている、追加が来れば何かしら叫ぶ。

 

北には港町だった名残から幾つかの建造物、灯台まである。

 

だが敵機の姿は無い、レーダーにも反応が無い事からこっちからは来てないのだろう。

 

実際北側はほとんどが平野で奇襲を仕掛けるには厳しい。

 

 

となると来るなら……西か

 

 

北が平野なら当然南も同じような平野が広がている。

 

そして同じ様に建造物が立っており、むしろ建物の数はその多くが民家だったであろう物が多い。

 

そのためレーダーにも映らない地面ギリギリを飛ぶのも難しいため奇襲を仕掛けるにはあまり向かない。

 

それこそ超音速機なら十分だが艦娘や深海凄艦は在りし日の艦船の性能や因果を引き継いでいる。

 

ある程度の強化は出来てもスペック的に出来なかった事はほとんど出来ない。

 

 

そのためマッハを超える艦載機の運用は不可能である…………今の所は。

 

 

なのでいくら速度が出る兵器である航空機であっても姿が遠くから見えてしまえば奇襲にならない。

 

ならこの状況でそれが可能なのは山岳部である西側からのアプローチしかない。

 

カリマンタン島に位置するここは北西部にイラン山脈・ミューラー山脈があるため西側の標高が高く、さらに港から50kmほど陸地に入ったところにも丘陵地があるため航空機も接近しやすい。

峰に沿って飛行し、ちょうど良いところで山を越えればそのまま一気にここに来られる。

 

それに普通の航空機と違うのはその大きさだ。

 

意味は海上に展開しているためよく見えるが、艦娘についているカタパルトに着艦が可能なほどの大きさ、

 

山からの接近なら地表の柄とその小ささから目立たない。

 

それに加えて目の前では激しい戦闘が繰り広げられている。

 

囮としては持ってこいだ、その餌に食いついている間に真後ろから突き刺してくるに違いない。

 

念のため南もレーダーで探るが反応無し、となれば確実に西からの山越えで間違え無いだろう。

 

正面は駆逐艦らが必死に銃撃している

 

予想通りならあれは陽動であり囮だ、なら放って置いても問題無いハズだ。

 

それなら後ろに集中していればいい。

 

 

西側に体を向け

 

砲塔も向け

 

電探も向け

 

視線を山脈沿いに向け異物を探す

 

何か動けばすぐに分かるように

 

例えば……そう

 

 

 

 

 

爆弾を抱えた航空機とか

 

 

 

 

 

・・・・・・ミツケタ

 

 

 

 

 

距離約50km

 

機数100機

 

機種、艦上攻撃機

 

間違い無い、別働部隊だろう

 

何より遠くからでも分かる抱えているのが魚雷のような物

 

だがそれは陸上にいる自分を壊すために搭載した大型爆弾に違いない

 

 

 

・・・ならやる事は決まってる

 

 

 

目標,標準

 

対空砲に炸薬弾を押し込む

 

高度1200m、速度500km、距離42km

 

全力で攻撃をする

 

ただ単純な明確な理由

 

向こうが殺す気で来たならそれに対して全力で抗う

 

例えどんな種族だろうがまかり通る普遍的な理由

 

殺意を向けてきたならそれを叩き返すまで

 

対空砲が次々と火を噴き弾頭が飛翔して行く

 

弾頭には近接信管が仕込まれているため目標に近付けば勝手に炸裂する

 

だが山脈に沿って、山肌を沿って接近してきた敵は山越えをした後も地表に沿って近付く

 

そのため目標の手前で信管が作動し効果的な弾幕が成形されない

 

おかげで欠損なく敵が迫る

 

だがそれくらい分かっている

 

近接信管が地表を這う目標に“有効的”では無い

 

それなら敵を“有効利用”すれば良いだけの話だ

 

未だ接近してくる敵に弾種そのままで標準する

 

ただし先ほどとは違う

 

同じ様に対空砲によって弾幕が形成される

 

 

ただし敵の頭上で

 

 

敵の手前で炸裂しては何の意味も無い

 

だが敵は“有効的”な弾幕を形成させない様地表を這って飛んで来ている。

 

なら敵の進行方向を制限する様に“有効利用”すれば良い

 

具体的には敵機を上昇させない様、弾頭を敵機の通常より上に狙う

 

結果敵の進行方向をこちらだけに制限する、地面しか這えない様にする

 

 

元から接近するまでは地面ギリギリを飛ぶつもりだったのだろう。

実際建物が少ない山側からの接近は低空飛行でも実行可能であり、近接信管の影響を受け難くできる。

そしてギリギリのところで急上昇、投下し離脱するかそのまま一気に水平爆撃を仕掛ければ良い。

 

 

だが上昇する選択肢を失えば対空機銃が有効的に機能する

 

無理して上昇すれば対空砲で爆発四散

 

そのまま直進すれば爆撃を断行するか、機銃で蜂の巣か、はたまたその両方か

 

そして敵は手練れ、急上昇などという愚手は犯さないだろう

 

ならどの道壊されるに違いない

 

だがそれでもこの方法なら確実に敵に消耗を強いることが出来る

 

今更向こうも反転できない

 

なら真っ直ぐ突っ込んで来るしかない

 

それで良い

 

それが向こうの最善策なのだから

 

こっちはすでにどうしようも無いのだから

 

間もなく10kmを切る

 

そうなれば1分後には爆撃進路に乗るだろう

 

だが同時に機銃の射程圏内である

 

すでに周りには多数の銃身が敵へ向きを合わせている

 

向こうもこちらに機種を向ける

 

 

用意は整った

 

 

機銃の有効圏内に・・・・・・入った

 

 

 

一斉に機銃を撃ちまくる

 

 

 

そのおかげで地面が揺れる

 

 

 

地面が爆ぜる

 

 

 

そして自分の視界も揺れる

 

 

 

あちこちで煙が上がり

 

 

 

 

 

 

自身も煙を上げていた

 

 

 

 

 

・・・ナゼダ!?

 

気がつくと周りが“燃えていた”

 

自分自身の装備が、得物が破壊されていた

 

対空陣地と成っていた自身の対空砲は2つを残して全てが破損、使用不能になった

 

機銃群も1発も撃たれることなく完全に破壊されていた

 

あたりに立ちこめた黒煙のおかげで周辺状況が詳しくわからない

 

だが砲撃や叫び声からしてまだ駆逐艦はやられていない、つまり砲撃ではない

 

 

 

だとすれば・・・航空機しかない

 

 

 

あたりの煙が捌け始め上空が見える

 

 

 

その空には山側からの接近とは別の航空機が通り過ぎ去っていた

 

 

 

それが来たであろう方向を見た

 

 

 

それらは・・・多数引き連れて

 

 

 

北から来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「航空隊奇襲に成功っ、泊地水鬼の持つ火力のほとんどを無力化出来ました!」

 

「っ由良」

 

《わかりました、第二艦隊これより湾内に突撃します!》

 

『了解っ!!』

 

その返事と共にタービン独特の機械音と水飛沫を上げながら急加速していく6つの影。

それは人類最後の希望として、唯一深海凄艦に対抗できる存在と認識されている女達、艦娘そのものだった。

 

現在、輸送作戦と同時並行で実行されている敵重要施設破壊は最終局面を迎えており敵泊地の破壊を連合艦隊空母機動部隊の全力攻撃を持って成そうとしていた。

第一波の空爆は実質は“2方向から”の波状攻撃を持って泊地の攻撃能力を剥ぎにかかった。

 

具体的には大鳳の烈風隊を先行させ敵の注意を湾内に集中。

烈風隊自体も機銃を持ってPT小鬼群や駆逐艦を攻撃させることでヘイトを集める。

その間に後方(方角でいう西側)から山越えという形で接近・奇襲させる。

 

だがその奇襲もおそらく、というか絶対にバレるだろう、という事は加賀が予想していた。

前方に半分、残りを後方に配置しても数の少なさからある程度予想が付く。

奇襲の火力を上げるために後方に戦力を集中させればそれこそすぐにバレる。

だが相手は泊地水鬼、正面に火力を集中させれば奇襲がバレることは無いだろうがより艦載機を消耗する。

 

 

ならどうするべきか?

 

 

その答えは泊地水鬼がいた周辺の状況が示した。

 

 

「……烈風隊をあからさまな囮だと思わせて別働隊が本隊だと思わせ灯台の後ろに隠れて接近させるとはのぉわしなら考えつかない発想じゃ……これもあの外部顧問とやらのおかげか?」

 

「…………」

 

利根が加賀に問いかける、それだけ彼女が提案した作戦はシンプルかつ大胆だった

利根の偵察機からの情報と事前に頭に叩き込んだ地理情報から、泊地水鬼背後に航空隊を侵入させられる山脈があること、正面は湾で左右は平野であること、そして平野の中に灯台が建っていることが分かった。

 

それらから加賀は烈風隊を囮として湾正面で攻撃と離脱を繰り返し、敵に別働隊がいると悟らせ背後から現れた敵機を本隊だと思わせる。確かにソレは本隊なのだが“真打”は灯台の後ろに隠れながら接近させる。

 

前方には自分には害の少ない戦闘機が30機

 

対して狙い澄ましたかのように突如背後に現れた敵機は100機

 

思惑を悟って目の前に現れた100機

 

それが明確な意図を持って襲って来るのであれば食いつくわけが無い

 

それがまるで突撃の様なあからさまな囮だと知らなくても、だ。

 

その餌に食いついている時に、たった20機の別働隊の存在に気がつくことが出来るのは相当な経験を持った者か冷酷な位に気性が穏やかで常に客観的に物事を捉えられるようなもの位だ。

 

 

……この方法を思い付く方もまたしかり、なのだが

 

 

 

「まぁスネークさん達は奇想天外な作戦ばかり立てますから」

 

「そうですね、あの発想力も凄いですけどそれを躊躇せず実行できるあの実力も凄いですから」

 

「…………まぁ影響を受けたのは否定しないわ」

 

「・・・本当か」

 

「ええ」

 

一航戦加賀

その二つ名は先の大戦から続く大日本帝国海軍の空母における一角を表し、赤城と共に当時最強の機動部隊を編んだ一隻。艦娘として、人として体を得たあともその二つ名に恥じぬ実力を併せ持ちエースの一人として横須賀鎮守府でいまも第一線を張っている。

 

そんな彼女はクールという言葉がよく似合う。

嫌いな物はただただ嫌い、好きな物は(食を除いて)よく分からない、あまり喋らない、冷静沈着、普通に怖い

それが大体の艦娘や提督が抱いている加賀の印象。

唯一、赤城だけは「加賀さんは正直じゃなくて少し不器用なんです」と語る。

 

彼女は当然戦闘でも冷静かつ的確にこなし、そして任務に真面目だ。

先日の戦闘でも単的に作戦の目的である囮としての役割を果たすために自ら仕掛けた。

 

「……あの男はよく言うの、“使える物は全て使え”ってね」

 

「確かに、秋月ちゃんの訓練の時も活用できる物は全部使えってスネークさんに言われました」

 

「そういえばマーリンさんやフォレストさんもそんなこと言ってたわね」

 

「……それなら我輩もいつか会って見たいもんじゃの」

 

 

そんな彼女が戦闘機をあからさまな囮に、大々的な囮を背後から、本命を隠しながら真横から一気に送り込むという戦術をとるとは利根は思っていなかった。

航空戦力を持たない相手には真正面から大編隊を送り込むだけでも十分だ、それこそ前後の二方向からの攻撃で事足りる。

 

それでも加賀はあえて過剰とも言える戦力を投入した、

そして結果的に単純に戦力を投入するより少ない損害と多くの成果を上げた。

 

なぜなら“使える物は全て使え”という

 

あの加賀にそれだけの影響を与えた人間がいるなら気にならないはずが無いのだ。

 

「……それより、そっちの準備は大丈夫なのかしら?」

 

「我輩の主砲はいつでも撃てるぞ、無論三式弾じゃ」

 

「青葉も準備完了ですっ!いつでも行けますよ〜!!」

 

「あんたほどほどにしなさいよ……私も行けるわ、一気に畳み掛けましょう」

 

「ええ、第一次攻撃隊を回収次第私たちも第二艦隊に続いて湾内に侵入するわ、周辺の警戒は頼むわよ」

 

「我輩に任せよ、何か近付いて来たらすぐに言おう!」

 

第二艦隊が出払った状況の今、空母3隻と重巡洋艦のみの編成である第一艦隊は殴り合いならまだしも潜水艦や水雷戦隊による襲撃には弱い。

そのため大鳳の彩雲による周辺偵察と利根の艦載機による対潜哨戒によって警戒網を形成していた。

 

万が一潜水艦がいた場合は第二艦隊から陽炎と不知火がこちらに合流し、青葉と衣笠がその2人と代わる。

その第二艦隊は湾内にて進路を作るため、この作戦を遂行するため、突撃をかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標正面ッ!艦種駆逐艦とPT小鬼群、数30、距離6000m!」

 

「随分と選り取りだねぇ、徹底的に叩かなきゃ!」

 

「川内と神通はPT小鬼群の相手、残りは駆逐艦を中心に掃討します、出来る限り加賀さん達が侵入する道を作るよう立ち回って下さい」

 

「要するに全部叩けば良いんでしょ!」

 

「姉さん!」

 

「……ぁあ分かってるから神通、敵を引き剥がしつつ各個撃破、でしょ?」

 

「そうです!くれぐれも湾内で魚雷は使わないで下さいよ!」

 

「ハイハイ」

 

「・・・これより湾内の敵を掃討します!

味方同士の位置に注意しながら戦闘を行って下さい!では散開!!」

 

旗艦由良の号令のもと、第二艦隊は二手に分かれ敵の掃討を開始する。

戦力を分散させることは基本的に戦闘では避けたい手だが例外がある、時間との戦いである時と敵が明らかに格下で、かつ数が多い時である。

 

今回はこれに当てはまる

 

性分とその戦闘スタイルから多数の相手に立ち回ることが得意な川内には敵のほとんどを占めるPT小鬼群の対応、そのサポートに神通を充て残りは駆逐艦を仕留める。

そしてほぼ戦闘能力を削いだとはいえ、以前鎮座している泊地水鬼を後方の第一艦隊によって徹底的に破壊するため、その侵入経路の確保が急務。

 

「神通!そっちに逃げたのよろしく!」

 

「もうやりました!!それより右に3つ!」

 

「はいよっ!」

 

PT小鬼群はその名前通り群で襲ってくる。

だいたいその群れは4,5隻で一つの群れを形成しているため群れ一つで一個の深海棲艦としてカウントしている

そのため、数30とは言っていたものの実際にはその倍以上の目標がいる。

 

 

その群れを牧羊犬の如く追い立てる川内と刈りとる神通

 

それは牧羊犬というより羊を襲うオオカミの方が表現が正しい

 

何せ侵入経路を確保するため湾の隅へ敵を追い立てている

 

砲撃をひたすら避けるPT小鬼群だけを牽制射撃で誘導し湾の隅へ

 

駆逐艦を由良達に任せて2人でひたすら叩いている

 

 

「っ川内さんたちをやらせはしないわ!」

 

「……私たちを無視するとは良い度胸ですね」

 

 

敵も馬鹿ではない、川内たちを倒せば打開できると押し寄せる。

そんな的を黙って見逃す訳も無く、陽炎と不知火がその露払いを担いつつ敵駆逐艦の視線を引きつける。

 

 

「よーく狙って………てーぇ!」

 

「数が多すぎっなの!」

 

 

その間に由良と阿武隈の2人が敵駆逐艦を砲撃する。

その砲撃に驚きこの2人を狙ったところで陽炎や不知火が横っ腹から不意打ちをかける。

 

幸い、と言うべきかこの敵艦隊……いや敵軍には指揮を執るものが居ない。

唯一、泊地水鬼が指示を出すのだろうがその本体も今はそれどころでは無く、指揮を執れない。

結果、ただ目の前にある的を撃つことしか能がない集団に成り下がり、連携など取るにとれないのだ。

 

あっちを向けば他から撃たれ、撃たれた方を見れば目の前にいた敵に反撃される。

もはや軍事的集団ではなく、武器を持っただけの集団に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

《こっちは粗方やったよ!あと10くらい!》

 

「こちらもほとんど倒しました、あと駆逐艦も3隻だけよ」

 

だいぶ片付いた後、由良へ川内が無線で送る。

もはや統制されていない集団はなす術なく、一方的にやられて行った。

 

《いえ、あと二隻です》

 

不知火がそう言うと離れたところから爆発と爆炎、どうやら陽炎が仕留めたらしい。

そして残ったのは大破した二隻。

 

 

 

《最後の仕上げよ、私たちで仕留めるわ》

 

 

 

…………………それと居座り続けていた泊地だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負は決した

 

・・・いや、最初から勝負なんてものは無かった

 

ソレにしてみれば良い迷惑だが、ただその場に存在するだけ

 

ただその場に居座ることがソレの役目

 

そのためだけにわざわざ中途半端な形で居続けた

 

それもここまでだ

 

すでに護衛だった物たちは没した

 

……いや、正しくは二隻ほど残ってたがそれもここまでだ

 

海上には軽巡に駆逐艦が六隻

 

さらに奥に何か浮いていた

 

空母とその護衛だろう

 

ソレが使える砲門はたった二つ

 

体は元からそれほど動けなかったが今は全く動けない

 

ただ敵が向かってくる光景を見ること位しか出来ることがない

 

それでも表情を変えずただ敵を見ている

 

だが睨むことは無かった

 

上空には再び銀翼の群れができる

 

それも全て爆弾を抱えたもの

 

……撃ったところでどうとなる物でも無い

 

だがソレにとってはせいぜい抗うように見せるのが精一杯

 

それがソレの役割とはいえやはりソレにしたら迷惑だろう

 

だがその迷惑な役割もここまでだ

 

すでに直上にある銀翼

 

そこから振り落とされる黒い雨

 

ソレはふと上を見た

 

 

 

 

 

その時の顔は・・・・・・ニヤけていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……敵泊地の撃破、確認しました」

 

《こちらでも確認しました、周辺にいた駆逐艦や小鬼群も全滅です》

 

「随分と呆気なかったわい、あの泊地水鬼、最後全く抵抗せんかった」

 

「成すがままでしたね」

 

「むぅ……青葉、どぉ〜も怪しいと思うんですが?」

 

「そうよね、必死に抵抗してくるかと思ったのに意外とあっさりしてたわよねぇ」

 

「まぁ向こうが必至だったのは確かじゃろうが……それなら尚更必死に抵抗すると思うんじゃが」

 

《何というかさぁ、手抜いてる訳じゃ無いんだけど……なんかこう、弱かったんだよね》

 

《それは言えてるわね、駆逐艦も何というか……ただ逃げてるだけだった感じね》

 

《わたしも由良姉の言う通りかなぁ……そんな脅威じゃ無かったよ》

 

《……加賀さん、意見具申宜しいですか》

 

「構わないわ不知火、続けて」

 

《はい、前回の襲撃時には湾内にて敵輸送艦と駆逐艦が多数確認されていました。

しかし今回は少数の駆逐艦と大量のPT小鬼群が護衛として配置されていました、これは明らかに妙です》

 

《妙……ってどの辺が?》

 

《敵に手応えが無かったのは敵が弱かった、あるいは指揮を執るものが居なかったという理由である程度説明が着きます、ですがPT小鬼群が配置されていたという点は説明できません》

 

「それは我輩たちを妨害するためでは無いのか?あれは放って置いても狙い撃つにも厄介じゃ」

 

《確かにPT小鬼群はその機動力で攻撃を回避し雷撃を加えてくるので面倒です。

面倒ですがそれは水雷戦隊が率いている時に発揮されるもので、防衛には全く向いていません。それこそ加賀さん達がアウトレンジから攻撃を加えているだけでも今回は倒すことは不可能ではありませんでした》

 

「……確かにそうでしょうね、五航戦の娘と一緒の方法なんて取らないけれど」

 

「瑞鶴でも今回はアウトレンジ戦法は取らないと思いますよ、無駄に艦載機が消耗するのは目に見えてますから」

 

《しかし敵は先の襲撃で空母が出てくる事は分かっていたハズ。

であれば泊地が回復する程度に余裕があれば、防空に長けた艦種を配置する方が自然でしょう、むしろあえてPT小鬼群を配置する手間の方が無駄です》

 

「うむ、敵が空から来るのが決まってる訳では無いが魚雷艇をわざわざ護衛には配置するのは非効率じゃな」

 

《加えて先の襲撃時いた輸送船、あれは何を載せていたのか、または何を載せ何処に行ったのかも重要かと》

 

不知火の指摘は適切、かつ全員の意表を突くものだった。

敵が弱かった・指揮が取られていなかった、これは誰もが分かったこと。

だがPT小鬼群がわざわざ配置されるのが不自然であることはほとんどが気が付かなかった。

 

敵が弱かった……いや、やる気が無かったのは何故か。

 

味方を揃えるのには十分な時間があったのにわざわざPT小鬼群という非効率な配置をして来たのは何故か。

 

それにあの輸送船は何だったのか。

 

あれは補給物資だったのか、あるいは…………………………

 

「…………この海域を北へ離脱しトラック島へ引き返します。

その際敵と遭遇した場合はできる限り戦闘を避けます、利根は鎮守府に打電を」

 

「それは・・・」

 

「救援要請、恐らく私たちはまんまと罠にハマった様ね」

 

少なくとも客観的事実から分かったことは泊地水鬼は囮だった可能性が高い

 

その泊地を破壊した自分たちはまさに“エサ”でしか無い

 

「やはりか……それで内容は」

 

「“ワレ、トグロニマカレタ”それで伝わるわ」

 

「分かった、すぐに打電する」

 

「大鳳、彩雲を一旦戻して、警戒網を組み直す必要があるわ」

 

「わかりました」

 

「第二艦隊は対潜警戒を特に厳重に、対空警戒はこちらで引き受けるわ」

 

《了解しました、すぐに合流します》

 

「全艦に通達、この海域を即離脱します、また敵との戦闘は極力回避、何か見つけたらすぐに——」

 

「ッ最悪じゃぁ!!」

 

「……どうしたの」

 

「ここから北に100kmに空母ヲ級に駆逐艦二隻、それと潜水艦!!

偵察機からは・・・空母ヲ級はflagship、潜水艦の中に……未確認の個体じゃと!?」

 

『!!?』

 

「……どうやら本当に罠にハメられたようね」

 

「どうします、反転して南へ?」

 

「駄目よ、ここから南は完全な深海凄艦の勢力下。

機雷もあるでしょうし確実に捕捉されるわ、それに燃料的にも厳しい」

 

《……利根さん、まだ偵察機は生きてますか》

 

「いや、先ほど落とされたが……それがどうしたと?」

 

《では敵は空母と駆逐艦以外は全て潜水艦ですか?》

 

「他にもいる可能性はあるが……少なくとも三隻以外に海上に浮上している敵はおらんという話だった」

 

《なら潜水艦以外の敵を叩きましょう、潜水艦は足が遅いですから駆逐艦と空母さえどうにかなれば逃げ切ることが出来るハズです》

 

「……由良、潜水艦の足留めは出来る?」

 

《当然です、私これでも潜水艦は得意なんですよ?航空機とかはちょっとダメですけど》

 

「空の警戒はこちらに任せなさい、潜水艦は頼んだわよ」

 

《っ第二艦隊先行します!最大戦速!!》

 

『了解ッ!!』

 

事態は転換した

 

泊地水鬼を倒すという任務を果たした連合艦隊

 

この数時間後にMSFもラバウルへ無事に上陸する

 

囮としての役目も十分に果たされた

 

 

 

だがそれで、それで終わらなかった

 

 

 

それはMSFが事前に予想していた通りに

 

そしてそれ以上の最悪の事態へと変わって行く

 




次回は3/10頃をめどに投稿します。

幸いストックが今日中に3つほどは確保出来そうなので。
……4月になったら投稿できるかは不明ですが、首を長〜くして気長に待って頂ければ嬉しいです

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