鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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ギリギリ間に合いました………

いや、今年中に大規模作戦が終わってないから間に合ってないのか………

それでも投稿します!

来年も引き続き鎮守府警備部外部顧問を続けさせて頂くのでこれからもよろしくお願い致しますm(_ _)m



※文字数があまりにも多かったため、二分割しました。





大規模作戦 secret

「全く……いきなり何を言い出すかと思えば、人を変人呼ばわりか」

 

「いやっ……すまん」

 

『………………………』

 

気まずい空気が2人に流れる。

先ほどスネークによる爆弾発言によりカズヒラは一時直立不動に陥った。

その間に何かを察したのかルイ達は艦娘を引き連れて改装捕鯨船に戻って行った。

そのため、ブリーフィングルームにはいまスネークとミラーしかいない。

 

「……いや、そもそもあの妖精が見える事自体で変人扱いするのはどうなんだ?」

 

「それは俺も思ったが、どうやら妖精が見える奴は艦娘と連携が取りやすいらしい、妖精自体とやり取りが可能になるからな。もちろん妖精が見えるのは全員じゃ無い、そしてなぜか例外なく妖精が見える人間は変人だ」

 

「……いやなっ?だからそこが可笑しいと俺は思うんだが……」

 

そう言いながらカズヒラは2つのマグカップを取り備え付けのコーヒーメーカーにセットする。

MSFは傭兵集団、司令・副司令と言った明確な上司はいるが基本的に自分の事は自分でやる。

わざわざ他の人の分まで仕事でなければやらない。

そのため例え副司令であろうともコーヒー位は自分で用意するのだ。

因みにコーヒーや紅茶といった嗜好品も流石に毎日は飲めないが全員賄う程度に在庫は未だに残っている……酒はほとんど残っていないが。

 

「横須賀の提督は随分と無茶をする、抜き打ちで俺に鎮守府を襲撃させて俺が始動しやすくした。

他所の提督とはまだ関わってないが、俺たちが彼女達と一緒に行動する事を最終的には認めたんだ、普通は適当な理由をつけて拒否してもおかしく無いはずだがな」

 

「……なるほど、そう言う意味での変人か」

 

(それだけだとは思わないがな)

 

「なんか言ったか?」

 

「何も言ってはいないぞ」

 

「そうか……

 

 

何でBOSSには見えないんだ?

 

俺は・・・BOSS以上に変人だとでも言うのか?

 

 

「……カズ、俺がいない内に随分と言うようになったじゃないか」

 

「・・・あんた、地の文が読めるように?」

「地の文がいつから台詞じゃないと決まっていた?」

 

「なん……だと?」

 

「……とにかく、お前は妖精が見えるんだな?」

 

「あっ・・・ああ」

 

「なら都合が良い、お前にはなぜか知らんが素質があるんだからな」

 

「……それはまっったく嬉しくないんだが」

 

「まぁそう言うな・・・色々と面倒事がある、ここは盗聴されるか?」

 

「…………いいや、さっき盗聴機があるかどうか確認した。

それにここは権限がない奴には開かないようになっている、もちろん防音だ」

 

「そうか」

 

「だからと言って葉巻は吸うなよ」

 

「……ダメか」

 

そう言われ渋々葉巻をしまうスネーク。

それを見て相変わらずだなと思いながらカズヒラはスネークに近付きコーヒーを渡す、もちろん豆はコスタリカ産

だがこのコーヒーもしばらくしたら味わえなくなるだろう。

そう思いながら口にするとコーヒー独特の苦味が口に広がり、後から酸味を少し感じる。

 

「……それでどうしたんだ」

 

「とりあえずこいつを見てくれ」

 

そう言いマグカップを机に置き自身のiDroidを取り出し操作する、そしてある資料を端末に表示させカズヒラに見せる、一番上にSECRETと赤く書かれたソレはカズヒラを驚かすには十分な内容だった

 

「……これはいつ撮られた物なんだ?」

 

「お前もこの前の事件は知ってるな」

 

「ああ、あんたが関わった件だろ?

何も出来ないこっちとしては冷や汗物だったぞ、しかもあんたが勝手に取引に乗り出すわ取引内容はこっちに何の利益も無いときた」

 

「だが日本がクリーンなのはよく分かった、少なくとも警察と自衛隊は悪くない」

 

「……まあそれはあの国が情報に重きを置いていないからなんだがな」

 

「俺も行ってからわかったが日本人は人が良すぎるな」

 

「ああ、深海凄艦のお陰で外国人を見る事も減ったはずなんだが会話に支障がなければあいつらとも気楽に接してくれてるらしい、警戒心の欠片もないそうだ」

 

「それにこんな状況でも飯が美味い、それも毎日だ」

 

「深海凄艦のお陰で遠洋漁業は大打撃だが近海は艦娘のお陰で未だに漁が出来るからな。

それに魚介はもちろん農業もある程度盛んだからな。1971年から減反政策で水田を潰したり他の作物への転作をしていたが、食品に関しての輸入業が消滅したお陰で一次産業に人手が回った」

 

「深海凄艦が海岸部をとにかく砲撃して人が内地に逃げ込んだからか?」

 

「それもあるが他国が他所にまで回す余裕が無いからな、必然的に国内で生産量を増やす必要があったんだが、その労働力がちょうど内陸部に集まったんだ。

日本国内での作物生産はお陰で安定することが決まった、農業に人手が増えても土地はある程度開墾されたのがあるからな、国も補助金まで出しているらしい」

 

「実際、食堂も上手くいってるらしいな」

 

「それは前からだ、今まで赤字が出たのは開店した初日だけだ」

 

「……そいつはスゴイな」

 

「まあそれだけ腕は確かだからな…………それでBOSS、こいつはいつ撮られた物なんだ?」

 

「ああスマン、こいつはその事件の二週間前にマガダンの沿岸警備用の監視カメラに映ったらしい。

すでにKGBは情報を見事に綺麗にした後で動いてるそうだ」

 

「……最近GRUの動きが落ち着いた代わりにKGBが活発化しているという報告が入ってた。

その時は全く手がかりが無かったが調べが付いたのか」

 

「しかもこの写真に写っているこいつ、こいつは霧島に見せたところ深海凄艦だと言った」

 

「なっあんたこの写真を見せたのか!?」

 

「ちょうど良かったからな、他にも何人かいたが話のわかる奴にしか話さない連中だ。

それに日本に戻ってから写真の内容を話したところで俺たちに影響はない、違うか?」

 

「それはそうだが……」

 

「それに、KGBもこいつが深海凄艦だというのは特定してるらしい」

 

「……まぁあんたの見る目に間違いは無いんだろう、ならこっちの人間……いや見た目は人っぽいのはどうなんだ?」

 

「そっちは捜査中らしい、だが情報を綺麗にした後に動き始めてもわからない相手だ。今頃特定出来ているとは考えにくい」

 

「確かにな……これは面倒だ」

 

「ああ、俺もある程度想定はしていたがまさか向こうにスパイがいるとはな」

 

「奴らは海だけでしか活動できない、これは全世界が持っている先入観だ。

これだけ植えつけられている状況は諜報活動に都合いい、ただ過ごしているだけでも怪しまれない。

確かにこれほど良い条件が揃ってたとはな…………」

 

全世界、誰もが〈深海凄艦=海〉という認識を持っている。

一部陸上型の深海凄艦はいるがそれらは遭遇すると言うより発見するもので、その殆どが敵の泊地・基地の役割を担う中枢のため余り多くいる訳ではなく、世間一般にはほとんど認知されていない。

 

 

だがその先入観を上手く使えば情報戦では圧倒的に有利に運べる

 

 

まず、情報戦ではその名の通り情報が通貨となる。

貴重な情報なほど他所に晒したくはない、逆に他所の重要情報は欲しい物。

それは一般企業だろうが国家間であろうが変わりはない、そしてそういった情報にはそれ相応の

 

・例えば金庫に保管する、ある程度の権限を持つ者しか閲覧出来ない・知らせない、

何かに変換し簡単に悟らせない、等の対応策を取る。

 

・例えば金庫を破壊する、ある程度の権限を持つ者に接近する・または成り済まし潜り込む、

変換した物を再変換し解読する、等の対抗策を取る。

 

そして上記を実行するには当然人の手が必要になる。

特に国家間の場合、当然ながら欲しい情報や貴重な情報は敵国や敵の重要拠点にある。

敵も相当な馬鹿では無い限り道端にそういった情報を投げっぱなしにはせず、管理をしている。

そういった情報は金庫を破壊する様な物理的なもので得ることは難しい、何故なら機密性が高ければ高いほど書面などの残る様な物には情報を残さないからだ。

欲しい情報を知る人間に近づき拉致をするのも手ではあるが、本当の情報を吐く確証がなければあまり得策ではない。色仕掛けも一種の手ではあるが……まあ引っかかる様なレベルの人間に情報を任せる組織の時点で論外だったりするため今回は省こう。

 

 

 

どこかで聞いたことある言葉だがスパイにとって死ぬ事こそ一番やってはいけない事だ

 

 

 

よく勘違いしやすいが諜報員、いわゆるスパイは兵士ではない。

 

・兵士“soldier”の語源は“金貨(sold)のために働く人(ier)”そして戦士でもある。

 

・諜報員“agent”の語源は“物事を行う(ag)人(ent)”そして代理人でもある。

 

戦士は命を失う前程がある、戦いに流血を伴わないものは無いのだ。

そういった犠牲を最小限にするのが策士だが、それに従うのが戦士である。

戦士という存在は戦い、殺し合い、そして死ぬ、誰がどう言おうと変えようの無い事実だ。

彼らにとって彼ら自身の命が戦場では通貨であり、資本になる。

 

代理人は物事を行う人間だ、わざわざ自分が怪我をしてまで仕事をする必要は無いのだ。

特に情報を扱う場合、依頼人以外に自分の存在を知られる訳には当然いかない。

代理人という存在は欲しい情報を得て、依頼人に伝え、そしてその場に留まる。

彼らからすれば情報は通貨であり、自分自身の存在自体に価値がある。

 

 

 

様々なトラップを掻い潜り、銃撃戦を制し、時に魅惑の女を抱く

 

・・・なんて話は映画と小説の世界である

 

 

 

実際には、

 

現地の新聞を読み漁り、

 

時にその国の思想家の本を読み、

 

それらをスクラップブックにまとめ、

 

たまにそれなりに偉い人とパイプを作る。

 

 

 

そんな地味な事を毎日やっていた方がよっぽどスパイらしいのだ。

事実、各国大使館ではそういった作業をしている武官もいたりする。

新聞社がどんなにフリーだ!自由だ!!…………と言い張ろうが書けない記事が存在する。

逆に書かれている事はその国家がやりたい事、知って欲しい事が必ず載っている。

2年か3年様々な新聞社を読み漁り、掲載されている情報を管理するだけで軍事機密関係以外の情報は9割方入手する事が可能になる。

 

そして残りの1割や軍事機密関係はその地に根付き、人脈をはびこらせる事でピースを得る。

そのピースをはめ込ませたり、足りないピースを自分自身で行動し得る事でパズルを完成させる。

当然ながらはびこらせた人脈を他人に悟らせてはいけない。

敵地で活動する諜報員とって一番都合が良いのは誰にも自分の存在が悟られず情報を得る事だ

情報が通貨である彼らはできるだけ多くの情報を本国……自分の味方に送る。

そのため出来るだけ敵地に長く滞在し安定して情報を“供給”する事が彼らの仕事になる。

仮に死にでもしたらその敵地の警察、つまり“一般”に自分の存在自体が知られてしまう。

知られた時点で組織はその人間を切り離さなければ、むしろ敵に良い材料を与える事になる。

 

特に軍事関係の情報を扱うスパイは、敵地に馴染み、長く滞在して出来るだけ多くの情報を得る。

別に銃が無くとも敵地に生き残るだけでも彼らにとってある程度の仕事が出来るのだ。

 

 

「万が一陸で作ったネットワークが裏切るようなら海に連れ込むだけで跡形もなく完全に存在と痕跡は消える、もし自身の存在がバレても海に逃げれば良いだけだ」

 

「……色々と厄介だな、考えてもみなかった」

 

 

これらの諜報員に関する情報を踏まえて、深海凄艦がスパイだったらどうなるのか?

 

 

・敵地に潜り込む方法

人なら偽装パスポートやビザに加え、偽証経歴や時には顔立ちを敵国に馴染むようにして入国する

だが深海凄艦は海から適当に上陸できる、寝泊まりも適当に海岸部で済ませられる。

 

・欲しい情報を得る

言葉を喋る必要があるが、深海凄艦も喋る個体がいるという話もある。

話せるなら訓練すれば片言に話す事も可能だろう。

話さえ出来て丘に上がってしまえば深海凄艦だと思う者はほぼ居なくなる、9割がたの情報は簡単に得られるだろう、なにせその場所で過ごしていれば良いだけだ。

 

・何かしらの証拠隠滅など

物なら沖に捨てれば良い、

裏切り者なら海底に沈めれば良い、

万が一自分の身がばれたなら海に逃げれば良い。

これほど条件が整っているのだ。

数が少なかろうとスパイが“人間に紛れて”存在していてもおかしく無い。

 

それに艦娘をよく思わない者は多かれ少なかれどこの上層部にも存在する。

そいつを味方にさえ出来れば欲しい情報の種類によるが“普通に生活するだけでは得られない情報”を得る事が出来る、何より“情報網”が出来てしまえばあとは相手のものである。

ましてや一般人からしてみれば、海で活動している敵が陸上で生活してるなど夢にも思わない。

 

 

むしろ軍事関係者からすれば悪夢である

 

 

 

「もしかしたら俺らと同じようにどこかで店でも開いているかもしれん」

 

「……笑えない冗談だ」

 

「確かにな、だが向こうは実行可能だろう」

 

「……わかった、引き続き諜報班に探らせるようにする」

 

「この情報をどう扱うかはお前に任せる、だが取引には向いてないだろうがな」

 

「そうだな」

 

そう言うと疲れたのか一旦席に座る。

まだ面倒事がもう一件あるのだが、スネーク自身もカズヒラたちが今までどうしていたのか気になる

スネーク自身がこの代理的に機能していた本部とやり取りしたのは日本に行く前のアラスカでのやり取りだけ、それまで何が起きていたのか知らないのだ。

 

「ところでカズ、俺がいない間の状況を知らないんだが聞いても良いか?」

 

「そうだなぁ……ここを出たら気楽に話す事もできないだろうからな……わかった、どこから話せば良い?」

 

「そうだな・・・そう言えばヒューイと博士はどうしたんだ?お前と一緒に行ったんだろ?」

 

「ああ、あの2人か。

ストレンジラブ博士は俺がこっちに移動したあと少しは居たんだがな、あの連合艦隊・爆撃部隊が派手にやられた後アメリカに行くと言いだしてな」

 

「アメリカにか?」

 

「まあ博士の一番の目的はZEEKのAIポッドの完成だったからな」

 

「ZEEKか……あれは俺たちの象徴だったんだがなぁ」

 

「サルベージは……不可能だろう、ピューパやクリサリス・コクーンのパーツも海底に没したんだ。

せめて核が誰かに流出しなかっただけ良かっただろう」

 

「…………パスについては何か知ってるか?」

 

「全く手がかりが無い、既に死亡していると考えるのが自然だろう。

もしかしたら深海凄艦と一緒かもしれんがっ……正直生存は考えにくい」

 

「そうか……それでヒューイは?」

 

「ヒューイも博士の後を追うように出て行ったさ。

実際ここに何ヶ月もいるにはあの体は結構キツイ、それにヒューイは博士にぞっこんだったんだ。

今頃上手くアプローチしているんじゃ無いか?」

 

「どうだかな、あいつは前途多難だからなぁ……わからん」

 

「まあそれでも昔馴染みの連中はほとんど残っている、新たに加わった面子もいないから全員あんたの事を知っている、頼りになる奴らが大体残ってる」

 

「みたいだな」

 

そう言ってコーヒーを一杯飲む。

あの独特の苦味が広がり、そしてその後に来る僅かな酸味、これが美味い。

 

そう思ったスネーク、だが目の前にはいま口にしたコーヒー以上に苦い顔をしたカズヒラが居た

 

「…………だがそれもあんたのお陰だ」

 

「俺がか?」

 

「あんたが死んだり意識不明にもならず、マザーベースからどうにかニカラグアに不時着して生きている事がわかったからこそ全員まともでいられた、俺だけじゃ抑えられなかった」

 

「……すまんな、俺もすぐにこっちに来れれば良かったんだが」

 

「それは無理だったんだ。

俺たちが保有してた船は全部こっちにあったんだ、その船もあの大敗北の翌日に博士たちと何人かの隊員達を送るために全部アメリカに向かわせた。その3日後に……マザーベースが、消えたんだ」

 

「そうか……」

 

「別にあんたを攻めてるわけじゃない、むしろ感謝してるんだ。

それにもしあんたがアメリカ大陸にいなかったら俺たちは彼女たち、艦娘なんて存在と接点なんて持てなかった、もしあんたが生きてなければ俺たちは復讐心に覆われてここまで生き残れてなかった」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

2人とも黙る。

スネークも自分が仮にこっちにいた所でマザーベースを失う事に変わり無かったのはわかっている。

だがスネーク以上にマザーベースを大切にしていたのはカズだ。

最初からMSFを拡大する魂胆があったとはいえ、マザーベースを提案したのはカズからだった。

スネークは拠点を置かない事で“自身の理想”を実現しようとしたが、のちに拠点を持つことの意味を知った。

だからこそカズヒラが居ない間に自分たちのマザーベースを消してしまった事に責任を感じている

 

それを感じ取ったのかカズヒラが口を開く。

 

「…………俺たちは地獄に堕ちる、あんたは前 俺たちを集めてそう言ったな?」

 

「……ああ」

 

「だがそれはあらゆる組織に俺たちは金で雇われることになるから、そうだな?」

 

「…………銃を持った人間は2度と銃を待たずに生きてはいられない。

ましてや俺たちは銃を使って人を殺めることで生きる糧を得てきた、俺たちが救われる事はない」

 

「……だからこそ、俺たちの居場所が必要だと?」

 

「そうだ、俺たちは人殺しだ。それと同時に人間だ、地獄に落ちたいと自分から思う奴は居ない」

 

「俺たちは天国(ヘブン)には行けない、だが天国の向こう側(アウターヘブン)には居場所があると?」

 

「……確か仏教じゃ確か修羅道とも言うんだったか?」

 

「修羅道……争いや怒りが絶えない世界、か」

 

「俺たちは傭兵だ、戦いの中でしか生きて行けない………………いや戦場にしか居場所が無い」

 

彼は言う、自分は戦いにしか身を置けないと

 

 

 

『スネークは戦争を望むの?』

 

 

 

……とある平和を愛している……いや、平和を“愛していたかもしれない”少女に言われた言葉だ

 

別の日、彼はカズヒラにこう言った

 

「俺も戦争が好きな訳じゃない、だが戦争がなければ俺たちは生きていけない」と

 

今もその思いは変わっていない

 

だが答えた時とは明確に違う事がある

 

いつか争いを無くしたい、と

 

「……良いかボス、修羅道は人が踏み入る道だ。

さっきも言ったがもしあんたが生きてなければ……俺たちは復讐心に囚われて生き残れて無かった。

その時こそ俺たちは…………地獄に堕ちただろう」

 

「……だがなカズ、俺たちはいずれ死ぬ、それは避けられない。

それが例え不条理や理不尽に襲われて仲間が死んでいったとしても、だ。もし俺たちが復讐心だけで動けば生き残った仲間や自分自身を殺す、勝手に望む仲間の仇も討てないまま」

 

 

 

「…………だがボス、俺は…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………俺は、目の前で…………何人も、何人も、仲間達が…………あんたが苦しみながら死んでいったら

……………………………………………………………正気でいられる自信は…………………無い」

 

 

 

「…………………」

 

カズヒラ・ミラーは優秀なビジネスマンである、そう本人は評価している。

兵士としても指揮官としても自分は二流で中途半端だ、そう本人は評価している。

 

戦場で自分が従えていた仲間が次々とやられていく

 

そんな状況で自分は……一体何をしていたのか

 

彼にはそんな経験がある。

幸い、と言って良いのかわからないがそれ自体は彼のトラウマにはなっていない。

だが人間の拒絶したい経験とはそれは小さな歪みとなって無意識の奥深くに存在している。

その奥深くに仕舞われている歪みは、きっかけがあれば突然表面にあらわれ、そして爆ぜる

 

……今回、マザーベースが崩壊という事態にもかかわらず人員の被害はゼロだった。

マザーベースに残っていた僅かな隊員もヘリで脱出し、メキシコを経由してそれぞれ任務に就かせた

スネークの乗ったヘリだけが不時着したものの、スネークに依頼が来た時アマンダ達と共にしていた事もあり、連絡を取る事が出来た。

 

だが敵に、深海凄艦に反撃する事は一度も出来なかった

 

もし一方的に蹂躙されていたら?

 

自分たちの家がただ破壊されるのを眺めるしか無かったら?

 

 

 

 

敵が撃ってくる射撃音で満たされる

 

 

空気を切り裂く砲弾の音で満たされる

 

 

着弾し炸裂する金属音で満たされる

 

 

甲板上が燃え盛る炎でみたされる

 

 

引き裂けた赤い肉でミたされる

 

 

弾け飛んでいく血しぶきでミタされる

 

 

 

苦しむ断末魔と甲板が擦れる音でミタサれる

 

 

 

目の前が仲間“だったモノ”でミタサレる

 

 

 

マザーベースが炎でミタサレル

 

 

 

すべてがアカでミタサレル

 

 

 

ナニモカモがアカクでミタサレル

 

 

 

アカイ……アカイナニカでミタサレル

 

 

 

ココロがゼツボウでミタサレル

 

 

 

 

 

……………ゼツボウでミタサレル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソシテナニモナクナル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うまれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「復讐心、か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ボス?」

 

「誰でもそんなもん見せつけられたらそうなる」

 

「…………………………」

 

「だが、お前は1人じゃない、もしお前が地獄に堕ちるならお前だけを堕としはしない。

お前が復讐に燃えるなら俺もそれに手を貸す、その時こそ俺は……“俺たち”は地獄に堕ちる。

 

 

俺たちは・・・・・・家族だ」

 

 

 

「………………………」

 

そう言うとスネークはマグカップに入っているコーヒーを一気に飲み干す。

そして葉巻とライターを取り出し火を付けた、カズヒラが止めることは無くただそれを見ていた。

煙を口内に溜め、一度吐き出す……これほど至福な時はない、と彼はよく言う。

もう一度煙を口内に溜め吐き出すと、カズヒラの方を向く。

 

「それになカズ、俺は生きている。

確かに目の前で仲間たちが為す術なく死んでいったら普通じゃいられないだろう、だが俺もお前も、俺達の仲間も、全員生きている。偶然だが俺たちはマザーベースしか失わなかった。

一番大切な仲間を、家族を失うことは無かった、何もかも失ったわけじゃない、それともお前の目の前にいる俺は幽霊か?」

 

「…………そうだな、俺の目に映ってるあんたはゴーストかもしれん。

突然現れて目の前が真っ暗になる、気が付いた時は全身が痛くて知らない天井を見るか 体をチューブまみれにされているか いつの間にかあんたの仲間になっている。

むしろゴーストじゃなくサイキッカーかもな」

 

「霊能者…………か」

 

「ん?どうしたボス」

 

「……いや、何でもない。

それより随分吹っ切れたみたいだな、よく喋るようになった……どうやら元に戻ったみたいだ」

 

「そうか?俺はいつも通りだと思ってたが……」

 

「お前がいつも通りの調子なら高雄か五十鈴、あとは金剛らへんに何かしらの声を掛けるハズだ。

無線で話した時から何となくおかしかったが、さっきの会議でお前がおかしいと確信した」

 

そう言って葉巻を銀色の携行葉巻入れにいれる。

マナーは守らなければいけない、それに戦場で痕跡を残すなど命取りだからだ。

 

「スネーク…………あんた、俺のことをさっきから随分な言い方をするじゃあないか」

 

「そうか?俺は事実を言ったまでだが」

 

「俺が変人なのも事実だって言うのか!?」

 

「当たり前だろう、お前が変人じゃなくて誰が変人なんだ」

 

「あんたに決まってるだろう!!」

 

「俺のどこが変だって言うんだ?」

 

「……あんた、そういえばアラスカで船を待っていたらしいな?」

 

「ああ、事前に現地入りした方がもし罠だった時に逃げ道を用意できるからな」

 

「……そこでグリズリーに出くわしたらしいな?」

 

「ああ、食料を調達してる途中でな」

 

「…………それであんたどうしたんだ」

 

「ヘラジカも美味いがたまには熊の肉も食いたいと思ってな、捌いて食べたが」

 

「それがおかしいだろ!」

 

「どこが」

 

「普通400kgを超える熊が現れたら逃げるだろう!?」

 

「知らないのかカズ?」

 

「何がだ!」

 

「熊は走るのが速いんだ、それに仕掛けたからにはそう簡単には逃げられん」

 

「それは知っている!というかあんたから仕掛けたのか!?」

 

「ああ」

 

「その……つい出くわしたんじゃないのか?」

 

「俺が気配に気付かないと思うか?」

 

「それは…………そうだな、あんたがそんな油断するわけがっってそもそも自分から襲ったのか!?」

 

「ああ」

 

「腹が……減っていたからか?」

 

「食べなければ力は出ないからな、当然だ」

 

「……もう……いい」

 

「あん?」

 

「もういい」

 

「何が?」

 

「俺が変人なんだ、もうそれでいい……」

 

「そうか」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「「……ふっ」」

 

どうやら本当に元に戻ったらしい。

先ほどまでのぎこちの無さは消えた、自分の言いたい事 やりたい事をしようとする奴に戻った。

……まぁ俺がそれだけ背負わせた、それは俺の責任だ

それにこいつは俺が苦手な部分が得意だ、俺に根回しなんて面倒なことは出来なくはないが面倒だ

これから先働いてもらわないと俺が困るしな、そう思うスネーク。

 

 

どうやら相変わらずらしい。

今まで遠慮してたがそんな物は必要なかった、というか遠慮していたらこっちが言い負ける。

……何が俺は変人じゃないだ、俺がここにいる時点で変わってるじゃあないか

それじゃ小学生の言い合いと同じだ、俺は口喧嘩で負ける気はしないがスネークの相手は面倒だ

俺は変人だろう、だが世の中上には上が居るんだ、そう悟ったカズヒラ。

 

 

お互いの認識はズレている、

 

だが1つ共通して認識している事がある。

 

 

「カズ」

 

「何だスネーク」

 

「……頼むぞ」

 

「……当然だ、あんたこそ頼むぞ」

 

「わかってる」

 

「なら」

 

「ああ」

 

「「行くぞ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは戦友だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12/4 21:00

 

スネークたちが島に入ってから4時間半、運搬作業は佳境に入っている。

6時間で島から撤退する、これは事前に決まっていた事であり会議が始まった瞬間に総司令官から撤退の号令が出ると知らされていた隊員たちは17:00から本格的な作業を始めていた。

 

真っ先にMSF戦闘班の機甲機動部隊所属の隊員達が戦車・装甲車を改装自動車専用船に載せる。

それぞれ戦車はタンクトップ、装甲車をシェーパーへ搬入し金属製のロープで固定する。

装甲車に関しては島に上陸する際に海上を航行する必要があるため、船員達と話し合い船を止める事なく海上に装甲車を下すため後方の大型タラップを短時間だけ下す事になった。

……もちろん、損傷した箇所はこちらで請け負いくれぐれも短時間で終わらせるよう念を押された

 

研究者と技術者の大半は兵員輸送船に乗り込む事になり、またトランスシップワン・ツー・スリーのレーダーを取り替える事になった。

 

半年以上も敵の勢力圏内の海の孤島で過ごしていたお陰で、僅かながら深海凄艦について独自にわかった事がある。

 

 

 

 

まず深海凄艦がレーダーに映らない件。

これは諜報班からの報告で島の沖合を航行していた輸送船、いわゆる輸送ワ級が航行しているのを島に設置していたレーダーに反応があった事から発覚した。

 

この報告を受けて研究開発班が解析、その原因は電磁パルス(EMP)に近い物だと判明した。

研究開発班が解析したところ、このジャミングはある程度の穴がある事が判明した。

具体的にはこの妨害電波は強力な磁場を海域レベルで展開する事が可能で電波による妨害ではないため海面に吸収される事もなく、少なくとも40㎢四方の海域にある通常の電子機器はノイズが走ったり使用が困難になり、100㎢では電子制御の火器管制に支障をきたすという。

 

だが、幸いにもEMP特有の強力な電場までは形成しない、そのため電子機器が破壊される事は無い。

磁場による妨害にはそのため電波妨害と同じく一定の“波”がある。

電波妨害下でも敵に影響があっても味方に支障をきたさないのは妨害電波の発する一定の“波”が干渉しない“波”の電波を使うためだ。

幸運にもこの干渉しない波に仕様していたレーダーは重なり、偶然にも航行していた輸送船を捉えたという。

 

そして長期の観測の結果、深海凄艦が発するこの磁場は幾つものパターンを……細かい数字を言えば数百種類も有している事もわかった。そのパターンが個体ごとなのか、はたまた認証コードとして働いているのか、真意はわからないがとにかく種類が多い。

そのためレーダーを使い物にするにはその都度磁場を観測し干渉を受けない波に設定しなければいけない、つまり大変骨が折れる……が使えなくはないという事。

 

結論を言えば彼らはステルス性を明らかに艦船より小さい事で有している。

……が、本体がレーダーに映らないわけではないというのが深海凄艦の特徴だ。

もっともこれは駆逐艦や輸送船といった明らかに人型ではないものにだけで戦艦や空母の様なほとんど人が浮かんでいる状態に等しい大きさの個体では検証していないため何とも言えない。

しかし、深海凄艦の運用する航空機に関してはレーダーの出力を絞る事で数百㎞先でも一機であっても十分補足可能である、ただし範囲は狭く当然ながらレーダーの調整も必要だ。

 

 

 

 

次に深海凄艦の生態について。

もっともこれは駆逐艦や軽巡洋艦に関してだけではあるが、わかった事がある。

まず彼ら(彼女ら?)は常に海上にいる訳ではなく、海中にいることの方が多い。

これは戦闘班が対潜用にばら撒いたソノブイがあまりにも反応する事から、研究開発班が有り合わせの資材で作成した海中探査用の潜水艦を使い撮影したところ、何と駆逐艦と軽巡洋艦が海中を航行しているのが映っていた。

この映像が撮れた事から定期的にバッテリーを交換し、この半年以上もの間映像を撮り続けた。

 

これら4000時間を超える映像全てを諜報班が解析・調査

映像では何度か魚が深海凄艦を避けていくのが映っていた……が、一度もぶつかる事がなかった。

最初はただ水中を動いているために発生する水流で魚が避けるのだろうと勝手に思っていた。

 

 

だが、ここにはオーバーテクノロジーをもたらしている研究開発班の技術者・研究者の巣窟である

 

 

 

米軍が真空パックのソーセージをレーションに入れたらしいという情報だけでボ○カレーを作り出し

 

 

海上でフルーツが食べたいという思いからコスタリカ産バナナを栽培するキットを自作

(なおこの栽培キットは進化を続け、今はコーヒーの栽培を可能にしようと日夜研究されている)

 

 

キッドナッパーに刺激を受けて小型ドローンの独自開発(建物内の犯人と爆弾を見つけ出したあれ)

 

 

BOSSのためにダンボールを研究し、ダンボールに惹かれ、そして開発されたダンボール製の戦車

 

人はこれをダンボール戦車と呼ぶ

 

 

ロマンを追い求め、探求していく中で出会ったマテリアル技術者と電磁兵器設計

 

そして作ってしまったステルス迷彩と超“協力兵器”レールガン

 

こうした物は全て彼らの好奇心から出来上がった

 

世の中お金と熱意を“共有できる仲間”がいれば不可能など無いに等しい、

そしてそう言った熱意や好奇心は普段は何とも思わない事象から湧き上がる事がある。

諜報班のフロアで映像を見た研究開発班のとある技術者達が、

 

「・・・あのさ、これ全部避けてる間隔が同じに見えるんだが」

 

「……まあ確かにな」

 

「けどよ、艦種ごとにその間隔が決まってるように見えねえか?」

 

「艦種だぁ?この馬鹿でかい魚っぽいのと少し人っぽいので間隔が違う……か?」

 

「言われてから観れば・・・そう見える」

 

「……ちょっと他のも観るか」

 

「「「ああ」」」

 

 

 

『……………………………………』

 

 

 

「……やっぱり間隔が一定だな」

 

「むしろ決まってるって言った方が正しそうだ」

 

「……つまり?」

 

「艦種ごとに水中を航行する速度が決まってる……訳はねえよなぁ」

 

「むしろ団体行動なんだから全体で速度は合わせてるだろ、実際陣形は崩れてないんだから」

 

「ていうことは…………何かしらのバリアを展開している、か?」

 

「………………」「………………」「………………」

 

「……なあ」

 

「……何だ」

 

「……俺も思ったんだが」

 

「大丈夫だ、俺らも思ってることだ」

 

「……そうか」

 

「おう」

 

「……ならさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「こいつら捕まえて調べようぜ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

存在を確認して以来、人類にとって敵として為す術がない相手

 

史上最大の作戦が失敗してからそう認識され誰も抗おうとしなかった相手

 

そんな化け物が深海凄艦です

 

 

 

それがなんという事でしょう

 

 

 

好奇心だけで生きている彼らにとってはそんな化け物もタダのサンプルに成り下がったのです

 

あんな見た目も恐ろしい化け物が好奇心の餌になってしまったのです

 

そんな変人集団がここには居るのです

 

これには諜報班も大騒ぎ

 

すぐに戦闘班に通報、彼らは諜報班フロアごと制圧・身柄を拘束され副司令の前に差し出されました

 

「……お前達」

 

『・・・はい?』

 

「どうしてここに来たのかわからないって感じだな?」

 

「俺たちさっきまで諜報班のフロアで映像見てただけなんですけど」

「……だな」

「少なくとも反乱は起こしてないわな」

「ていうか俺たちそんな腕っ節強くないし」

 

「……神経は図太いがな」

 

「確かに!うまいこと言いますね副司令!」

 

「そっそうか?……面白いか」

 

「ええ面白いですよ、なあ?」

 

「ああ」

 

「面白い!」

 

「はは!」

 

 

「「「「はっはっはっはっはっ!!」」」」

 

 

 

 

「はっはっはっはっはっ!!——ってなるかああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

そしてこっぴどく怒られましたとさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……という経緯がありながらも流石に深海凄艦を鹵獲するのは今の状況ではリスクが高すぎるため

即却下。

その代わり鹵獲以外の人的被害を出さない方法での検証を認められ、へんじn……技術者集団は本気で検証方法を策定、その結果撮影用に作った潜水艦に小型ラジコンを搭載し水中を移動中の深海凄艦に体当たりする事にした。

まぁ最初は魚雷を当てようとしていたが、諜報班の戦術解析からその場合島からだいぶ離さなければ危険だと判断され攻撃は一切仕掛けず調べる事になった。

 

その結果、すべての小型ラジコンが決まった距離で“弾かれた”、その代わり破壊される事も一回も

無かった。そして深海凄艦は障壁、言うなればバリアのような物を展開している事が決まった。

また深海凄艦は海中では一切武装を展開する事ができない事も分かった、最も潜水艦は例外だというのは輸送中の経験から分かった。

 

 

その他にはここ数日スネーク達が連れてきた船団の援護のために展開したジャマーも効果があった事

深海凄艦の武装は携行兵器で十分破壊可能、ただし撃沈するには威力不足のため支援砲撃かレールガンのフルチャージ、または魚雷でなければ今のところ方法はない事。

あとは偵察機だけしかまだ経験はないが敵航空機の破壊は通常兵器で対処可能、ただし無線誘導による物以外の対空ミサイルは使い物にはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってところだ」

 

「そうですか…………ってあの通信不可能だったのそっちの意図だったんですか!?」

 

「まあな、もっとも範囲的に限界があって島から半径40km以内でしかジャミングは効かない。

お前から聞いた話から察するにBOSS達はその40km圏内ギリギリで捕捉されたんだろう。

ましてや最初の敵は島から50km離れた場所に居たみたいだしな、運が悪かったとしか言えない」

 

「運ですか……」

 

「まあそう落ち込むなルイ、こうして俺たちはまた戦える。

それにBOSSやお前達ともまた会えた、それでとりあえず十分じゃねえか」

 

「それをあなたが言いますか、ヤッコさん」

 

「ん?奴さん?」

 

「なんでそれ知ってるんですかねぇ」

 

「気にするな、それよりそっちのお姫様たちはどんな感じだ?」

 

「すでに燃料と消耗した航空機の補給は完了、弾薬に関しては佐世保の娘たちが予備持ち込んでた

みたいでどうにかなりそうです、ただ被弾した娘が1人回復出来ないですからその娘はしばらく休みですね、あとは特に問題ないですよ」

 

「大丈夫かその娘は?何だったら俺が——」

 

「あ〜パッツィーにスタン食らってフォレストの精神攻撃受けたいならどうぞ。

あと噂ですがBOSSがMPを作るって話がありますよ、面子は上にBOSSで配下がドクにBJ・レッカーと猫も何匹か混ざるそうで」

 

「………すまん、聞かなかった事にしてくれ」

 

「ええ、そうさせてもらいますよ」

 

「というか一体どんな憲兵隊だ?そいつらだけで一個大隊消えるぞ……」

 

「BOSSだけで一個大隊消えるんで一個師団消えそうですが?」

 

「……言えてる」

 

そう言って2人は目の前にあるドンブリのスープを飲む。

時刻は夜9時を過ぎ、あと2時間も経てばこの島から跡形もなく自分たちは消える、痕跡も一切残さず撤退する。

 

だが腹が減っては何とやら。

特にMSFの長は食にうるさいへんじn……とにかく食にこだわる人間で、糧食を疎かには絶対にしない

その精神は隊員たちにも受け継がれ、食の質は高い水準を維持している。

 

実際彼らの目の前には

 

赤と白を基調としたドンブリ、

 

そこからは白い湯気が立ち上り、

 

中には黄色い麺の上に炒めたモヤシと芽キャベツにメンマ、

 

そして魚介の風味が漂っていた。

 

そう、ラーメンである

 

「というかこんな孤立した島でよく作れますよねぇ」ズズッ

 

「まあうちの各部門は機密が多いからな。

研究開発班や諜報班の扱うブツが外部機密なのは当然だが、医療班だって麻酔銃に使う麻酔薬に関しては俺も知らない、糧食班もマザーベースがあった時から一体どこから豚やら牛を調達してたのか未だに知らないからな、レーションの製造プラントはここにもあるが」ズズッ

 

「……けどレーションって戦場で以外渡されませんよね?」ズズッ

 

「ああ、ここでも調理場が出来るまでの措置でレーションを配ってたがそれも一週間の我慢だった。

それ以外じゃずっと普通に飯を食べてきたな」ズズッ

 

「……今更ながらフィーストが偉大に見えてきましたよ」ズズズッ

 

「実際に偉大なんだよあいつは、あいつが居なきゃ下の連中は今頃営倉送りだったろうよ」ズズズッ

 

「フゥーご馳走様です……そりゃこれだけ美味いのをこの状況下で食べられれば文句なんてありませんよ」

 

「全くだ、あとはあいつの調子に乗る所さえ無ければ何の問題も無いんだがな」

 

「それじゃあフィーストらしくありませんよ、むしろあいつが気取らない何て不気味ですよ?」

 

「……確かにな」

 

そう言ってあたりを見渡す。

周りは慌ただしく、忙しなく、人が行き来し食器を片付ける音を怒号が響く。

 

一言で言えば人でごった返している

 

時間的にもタイミングとしてもひと段落ついた隊員たちが小腹が空いたのに気付きここに来たのだ

実際、ルイの目の前にいるMSFが誇る戦闘のエキスパートである戦闘班の班長であるヤッコに対して敬礼しつつ状況の報告に来るものがあとを絶たない。

その内容のほとんどが各分隊の状況報告と装甲車運用の交渉結果、あとは戦車の固定作業が無事に

終わった事だろうか。

 

「……しかしながらお前と話すのは何ヶ月ぶりだ?

お前が日本に行ってからだから……10ヶ月位か、思ったよりあっさり時間は流れるな〜」

 

「何ですか、ヤッコさんもついに歳ですか?老化ですか?そんなんで班長務まるんですか?」

 

「ならこの後少し突き合うか?俺は構わねえぞ」

 

「パスしますよ、俺があなたに勝てるのは口論だけですよ」

 

「よく言うっ、未だに腕は鈍って無いんだろ?」

 

「それにしたって腕っ節じゃ勝てませんよぉ」

 

「それもそうか」

 

「……そういえば船に乗る振り分けはどうしたんです、大変だったでしょう?」

 

「うん?何でだ?」

 

「全員こぞってBOSSと一緒に乗りたいでしょうに」

 

「あぁそういう事か、それに関しては問題ない。

それより全員外に出たがってたからな、お前が心配するほどの事は起きてないぞ」

 

「そうですか」

 

「……まぁその代わりBOSSと一緒に日本に行きたがる連中が沢山いる」

 

「でしょうね、けど・・・」

 

「まあ顔的にも雰囲気的にも今いる面子は日本には行けねえわな、少なくともうちの班には1人も居ない」

 

顔的にもというのはアジア系の顔で日本にいてもあまり違和感の無い感じの顔である。

実際ルイは身長はまあまあ高いが鼻が高い訳でもなく、また肌も白人ではあるのだが兵士として起きているほとんどを外で過ごしていたからか浅黒いためそんなに浮かない。

 

同じ理由でウェーバーも、堅いはイカツイのだが山岳学校と国境警備隊として山に籠っていた事が多く人当たりも良かったため日本に深海凄艦が出る以前からいたのだ。

だが、今いるMSFに所属する隊員……特に戦闘班にはそんな条件と合致する人間が居ない。

そのため日本に行きたいと思っても目立ちすぎるため仲間に迷惑をかける、そんな事はBOSSもゴメンだという事は隊員たちも良く分かっている。

 

「……まぁ整形してまで行きたいと思う奴もいるかも知れんがな。

行けるか可能か考えなくていいなら純粋に日本って国に興味がある、俺の祖国と似てる部分があるしな」

 

「そうですか……まあ確かに飽きはしませんね、それに生きていく事にだけ関していえばあの国ほど安全な国は無いですし面白いですよ」

 

「おまえっ日本一周したらしいな?」

 

「どうせ暇なんでね、まぁ北九州……って言って分かります?」

 

「アレだ、福岡だろう?」

 

「……本当に良く知ってますね」

 

「だから気にするなって」

 

「まぁそこで砲撃食らってあわや死にかけましたけど」

 

「・・・お前、どうやって生き残った?」

 

「博多湾に居ましたから太宰府がある方に思いっきり自転車を漕ぎまくりました」

 

「……そうか、まあ何だ…………自業自得だな」

 

「わかってますよそんなこと」

 

「そうかよっ・・・なら話は一旦打ち切りだ」

 

「……ええ、ここからが本番ですしね」

 

「お前も気張っていけ」

 

「ヤッコさんもあんまり無茶しないでくださいよ、俺じゃあ手に負えないのばっかなんで」

 

「だが無理はさせて貰うぞ」

 

「……そうですか、なら俺はこれで失礼します」

 

そう言って席を立つとルイはヤッコに敬礼したあと、ヤッコのドンブリも持ち去っていった。

食堂フロアは残りあと2時間を切ったにも関わらずフル稼働しており、それは食器の返却棚も同じだ。

厨房からは相変わらず怒号と食器が洗われる音が響いていた。

 

 

 

「……あいつも相変わらずだな」

 

 

 

一瞬去っていった方を見て周りの混雑さと古い仲間が頼り甲斐のある奴だと再認識したが自分にも

役割がある、あいつにも果たすべき任務がある。

 

「……さて、こっちも動くか」

 

現在時刻21:27

 

予定時刻まであと93分

 

 

「こちらシーオーター、各分隊状況報告」

 

 

《A分隊からセクションリーダーへ、周辺状況に脅威なし。

上空は雲だらけで夜逃げには持ってこい、月明かり1つ無い良い天気だ》

 

《こちらB分隊、東側に居ますが変化なし、引き続き警戒に当たります》

 

《チャーリーからシーオーター、全機チョッパーへの収容完了、これより組み立て作業に入る》

 

《えーこちら〜Eチームッ、着々とセットしておりま〜す。予定より早く終わらせてC分隊と合流しますどうぞー》

 

《……F分隊、及びG分隊、P分隊と協力して戦車・装甲車の固定作業完了》

 

「了解だ、FとGはC分隊の支援に向かえ。

E分隊は引き続き作業しておけ、終わったら食事を済ませろ」

 

《えー終わってすぐ食べないとダメですかぁー?》

 

「命令だ、それにしばらく波に揺られるからな」

 

《・・・ナルホド、わかりまっした》

 

「A分隊とB分隊は引き続き警戒に当たれ、今飯を届ける」

 

()()

 

「……派手な船出と全員地に足を踏ませる、それが俺らの役目だ。

俺らが思う存分動くのは今じゃない、だがその時は必ず来る、その時のために動け」

 

そう言って無線を切る。

そして部下の糧食を届ける手配をするために相変わらず怒号と食器の音が響く厨房の方に向かう。

 

「フィーストいるか!」

 

「あいよっ、30人前のラーメンだ!ついでに配達員もつけてやるっ!」

 

忙しく寸銅なべを火にかけスープを作っているらしいフィーストがそう答えると奥から日本の出前でよく見かけるあの銀色の一斗缶のような物を持った隊員が10人も現れた。

どうやらわざわざ用意していたらしい。

 

「おいおい、こんなに抜けて大丈夫か?」

 

「おいおい、俺を誰だと思っている?伊達にここで料理長なんざやってねぇよ!

それに俺を心配してくれんならさっさと届けてこいつらを返せ!」

 

「わかった、なら少し借りるぞ」

 

「あいよっ!」

 

そう言って10人のラーメンの出前を連れてさっさと届けるために地上で警戒に当たらせている部下達の元に向かったラッコ、もといヤッコだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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