鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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有言実行させていただきます!

注意:一昨日から投稿させて頂いてますが、話の欠損箇所が発覚しました。

お手数ですが、まだ閲覧していない方は対空訓練の後の話である《反省》と《意見具申》を読んで頂けると幸いですm(_ _)m



大規模作戦 intercept

 

 

状況は……最悪で無いだけマシか

 

「あと5kmだ、踏ん張ってくれ」

 

《言われなくても!って 敵弾!!》

 

《っクソ!!》

 

 

島の西北西約15km

既に駆逐艦と軽巡洋艦の3隻は反転し突撃した時点で名取と白露らによって撃破している。

その際名取が被弾したが大事には至らなかった。

 

撃破したのち、引き撃ちしながら反転、そしていまに至る。

敵を補足してから40分、俺らの後方5km位にいるらしい、水平線ギリギリに何かがいるのがわかる

敵は主力である戦艦と重巡洋艦2隻が残っているが、引きつけること自体には成功している。

相変わらず戦艦の砲撃の水柱は凄いが着弾まで十分時間はある、回避は難しく無い……今の所は

 

 

《高雄姉さん右舷っ!》

 

《っ!》

 

主力としてこちらの要の高雄と摩耶は敵から集中的に砲撃を喰らっているが上手い具合に回避しながら反撃している、最も摩耶はうっとうしい敵の砲撃にイラついている様だが。

 

《しつこいのは嫌いなんだけど!?》

 

《つべこべ言わずに白露も撃ちなさいよ!》

 

《村雨ちゃんキャラ壊れてるっぽい!》

 

《うるさい!!》

 

駆逐艦の4人もよく働いている、やはり練度は十分高いらしい。

特に時雨と夕立の動きは良く目立つ、黙ってる時雨は後ろの8人の中で立ち回りが一番上手い。

夕立もよく喋りながらも片手のみでリロードし間を置かずに砲撃をしている。

そもそもあの4人はこれだけ厳しい状況でも喋れているだけ問題無いだろう。

 

《名取!さっきのは大丈夫!?》

 

《大丈夫だよ五十鈴ちゃん、それより今は被害を最小限にしなきゃ!》

 

《……そうね もう一踏ん張りよ!》

 

軽巡の五十鈴・名取は問題無いだろう。

名取は頼りないと思っていたが、被弾してもいつも通りの所を見ると以外にタフらしい。

 

《罠は無いんでしょうね!?》

 

「……安心しろ千代田、もし罠が解除で切れなければとっくに俺は吹き飛んでいる」

 

《もし罠が解除できなかったら私が爆撃で吹っ飛ばすわよ!》

 

「それは勘弁して欲しいもんだ」

 

千代田の隣を航行している千歳は無線で話を聞いてただ顔をニヤけさせる。

……姉なら妹の横暴を止めて欲しいもんだが

 

《全員、あと少しの辛抱!もう少しで情報を受信できるから踏ん張ってっ!!》

 

『りょうかいっ!』

 

五十鈴の言葉に全員が答えるが、その言葉に余裕は無い。

重巡洋艦2隻と戦艦が互いのリロード間隔を補うように断続的に砲撃を仕掛けるおかげで彼女たちの

全身が濡れ特に摩耶は服が透けている。

だが……それは良い、変な意味ではなくそれは大した問題ではない。

 

 

 

問題なのは敵の行動だ

 

 

 

せめて1隻でも大破か撃沈させたいんだろうがすでに交戦開始から30分以上、

 

 

最初の5分は向こうの一方的な砲撃ではあった

 

 

だがこっちも十分射程距離に入ったところで砲撃を開始し反転、島に誘導した

 

 

奴らの護衛とも言える駆逐艦と軽巡洋艦は先遣部隊として飛び出してきたが白露らが返り討ちにした

 

 

それでも敵は俺たちに追いつこうともせず、ある程度間合いを取りながら真後ろから攻撃している

 

 

つまり敵は冷静、できる奴だ

 

 

だが互いのタイミングを合わせられる程度に冷静な奴らが、

 

 

いくら戦艦と重巡洋艦だとはいえここまで深追いするのか?

 

 

……俺なら追撃をこの時点で止める

ただでさえ数的不利にも関わらず足留めをする部隊までやられた状況で突撃されれば対処出来ない。だがあいつらはそれでも攻撃を続けている、しかも執拗にだ。

これ以上の追撃は普通なら危険だと判断する、生きて帰れてもあいつらだって不死身では無い、無駄な怪我……いや“損害”は避けたいはずだ。

 

 

 

それでも執拗に追っかけて来る奴は馬鹿か・・・・・・・・・・・・駒か

 

 

 

「摩耶、周辺の状況を調べてくれ 特に東側だ」

 

《はぁ!?いきなり何だよ!!》

 

「嫌な予感がする、無理なら千歳が偵察機を出してくれ」

 

《あら私が?そんなに嫌な予感がするの?》

 

「……すまないが早くしてくれ、手遅れになるかもしれん」

 

《っ姉貴!すまねえが電探で索敵するから少し踏ん張ってくれ!》

 

《言われなくてもっ!撃ち返すからさっさと済ましちゃって!!》

 

《はいよ!》

 

《私も偵察機を出した方が良い?》

 

「いやいい、代わりに爆撃機の発艦準備はした方が良いかもしれん」

 

《……どうして?》

 

「言っただろ、嫌な予感がする」

 

この感覚を感じた時、良いことが起きたことは一度も無い。

それに加え敵は冷静で出来る奴だ………何を仕掛けてくる?

 

《っ!》

 

《だいじょうぶ!?》

 

《平気だよ……少し痛いけど》

 

後ろから声にならない悲鳴が起きた

見るとどうやら白露が至近弾で負傷したらしい、主砲が一部変形し後ろに背負っている缶の破片が右腕に刺さり流血している、だが重症では無い。

 

「止血はできるか?」

 

《今は無理だけど……ひと段落すれば、ねぇ》

 

《航行に支障は?》

 

《艦隊運動には……問題無いかな、けど全速力はちょっと厳しいかも》

 

《無理はしないで、回避に専念して》

 

《わかった……》

 

白露から元気が消えた

だがそれに構ってられるほど全員に余裕は無い

 

《摩耶 まだわかんないの!?》

 

《ちょっと待ってくれって!いま——!?》

 

《どうしたの!》

 

 

 

《っ正面に敵艦補足!距離20000、数6、まっすぐ突っ込んでくる!!》

 

 

やっぱりな

 

 

《艦種は!?》

 

《反応からして戦艦ル・・・待て、タ級が2隻はいる、それと反応がデカイ》

 

「どうやら敵も誘導……いや俺らを補足し続けていたみたいだな」

 

《……はめられたってこと?》

 

「だろうな、部隊が半分消えたにもかかわら追撃してきたワケだ」

 

こいつらの動きを見る限り、砲撃の雨の中で常に電探を見る余裕は無い。

それは向こうも同じなんだろうがその弱点を突いてきたって所か。

……だとしたら相当追い込まれている

 

「五十鈴」

 

《何!?》

 

「正面の敵の編成にかかわらず後方の敵をすぐに殲滅することを提案する、

恐らく敵の狙いは挟撃して俺らを包囲することだ、この状況を打破するには食い破るしかない」

 

《向こうの考えを真正面からぶっ壊すってことね!?》

 

「……まあ間違えてはいないが」

 

《ここで戦っても大丈夫なのかよ!》

 

「問題無いだろう、すでに何発も戦艦の砲弾が飛んできているのに反応が無い。

それにここら辺に変な物は感じない、少なくともここから後方は安全だ、むしろこのまま直進する方が危険だ、最悪囲まれて全滅する」

 

《……あんたは大丈夫なの?》

 

「ああ、俺はこのまま直進してデータリンクするからな」

 

《・・・はぁ!?なに言って——》

 

「冗談を言える状況か?

俺のバイクなら奴らとある程度距離を取っていれば安全を確保できる、ここから島までは直線距離で南西に約15km、敵艦隊は俺らの正面 つまり東に約20km。

それだけ時間があれば十分データリンクは出来る、こいつは50ノット以上は出せるしな」

 

《それにしたって生身の人間が生き残れるほど甘く無いわよ!》

 

「だろうな」

 

《だったら——》

 

「だが島に仲間が居なければこれ以上この海域に留まる理由が無い、

それさえ確認出来れば奴らを撒いてさっさと船団と合流して逃げた方が良いだろう。

仮にお前たちと一緒に後方の敵を叩くにしても前方の艦隊が撤収する訳じゃない、それならより有利に立ち回れる様に必要な情報を得たい、そもそもお前たちと一緒にいても俺は奴らを倒せないしな」

 

《…………》

 

悪いが何をどう考えようと俺はこのまま真っ直ぐ島に向かう、それ以外出来ることは無いしな。

……それに4足歩行の平和を相手にするよりマシだ

 

《五十鈴、ここはスネークに任せようぜ》

 

《摩耶!あんた何を言ってるかわかってる!?》

 

《わかってるぜ、加賀が勘違いして全力で奇襲を仕掛けても余裕で対処して正規空母6隻の空襲を

全員ほぼ無傷で帰ってきたりしてる人間に偵察してもらうんだろ?

それをやり遂げる程度の実力はあるぜ、それにここに居ても役に立たないのは事実だろ?》

 

《そうだけど……》

 

「安心しろ、ここで死ぬ気は俺にはない、心配なら直掩機を数機付けてくれればい」

 

《……本当に帰ってこれるの?》

 

「ここで死ぬ気は無いと言ったはずだ、それにな……」

 

この場で言うのも何だが……言った方がこいつも気が紛れるだろ

 

 

 

「……俺は女に心配される程落ちぶれちゃいない、俺を信じろ」

 

 

 

《……何カッコイイこと言ってんだか》

 

《まぁ本当にカッコイイんですけどね、言ってる事が》

 

《高雄姉さんの言う通りだぜ……》

 

「……お前らが何言ってるか分からんが、俺はこのまま直進して良いか?」

 

五十鈴はうつ向き黙る

敵も空気が読めるのかしばらく砲弾は降ってこなかった、砲身でも冷却してるのかもしれんが

 

《……分かったわよ、その代わり絶対に戻って来なさいよね》

 

「ここでくたばった所で何も守れん、お前たちもやられるなよ」

 

《当然よ、私たちが単なる小娘だとでも?》

 

「いいや、俺たちには不可能な事ができる海戦のエキスパートだ、頼りにしている」

 

《……千歳と千代田は瑞雲をスネークの直掩機で上げて!残りは後方の艦隊にありったけ爆撃!》

 

『了解!!』

 

《摩耶、切り込み隊長よろしく!》

 

《任せろっ!》

 

《名取と白露は千歳と千代田を護衛しながら私たちの後ろに居て、何かあったら無線で呼んで》

 

《分かった》

 

《そんな大げさだよっ、私だって戦艦の相手くらい——》

 

《ダメ、ここで無茶しても余計に疲弊するだけ、それに水母の2人を放って置くわけにもいかない》

 

《……分かってる》

 

《大丈夫だよ白露、僕たちがさっさと後ろの戦艦と重巡を倒して戻って来るから》

 

《時雨ちゃんの言う通りっぽい!後ろのが片付いたら……素敵なパーティー一緒にしよっ?》

 

《……時雨と夕立は相変わらずぶっ飛んでるなぁ……》

 

《それが頼りになるんですけどね、それにその2人を束ねるお姉ちゃんが私たちの護衛に着くわけですし、ね?》

 

千歳がわざとらしく白露に答えを求める、その白露も千歳の顔を見て大きく頷く

 

《まっ夕立と一緒にパーティーはしたく無いけど》

 

《ひどいっぽい!》

 

《そりゃそうだ》

 

《そうですね……私も遠慮したいです》

 

《摩耶さんに高雄さんまで!?》

 

《……話はお開きよ、全員用意は良いわね?》

 

「俺のセリフだ」

 

《ならっこれより後方の敵艦隊に突撃、千歳たちは後方から援護よろしく》

 

「接近される時間は稼ぐ、迎撃体制を整えておいてくれ」

 

《分かった、ならっ全員行動開始っ!》

 

そう言った五十鈴の言葉に後方にいた8人は一斉回頭、

負傷している白露は名取と共に千歳と千代田の護衛のために艦隊から外れる、

その横にいた千歳と千代田も同じく回頭、同時に発艦する機体を準備し始める。

 

こっちは時間との戦いだ、データはあと5kmで得られるが敵は真っ直ぐあいつらに向かう。

出現のタイミングからして島を砲撃する事が目的では無いだろう、あいつらが後ろの3隻に手間取ることは無いだろうがすでに前の敵艦隊は射程圏内だろう。

だとすれば妨害は免れない、そのまま挟撃されれば損害が増えるだけだ。

 

 

なら暴れるしか無い

 

 

そう思いながらアクセルを吹かしティムが改造してバイクのバーに追加された赤いボタンを押す。

奴が言うにはリミッターを解除するスイッチらしい、60ノットまで出せる様になるが燃料に注意しろと言っていた、だが今は出し惜しむ場合じゃ無いだろう。

 

 

…………カールグスタフを持ってくるんだったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……本当に行ったわ》

 

《言ったろ?それだけの実力はあるし度胸まである……普通はビビるはずなのにな》

 

五十鈴の独言に摩耶が突っ込む。

彼女たちの経験からしても彼、スネークの行動は異常だった。

 

何せたった1人で艦隊を相手にしようとする者など兵士はもとい艦娘の中でも居なかった。

軍艦だった頃ですらそんな事をしようとしたのは……いなくは無かったが、それでも実行出来たのは夜戦というアドバンテージが健在だった事や、ある程度無茶が効く様な状況下だった。

しかしそんな華やかな物だけでなく、艦隊や護衛対象を護るために囮として犠牲になった娘もいる。

 

そして艦娘として戦う今、まず単艦で敵艦隊に突撃を仕掛ける者など居ない。

それだけ追い込まれた事が無いわけでは無いが、玉砕覚悟の突撃など無意味だと彼女たち自身頭で

分かっており、彼女たちの提督たちや大本営・防衛省も玉砕を認めていない。

理由は戦術的には失った戦力の補充が確保できていないため、内政的には過去の遺恨を繰り返す訳にいかないため、そして彼女たちを兵器だと思っていない者たちにとって失いたく無いため。

理由は何であれ、今は誰も彼女たちに「散れ」と命ずることは無い。

 

 

 

だがスネークの行動は紛れ込まれもなく死に急いでいる……そう見えた

 

 

 

強制的に命令された訳でもなく自ら進んで敵艦隊に向かっていく、それを無茶と言わず何というのか

五十鈴としては自分と名取と一部の駆逐艦を引き連れて足留め、その間に後ろの艦隊を撃破する算段だった。最もそれは罠の中を突っ切る事になったのだがそれを承知の上で実行するつもりだった。

それが自分の中で見出した賭けだった、だが彼は自分が考えていた以上の大博打に打って出た。

しかも自分の命を懸けて、だ。

 

 

もちろん五十鈴は止めた、それはただ死にに行くのと同じだから

 

 

だが話を聞くうちにその考えが間違えている様に感じた

 

 

何せ彼の言葉には 自殺願望でも、自暴自棄な物でも、絶望から来た暴論でもない

 

 

ただ自分たちが生き残り勝つための方法を提案している、そう感じたから

 

 

彼の言葉に虚勢も無く、ただ純粋に生き残ろうとする強い意志を示していた。

そうでなければ本来自分たちといれば安全だと考えるのに「役に立たない」という理由で自ら危険を冒す必要がない。

実際彼が動かなければ罠の場所も、そもそも助ける必要があるのかも分からず無駄に消耗するだけ、このまま放っておけば挟撃されこちらがやられる。

 

そう結論付け実行できる兵士が、指揮官がいるだろうか?

そんな事を自分の命が危機に面している戦場で平然とやってのけるだろうか?

 

 

そして何より……彼に惹きつけられた

 

さっきまで無謀だと思った

 

ただ死にたいだけなのかと疑った

 

そんな彼の発する言葉に魅かれた

 

彼が向ける背中が頼もしく見えた

 

彼は言った「俺を信じろ」と

 

そんな彼の言葉通り信じようと思った

 

思ってしまった

 

 

……自分自身驚いている、何故そう思ったのか。

だが不思議とスネークを送り出す判断が間違っているとも止めるべきだとも思わない。

むしろやるべき事、その彼の行動が彼女の後ろ盾の様に支えてくれている様に感じた。

 

《……スネークさんは大丈夫だと思いますよ。

摩耶が言った通り加賀さんの奇襲を返り討ちにしましたし、そもそも私たちに囲まれても堂々として雰囲気だけで私たちを威圧してた人です、心配するのは杞憂です》

 

《あら、高雄がそんな事言うなんて》

 

《……千歳だって分かってるでしょう?》

 

《……まあね》

 

高雄と千歳はスネークの本来の姿を見た事がある。

その時、彼女たちは何も出来なかった

マーリンとパッツィーが完璧なカバーをしていたのもあるが、何より目の前にいる男が発するオーラに言葉を発する事すら戸惑い、ためらい、呆然としていた。

 

 

だが彼女たちは知らない

 

それは彼“自身”が纏う雰囲気だった事を

 

“伝説の傭兵”が、“一匹の蛇”が纏う雰囲気ではない事を

 

 

《……それよりまずは目の前の敵を倒しましょう》

 

《……千歳、発艦の用意は!?》

 

《千代田、準備はいいわね?》

 

《あいつの事は気に喰わないけどっ、ここが天下分けめの戦いになりそうだからねっ!》

 

《っなら行くわよ!》

 

《わかった!》

 

「「発艦始めっ!!」」

 

千歳と千代田が持つ箱型のからくり箱から パシュッ という独特の音と共に、

紙のような物で作られた“ヒトガタ”が海の上を飛んで行く。

やがてその紙が変形し、それぞれが一機の飛行機になる。

本来車輪があるべき機体の底にはまるで下駄のような物がぶら下がっている。

 

その飛行機の名は瑞雲、摩耶や五十鈴たちが使う偵察機や観測機として使う水上機と呼ばれる種類の航空機だ。

その特徴は下駄のような見た目のフロートと呼ばれる物で水上に浮く事が可能で、空母のように

飛行甲板が無くとも運用が可能である事、さらにこの瑞雲という水上機は急降下・水平爆撃、更には戦闘機との格闘戦も視野に入れ開発された機体だった。そのためさすがに戦闘機と相手をするには荷が重いが敵の攻撃機を迎撃する事もある程度可能な良好な機動性を持っている。

 

前方に展開している敵が空母を従えていた場合、さすがに全機を捌くことは不可能だが時間を稼ぐ程度ならやってのける性能を持ち、スネークの提案通り直掩を付けたのは“監視” の意味もあるが、

とりあえず前方の敵に集中するために大半の機体をスネークの護衛として就かせることにした。

 

発艦し機体となった瑞雲は彼女たちの上空を旋回、空中に集合していく。

その数30機、そのうち20機が彼女たちが進む方向とは逆に編隊を組みながら離れていく。

残りの10機は先行して敵艦隊に向かい爆撃を行う。

 

《敵艦ミユ!!》

 

五十鈴が叫ぶ

前方に黒い点のようなものが3つ、だが見慣れている彼女たちは知っている

 

深海凄艦

 

前方に戦艦ル級、色からしてflagship

その後方に重巡リ級がflagshipとéliteが一隻づつの計3隻。

 

一方こちらは重巡2隻と軽巡2隻、駆逐艦が4隻と水母2隻の計10隻

数から見れば有利、だが戦局としては武が悪い。

武装面ではほとんどが対潜装備であり、艦隊戦の本領が発揮できるのは高雄と摩耶のみ。

また、後方にはさらに敵艦隊が迫っておりあまり悠長に相手をしていられるほど時間が無い。

そして何より目に見えない異常な破壊力を持つ罠がこの海域には存在している。

 

だが彼女たちに今は焦りの色は見えない

 

目の前には自分たちの敵がいる

 

だったらぶっ倒せば良い

 

視界に捉えたのは向こうも同じらしい

 

こちらを見つめながらも迫ってくる

 

その場にいる全員が主砲を構える

 

《砲撃始めっ!》

 

それを口火に全員が主砲を放つ

 

それぞれの砲から放たれた砲弾は放物線を描き始める

 

同時に10人の艦娘は転舵

 

向こうからも放物線が描かれているからだ

 

《水雷戦隊、一気にカタをつけるわよっ!!》

 

『了解っ!!』

 

五十鈴を筆頭に4人の艦娘が海面に白い水しぶきを上げながら突撃していく

 

その先の空では急降下していく瑞雲

 

 

彼女たちの戦いが、始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そろそろか」

 

一方、スネークは改造された水上バイクにまたがりiDroidをデータリンクさせるためすでに島の10km圏内に侵入しようとしていた。

リミッターを解除した事により時速60ノット(約110km/h)以上で航行し、

五十鈴らと別れた時点で島から15kmほどだったため3分ほどで侵入する事が出来た。

前方に展開している敵艦との距離は約20km、砲撃さえ気にしていればスネークにとっては何の脅威でも無い……今の所は。

 

そして真上には小さな物体が弧を描きながら旋回する、

周辺を警戒している先ほど後方から飛んできた千歳たちの瑞雲だ。

生憎乗っているパイロットが妖精のため無線によるやり取りがスネークには不可能だが。

 

 

《Auto information function start.Division of data and connect …… connect………………

clear,Headquarters of data link form will make line……standby……standby……clear.

Tactics data link will connect——》

 

iDroidが機械音声を読み上げる、どうやら本部とデータを共有しているらしい。

あとは敵を殲滅したのち、データをもとに島に上陸すれば良い。

だが直感からしてそう簡単に事が運ばないのは予感している、ならさっさと離脱・合流するに限る。

 

「っ!」

 

そしてその直感は的中する

 

9時方向……東側から独特の切り裂き音

 

しかし音速を超えた事によるソニックブームでは無い キーンという機械音

 

そして飛んでくる小さなモノ

 

「……なんだアレは」

 

ソレにスネークは素っ頓狂な反応をするしかなかった。

何せソレは球体で空を飛んでいるのだ、しかも結構な速さでだ。

おそらく深海凄艦の兵器なんだろうが……一体どんな兵器なんだ?どういう仕組みで飛んでいる?

前に見た深海凄艦の艦載機もまた不思議な形をしていたがまだ何となく空を飛べるフォルムだった。

気になる……気になるぞ………それがスネークの印象だった。

 

だが瑞雲がバンクしながらソレらに向かって行くのを見て目を覚ます。

あれは明らかな“脅威”だと

事実、瑞雲は抱えていた爆弾を投棄し上昇、戦闘体制に入っていた。

敵機の方は機数が約30機、まだ見えていない可能性もあるが向こうの方が数が多い。

味方の練度は不明だがiDroidの情報更新はもう少しかかるが時間稼ぎはしてくれるだろう。

 

 

「……なら偵察するか」

 

まだ時間がかかる、なにより情報は多いほうが良い。

背中に背負うM16を構えマガジンを填め込み薬室に装弾、スコープを覗き距離感を確かめる。

そして双眼鏡を取り出し敵機を確認する。

 

……間違いなく丸い、しかも顔のような物まで付いている。

瑞雲は水上機そのもので揚力が発生するであろう翼やプロペラがある、サイズが小さいだけで飛ぶ事自体あまり不思議では無い。

だが丸い物体は一体どこに揚力が発生する?しかも動力はプロペラでは無い……ジェットなのか?

機数は4機編隊の40機か、だとすれば正規空母では無く軽空母辺りだろうか。

 

「……爆弾を持っていないだと?」

 

 

ありえない、この絶好のチャンスに攻撃機を1機も出さない訳が無い。

訓練で相手をした艦載機は全て機外に兵装が剥き出しで狙えば誘爆させる事が出来た。

戦闘機も混じっているだろうがおそらく機体内部に兵装が収納されているタイプだろう、だとすれば爆弾や魚雷を誘爆させ撃破する事が難しい、それにどこにあるか分からなければ意味が無い。

 

 

《……Wireless can't be used.

All information accepted.Information for around waters tuning, maps show that you.》

 

iDroidが全ての情報を収集し終えた事を報告、自動的に周辺海域の状況がスクリーンに表示される

端末を専用のホルスターから取り出す、するとどこにトラップが設置されているかが表示されていた

どうやら本部とデータリンクは出来たらしい、更に目標の島を見てみると味方の反応が多数あった。

 

 

 

……どうやら生きてはいるらしい

 

 

 

となればこっちとしては逃げるだけだ、

瑞雲と敵機は既に交戦を開始、恐らく無線か何かしらの方法で千歳か千代田に報告してるだろう。

余裕があれば援護するが他の味方は近くには居らず自分自身は脆い水上バイク、武器も重火器は無く残弾も気になる、何より未だにiDroidで本部と連絡が取れない状況であることだ。

データリンクは成功したがコンタクトは失敗したらしい、そのため支援要請を行う事が出来ない。

今できる事は安全に彼女たちと共に島に上陸すること、そのために合流する。

M16を背中に背負いアクセルを吹かす。

 

 

ヒュゥゥゥゥ

 

 

……だが敵は俺を放っておく事が出来ないらしい

 

バイクを吹かし急速反転

 

そのまま加速する

 

一瞬後、周辺に白い柱が立つ

 

大きさからして戦艦なのは間違いない

 

時間は……5分あれば十分だ

 

再び赤いボタンを・・・押すのは止める

 

どうやら思った以上に燃料を喰うらしい、既に半分を切っている。

ここで使った場合合流できても思うがままに動けなくなる、そうなればお荷物以外の何物でも無い

 

ヒュゥゥゥゥ

 

再び独特な切り裂き音

 

バイクのバーを右に切る

 

そして周りに作られる6つの水柱

 

同じく戦艦から発射されたであろう威力

 

そして装填時間の短さ

 

……戦艦は2隻、そしてこちらを脅かすには十分な航空戦力か

 

既に瑞雲の半分は落ちている

 

敵機はどうにか削ったようだがそれでも半分近く抜けられている

 

そして抜けてきた敵機が向かう先は・・・ただ1つ

 

 

 

 

「・・・はぁ」

 

 

 

 

だが獲物になるであろう方は場違いにもため息をついていた

 

さらに本人はそういえばこの所ため息をついていなかったハズだが、などと呑気に思っていた

 

だがその間にも敵機は近付いてくる

 

スネークの視界範囲内で瑞雲と交戦していたため、既に5kmを切っている

 

あと1分もせずに敵機の射程圏内に入るだろう

 

その時、敵弾が音を立て向かって来た

 

数瞬後

 

着弾

 

さっきよりもずっと近くに水柱が立つ

 

そして柱が消えた時……スネークはその場で止まった

 

 

「・・・はぁ」

 

 

それでもスネークは止まったバイクにまたがり、再びため息をついた

 

数秒の沈黙

 

不意に腰に手を伸ばす

 

 

「……なぁ」

 

 

ついでにホルスターに掛かっているカンプピストルを手に取る

 

 

「俺は“あの時”言ったよな」

 

 

擲弾は装填されていない

 

 

「死ぬ気は無いってな」

 

 

それを確認し信号弾を装填する

 

 

「例え海の上だろうとそれは変わらん」

 

 

そして銃口を上空に向ける

 

 

「だからこの判断は……間違ってない」

 

 

そして打ち上がる“花火”

 

ヒュゥゥゥゥという音を立て

 

上空で花開く

 

それを目印に全ての敵機がスネークに方向を変える

 

 

だがスネークはその場で止まったままだ

 

 

もはや敵にしてみればいい的だ

 

あの形状でも爆弾を搭載しているらしく急降下爆撃の進路に入っている

 

それでも……それでもスネークは動かない

 

 

銃を構えることも無く、

 

バイクを操縦することも無く、

 

無線で応援を呼ぶわけでも無く、

 

敵機を相手にする気も 逃げる気も 無い

 

敵機・・・直上

 

 

 

《s……nぇーkぅ!?》

 

 

 

女の声が無線から聞こえる

 

……五十鈴だろうか

 

どうやら後方にいた敵艦は思ったより早く仕留めたらしい

 

しかし深海凄艦が発するジャミングがこのタイミングで通信に干渉してきた

 

さっきは距離がとても近かったが今は数kmほど離れているからだろうか

 

だがそんな事は大した事では無い

 

彼女たちの実力を見れば大した損害も出てないだろう

 

 

 

《はやkにg……なさ…よっ!!》

 

 

 

だがスネークは動かない

 

動けない

 

敵機がダイブを始める

 

 

 

《こっt・・きぇっ!》

 

 

 

全員の主砲がこっちに向けられる

 

「対空戦闘用意っ!!」

 

と言っているらしい

 

この距離でよく読唇術が出来るものだと我ながら思った

 

 

・・・だが

 

 

「待てっ五十鈴!」

 

 

だがそれだけは止めなければ

 

 

「撃つなっ!」

 

 

そこまで迷惑をかけたくは無い

 

それに・・・撃たせたところで無駄だ

 

結果は変わらない

 

いや悪い方向に変わるかもしれない

 

味方の誤射で……それだけは勘弁してほしい

 

彼女たちの技量からしてそれだけは無いだろうがどの道迷惑をかける

 

 

《なn……いってn・・・・あnた!?》

 

 

確かに変だ

 

普通なら無線で情報を伝えるか援護を求める

 

そして逃げる

 

だが何1つ、どの手段も取らない

 

既に敵機は投下コースに乗っている

 

もうスネークが対処する以外に助かる術は無いだろう

 

 

 

「あんた死ぬ気は無いんでしょ!?そう言ったでしょう!?だったら助かろうとしなさいよ!!」

 

 

 

だがその言葉にスネークは答えた

 

 

 

「……そういえばお前にも言っていたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後スネークの姿は見えなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ白な世界によって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場にいた者が 物が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的な光と音の世界に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……何が……起きたの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが艦娘であり長良型軽巡洋艦二番艦、五十鈴の感想だった

 

 

 

他の艦娘も同じ気らしく辺りを見回している

 

 

 

というより余りにも明るい光を浴びた事で一時的に視界がボヤけていて状況が誰も把握出来ない状態

 

 

頭のモヤを振り払う様に首を振っていたと言うのが正しい。

 

 

「……っ全員無事!?」

 

 

だが聴覚だけは無事だった

どうやら平和丸で集まった時に食らったあの“爆音マイク”で多少慣れたらしく、無線越しに会話する程度なら問題なかった

 

《私は大丈夫です、摩耶がちょっと耳を痛めてますけど問題無さそうですわ》

 

《千歳お姉だいじょうぶ!?》

 

《千代田……うるさい》

 

《あっ……ごめん》

 

《私も大丈夫だよ……白露ちゃんたちは!?》

 

《みんな平気みたい……夕立が唸ってるけど》

 

「そう…………ってスネークは!?」

 

全艦娘の生存は確認した、中破判定である白露も問題なかった。

だが彼は……スネークはどうなったのか?

艦娘である自分たちが無傷でも彼が無傷であるとは言えない、そもそも急降下爆撃の直前に回避運動も取らずただ止まっていれば当たる事ぐらい簡単に想像つく。

 

彼が居たであろう方に顔を向ける。

……が、まだ視界がボヤけていてよくわからなかった。

 

「っスネーク!居るなら返事をして!!」

 

《……………………》

 

「スネークっ!」

 

《……………………》

 

「っそうだ電探!」

 

慌てて13号対空電探を見る

敵機の数から見て恐らく軽空母、なら第二次攻撃があっても不思議じゃ無い。

すぐに起動させる……が、最新のレーダーでは無い彼女たちの装備ではどうしても時間がかかる。

それでもいつでも起動できる様にしていたため30秒あれば使える、しかしその30秒が長い。

 

「早く……早くしてっ」

 

だが彼女が焦っても相手は機械、手順を踏まなければ起動しない。

妖精たちも懸命に起動作業に掛かっている、その間に陣形を組み直しスネークがいた場所に向かう

その距離約2km、全速力で1分強、十分目視できる距離なのに見えない。

もっと早く航行したいが何事にも限度がある、自分の性能を卑下しながらも今はそれどころでは無い、

そう言い聞かせ艦隊を指揮する者として駆逐艦に対潜警戒を命じ千歳らに艦載機を収納させつつ

近付いていく。

 

そして電探が起動した、

 

それと同時に血の気が引いていく感覚がはっきりとわかった、

 

電探の反応からして目の前に敵機の反応があるのだ

 

しかも見た事が無い様な波形・・・つまり新型

 

反応の大きさからして数ではなく機体そのものが大きいのだろう

 

だがそれが彼女を冷静にさせた

 

急激に頭が冷えていき視界が徐々にクリアになっていく

 

すると確かに空中に何かがいるのが影でわかった

 

まだモヤがかかっているが間違いなく敵機だろう

 

 

「総員対空戦闘用意っ!目標正面の敵機!!」

 

 

脊髄反射でそう叫んでいた

 

 

『っ了解!!』

 

 

他の娘もそれに反射的に答えた

 

主砲を敵機に向ける

 

あれが何処から現れたのか、あれがスネークを殺したのか、どんな性能を持っているのか、

 

一瞬で様々な事が浮かんだが冷静に

 

かつ端的に五十鈴は目の前の敵機を撃ち落とす事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《おいっ待て待て待て待て待て!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・え』

 

 

《こっちは味方……いや友軍だ!取りあえず撃つな!!》

 

 

突然入ってきた無線に全員が困惑していた。

何せいきなり敵だと思っていたのが無線に割り込み、ずいぶん必死な声で撃つなと言われれば誰でも困惑する、それが言葉が通じる訳がないと思っていた深海凄艦なら尚更だ。

 

「なら所属と部隊名を言って、場合によっては攻撃も辞さない」

 

が、極めて冷静になっていた五十鈴が対応した。

友軍と名乗られても信用できる物がまずない、そしてスネークも居ない、何より敵機らしい物が何処にもいない、まさか自称友軍と名乗る機体が全て倒したわけでもあるまい。

もし本当に味方なら心強いことこの上ないが、深海凄艦ではない敵なら十分脅威に値する。

 

《そうだな……アメリカ海兵隊太平洋方面航空機械科連隊所属、ピー——》

 

「攻撃用意っ!!」

 

《待て待て待て!撃つなって!!》

 

米軍?海兵隊?機械科連隊?

話と違うじゃない!何でこんなへんぴな所に米軍がいるのよ!?

そう思った五十鈴は容赦なくその物体に標準した。

 

 

 

 

《嘘をつくな、所属を名乗れ》

 

 

 

 

だがその標準はすぐに海面に向いた

 

耳元で確かに聞き覚えのある声が聞こえたからだ

 

 

 

 

《し しかし……》

 

《俺が許可する》

 

《そうですか……》

 

 

最初は戸惑っていた謎の物体

 

だがその聞き覚えのある声に押され渋々所属を明らかにした

 

 

 

《こちらピークォード、スネークの支援要請を受け参上した》

 

 

 

その答えと同時に全員の視界が完全に元に戻った。

 

余りに強い刺激を喰らいよくわかっていなかった、

 

だがどうやら煙幕が自分たちの前方には焚かれてたらしい。

 

その煙幕が晴れると2つのものが現れた

 

1つは敵機・・・その大きい反応を示していた大きい影

 

それは一機のヘリだった

 

 

 

そしてもう1つ

 

 

 

ヘリに比べれば小さい

 

 

だがその存在感は大きく、遠くからでもよくわかる

 

 

左目に眼帯を付けている

 

 

バイクにまたがりこちらに顔を向けている男

 

 

 

…………………………それは呑気に葉巻に火を付けたスネークだった

 


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