鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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どうもお久しぶりです

……本当にお久しぶりです

なんだかんだ色々とありまして、投稿できませんでしたm(__)m

その事も後にお話ししたいですが、まずは小説をどうぞ!








そして今回はやっっっっっっと深海凄艦と艦娘の戦闘が始まります!!

……今まで良く半年以上も戦闘シーン無しで艦これ小説と言えたものです……(-_-)

それでは本編をどうぞ!


大規模作戦 12/2

 

「艦長、今日は月が見事に出てるな」

 

「ああ、スネークさんですか。

見事なくらいに満月ですよ、12月なのにバカみたいに暑いのが気に食いませんが」

 

「そうか……まあ日本の12月はまだ経験したこと無くてな」

 

「そうでしたか」

 

「……それより、そろそろ来るぞ」

 

「……あんたも良い勘してるな、俺もそう思ってた所だ。

彼女たちも今まで以上に警戒してくれてるよ」

 

 

00:21

ついさっき昨日が終わった所だが、こっちとしては今日は山場だ。

何せ赤道直下のくせに雲が少なく、よりによって満月。

潜水艦にとってこれだけの船団は良い獲物だろう、何より見つけやすい。

 

「おいホーネット、夜の景色はどうだ」

 

《夜風もちょうど良く酒があれば最高ですよ……ですが今夜だけは遠慮しておきます》

 

「そうしてくれ」

 

《異常があり次第無線関係なく叫びます、操舵はそっちでご勝手に》

 

「言われなくともそうするわい」

 

「潜望鏡か竹みたいな漂流物があればすぐに言え」

 

《あと魚雷ですね》

 

「ああそうだ」

 

《なら叫ばずに済むように海を見渡してますよ》

 

「……今のはマストじゃあ初めて見る奴だがどんな奴なんだ?

ウェーバーは昼間だと随分遠くまで見えている様だし、ルイって言うのも夜目が効く。

だが今日はルイじゃなく何でまた別のが?」

 

「……ホーネットの意味、知っているか?」

 

「確かスズメバチでは」

 

「……そう言えば山田、英語出来たな」

 

「でなかったら書記なんてやってられませんよ」

 

「……確かにその通りだが、もう1つ意味がある」

 

「?ハチ以外にですか」

 

「スペルを変えろ、tがdに変わる」

 

「………すいません、わからないです」

 

「そうか」

 

「……で、あいつは夜目が効くのか」

 

「それだけじゃない、スカウト……偵察においては中々の腕を持ってる。

言葉通りに動くものは全て捉える、それが暗闇で目の前が見えなくてもだ」

 

「ほぅ……だがここは海だ、波の音でわからないんじゃないか?」

 

「本人が言うには問題ないらしい、一定だった波が変形するときの音でわかるそうだ。

昼間どの艦娘がどこにいるか目を瞑らせて言い当てた、距離も誤差は100m前後はあったが海上じゃ十分発揮出来る。そこまでわかれば艦娘がやってくれるしな」

 

「そうかい、あんたはこの後どうする?」

 

「俺の部下はルイが指揮する、指揮するためにマストから降ろさせたのもあるしな。

俺はここで情報共有と雑談って所か」

 

「そうか」

 

そう言って艦長が艦橋の前方に向かう。

航海長は常に舵を操っているが普通に立ってるだけだ、さすが長年の経験は伊達じゃない。

 

「ならそこにでも座っておけ、そこなら誰の邪魔にならない」

 

「おーそうか、ならそうする」

 

しばらくはここで世話になるか。

……出来れば朝までここに居たいがな。

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

「全員いるかぁ?」

 

『ウィース』

 

「……よし聞け、今日確実に敵襲はある」

 

『……………』

 

「全員持ち場に着け、各兵装を携行しろ。あと特殊兵装も持っとけ」

 

『了解』

 

「……なら解散なー、ローテはちゃんと守れよー

あと何かあったら艦橋経由して艦娘に知らせろー」

 

『ウィー』

 

まっこんなもんだろ。

こいつら新米じゃないし、起きる時は起きれるし、銃の扱いは俺よりは上手いだろうし、

何よりBOSSも居るしな。

 

「ルイ、いや ぶたいちょー」

 

「……お前わざとだろ」

 

「あっやっぱりわかるか?」

 

全く……こいつは相変わらずだ。

それでもBOSSのいる鎮守府に行く様に命じられたのはこいつなんだがなぁ

 

「お前も相変わらずだな、ティム」

 

「俺はやりたい事をやるだけだ」

 

「単なるわがままじゃねえか」

 

「そうだけど?」

 

「はぁ……で、どうした」

 

「…………本土から艦隊が出撃した様だ、ロワゼルが残ってる諜報員からの通信を受信した」

 

「…………本当か」

 

どうやら本当らしい、よく見る気楽な雰囲気からただただ冷たい雰囲気に変わった。

目も銃をいじっている時と同じくらいに真剣だ。

……ならこっちの仕事だ。

 

「ああ、それもまた結構な大艦隊だ。

正規空母3隻に重巡3隻、軽巡4隻と駆逐が2隻、さらにその支援艦隊も各鎮守府で待機、

即時行動可能だとよ、支援艦隊の待機場は——」

 

「確実にトラック島だろうな、他に俺らが知る中であそこまで丁度いい場所は無い。

仮に秘密の拠点があったとしてもこの機会で使うべきじゃ無い。

それにトラックならラバウルや西方海域の利便性も良いしな」

 

「だろうな、それにここ1週間で輸送船も引っ切り無しで動いてるらしい」

 

「……どう来ると踏む」

 

「さあね、生憎俺は戦術担当じゃ無い。

けど結構面倒な事にはなるのは確実に目に見えてる、違うか」

 

「報告通りの戦力なら徹底時に敵を潰す気だろう、その戦術は間違っちゃいない。

だが……………………」

 

「そうだなぁ……心配だ」

 

「…………まっ俺らはとりあえずラバウルに構えるしかない」

 

「単純で何よりだな」

 

「……その前に今夜乗り切らないとダメなんだが」

 

「……ならこっちも仕込ませてもらう」

 

「まだ全力運転はするなよ?」

 

「おー、なら俺も持ち場に戻るわ」

 

「何か見たら言え」

 

「見たくねえな〜」

 

……ったく、あいつは相変わらずマイペースだ。

それでも腕は確かだしここじゃ数少ない技術屋だしなぁ。

銃のクリーニングは出来ても機関や通信設備までは整備できない。

 

 

状況の整理だ

あと約63時間で目標地点に到着、撤収準備には1日かかるだろう。

その後ラバウルに向けて全速力で向かう、そこまでは最速で5日、蛇行しても1週間で着く。

問題は………ランディングポイント近くで戦闘が始まってしまう事か。

近くと言っても距離は2000km、片道2日かかる範囲だが船からすれば十分近い。

空母を展開させればギリギリ爆撃範囲内にもなる。

 

……爆撃だけならどうとでもなるが、艦砲射撃と深海凄艦の相手はさすがに今は分が悪い。

それにそもそも副司令たちが生きてるかって前提も怪しい。

それでも行かなきゃ話にならない、やれる事をやるだけだ。

 

 

さらに言えば敵潜水艦がどれだけの規模で動いてるのかも問題だ。

狼群作戦を展開しているのか、広範囲に待ち伏せて居るだけか……どのみち面倒だ。

 

さらにティムも考えていたが——

 

 

「あら、考え事でしたか?」

 

「ん?ああ高雄か、それに摩耶もいるのか。どうしたこんな時間に?

良い子ってほどの年じゃ無いだろうが哨戒任務には今日はついてないだろう、

寝れるうちに寝ておいた方が綺麗な肌と体の為だぞ。

最後のはパッツィーとフォレストの受け売りだがな」

 

「……どこ見て言ってやがる?」

 

「生憎男なんでね、目の前にあればつい見ちまう。頼むから制服のから上着でも来て欲しいんだがなぁ」

 

「んん……」

 

「いや悩むなよ」

 

「まあまあ、摩耶も言いたい事はわかるでしょう」

 

「はぁ……まあ鎮守府でも最初こんな感じだったな」

 

「そうだったわね」

 

「……で、本当何してたのこんな時間に」

 

「いや、霧島と千歳が今日は寝てしまってよぉ。

それに今日はこんな満月だろ?

叢雲は今哨戒任務中だし、エアーを探そうにもどこにいるかわかんねえし……」

 

「それで、高雄の方は部屋の2人が真っ先に寝たから何とも言えない気持ちで摩耶の部屋にでも行ったんだろ?けど摩耶も1人だったから甲板に出てきて話し相手を探しにきたか」

 

「よっ良く判ったな……」

 

「…………まあな」

 

「……ところで、さっき随分険しいお顔をされてた様ですけど?」

 

「そりゃこんな綺麗な満月みれば悩みの10や20出てくるさっ」

 

「それはまた随分……多いですね……」

 

本当は5か6つだがなぁ。

けどそんなこと言っちゃリアル過ぎてこの2人は余計眠れなくなりだろうし丁度良いか。

……逆にこの2人を寝させない事も出来なくは無いがBOSSに確実に絞められる、それにそんな関係になりたいとも思わない。

姉妹って言うのは少し興味あるが…………………

 

「……なんか変な事考え無いだろうな?」

 

「ん、別に・・・はぁ」

 

「本当に悩んでるんですね?

……私たちも話し相手を探しに来たんです、良ければ話してもらえませんか?」

 

「そうだな……まあいいか、相手がいた方が解決しやすいしな」

 

それに眠気も紛らわせる、目の保養……には少し過激か。

まあそれにしても艦娘の子達は全員が個性があり、女性としては中々のプロポーションを

持っている。

何より全員顔立ちが整っていて、まるで誰かが意図して作ったみたいだが美しいなら問題無い。

 

「それで、具体的に何に悩んでたんだ?」

 

「……じゃあお二人さんには選択肢を与えよう」

 

「はあ?そんなに悩み事があんのか?」

 

「言っただろ、10や20はあるって」

 

「マジだったのかよ……」

 

「良いじゃ無い摩耶、みんな多かれ少なかれ悩みはあるでしょ?」

 

「……おう」

 

「まあとりあえず2つ。

1つは俺たちの仲間の事〜、もう1つは……………君たちの仲間の事」

 

『!!』

 

高雄・摩耶の2人の顔が強張る、だがそれは臨戦態勢に入る物ではない。

言うなれば……不安と心配の表情か。

 

「……どうやら君たちの仲間の事の方が良さそうだね?」

 

「そりゃあんたがわざわざ私たちの仲間を心配するくらいの事態って言うなら焦るさっ」

 

「ええ、さっきの険しい表情だけをみればね相当まずい事態だと予想できますから」

 

「えっ?………俺、そんなに険しいお顔をしてたの?」

 

「ええ」

「ああ」

 

……マジか!?

俺、そんなに勘違いさせる位までに顔が険しかったか…………

まぁそれなりにマズいっていうか面倒が増えそうなのはティムが言ってた通りだがよ。

 

「……んじゃまあとりあえずその話からだ、ここじゃその……寒くないか?」

 

「あん?……ああ大丈夫だ、私はむしろ海風にも当たりたいしな」

 

「そうか、高雄も?」

 

「ええ、何なら目も覚ましたいですし」

 

「……なら艦首に行くか、丁度テーブルとイスもあるし」

 

「えっ?あるんですか?」

 

「ここにいる女勢が欲しいって言い出して捕鯨砲の近くにセットしてある。

スゲえぞ、最大船速で急旋回してみ絶対外れないから」

 

「それは……それでどうなんだ?」

 

「資材の余りで作ったから大丈夫だ。もしもの時は防弾仕様だから簡易的な防壁にもなる」

 

「えっ」

 

「とりあえず行くぞ〜」

 

 

 

 

ー3人移動中・・・移動中・・・ー

 

 

 

 

「で、君たちの仲間の話でもしよか」

 

「……一体何が起きてんだ?」

 

おい、早速本題切り出そうとしてるよ。

そんなんじゃ情報は本来なら得られないだけどなぁ〜

 

「摩耶、まずはルイさんの話を聞いてからよ?」

 

「だ だけどよ!」

 

「まあ良いよ、別に機密事項の取引じゃないし。

まっ、機密事項の取引だったらすでに交渉決裂しかねないから今後は気をつけよう」

 

「うぅ……」

 

「……さて、早速だけど摩耶の言葉を訂正する。

『何が起きてんだ』じゃない、『何かが起きる』だ、これからね」

 

「……じゃあまだ何も起きてないのか?」

 

「ああ、だが確実に問題は起きる」

 

「具体的には?」

 

「わからない、だが起きるのは確かだ」

 

「それは……どうして言い切れるんですか?」

 

「…………まだ詳細は話せないけど、早い話今回の作戦が敵……深海凄艦に漏れてたら?」

 

 

「……………………………………………はあああぁぁぁ!?」

 

 

「おいどうした!?」

 

「大丈夫だ!高雄と摩耶の姉妹喧嘩だ!!気にすんな!!!」

 

「……喧嘩もほどほど、あと寝てるやつもいるから気をつけるように言ってやってくれ!」

 

「おーう!!」

 

あぶねぇ、危うく騒ぎが起きるところだった。

そうなれば全員に迷惑かかるわ、俺が関わってるのバレるわでそれはそれで面倒。

 

「おい!何で高雄姉と喧嘩した事に——」

 

「おーい、声のボリューム落とせ。他の奴は寝てんだ、多少は配慮してくれ。

ただでさえ夜の海は声がよく響くんだ」

 

「…………」

 

「すまないな、あとで何か食わしてやるから、夜食ならここは豊富だしな」

 

「……おう」

 

「…………それで敵に情報が漏れてたらってどういう……」

 

「そのままの意味だ。

もしこの船団の情報じゃなくて建設中の施設に大艦隊が向かって来ると解ったら?」

 

「それは……相応の艦隊で迎撃します」

 

「……けどよ、事前に強行偵察に出たんだ。

それなりに向こうも警戒してるに決まってるだろ?」

 

「確かに“ある程度は”当然護衛戦力が着いてるだろうな」

 

「なら——」

 

 

「それらの施設は“本当に敵の重要拠点”なのか」

 

「……何が言いたいんだよ」

 

本当は「はあ!?」とか叫びたいんだろうが、さっきのが結構堪えたのかこのトーンを

落として対応してきた。

 

「じゃあ聞こう、そもそも拠点っていうのはどういう意図があって作る?」

 

「えっ……そりゃ活動拠点が欲しいからだろ」

 

「ああ、それもまた拠点を作る理由の1つではある。

なら活動拠点が欲しい理由は何だと考える?

わざわざ2つも建設中なんだ、相当な理由があるはずだと考えるのが普通だろ?」

 

「うーん わざわざ2つも作る理由?……戦力の確保か?」

 

「鎮守府を作ると戦力が確保できるのか?しかも最前線じゃないとはいえ戦場の近くにだ」

 

「ならそれこそ活動拠点なのでは?前線への支援・補給目的の前線基地の1つでは?」

 

「わざわざ2つもか?そんなに西方や南方海域は深海凄艦の動きが急激に活発化したのか?」

それに前線基地なら資材を一箇所にまとめといた方が普通効率が良い。

しかもマップで見た限り場所はそれなりに離れてる。

隣同士ならまだしも離れてればそれだけ燃料を喰う、効率が悪い」

 

「なら資材の確保なんじゃねえか、それなら輸送船団用の港と、軍艦停泊用の泊地があるのも説明は出来るぜ」

 

「資材が大量に運んでるならそれだけ……まあ人と言えるか知らんが少なくとも資材は

あるはずだ、建設する人手みたいなのも集まるはずだ。

なのに何でまだ建設中なんだ、夏に破壊された後の復旧ならとっくに再建中だと外から見てわかるほど進んでいない訳が無い、外面だけでも再建は終わってるだろうに」

 

「……じゃあ何だって言うんだよ」

 

「…………重要施設のように見せるための建設中なら?」

 

「見せるため?私らにわざわざ?」

 

「そうだ」

 

「どうして……です?」

 

「それを考えてみろ、お前たちの事だ、俺の考えた答えに自分たちでたどり着いてみろ」

 

「……………………おい」

 

「ん?」

 

「……ヤバくねえか?」

 

「言ってみろ」

 

「…………主力を隠す、それか運営するための施設、とかか?」

 

「ほぼ正解だ、少なくともその施設が主力じゃ無いだろうな。

でなかったら資材が今更施設の復旧・再建に使われている理由は説明つく」

 

「……何らかの強力な艦船を作っていた!?」

 

「!それあり得るのか!?」

 

「あり得るだろうな、お前たちが現れた方法は知る由も無いが少なくとも海から発生した。

ならあの深海凄艦も海から生まれてくるって考えればな。

装備開発みたく艦船を作るのも不可能じゃ無いと考えるのが妥当だ」

 

「…………」

 

「さすがにどんなのが出てくるかまでは想像付かないがな。

だけどこれまで何かしらのボスみたいな敵は出てきたんだろ?」

 

「ええ、姫級や鬼級といった1隻で2・3隻分の装甲や火力を持つものや、中には空母・戦艦

雷巡の能力をたった一隻に全て持ったのもいました」

 

「何だそれ……化け物だなぁ…………いやまて、うちのBOSSも似たようなもんか?」

 

「えっと……スネークがか?」

 

「確かに化け物じみてはいますけど……深海凄艦ほどじゃ……」

 

「ああ、君たちBOSSが戦ってるところは見た事無いか」

 

「えっと……交流戦はしましたよ?」

 

「ああ、ウェーバーから聞いたよ。

けどあれはほとんど自衛隊の連中が相手をしてたんだ、BOSSはほとんど仕事をしてない。

あと秋月のために対空訓練したみたいだけど、その時だってマーリンや他の連中がほとんど働いていた訳で、BOSSが主に働いていたわけじゃ無い」

 

「けど自衛官40人相手に……」

 

「当たり前だ、何せBOSSはCQCっていう術を作った人間なんだ。

世界にある数々の体術・戦闘術を研究して良いところを選りすぐり、隙が無いように組み上げられてんだ。

確かに日本の柔は強い、だがそれだけを極めても弱点があるままじゃ誰にでも勝つことは出来ない。

CQCは誰にでも通用しなきゃ意味が無いからな」

 

「はぁ……」

 

「……けどよ、だからってスネークが化け物じみてる理由にはならないぜ?」

 

「そうだな……出来れば知らないままの方が良い、印象が変わるだろうからな。

あの人はただ強いおっさんじゃ無い」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、何せ——」

 

「おい、誰がおっさんだ?」

 

 

 

・・・・・・・・・やっちまった!?

 

 

あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあ

 

 

 

「スネークさんは単なるおじさんじゃないと私たちが説明されてたんんです」

 

「ほー……何か吹き込んで無いだろうなぁ?」

 

「いえ!何もしてません!!」

 

「……まあ良い、ルイ」

 

「なんでしょう?」

 

「異常はあったか?」

 

「今のところはありません」

 

「何かあれば俺は艦橋にいる、すぐ呼べよ」

 

「了解です」

 

「あと」

 

「はい」

 

「俺は別に化け物じゃ無い、じゃあな」

 

「…………………………………………………」

 

「あっあの?ルイさん!?」

 

「……聞かれてたかぁ」

 

まっ怒られるわけじゃ無いから良いか

……本当に死ぬかと思ったわ、いやそんなタイプじゃ無いのは知ってるけど……あぶねぇ

 

「おいおい、汗まみれだぞ」

 

「そんなに緊張しなくても……」

 

「……言っただろ、君たちはBOSSの本当の姿を見た事無いから」

 

「……起こった時の神通みたいなものかしら?」

 

「いや、妙高も怒ったときは怖いぞ」

 

「ああ、もう怖いとかって次元じゃ無いから」

 

「じゃあどんな感じなんだぁ?」

 

「そうだな……………………死、かな」

 

「死……ですか?」

 

これだけははっきり言える、絶対にBOSSを本気にさせてはいけない。

あの人だけで普通の軍隊なら1個師団は余裕で消える、戦車大隊も跡形も無くなる。

正面切って挑むなら陸・海・空の全戦力を一回で投入でもしなきゃ無理だ。

 

「なんか逆に気になってくるな」

 

「……摩耶、冗談だと思うがこれだけは言っておく。絶対にBOSSを怒らせるな、死ぬぞ」

 

「…………それこそ冗談だr——」

 

「………………………………………」

 

「……わかった、どの道私は馬鹿な事をする気は無いよっ」

 

「そうしてくれ」

 

「……それで、どうするんです?」

 

「えっと……どうするって?」

 

「はぐらかさないで下さい、私たちの味方をどうする気です?」

 

さっきと違う高雄の目はこっちの出方・答えを伺ってる。

答えによっちゃ……蜂起かね

高雄はパッツィーから聞いてる事は聞いてるし、このまま本隊と合流も不可能じゃ無い。

そうなれば俺らは破滅……は無くても現在最強の海軍力を敵に回す。

 

「……どうする気も無い」

 

「えっ?」

 

「確かに薄情だな、個人的には君達と協力したい。

だけどまずは俺たちの仲間を助けなきゃどうにもならない、俺らの本隊の力がなきゃ君達の支援すら出来ない。

それにそもそも俺たちは部外者だ、勝手に介入すればそれこそ軍事問題に発展する。

まぁ黙ってればバレはしないけど……案件がデカすぎる」

 

「そんな……」

 

「おいおい、お前たちの提督はそんな無能じゃ無いだろうが」

 

「……どういう事だ?」

 

「わざわざ輸送船団の護衛の名目で戦艦が2隻も着くわけ無いだろうが」

 

「……確かに」

 

「本土からもこっちからも支援艦隊を出して柔軟な対応を可能にしてるんだろう。

もしもの時は輸送船の帰投を遅らせて全艦娘を支援艦隊として派遣できなくも無いからな」

 

「それって——」

 

「ああ、民間人を巻き込む事にはなる。

だがそれだけ大事になれば俺たちも動く事になる、俺らも無関係の人間を巻き込みたいと

思うほど屑じゃない、それに正式になんらかの要請はあるだろうしな」

 

「そうですか……」

 

「おいおい、そんな落ち込まないでくれ。

俺が話したのはあくまで一番回避したいケースの一例って話だ。確実に起きるのは敵は重要施設に重きを置いてはいない事だけだ。

実際に起きて欲しくは無いが、起きたとしても俺らが動く羽目になら無いだろうよ。

でなかったらわざわざ高速戦艦なんて主力を2隻も送って来ない。

それに、その主力には君達2人も含まれてるだろ?」

 

「……そうですね」

「……そうだった」

 

「……俺も随分悩みすぎだった。

君達にまで少し不快な思いをさせて悪いな、そんな気は無かったんだが……」

 

「いや、少なくとも私には気持ちが引き締まるいい機会だったぜ。むしろ感謝したいくらいだぜ」

 

「摩耶と同じです、少し驚きはしましたけど不快な思いは全然」

 

「……そうかい?なら良かったよ、こっちとしても少しだけだけど肩の荷が軽くなった」

 

「それは良かったです」

 

「そうだ!軽くなったついでに君達の事も少しだけ——」

 

教えて欲しいんだけどっ!?

 

 

 

 

 

 

《ウゥー!ウゥー!ウゥー!》

 

 

 

 

 

 

 

「おいどうした!?」

 

《敵襲!敵襲!!》

 

「総員戦闘配置だ!サーチライトは使うな!全員MVG装着!!」

 

『了解!』

 

「すまん、話は後だ」

 

「あっ」

 

返事を聞く前に席を立ってさっさと艦橋に向かう。

その間に無線機に情報は集まってきた。

 

《こちらホーネット、一方通信で総員に通達。

敵の潜望鏡を右後方に確認、すでに艦娘が対応しているがこちらの位置は完全にバレた》

 

「ルイからホーネットへ、まだ周辺には艦娘はどれだけ残ってる?」

 

《対応しているのは3隻、まだ9隻残ってる》

 

「後方に見張り員増やせ!側面にも注意しろよ!」

 

《こちらトランスシップワン!

まさかの魚雷が艦底を通過した、至急救援を頼む!!》

 

「っ了解だ!BOSS!!」

 

《五十鈴聞いてたな、何人か向かわせてくれ》

 

《聞いてたわね!?

吹雪と初雪と深雪がトランスシップワンのいる艦隊左翼の救援に向かって!》

 

()()()()()

 

艦底を通過したか

となるとすでに潜水艦は攻撃態勢をとってある程度集まってると見た方が良い。

その辺の掃討は艦娘がやってくれるが………………………とりあえず情報共有だ。

BOSSもいる艦橋に着いた

 

「来たな、すぐに戦術会議だ」

 

「iDroidは?」

 

「構わん、ここにいるのは全員俺の部下だ」

 

「わかりました、iDroid、戦術ブリーフィングを始める」

 

 

《Strategy briefing system standby…………Members connect ready…………Complete!》

 

 

『おお!!』

 

艦橋内にいたメンバーは驚く。

そりゃ目の前にあるトランプ程度の大きさの端末から3Dスクリーンと周辺の海図、そして艦娘の配置が映し出されれば誰でも驚く。

 

「こちらキャッチャー、全員聞こえてるか?」

 

「こちらトランスシップワン、クリア」

「同じくトランスシップツー」

「トランスシップスリー」

「タンクトップいます」

「シェーパー入ります」

「チョッパーもいます」

「ジェネラル ワン」

「ジェネラル ツー」

「ジェネラル スリー」

 

「全員いるな、このまましばらく繋げておくぞ、情報共有のためにな」

 

「こりゃすごい……声が機会越しなのにまるで目の前に居るみたいだ……」

 

時間があるなら艦長に解説したいが今は後だ。

ここで沈むわけにはいかない。

 

「まず、今のところ他の深海凄艦の姿を見た船は」

 

「さっきも言ったが魚雷が艦底を通過した。

……後もう少し浮いてたら横っ腹にデカ穴が空いてたくらい近かった」

 

「他はどうだ、一番右端にいるトランスシップツーはどうだ?」

 

「キャッチャーが見た潜望鏡以外は何も見えなかった。

今は艦娘が3人ほど派手に対応してるのがよく見える」

 

iDroid越しに爆発音、その数秒後に艦橋内にも聞こえた。

おそらく炸裂した爆雷の音だ。

 

「よし、魚雷の破壊に限って全兵装の使用を許可する!

ただし潜水艦の相手は艦娘たちに任せろ、こっちは無駄に使えるほど弾は無いからな」

 

『了解っ!』

 

「他に連絡事項はあるか?」

 

『無し』

 

「なら戦術担当はその場で待機、そこから指示を出せ。場所は問題無いか?」

 

「民間人には見られない場所です、問題ありません」

 

「ならこのまま繋げておくぞ」

 

そう言うとそれぞれ自分の乗っている船の部下に指示を出しまくる。

うるさくなるためか映像だけ出しておいて音声は向こうから切られている。

 

「随分とまた……便利そうなものが出てきたな?」

 

「ああ、無線機として映像を味方と共有できる。

それに加えその味方の位置、発見した敵の位置がリアルタイムでこのマップに反映される。

ブリーフィングモードを使えば離れていても作戦会議だって開ける、そのまま支援攻撃を

部下にさせる事だって可能だ」

 

艦長にBOSSが代わりに説明する。

 

「ほーいい時代になったもんじゃ」

 

「いやっ赤松さん、その良い時代にが絶対絶命のピンチなんだが……」

 

「気にせん方が良いわ!

万が一、魚が一直線にやって来たら避ければ良いんじゃ避ければ!」

 

「魚か……食べられるなら捕獲するんだが」

 

「……爆発オチ以外の何物でも無いですよそれ」

 

「それもそうだな」

 

《こちら時雨、艦隊右方向の潜水艦を撃沈。次はどうするんだい?》

 

《ありがとう時雨ちゃん。

しばらく敵の追撃が考えられるから右後方をしばらく3人で護衛してて。

あとトランスシップツーの乗組員と連携を密に、彼らは私たちより目が良いから》

 

《わかった》

 

「さすがだな、駆逐艦とはいえ仕事が早い」

 

「ですね、部下からの報告だと潜水艦の直上で確実に爆雷をばら撒いたらしいので」

 

「練度は十分だな」

 

「できればこっちも何かしら支援したいもんですが」

 

「止めておけ、海上は彼女たちのフィールドだ。

救助ならまだしも海戦は俺たちの分野じゃ無い、せいぜい魚雷を撃ち抜いてやる位だ」

 

「わかってますよ BOSS」

 

iDroid越しにトランスシップツーの戦術担当がそんなやり取りをBOSSとする。

確かに俺たちも彼女たちにやられっぱなしなのはやってられない。

せめて何らかの援助はしたいが…………それは今じゃない。

 

《ウェーバーからホーネットへ、こっちは前方を警戒する。

そこからは後方をカバーしといてくれ》

 

《了解だ、何かあれば言ってくれ》

 

《お前に借りを作るほど俺は鈍っちゃいない》

 

《あいよ》

 

「後方にいる見張り員!状況を報告しろ!」

 

《こちらフィルヒョー、海面に変化なし》

 

《リーコー同じく》

 

《アイラ、漂流物発見できません》

 

「よし 引き続き警戒しろ、今夜は少しばかり寝れないと思え」

 

()()()

 

 

……さて、上手く対処してくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

01:09

スネークたちが乗っている輸送船団がついに深海凄艦の攻撃を受けた。

現在、五十鈴を旗艦としたローテーションの輸送護衛部隊は潜水艦の撃退に奔走している。

10隻の単横陣は距離にして数キロメートル、そして端から端まで往復するには船ではやはり数分はかかる。

 

幸いこの輸送船は単なる人間がのっている訳ではない。

艦底を通過た兵員輸送船、コールネーム〈トランスシップ〉の一番艦にも当然MSFの隊員も乗っている。

日本分隊員のトップクラスの実力を持つものは元捕鯨船である平和丸にも乗っているが、

ほとんどは各船に均等に割り振られている。

そのため、非常事態への対応・並びに火力はある程度維持されている。

 

……もっとも、MSFで鍛えられた兵士は普通の軍人と比べ物にならないほど優秀だ。

偵察・観測に関しては海上でも遺憾なく発揮され、夜間でも十分に働いている。

しかもその監視の目は全ての輸送船から発揮されている。

 

「トランスシップワン、聞こえてますか!こちら護衛の吹雪です!」

 

《通信回線クリア、聞こえてるぜ嬢ちゃん》

 

「えっ嬢ちゃん……?」

 

《すまんがツッコミは後だ、状況をさっさと言うぞ。

さっきも言ったが雷撃を受けた、方向はこの船の10時方向だった。恐らく潜水艦だと思う》

 

「被害は?」

 

《無いな、今のところ》

 

「わかりました、引き続き警戒して下さい」

 

《そっちに反応はあるのか?》

 

「いいえ、残念ながら聴音機に反応は……」

 

《なら予想される敵の位置に誘導する》

 

「出来るんですか?」

 

《うちの情報班が幾つか絞り込んだ、このまま無線で誘導する、しばらく直進してくれ》

 

「わかりました、初雪ちゃん、深雪ちゃん、このまましばらく直進します!」

 

「直進ってどうして!?」

 

「乗組員の方が潜水艦の位置を予想したそうです、その場所まで誘導してくれます」

 

「誘導って……満月って言っても海の上だよ?どうやって誘導するんだ?」

 

「それは……」

 

《あー悪いが無線越しに全部聞こえてるぜ〜》

 

「なおさらだよ、一体どうする気?」

 

「深雪……それは言い過ぎ」

 

《気にしなくて結構だよ初雪ちゃん、俺たちは所詮傭兵だ、疑われるのは慣れてるんでね。

で、誘導はこちら無線で行う。

事前に君たちにはパッツィーから部屋の鍵をもらってるな?》

 

「えっ?……ええ、無くしたら弁償だと言われましたし、首にかけたほうが良いと言われたので常に身につけてますけど……」

 

《それにはちょっとした仕掛けが組み込んであってな。

こっちの端末で位置情報を確認できる、距離・進行方向・速度・周辺の海域情報と連動しているから安心しろ》

 

「…………ってそれ盗聴器じゃん!」

 

「確かに……」

 

《お前らを盗聴する趣味はない、それにその鍵には音声を拾う機能まではねえ。

強いているなら発信機だと思ってくれ》

 

「えぇ……」

 

《とりあえず理解は出来たか?》

 

「はっはい」

 

《文句があるならパッツィーに言ってくれ。

さて そろそろ転舵だ、右30度に3人とも回頭してくれ》

 

「わかりました、右30度回頭」

 

3人の駆逐艦は言われた通り30度回頭する。

3人は特型駆逐艦であり、全艦娘の中でも古参の部類に入る。

そのため練度に関しては言わずとも十分で、今は主力として出撃する事は少なくなり遠征を

こなしているとはいえ、艦隊運動は姉妹艦である彼女たちにとってはお手の物だ。

 

《おー結構やるなぁ、見事な連携だ》

 

「そ そうですか?」

 

《ああ、空でもそうだが一切形を崩さずに旋回するっていうのは結構な難易度だからな。

それもさっきまで軽く揉めていた最中でだ、それだけ信用出来る間柄って中々いないぜ?》

 

「そう言ってもらえると……私たちも嬉しいです」

 

《……さてアイスブレイクもここまでだ、ここからは敵を撃破してもらう。

吹雪以外は聴音機でしばらく索敵だ、吹雪にはしばらく指示を出す、繋げておいてくれ》

 

「わかりました、2人ともお願いします」

 

『……………』

 

すぐに初雪・深雪の2人はヘッドホンの様な水中聴音機を使い、潜水艦の位置や行動を探る。

残った吹雪はトランスシップワンからの指示を受けながら航行し、潜水艦がいると思われる幾つかの海域に向かう。

 

《次、左に20度転舵》

 

「了解です」

 

そう答えると手を招き後方にいる2人に進行方向を伝え、一切間隔が乱れることなく進んでいく。

 

そういった航行を幾つかし、次で最後の予想海域だった。

 

「次も居なかった場合はどうするんです?」

 

《範囲を広げた予想海域をアップデートする》

 

「そうですか……」

 

最後の予想される海域は進行方向の左前方、輸送船左舷の横っ腹を射抜ける場所だ。

もっとも之の字航行で常に真横を撃たれることは無いが十分脅威となり得る。

その海域にも潜水艦が居なければその潜水艦は一旦離脱したか、味方と合流したかだ。

 

《そう落ち込むな、それだけ脅威は離れたって事だ》

 

「ですが——」

 

《その分新たな脅威が来るだろうが、こっちもそれ相応の対策をさせてもらう。

こっちだってただ殺られる気はさらさら無い》

 

「……そうですね、私たちも頑張らないと!」

 

《そうしてくれ》

 

「はいっ!」

 

「・・・いた!」

 

「何処に!?」

 

「魚雷注水音!私たちのすぐ目の前!!」

 

「! 爆雷投下用意!!」

 

『投下用意!!』

 

「深度30……投下!」

 

潜水艦がいるであろう真下に3人は爆雷をこれでもかと投下する。

同時に聴音機のプラグを抜き、耳を塞ぐ。

海に沈んでいった爆雷には段々と水圧がかかっていき海面30mに差し掛かった所で爆発する

一瞬の間の後、吹雪たちの後ろの海面は盛り上がり、遅れて爆音が何も無い月夜に響く。

 

《警戒しろ、爆雷なんざ半分当たらないからな》

 

「はいっ、2人とも反応は!?」

 

「………浮上音!潜水艦が浮上します!!」

 

「……あそこ」

 

初雪が指す方にはブクブクと泡が海面から立っていた。

明らかに自然現象では無い。

 

「皆さん、一旦回避を!」

 

『了解っ!』

 

《周辺も警戒してくれ、援軍がお前たちを狙ってる可能性もある》

 

「わかりました」

 

「敵の潜水艦、浮上!」

 

先ほどまで泡が立っていた場所には確かに深海凄艦の潜水艦がいた。

その姿はいささか……いや、とても醜かった。

 

《……ちょ…、…れ……で……か!?うるさい!ちょっとは落ち着けっ!!》

 

「大丈夫ですか!?」

 

《うん?ああ 見張り員がその……敵潜水艦を見てな》

 

「ああ、驚きますよねぇ……あの姿を見ると」

 

《いや、大興奮ではしゃいでる》

 

「えっ?」

 

《気にすんな、ゲンコツで治した》

 

「はぁ……初雪、潜水艦の状況は?」

 

「沈黙……してるみたい」

 

「なら砲撃で撃沈して下さい、また雷撃してくるかもしれません」

 

「わかった……深雪、手伝って」

 

「はいはーい」

 

初雪と深雪が潜水艦に近づき砲撃を加える準備をする。

同時に輸送船上には人が集まり、その様子を見ていた……というか見学していた。

 

「……あの、なんか甲板上にたくさん人が」

 

《ん?……ああ 気にしないでやってくれ、全員深海凄艦を生で見るのは初めてだからな》

 

「……そういえばスネークさんも襲われた時わざわざ甲板上に出て私たちの戦いの様子を見てました」

 

《気になるからな、君たちの事も深海凄艦の事も》

 

「しかし危険です!」

 

《あー……今更言う事じゃ無いけど……俺たちがそう簡単にやられるとでも思う?》

 

「それは……」

 

 

吹雪はスネークを連れて来た時を思い返す。

敵艦載機の襲撃を受け防空戦闘を行っている中でわざわざ甲板上に出て、その光景を見ていた。

さらに爆弾が命中コース上にあったのにも関わらず、艦内に逃げる事もなく、その爆弾を

見ていたのだ。

 

だが吹雪が叫んだ瞬間、その爆弾は爆ぜた。

 

その爆弾はスネークがリボルバーで撃ち抜いた物だった。

しかし一瞬の出来事だった事、吹雪は爆弾の方を見ていた事もあり吹雪は知らなかった。

だが交流戦の映像を見て初めて吹雪は理解した

 

トンデモ無い人を味方にした、と

 

さらにここ1週間、船上で共に生活して来た中でもスネークの部下たちが強いのもわかった。

それは陸戦が素人である吹雪ですら只者ではないと理解させるくらいに。

その原因は主に……相部屋のマーリンとパッツィーだ

 

 

「それは…………何とも」

 

《まっそうだろうな、それにただ観察してるだけじゃない》

 

「? それって——」

 

「回避!!」

 

「っ!?」

 

深雪の悲鳴にも近い声

 

見ると爆発し燃えている潜水艦

 

そしてそこから出てくる数本の白い線

 

その線は一直線に3人に向かっていた

 

潜水艦が放った最後の攻撃だ

 

ほぼ反射的に、無理やり右に急旋回

 

雷撃の射線上から抜け出す

 

いると予想されていた場所に確かに潜水艦はいた

 

爆雷を投下した後、浮上してきた

 

あとは砲撃で仕留めればよかっただけだ

 

だけだった

 

だが油断し、輸送船を背後に立ってしまった

 

つまり彼女たちを狙った魚雷は

 

一直線に輸送船に向かっていった

 

 

「っすいません!回避を!!」

 

《あー魚雷撃たれた?》

 

「ですから回避をっ!!」

 

 

だが

 

 

 

《野郎ども、破壊戦用意!!》

 

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 

 

 

突如空気が揺れる

 

発生源はトランスシップワン……輸送船の甲板上にいる隊員からだ

 

《気にすんな、それより魚雷はそのままこっちに向かってるんだよな?》

 

「えっ……」

 

《どうなんだ!?》

 

「はいっそうです!!」

 

《ならそこから退いてくれ!流れ弾が飛んでくる可能性もあるあるからな!!》

 

「流れ弾!?」

 

《良いから早くしろ!》

 

「っみなさん一旦離脱します!早く!!」

 

返事も待たず吹雪は再び回避行動をとる。

輸送船の船尾に回り込むように大きく円を描く。

その間にも魚雷はどんどん輸送船に近づいて行く。

 

「トランスシップワン魚雷がっ!!」

 

《全員破壊を許可する!!》

 

《破壊許可確認》

 

《撃て》

 

 

瞬間、輸送船から3つマズルフラッシュ

 

一瞬の間

 

パーンという音

 

同時に1つの水柱が立つ

 

 

《残り2本!》

 

《M2撃てっ!》

 

 

今度は幾つものマズルフラッシュ

 

曳光弾も輝き海面を照らす

 

弾丸は白い線の先端に突っ込んでいく

 

幾つもの弾丸が海面を貫いたのち、2本の水柱が立つ

 

そして轟音

 

そこから………………………ただ静かな海に戻った

 

その光景を見た吹雪はもちろん、初雪や深雪は唖然としていた。

何せ魚雷の速度は約48ノット、時速換算にして約88kmだ。

目に見える速さだとはいえ魚雷は常に動いており、さらに隊員たちが乗っている船も動いている、そんな状況下で回避ではなく魚雷の破壊を行った彼らの事を、何よりそれを実行した彼らにただただ驚いていた。

 

《全魚雷の破壊を確認、雷跡無し》

 

《今のところ後方も確認できません》

 

《よーし、引き続き警戒しておけ。そこのお嬢ちゃんたち、怪我は無いかい?》

 

そんなただ惚けているだけだった吹雪だったが、無線のやり取りを聞いて正気に戻る。

それでもまだ衝撃は消えていなかった。

 

「……はい、ありません」

 

《潜水艦や魚雷の反応は?》

 

「あっと……初雪、反応ある?」

 

「少し待って…………今のところ音はしない」

 

「こっちもしないね、機械の不具合とかじゃ無いかな」

 

《そうかそうか……なら君たちの上司に指示を仰いでくれ、俺らが勝手に指示を出すのは

後々面倒な事になるからな》

 

「わかりました……ちなみに、念のために聞きますけど被害は?」

 

《ああー……弾薬30発を無駄に使ちっまった。

海面に向かって標準する練習をしないとダメだな、初撃で一発しか破壊出来なかった》

 

「そう……ですか……わかりました、とりあえず五十鈴さんに連絡を取ります」

 

《そうしてくれ、くれぐれも周辺警戒を厳にしてくれよ?

俺たちも視認範囲内なら状況はわかるが、海面下の状況は流石にわからないからな》

 

「了解しました。

初雪・深雪、五十鈴さんに指示を仰ぐので周辺警戒をお願いします」

 

『はーい』

 

吹雪は艦隊内無線で五十鈴に指示を仰ぐ、そんな中こう思っていた。

 

 

 

 

この人たち 一体何者?……………敵に回したらダメだ

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

「こちらトランスシップワン、たった今魚雷を破壊、ただ無駄に30発使っちまった」

 

「おぉ?ライフルで仕留めきれなかったのか?」

 

「ああ、どうやら水面で弾道がブレたらしい。

丘で射撃するのとは勝手が違うみたいだ、距離もあったからなぁ……」

 

「気にするな、その対策は追々考えれば良い。

それにたった30発で被害を防げたなら誰も文句はいわねぇよ、輸送船が沈んだ方が問題だ」

 

「……そうお前に言ってもらえると俺としては気が楽だぜ」

 

「らしくないな、お前がそんな事言うなんて」

 

「お前も雷撃受ければわかるぞ?

何も出来なくて脅威が迫ってくるしかないなんて心臓に悪いの何の……」

 

「そうかそうか……で、追撃は?」

 

「今のところ無い、救援にきた艦娘3人には指示を仰ぐよう言っといた」

 

「それが一番だな……動体検知器は?」

 

「やっぱり海上じゃほとんど使い物にならないな、出力の問題もあるが海上じゃ吸収

されちまうし高波で誤作動もする、少なくとも現状じゃ意味ないな。

ソニックアイは接近すれば十分使えるが……」

 

「満月とはいえ、訓練も無しに水上バイクでの運用は危険すぎる。

今は甲板で見張りを配置するしか手立ては無い、歯がゆいのはわかるけどな」

 

「全くだ、俺も戦いたいもんだが……相手が浮いてちゃ仕掛けようにも仕掛けられん」

 

「……まっ今はな、取り敢えずは副司令たちと合流だ」

 

「わかってるさルイ、けどお前も戦いたいんだろ?」

 

「……まあなぁ、けど今じゃ無い、あいつらと合流するのが先だ」

 

「あいよっ・・・て、BOSSはどうした?」

 

「ああ艦内巡回してる、いくら艦娘とはいえ寝てる最中の敵襲だ。

パッツィーがついてるとはいえもしもの可能性も捨てきれんからな」

 

「……お前も大変だなぁ」

 

「雷撃を受けるよりマシそうだ」

 

「言えてるな、他はどんな感じだ?」

 

「今のところ敵は撃破した2隻しか確認していない。

中央にいるタンクトップやチョッパーに被害も無い、このまま一応は乗り切れそうだ」

 

「そうか、だが油断は出来ないな」

 

「その通りだ、引き続き警戒して——」

 

 

《ホーネットから全艦娘に通達!!

何かわからないが艦隊真後ろからこっちに向かってきてる!距離は約10km!!

繰り返す、何かがこちらに接近中!!》

 

 

「ったく、言わんこっちゃねぇなおい!」

 

「そう言うな。

キャッチャーから全戦術担当へ、聞こえるか」

 

『聞こえてる』

 

「……相変わらず全員息が合うな」

 

「そんな事より、どうすんだ?」

 

「おいおいシェーパー、そんな事わかってるだろ?」

 

「……出来れば何もしたく無いんだよ」

 

「悪いが全員働いて貰うぞ、当直の奴らを完全武装させろ。

レールガンはFFの危険が高いから使うな、狙撃と弾幕で対処する。

何か意見はあるか?」

 

「それは艦娘の援護って形で良いのか?」

 

「あくまで支援だ、というか艦船に対して俺らの装備は非力だ。

支援攻撃としても成り立つかすら怪しい、観測と索敵・周辺警戒が主だろうな」

 

「今、ここで担当者の意見を聞きたい」

 

「わかった繋げる、五十鈴 1分くれ」

 

《ちょっと何よ!これから対艦戦って時に!?》

 

「俺らも支援に加わりたい、何かできる事はあるか?」

 

《はあ!?あるわけ無いでしょ!せめて美味しい夜食を用意しておいてっ!!

全員、相手を一体も通すわけにはいかないわよ!!》

 

 

「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 

 

と先ほどの隊員たちとも負けず劣らずの声が直接聞こえてきた。

……おいおい、女の子が出して良い声じゃ無いぞ?

 

「……切れたなぁ、えらくたくましい掛け声と共に……」

 

「すげえ声だ、無線越しだが俺らと声の迫力は俺らと同等だぜ」

 

「ルイ、どうすんだ?」

 

「……取り敢えず、こっちで飯は作っとく。あと艦尾に全艦ハンターは配置しておけ」

 

『了解だ』

 

すぐに全員が指示を出しに動き出す、おそらく狙撃手の配置と見張りの交代だろう。

あとは……何人か消えたか、そういえばシェーパーとジェネラルワン・スリーは銃が上手かったな。

まっ全体の指揮には支障はない、iDroidを携帯しただけだ。

 

「ウェーバー、すまないが艦尾に——」

 

《移動完了した、ここだ》

 

同時に艦橋の真上から二回叩かれる

……どうやら艦橋の真上に移動していたらしい

 

「お前、いつの間にいた?」

 

《ついさっきだ、敵影はまだ見えないがホーネットが言うには駆逐艦じゃ無いらしい》

 

「駆逐艦じゃない?じゃあ軽巡……まさか重巡とか言わねえよな!?」

 

重巡洋艦ならすぐさま振りきらなければ壊滅する。

高雄や摩耶に出撃させないと手遅れに——

 

「いや、駆逐艦よりも小さいらしい。

おかげであいつもここまで接近を許したそうだ、彼女たちのレーダーにすら映らないくらいだ」

 

「……そんな深海凄艦聞いた事が無いぞ」

 

《それはさっき移動中に高雄がいたから聞いてみた、どうやらボートに近い敵らしい》

 

「ボート?……そいつらどうやって攻撃するんだ?」

 

《そいつらの呼称は“PT小鬼群”だそうだ》

 

「“PT”?……ホラーは苦手だ……」

 

《……サイレントヒルじゃない、patrol torpedo の略称だ》

 

「……おいおい、向こうは魚雷艇まであるのかよ」

 

《ああ、しかも厄介なのは——》

 

「お前から聞いたんだ、バイクなら彼女たちの砲撃を回避するのも楽なんだろ?」

 

《……ああ》

 

「だが所詮“魚雷艇”だろ?」

 

《…………こちらライフル22、攻撃指示を待つ》

 

「ライフル22、目標を標準後待機しろ」

 

《了解》

 

これで1人は配置が完了した。

少なくともこの船は雷撃を受けない……ハズだ。

 

「こちらシェーパー、配置完了」

「トランスシップ全艦用意良し」

「チョッパーレディ」

「ジェネラルも配置ついたぞ」

 

「……よし、敵の情報だ。

今来てるのは駆逐艦や巡洋艦じゃない、どうやら魚雷艇らしい」

 

「おお、ついに海岸警備隊がここまで進出してきたか」

 

「勝手に言ってろ、幸いそいつらの装甲はほぼ皆無らしい。

さっきも言ったがあくまで後方支援だ、近づいてきた奴だけを仕留めろ。

……以降はお前たちの指揮権で攻撃を許可する、味方は撃たせるな、以上」

 

『指揮権の受領確認、これより行動を開始する』

 

「よしっかかれ!!」

 

ここからはいちいち指示を出せば対応できなくなる、あいつらも信頼できる。

俺はここから動けないんだけどなっ!

……しょうがない、頼むしか無いか

 

「BOSS、聞こえますか?」

 

《ああ》

 

「すいませんが甲板上にいる連中の指揮を」

 

《大丈夫だやっている、情報管理はお前に任せる、頼んだぞ》

 

「了解です……相変わらず仕事が早い」

 

 

 

 

艦娘にBOSSもいる……仕掛ける相手を間違えたな、深海凄艦

せいぜい蛇は怒らせないでくれ

 


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