鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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随分前から企画してました本大規模作戦…………………………私の勘違いで秋イベです

けど頑張るからっ許してくれ!

ん?冬イベ??…………知らん


そんなこんなで大規模作戦スタート!




大規模作戦 前日

 

ついにカズヒラたちMSF隊員の救出作戦が決行される日となった

今の状況を説明する

 

現在、大本営の発令により海上輸送部隊の編成、並びに西方戦線への機動部隊派遣が明日11/23に

決行される事となった。

この横須賀鎮守府には今、各鎮守府から集められた艦娘がいる。

 

本輸送作戦に参加する艦娘は

・横須賀より、高雄・摩耶・秋月

・佐世保より、金剛・霧島・白露・時雨・村雨・夕立

・舞鶴より、最上・三隈・長良・五十鈴・名取・千歳・千代田・吹雪・白雪・初雪・深雪・叢雲

の計21人である。

 

人選、もといこのメンバーが選ばれた理由はコミュニケーション能力である。

さすが元軍艦という事もあり、どの艦娘も事務的なやり取りは性別・年齢問わずある程度は出来る。

……が、今回の輸送作戦は普通の輸送任務と異なり、一ヶ月近くも知らない人間と居るとなると

このメンバーが作戦行動が可能だと判断された。

 

本輸送作戦はカズヒラ・ミラー率いるMSF隊員の救出だが、同時に西方海域へも本土から派遣する。

これは先の潜水艦からの攻撃で敢行された強行偵察によって、西方海域で深海凄艦が

再び泊地・港湾施設を建設している事がわかった。

未だ建設中である事も判明したものの、大本営はこれを脅威と認定。

連合艦隊機動部隊をもってこれらの施設を破壊する事になり、同時に敵の牽制も兼ねる。

結果的にこの西方海域へ機動部隊は輸送作戦に対する囮となった。

 

本作戦の主目的である輸送作戦に参加する輸送船の数も凄まじい

現在横須賀鎮守府に接舷している物だけでも

人員輸送用の輸送船が2隻、改装された自動車専用船が3隻、一般貨物船が3隻、の計約70万トン。

さらに東京湾内には他に2隻が待機している

 

 

これらの船は全て深海凄艦との戦いが始まった後、国に徴発されたものだ。

先の大戦では輸送船に対しては民間人であるにも関わらず護衛という護衛もなかった。

もちろん全ての乗組員が悲観的に捉えていた訳ではない、むしろ戦争に勝つために多くの人が物資の運搬に尽力した……………………………………が、結果的には多くの物資と貴重な人材を海に没する事に

なった。

 

この反省から国は乗組員を手続き上は徴用するものの、実質的には民間に委託している。

具体的には国が各事業者へ物資の輸送を依頼、事業者はその事業内容を判断し仕事を受けるか

受けないかを判断する。

鎮守府は国からの許可証と共に業者からの依頼を受け、遠征として輸送船を護衛しその見返りとして

輸送してきた物資の一部を貰う。

事業者の報酬額は国と契約した金額 プラス 気持ちばかりの礼金、そして“余った物資の提供である。

国も国内の経済活動を最低限維持するため、過剰物資の売買を認めている。

 

これを一攫千金のチャンスと捉え、悪知恵を働かせて、一種の悪徳業者が現れもしたが、

その手の業者のほとんどは最初の仕事で何故か深海凄艦の襲撃を受け命からがら帰ってきたあげく

 

「こんな仕事やってられるか!?」と言って別の仕事へ徴用されたり、

「・・・・・・・・・・(グスッ)」となり本当に輸送業に身を置いたり、

「ナムアミダブツ ナムアミダブツ ナムアミダブツ !!!」……何故か京都で出家したり。

等々、改心するきっかけになり結果、海運業界には良い風が流れていた。

 

しかし仕事内容が危険なことは変わらず、時には誰も仕事を引き受けない場合もある。

それでも今回の作戦には進んで事業者たちが参加している。

 

 

何故か

 

 

理由はシンプルだ

 

 

思い出して欲しい、MSFの資金力を

 

 

……MSF副司令であるカズヒラ・ミラーはそれなりに優秀な軍人ではあるが、本人も自覚している

ように軍人よりビジネスの方が向いている。その手腕は、10数名の傭兵の集まりだったMSFをたった数ヶ月で世界の裏で活動する一大組織へと成長させた。

そしてビジネスのいろはを知っている彼は、相応の仕事にはそれ相応の報酬を用意すれば買い手は

着く事も分かっていた。

 

用意した今回の報酬額は1つの会社の年収に匹敵する。

おかげであちらこちらから手が上がり、後はどの事業者を選ぶか待つのみだった。

が……………連盟からストップがかかった。

 

・依頼主が不明

・国からは詳しい事は聞くなと頭を下げられ

・その報酬額が異常

 

……この三点が揃えば嫌でも疑いだろう。

事業者からは当然ながら文句が出たが「お前ら、消されるぞ?」(意訳)

という連盟からの説得もあり、最終的には選ばれた事業者で報酬を山分けする事となった。

それでも依頼額としては過剰な金額である事には変わりは無いのだが。

しかし、そのおかげで士気も経験も豊富な乗組員が集まる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鎮守府内の講堂にてー

 

「全員起立」

 

加賀の声が響く

この場にいるのは明日から世話になる各乗組員の代表者、他所の鎮守府から集まった艦娘、

大体……50人くらいか。

舞台に立った提督に礼をした後、前で話が始まった。

 

「まず、今回の作戦に参加し頂き鎮守府を代表して感謝する。

……さてこの場で今回の作戦の概要を説明させて貰う。すでにある程度は書面で伝えてあるがここでは質問も許可する、わからない事があればすぐに言って欲しい、その場で私が答える」

 

……さすがに公の場では風格が現れるな

加賀がプロジェクターを起動し、スクリーンに映像が映し出される。

 

「現在、この島に我々の友軍が取り残されている。

先月撤退するため支援を要請してきたがこの海域は敵の水上部隊・空母機動部隊・通商破壊部隊の

動きが活発であり、彼らに対する支援の緊急性も無かったことから来月に行われる予定だった。

だが先週の事前偵察で深海凄艦が西方海域に重要施設を再建中だという事が判明した。

これにより敵の警戒は薄くなっていると判断し、この作戦の決行を早めた。

皆さんには空でここにいる友軍を積み、ラバウルまで運んで貰いたい」

 

それを聞いて乗組員たちが唸る、理由は海図を見たからだ。

……場所は詳しく言えないが日本から直線距離で8400kmはある、順調に航行しても10日はかかる。

そこからラバウルまではさらに1週間はかかる。

 

「その後皆さんにはトラック諸島で補給したのち日本に戻って貰います」

 

トラックの話は聞いたことがある。

ドックは無いらしいが少数の妖精がいるらしく、燃料・弾薬の補給はできると提督が言っていたな。

すると1人が手を挙げた。

 

「そもそもその積荷はどの位の量なんだ?我々も結構な人数が呼ばれたこと自体は大歓迎だ。

だが書類にも載ってなかったが、何人いてどんだけの物資を運ぶのかぐらいわからなければこっちも

準備の仕様がない、段取りも決められない」

 

「…………それはそこにいる依頼代理人に答えてもらうとしよう」

 

「……俺か」

 

まぁその通りだろう。

さすがに誰がやるかわからない段階で内容を載せるわけにはいかなかった。

それにカズが無駄なことをするはずもない、集めたタンカーが丁度いい規模なのだろう。

 

「……俺が依頼代理人だ、スネークと呼んでくれ」

 

「……蛇か?」

 

「あだ名みたいな物だ、気にしないでくれ。

運ぶ内容だが規模は300人、運ぶ物資は装甲車両・ヘリ・医療器具、他にも精密機械や資材もある。

詳細の数は向こうに行かなければわからないが、基本的に兵器だ」

 

「それだけわかれば後は十分だ、要するに向こうで臨機応変にやってくれって事だろ?」

 

「……悪いな」

 

「以上だ」

 

「他に何か質問があるものはいるか?」

 

居ないだろうな、

少なくともこの場で俺たちに聞ける事は無いだろう

 

「では次に同時に行われる西方海域への作戦の概要を説明する」

 

「俺たちに説明して大丈夫なのか!?」

 

「心配して貰わなくていい、この内容は全員に把握して貰いたい事だ」

 

……何故あそこまで乗組員が焦っている?

 

「……さて、先ほども話した様に西方海域に敵重要施設を発見した。

現在これらの施設は建設中だという事は判明しているが、完成すれば間違いなく人類の脅威となる。

そこでこれらの敵施設を破壊する事も決まった。

これらは本土から派遣する艦隊で破壊するが、敵の牽制と本輸送作戦に対する囮の役目も果たす。

攻撃を始めれば敵の増援が向かってくる可能性がある、もちろん友軍のいる方面から来る可能性も

十分ある、だが攻撃開始は12/5、少しでも遅れれば……」

 

「巻き込まれる可能性もある、と?」

 

「……………………………………ああ」

 

長い沈黙の後、提督が答える。

 

「……まっここで断れば我々は失業ですねぇ」

 

「舐められちゃぁ困るなぁ!こっちは常に命かかってんだ!

……作戦があろうがなかろうが襲われる時はどうせ襲われるんだ、だが幸い俺たちには天使が味方して守ってくれてる、違うかい?」

 

「それに私らも慣れてる、むしろここまで安心して運行できる方が珍しい」

 

「そういう事だ、やらせてくれ」

 

「全員連れてラバウルに上陸させてやるよ!」

 

全員が口々に言いたい事をいう。

だがその発言の中に嫌になる様な言葉は1つもない、頼れる言葉が多い。

 

「……………感謝する」

 

……意外とあの提督は人情に熱かったか。

まぁここまで頼もしい連中も居ない、この面子なら問題ないだろう。

 

「……ではここで解散する、各自準備もあるだろう。

鎮守府正面海域に07:00までに集合してくれ」

 

「全員起立」

 

また加賀が号令をかける。

周りの空気は暑くなっていたが、極めて冷たい声はよく聞こえた

一旦静かになり礼をする

そして再び活気が戻る、口々に様々な事を語りながら乗組員達が出て行く

 

「スネーク、こっちに来てくれ」

 

「ん、今行く」

 

俺らも出て行こうと思ったが提督に呼び止められた。

その方向には瑞鶴・摩耶・秋月以外に見慣れない天使がいた、

だが呼ばれたからには行くしかないだろう。

 

「君たちに紹介する、既に知っているとは思うが我々の外部顧問の方達だ。

今回の依頼主の総司令官でもある」

 

「スネークだ」

「……ウェーバー」

「技術屋のティムだ」

「マーリンですっ!」

「エアーよ、よろしく」

「フォレストと言います」

 

互いの自己紹介だろう。

船団員達はまだしも、俺らは先に顔合わせをしといた方がいいのは確かだ。

 

「スネークたちにも紹介したい。

今回の作戦に参加する艦娘たちだ、まず第一艦隊旗艦長良」

 

「長良型軽巡洋艦一番艦 長良です 今回はお願いします」

 

「……次に第二艦隊旗艦五十鈴」

 

「五十鈴よ、対潜なら任せてよね」

 

「後は順に紹介する、白露・時雨・村雨・夕立」

 

『どっどうも』

 

駆逐艦らしい艦娘が先ほどの2人とは違い、遠慮しながら挨拶してきた。

……まぁ初めて会えば俺ら6人は怖いか

 

「航空巡洋艦の最上・三隈」

 

「ぼく最上、よろしくね」

「妹の三隈です」

 

「水上機母艦の千歳・千代田」

 

「今回の索敵役の千歳です」

「千歳お姉と一緒に頑張りますっ!」

 

「……駆逐艦の吹雪・白雪・初雪・深雪・叢雲」

 

「お前たちは…………輸送中にも会ったよな?」

 

「ハイっ駆逐艦吹雪です!今回も私たちで護衛させてもらいます」

 

「いや護衛されるのはこっちだ、それに今回は規模もデカイ、世話になる」

 

「そして最後に戦艦の——」

 

「“HEY! I'm returnee student KOUGOU!!”」

 

「あっお姉さまはですね——」

 

「いや私達はわかるから、これでも外国人だしっ、母国語は英語だしっ」

 

「俺は違うがな」

 

「けどわかるでしょ!」

 

「まあな」

 

「……お前イギリス生まれか」

 

「…………Why?」

 

「……明らかにブリティッシュ訛りだろ」

 

「……えぇ そうデース」

 

「気は済んだかい?」

 

「十分ネェ」

 

「……さてこれで一通りの自己紹介は終わったんだが」

 

「質問だ」

 

「どうぞスネーク」

 

「提督、今ここにいるのは輸送作戦に参加するメンバーだよな?」

 

「ああ、そうだ」

 

「なぜ戦艦が2隻もいる?今回編成する輸送護衛部隊は軽巡・駆逐艦が中心の編成のはずだ」

 

「…………その説明を今からする、さすがに民間人に聞かれるわけにはいかないからな」

 

「俺らには聞いて欲しいのか」

 

「ああ、実際危険な話だ」

 

……訳ありか、なら聞くしかない

 

「加賀、海図を持ってきてくれ」

 

「……どうぞ」

 

そう言って加賀から渡された海図を広げる。

先ほどプロジェクターに映されたものと同じだ……が、幾つかの島に赤く丸が付けられている。

 

「さっきも言ったが今回は西方海域の敵施設へも攻撃を仕掛ける。

だがその敵施設の位置は・・・ここだ」

 

提督が指差した場所はカズたちがいる方向とは逆の西側に位置する島だ、だがそこは…………

 

「……ラバウルは敵の攻撃圏内か」

 

「そうだ、幸い敵の活動が活発なのは建設中の泊地周辺のみだが……」

 

「あいつらが来れないわけじゃない」

 

「…………ああ」

 

「つまり、万が一に備えての保険か」

 

「……戦艦は護衛するには燃費が悪くてな、ついでに輸送してもらうのが一番なんだよ」

 

「なるほどな」

 

「さらに彼女たちはラバウルへの輸送後、西方海域への支援攻撃も担う」

 

「……船団の護衛はどうする気だ」

 

「支援艦隊は金剛・霧島・高雄・摩耶・五十鈴・名取の6人だ。

船団は必ず守り抜く……あなたには日本に帰ってきて貰わなければ困りますしね」

 

「……そうだったな」

 

「だがこの事を乗組員が聞けば——」

 

「暴動が起きるか、良くてボイコットだろうな」

 

「だがこちらとしても見捨てる気はない。

そのために西方海域へ連合艦隊を出撃させる、何としてもここへは行かせない」

 

そう言って指差したのは俺らが荷揚げをする目的地、パプアニューギニア領……ラバウルだ。

もっともパプアニューギニアという国は独立直後に深海棲艦の攻撃を受け多くの人間が犠牲になり、

生き残った者はどうにかしてオーストラリアへ逃げたらしい。

それが今の太平洋上の島国の惨状だ。

ほとんどの島が無人島と化し、そこにいた人間がどうなったかは……少なくとも俺は知らない。

 

「まぁお互い馴れ合えとは言わない、だが長い間一緒に行動してもらう仲間だ。

それに面倒も見てもらうしな、そこらへんは頼んだぞ」

 

「? どうして私たちが面倒を見られるんです?」

 

「ああ、俺たちの船の事は知らないのか」

 

そう言えばそうだ、彼女たちには俺たちの船に乗りながら任務を遂行してもらう

 

『船!?』

 

「……そんなに驚くか」

 

「えっと、元は捕鯨船だったのを改装して使う予定だったんだけど……」

 

「深海棲艦が出てきたおかげで動かせなくなったのよ」

 

「けれど、今回の輸送作戦のついでに持って行く事になったんです」

 

「しかし…………」

 

「居住性は問題無いよ、元々長距離航海を想定されてる船だし、それに加えて改装してるし。

部屋も20人くらいなら余裕だし」

 

「そして何より飯が美味い」

 

「基本的にその船には女しか乗せないしね、男手は調整とかでほとんど別のに乗るし」

 

「そういう訳だ、一ヶ月近くずっと顔をあわせる事になる、仲良くしてくれよ?」

 

「なら、鳳翔さんのところに行きません?」

 

「いいですね、久しぶりに鳳翔さんの手料理食べたいです」

 

「鳳翔も朝からその気だ、今ごろ仕込んでいる最中だろう」

 

「なら決まりですね、私も今日は呑みます」

 

「全員くれぐれも明日の朝に影響しないでくれ、07:00には鎮守府沖に集合だ。では解散!」

 

そう提督が言うと、再び講堂から出て行く者で混雑する。

提督も含め全員が鳳翔に行く気のようだ……こいつらがまた大食い何て馬鹿をしなきゃ良いが。

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

22:30

飲み始めて3時間ぐらいか…………まさか提督の奴が一番に倒れるとはな。

30分でぶっ倒れる程弱いなら無理して飲まなければ良いと思うが。

今は奥の畳部屋で寝ている。・・・それよりも、だ

 

「……いつもこんな感じなのか?」

 

「そうですよ、皆お酒を呑むとなるといつもこんな感じです」

 

鳳翔が微笑みながら答える。

とにかく周りの艦娘がうるさい、流石にうちの連中が集まって飲む時と比べれば大した事は無いが……

 

高雄と摩耶の2人は何故か空気が重い、近付くと面倒だろう。

 

金剛と霧島、さらに長門と最近入渠を終えた陸奥らが笑いながら談笑している……がうるさい。

 

すでに良い子は寝る時間になると駆逐艦全員がその場で寝始めた。

酒は飲んではいなかったが十分疲れたに違い無い、分担してここの寮に送って行った。

残った連中もそれぞれ姉妹艦らと一緒に飲んでいる。

 

「ってBOSS、これじゃあ悠長に呑んでもいられませんよ」

 

「ん〜?気にせず呑めば良いじゃない?」

 

「「「「お前は(あなたは)自重しろ!!!!」」」」

 

「えぇ……何で私だけ………」

 

他の連中が一杯か二杯で止めているのに、お前が八杯ぐらい飲んでるからだろうな。

 

「あらあらケンカですか?明日から作戦ですよ?」

 

「えっと……千歳さん……だよね?」

 

「あらっティムさんでしたよね、もう覚えて貰えたんですか?」

 

「いや皆お互いに名前呼びあってたし、さっきの紹介で大体覚えたし」

 

「お仕事のおかげですかね?」

 

「ですね、職業病みたいなものですよ」

 

「お前は機械担当だろうが」

 

「まあな」

 

「……それで、少しご一緒してもよろしいですか」

 

「アレッ?妹さんと一緒に飲んでたんじゃ……」

 

「千代田は先に寝ましたよ、あの通り」

 

千歳が指を指す方向にはカウンターで突っ伏しているのが1人見えた。

服装からして彼女の妹に違いない。

 

「まだ飲み足りませんし、それに皆さんのお話も聞きたいですしね」

 

「なら僕たちも良いかい?」

 

「私も加わってもよろしいでしょうか?」

 

千歳の後ろから最上・三隈・霧島の3人が立っていた。

先ほどまで話していたはずの金剛たちは……さらに盛り上がっていた。

 

「少し逸れてしまいまして……」

 

「あの展開は・・・」

 

「それ以上想像するのはやめておけ」

 

「……了解です」

 

「まあまあとりあえず座って」

 

幸いここの店は広い、横の机をつなげれば10人は座れる、それに奥には畳もある。

提督の奴はその奥の畳部屋で寝ている訳だが誰も心配していない。

 

「それでー、私たちってそんなに気になるの?」

 

「気になりますよ、あんな動画を見させられたら」

 

「動画?……ああ交流戦のときの」

 

「青葉が“結局何もわからないですっ!”って言ってましたけどね」

 

「俺のはそもそも撃った弾が当たったかすら動画じゃ判断できないか」

 

「精々俺が神通を捕まえた時ぐらいのしかまともに判断できないでしょ」

 

「いやあれは画面が凄くて……酔いそうです」

 

「……あのぉ」

 

「ねえ、動画って何のことだい?」

 

「あら、最上さんたちは動画を見てないんですか?」

 

「うちの鎮守府は遠征がいつもあるから見てない娘も多いのよ。

私は見れたけどもがみんたちは観れてないと思うわ」

 

『もがみん?』

 

「……何であだ名には反応するの」

 

「いや、俺たちは基本的に本名を名乗らない代わりにコードネームを使う。

俺はウェーバー、こいつはティム、そこの3人はマーリン・エアー・フォレスト。

俺たち2人は自分で名乗った名前だが、そこの3人はBOSSからもらった名前だ」

 

「へぇ〜〜」

 

そう言って千歳が一杯煽った。

どうやらそれなりに呑めるタイプらしい

 

「……あの、ティムさんって技術屋さんなんですよね?」

 

「えっと……三隈さんだっけ?まぁ自分でそう名乗ってるしね、このメンバーの中じゃ器用だよ」

 

「……神通さんを捕まえたって本当ですか?」

 

「そうだよ、走って捕まえたよ、銃は使ったけど」

 

「神通さんって丘でも運動できる方だと思ってたんですけど……」

 

「三隈の言う通りだよ、最初の頃だけど僕駆逐艦の娘たちが訓練から逃げようとしてたの片っ端から

捕まえてたの見たんだから」

 

「ですよね……」

 

「そろそろ改ニになるって話も聞いたわね」

 

『かいに?』

 

「ああ、みんなは聞いてないか。

夕張さんからの話だと、基本的に艦娘全員はある程度練度が得られれば改装が受けられるんだって」

 

「艤装のチェーンアップか?」

 

「まぁその認識で問題ない。

んで、一部の艦娘はさらにそこから改装を受けられる、その二回目の改装を改ニっていうらしい。

特徴としては艦娘の艤装や服装、艦種に体型まで変わったりするらしいがな」

 

「うん、その説明であってる。

僕たちも元々は重巡洋艦だったけど、改装で主砲を降ろして代わりにカタパルトを付けて

航空巡洋艦になったんだ」

 

「私はちょっと特殊で、これまでに2回改装を受けてるけどあともう一回で軽空母になれるの。

さらにもう一回受けられるし、十分練度もあるのだけどうちの提督の意向でしばらくは水母のまま。

私は早く空母になりたいけれどねぇ」

 

「私やお姉さまも改ニになっています」

 

「そう言えば龍鳳ちゃんも元は潜水空母とか言ってた!」

 

「……って言われてもねぇ」

 

「そもそも前の姿やスペックを知らないからな」

 

「まぁ川内たちの改装を待つとしましょう」

 

そう言ってツマミをつつくマーリンとエアー。

同じように最上と三隈も自分で頼んだであろう唐揚げを食べている。

そんな中、ティムが三隈の言葉に興味を持ったらしい、質問する。

 

「ていうか……神通ちゃんってそんなすごいの?」

 

「神通さんというか川内三姉妹はみんな腕利きです、丘でも十分通じるくらいですから」

 

「けど私たちと訓練した時はすぐバテちゃったよ?」

 

「慣れてないのと散々投げられたこともあるだろうな」

 

「……投げた?」

 

霧島がその言葉に反応する

まあ気になる、か。

そういえばさっきからこいつだけ飲んでも食べてもいないが………

 

「いやねぇ、川内たちが交流戦終わった後に鍛えて欲しいって言うからちょっと付き合ったの」

 

「……マーリンがはしゃいでた だけな気がするけど」

 

「エアーだって一緒にやったじゃん!」

 

「やったけれど、あなたが飛ばしすぎたのよ……」

 

「あっ物理的に?」

 

「精神的にもよ」

 

……お前ら、川内たちに一体何をやらせたんだ?

そんな話をしていると鳳翔が皿を持ってやって来た。

匂いと鳳翔の腕からして美味いに違いない。

 

「鳳翔さーん、コレは?」

 

「余ってしまった玉ねぎともやしをタレで炒めたんです、手抜きですけど」

 

「頂きますね…………これキンピラの味付けと似てません?」

 

「マーリンさんよくわかりましたね!」

 

「ああこれ甘辛ダレなんですか」

 

「けど鳳翔さん、これ炒める時にコショウとか入れたほうがもっと美味しいですよ」

 

「コショウっていうよりハーブ系かしらね」

 

『良いねー』

 

『…………え?』

 

「あ、言っとくけどこの3人コックレベルのスキル持ちだから」

 

『ええ!?』

 

ティムの一言に目の前にいる艦娘4人は驚愕の顔をみせる。

特に霧島は口が開いたままになっている。

 

「……なんで私たち驚かれてるんです?」

 

「常識と見た目から考えて、フォレストはまだしもマーリンとエアーは料理するタイプに

見えないからだろ」

 

『正論だから何も言えない』

 

「なんか2人とも……ごめんね?」

 

「ムカつく!フォレストに気遣われた!!」

 

「何でだよ……」

 

「……けどさ、あなたたちだって料理でなくても家事くらいできるでしょ?」

 

「まっまぁやる……わよっ」

 

「僕も多少なら料理もできるよ」

 

「もがみんと同じ部屋なので手伝いくらいなら……」

 

「私もお菓子を作る事はありますけど鳳翔さんに口を出せる程では……」

 

「へぇ………ねぇ、なら手伝ってみない?」

 

「……どいう事です?」

 

「つーまーりー、私たちの船で料理手伝うってこと」

 

「…………それは……どうなのでしょう」

 

「大丈夫よ、少なくともあなたはしばらく暇なんでしょ?

それでも艦娘だからもしもの時は戦わなきゃまずいのもわかるわ。

けど、私たちのシェフも戦うときは戦う、勝手に抜け出してもカバーしてくれる」

 

「まさに戦う料理人!」

 

「……マーリン、ちょっと静かに」

 

「ハイハイ、ほうしょうさーん お代わりー」

 

「あっ私もお代わりー」

 

マーリンと千歳がさらに追加を頼む。

……お前まだ居座って飲むつもりか、また突っ込まれるぞ?

 

「……まぁいつもこんな感じだし、別にバチは当たらないと思うわ」

 

「しかし……」

 

「あら、私はやりたいけど?」

 

「千歳……?」

 

「いやね、私たちのところには伊良子さんが居るから甘味には困らないのだけれど、

おつまみとなると定番は揃ってるけれど少し物足りなかったのよ」

 

「もちろん構わないわ、要望通りに叶うかわからないけれど」

 

「だってよ、霧島?」

 

「良いんじゃ無いか、別に職務違反でも無いんだ」

 

「おっ、起きたか」

 

突如奥から現れたのは、畳で寝ていた提督だ、どうやらやっと起きる事が出来たらしい

鳳翔が水を差し出し、それを一気に飲む。

 

「……これもいつも通りか?」

 

「ええ、いつもならもう少し持ちますけど……」

 

「日本人はアルデヒド分解酵素が少ない民族ですからね、一部地方には多く持つ人たちもいるみたいですけど」

 

「そうなのか……頭が痛い」

 

フォレストの説明を聞きながら、さらに追加された一杯を飲む。

 

「……でだ霧島、その提案に乗ってみたらどうだ。そいつらも戦いに関しては私たちよりも

数多くの修羅場を経験している、料理1つでも学ぶものはあるはずだ」

 

「……私は艦娘です、皆さんの命を守るのが使命です。

そんな私が学んで良いものか悩みますが……やる事が無いのもまた事実です。

よろしいのでしたら是非、教えて下さい」

 

「……確かに俺たちを護るのがお前たちの使命かもしれない。

だが場合によってできる事は限られる、その中で自分ができる事を最大限やれば良い。

悩む必要はない、やりたいならやれば良いんだ。

もっとも、最低限の事はやって貰わなければ困るがな」

 

「っていうか、霧島さんには少なくともラバウルまでは“最低限の仕事も”しないで欲しいところです」

 

「まぁそれは相手の出方次第だ」

 

「おいおい、こっちは他の鎮守府から艦娘を借りている立場なんだ。

あんまりいじめないでくれ……」

 

「そんなに威圧的だったか?」

 

「いやそうでは無いが……」

 

「……まっ明日は自己紹介とか打ち合わせとか案内とかで忙しいからすぐには無理だから、

時間が空いたら船の食堂にでも来て」

 

「もっとも同じ船だからその時にでも良いけどね」

 

「他の娘も誘っても良いですか?」

 

「大丈夫だよー……戦場だけど」

 

まぁうちの糧食班のレベルがどれほどの物なのか比較しようが無いが、

少なくとも一ヶ月近くあそこにいれば嫌でも腕が上がるのは俺でもわかる。

 

「戦……場……?」

 

「見ればわかるわ」

 

「………さて、そろそろお開きとしよう。全員もう寝なければ明日に響くぞ」

 

『俺らは(私たちは)いつも通りなんだが(ですけど)』

 

「スネーク……」

 

「冗談だ。お前ら、今日は寝るぞ」

 

『………え!?』

 

「良いな?」

 

『了解です』

 

「相変わらず、妙な統率力だな……」

 

「BOSSにはそうそう逆らえませんよ」

 

「いつ入港する?」

 

「04:00の予定です」

 

「了解だ、なら俺らは先に上がらせてもらう。お前は……もう少し水でも飲んでおけ」

 

まだ顔色が悪いぞ……ビール一杯でよくそこまで酔えるな

そう思いながら席を立つ

 

「……明日からではあるが先にここにいる連中には言っておく、これからよろしくな」

「料理の練習楽しみにねっ!」

 

そう言って居酒屋“鳳翔”を出た。

 

「……フォレスト」

 

「ええ、今日中に調理場には伝えておきます」

 

「しかし、ここともしばらくおさらばか……」

 

「あれ〜ティム、“誰か”気になる事でもあるの〜?」

 

「ん?別に。ただ久しぶりに連中と会えると良いんだけど……」

 

「あっ……けど大丈夫でしょ。みんな案外タフなんだから」

 

「…………まっしばらくは船の改装で俺は忙しいんだけど」

 

「あれでもまだやるのか……」

 

「あのなぁウェーバー、この国じゃ堂々とやりたい事出来ないんだよ」

 

「まあ俺は周辺警戒に徹する」

 

「おう頼んだ」

 

「全員荷物は決まってるな?」

 

「ええ、持ってくものは詰めました」

 

「私は銃の手入れに必要なもの以外ほとんど無いですが」

 

「私は模擬戦用のナイフ持ってくけど?」

 

「ほどほどにしなさいよ、あなた」

 

「……全員やる事やって戻るぞ、お前たちの任務を解く気は無い」

 

『了解です!』

 

明日からカズたちを迎えに行く

……………また暇な洋上生活の始まりだ。

 

 

 


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