鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

45 / 65

「次は1話投稿すると言ったな」

「そっそうだ!早く投稿してくれ!!」

「あれは嘘だ」

「うっ!?ぅああああぁぁぁぁぁ……」

……すいません、あまりにも長くなったんで大規模作戦までにもう一話だけ挟みますm(__)m



訓練再び

 

………時間だ

 

「これから“回収訓練”を始める。

この前の訓練で瑞鶴らが全力で回避運動をしても問題無い耐久性なのは実証できた。

だが今日は少し別の事をやらせてもらう」

 

『え!?』

 

まあ今回は予想通りの反応だ

特に軽空母の4人は恐怖に駆られている、原因は……確実に鳳翔だろう

 

「まぁ大した事はない、この前と同じ様に俺らから逃げ回れ。

その後はフルトン回収装置を使って回収されてくれ」

 

「あっあの——」

 

「安心しろ、安全は保障できる。それに回収される時の衝撃はパラシュートを開く時より弱い、

心配せずに空に飛んでこい」

 

「心配せずにって……」

 

「あら楽しそうじゃない?」

 

「……陸奥、これは訓練だ。確かに楽しそうかもしれないが気を緩める様な発言はどうかと思うぞ」

 

「相変わらずお堅いのねぇ〜長門は」

 

今回参加する艦娘は

長門 陸奥

 

瑞鳳 龍鳳 龍驤 祥鳳

 

妙高 那智 足柄 羽黒

 

川内 神通 那珂 の13人だ

 

駆逐艦らは安全基準が満たせず参加出来なかった……なぜか鳳翔が一番悔しがっていたが

訓練に参加していないのは他に龍田がいるが今日は遠征任務らしく、出せないと提督が言っていた。

 

「訓練開始は13:00だがあと10分で海上に出る。遅くても15:00には帰ってこれるがそれまでそれぞれ準備してくれ、トイレには必ず行けよ」

 

『ハイ!』

 

そう言って艦娘たちはそれぞれ艤装の手入れやストレッチを始めた

その間にマーリン……では無くフォレストが近づいて来た

 

「BOSS、今日はよろしくお願いしますね」

 

「……………」

 

「BOSS?」

 

「いや 妙にお前と話すのが久しぶりな気がしただけだ、気にしないでくれ」

 

「?……まあいいです。航空自衛隊が今回も協力してくれる様ですね」

 

「ああ、それと陸上自衛隊の隊員も参加するらしい」

 

「……ああ、こっちのシューターですか」

 

「だろうな。まぁ俺らだけでは人数が足りない、ちょうど良いじゃないか」

 

「いいんですかねぇ……」

 

「気にするな、俺たちがこの国にいる事はこの手を生業としている人間にはもう知れ渡っている。

今更何をしようと無意味だ、あの事件があろうが無かろうがそうなっていただろうしな」

 

「そうよフォレスト、すでに顔を晒してみんなと飲んだ時点で情報規制なんて無意味よ」

 

「……それより詳細は教えなくていいんですか?」

 

「いいウェーバー?……騙すのを楽しむべきよ」

 

「……人としてどうなんだ、ソレは」

 

「かわいい子をいじるって最高よねぇ」

 

「……そうかよ」

 

そう言いながらウェーバーが会話から離れた

これ以上は話しても分が悪いと判断したんだろう、実際エアーに言葉で争っても消耗するだけだ

……暇つぶしには持ってこいだろうが。

 

フォレストの方はエアーの発言に苦笑いで返す

こいつも先週、俺が防衛省に行っている間に艦娘に催眠術をかけ龍驤を怯えさせている

反論しようとも気持ちがわからなくもなく困っているのかもしれん

 

「……それで向こうの方は問題ないのか」

 

「天気も機体も問題ないとの事です。先ほど搭乗して飛び立ったと連絡が提督にありました」

 

「お前たちの調子はどうだ?」

 

「俺は問題ないです」

「ウェーバーに同じく」

「私も問題ないです」

 

「そうか」

 

「ただ上手くできるか不安ですけどね」

 

「大丈夫 強風も吹く事は無さそうだし、そもそも海風だからまず海に落っこちる事はないわよ」

 

「俺にとっては十分すぎるくらいに強風だがな……」

 

「けど私、しばらく上に上がった事ないから」

 

確かにフォレストは1年近くやって無い

ウェーバーやエアーは色々と仕事で使っていた様だが、それでも半年近くやっていない

 

「心配するな、お前らは何度も経験してる。

それが同時に何人でやったとしてもしくじる事はない、張り切らなくて良いが気楽にいけ」

 

「気楽にって、それBOSSだから言えるんですよ」

 

「BOSSはベテランですけど、俺たちはまだひよっこですって」

 

……最近俺に対するこいつらの捉え方が変わった様な気がする。

妙に改まって距離を取られるよりやりやすいのは良いんだが……何だ、馴れ合いってコレは言って良いのか?

 

「……マーリンの方は今日どうなんだ」

 

「訓練に参加出来なくて悔しがってましたよ。せめて戦闘だけでもやらせて欲しかったみたいです

けど仕方ないですね」

 

「あいつは出来ないからなぁ」

 

「元から訓練しとけば良かったのよ」

 

確かにエアーの言う通りではある、だがやりたいと思ってやらせられる程安いものじゃない

……やろうと思ったならカズを説得する羽目になる

実際あいつは ふてくされながらヘリでフルトン回収する訳を説明してた、やるには相当の覚悟が必要だ

 

「けど、何でティムは今日参加しないのかしら?」

 

「あれっ知らないの?夕張とデートしに行ったよ?」

 

『!?』

 

川内からの突然の発言に3人が驚く、珍しくウェーバーの奴までも驚きを隠せていない

……しかしあいつも中々やるな、いつの間にそこまで進んでいるとは……

 

「ちょっと川内?デートって…………本当に??」

 

「何でエアーが女子みたいな口調になってるの……」

 

「失礼ね!私は心は乙女よ!!」

 

「自分で乙女って言うか」

「エアー、自分から“心は”って言ってますよ」

「言い張られてもねぇ」

 

川内が面倒な事になったという顔をしながらエアーの言葉をいなし、代わりにフォレストに説明し

始める

 

「昨日ね、妙に夕張のテンションが上がってたから聞いたのよ「何か良いことあったの?」って。

そしてら夕張が「明日ティムさんと買い物に行くんだー!」ってね」

 

「……テンション?」

 

「日本じゃ気分の事を指すんですよBOSS」

 

「けど、買い物でしょ?そんなに舞い上がってたの?」

 

「そうだねぇ あれは完全に恋してる感じだねぇ」

 

そう言いながら顔がにやける川内

まぁ気持ちがわからんでもないが1つ気になることが………………2人の方は川内を見てにやけている、恐らく攻勢に出るな

 

「川内〜 1つ良い?」

 

「……一体何よエアー」

 

「気になってたんだけど……」

 

「うん?」

 

「今まで誰かとデートとかお付き合いした事あるの?」

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………あるよ」

 

 

 

 

 

 

 

「フォレスト」

 

「わかりやすい嘘ですね、異性と交際した事は無いでしょう」

「ていうかあなたたちは外部との接触なんてほとんどないでしょ」

「そもそもそんな時間ないわけですし」

 

「何で私がディスられてるの!?」

 

「いや、少しでも交際経験があるならわかるけど、ない人って大体異性がくっ付いてるだけで勘違い

したりするから」

 

「要するに、私たちは川内の発言に信憑性が薄いって思ってるの」

 

……お前ら 川内になんか恨みでもあるのか?

川内が涙目に見えるんだが気のせいか?

 

「それに、まず人の付き合いをからかい気味に話すのもどうかと思うわ」

 

「そうですよ、ちゃんと本人に確認を取ってからダシにしないと」

 

「そう、事実関係を間接的に確認してから遊ばないと」

 

「それでもティムははっきりしてるから……」

 

「やっぱり夕張ちゃんを上手く誘導して……」

 

「…………え?」

 

『え?』

 

「……うん川内さんが思ってる事が今は正しいから、エアーとフォレストの考えがドSなだけだから。

お前らもあんまり夕張さんで遊ぼうとするなよ、変に意識させるのも面倒だ」

 

ウェーバーが2人に睨みを利かせつつ川内のカバーに入る

一方の2人は川内を視界に入れつつウェーバーを睨み距離を取る

 

「……お前ら、良い加減にしろよ。

勝手に騒ぐこと事態止める気はないが理由がバカらしいぞ、続きは本人達を交えてでもやれ」

 

『わかりました』

 

こういう時にマーリンがいない

あんな性格の奴がいれば良くも悪くも丸く事は収まる、俺がわざわざ口を出す必要も無いんだが……

 

「よし時間だ。全員沖に出てくれ」

 

『ハイっ!』

 

「お前らも戦闘準備だ、今回は外すなよ」

 

「了解です」

「外しませんよ」

「そっちも全力で避けてね」

 

「……一体何を使う気よ」

 

「それは秘密よ、けど頑張ってね」

 

「うへぇ・・・」

 

川内がため息をつきながら艤装を展開、長門を先頭に出航した。

一方でウェーバー達もエンジンを始動、問題が無いのを確認次第出る。

 

「どうだウェーバー、エンジンの調子は」

 

「前と比べ物になりません。

ティムが言うにはピストン機関自体を取り替えたらしいです、音が違いますよ」

 

「他はどうだ」

 

「今まで通りですね、何の問題もありませんよ」

 

「この武器を使うとは思いませんでしたけど」

 

「お前らがレールガンを当てようとするからだ、勝手が違うが当てていけ」

 

「本当に勝手が違うんですけど……」

 

そう言いながら重火器を担ぎバイクの側車に乗るエアー、運転手はフォレストだ

ウェーバーのは事前にティムに頼みもう1つの側車付きのバイクから側車を外してある

背中にはモシン・ナガンのカスタムを背負っている

 

「……で、BOSSは本当に今日は来ないんですか?」

 

「上にはな、それにお前らが残していくバイクの回収もある。

だから今回はレールガンを出してない、そう言っただろう」

 

「BOSSの降下を是非見たかったんです」

 

「……そんな機会が無いことを願いたいもんだ」

 

「それもそうですね、では時間なんで行ってきます」

 

「向こうも手馴れている、時間通りに輸送機が来るのも忘れるなよ」

 

『了解です!』

 

俺に返事をし、片手でギリギリの敬礼をした後エンジンの回転と水しぶきを上げ沖に出て行った

あいつらもさっさと訓練を開始したいらしい、フルスロットルで出て行った

 

…………しばらく暇だ

あいつらの帰りだけを待つのは意味が無い、工廠に行ってもティムや夕張がいないなら面白くない、マーリンは弓道場で大鳳のボウガンで暇を潰すと言っていた、邪魔をする気も起きない。

……………………………………………葉巻と銃の手入れでもするか

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

スネークが完全に趣味に浸ろうとしている中、

彼の部下であるウェーバー・エアー・フォレストの3人は東京湾を南下し、訓練海域である鎮守府正面海域に改造された水上バイクで海上を疾走しながら艦娘を追いかけていた。

 

《ソレ、随分イジったみたいね》

 

《ああ 加速力が前の比にならない。ティムが言うにはボディーもイジれば最高速度も上がるらしい》

 

《……そんな時間あるの?》

 

《夕張と買い物に行けるならあるだろう。そもそも物理的に出来ない事をあいつが言うわけがない》

 

《……あんた羨ましいの?》

 

《茶化すな、思った事を言ったまでだ。嫌味で言った訳じゃない》

 

《けれど、いつの間にあの2人は仲良くなったのでしょう?》

 

フォレストが疑問を口にする、それは2人も同意見だ。

確かに夕張どころか艦娘と接触している時間はBOSSを含めた6人の中でティムが今のところ一番多い

その中でも工廠を半分 住処にしたティムにとって、夕張は特に付き合う時間は長い。

だが、恋仲に発展するほど深い関係を築けるほど互いに暇じゃない。

 

《まあ恋愛関係じゃまだないんでしょうけど……》

 

《プライベートで……ねぇ》

 

《まあ別に問題は無いような気もするがな、仮に付き合っても》

 

《……私達はあまり彼女たちと深く付き合うのはどうかと思うわよ?まだ提督や、こっちの自衛官と

ならまだしも——》

 

《いや 俺が言いたいのはそういう倫理観とか精神的な次元じゃない。

付き合うことが現実的に不可能なのか可能なのかって話だ、事情は複雑なのは確かだがそういうの

抜きに考えたら問題はなさそうだって言いたいんだ》

 

《それは……まぁそうでしょうけど……》

 

《何分、事情が複雑すぎよ》

 

《…………まあな》

 

 

まず相手が艦娘である事

これがジェームズボンドならお決まりとして流されるだろうが、ヒロインがやっと出てきたと言える状況じゃない、何せ相手は謎の女等では無く“艦娘”なのだ、人として認識できても人じゃない。

何より軍艦である夕張は提督の管理下にあり…………本人に法的な自由があるとは言い難い。

 

そしてティムも特殊だ

日本人では無いのはまだ良いとして、MSFの隊員……傭兵であり現在は諜報員として活動している。

当然ながら日本に長居する理由は無い、逆に今回の一件で長居する事が難しくなってもおかしく無い

ここもジェームズボンドなら上手くやってくれるだろうが、生憎そんな都合よくいかない。

 

 

《……まっ、自分の事は自分でカタをつけるのがルールだ。

それに彼奴も考え無いで行動するタイプじゃない、面倒事にはならないと思うがな》

 

《何それ、なんかのフラグ?》

 

《まあまあお二人とも、いちいち私達が口を出す事でもないですよ。

もし本当に恋仲なら色々と思うところはありますけど、憶測だけで話を進めるのはどうかと》

 

《……そうだな》

 

《そうですよ、特にウェーバーはこの後大変なんですから》

 

《お前らもやるだろうが》

 

《いえいえ、私たちは興奮しませんから》

 

《興奮って……》

 

《まあ良いじゃない、その前にあの娘たちと訓練よ》

 

《今回は当てにいけますしね》

 

《当てられるか?》

 

《当てるのよ、支援は頼んだわよ》

 

《正しくは誘導だがな、これでもスナイパーの端くれだ、どうにかする》

 

それを最後に3人は黙る、理由は最後尾の軽空母を補足したからだ。

暗号回線ではあるが念のため会話は打ち切る、次は話すのは彼女たちに直接説明する時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工廠に来たのはいい

来月の作戦のために対潜装備を中心に装備の開発をする為だ、随伴として天龍を連れて来た。

龍田の奴は弓道場に向かった、どうやらマーリンと手合わせをするとか言っていた。

それはまあいい………なぜここにヘビがいる?

 

「あっ?なんでスネークがここに居んだ?」

 

「しばらく時間があるからな、色々とやらせてもらっている。悪いが工具を借りているぞ」

 

「あっぁあ、それは構わないんだが……」

 

一体どうして工廠に入れている?

ここは今日、夕張が珍しく外に出るというから鍵を閉めさせたはずなんだが……

 

「なぁスネーク、この扉に鍵はかかっていなかったか?」

 

「鍵?……何も無かったからそのままここに入った。

安心しろ、いくら俺らが艦娘の装備に興味があると言っても勝手に盗み取りはしない。

もしやろうとすれば妖精に何をされるかわかった物じゃないからな」

 

確かにスネークの辺りには妖精が……構えている。

仮に何かスネークが盗もうとすれば何がなんでも拘束するだろう。

 

「……ていうか私たち自身でもよくわかんないのに解析とか出来んのか?」

 

「天龍、口を慎めよ。階級の差は無いが外部顧問だ、身内じゃ無いんだ」

 

「うぅ……」

 

「構わん、別に俺からしても身内じゃ無い。

それに女に敬語で話されるのもやりにくい、自由にしてくれ」

 

「……けどよ、俺たちも理屈がよくわかんねーもんを他の奴がそんな利用なんて出来んのか?」

 

確かに天龍のいう事は一理ある

防衛省技術開発研究所も艦娘について研究し、進めている事になっているが………全く進展は無い。

それほどまでに彼女たちの装備は訳がわからない、それを一体どうするのか?

 

「内の技術屋の受け入れにはなるが、理屈がわからない物も利用は簡単だ」

 

「……どういう事だ?」

 

「いいか、確かに根元……まぁどうやって動いているかの説明が不可能だとしてもだ、どういう効果があるのかは見ればわかる」

 

「それは……当然だな」

 

「そして世の中は広い、いまどき似た様な現象は少なからず報告されている」

 

「…………つまり、似た様な現象から理由を探るのか?」

 

「らしいぞ」

 

「らしいって……」

 

「実際俺の所で使っている装備品の一部はそうやって出来ている、こいつもな」

 

そう言って腰のホルダーからデカい携帯のような物を取り出し 何か操作する。

すると突如、それからプロジェクターのようなスクリーンが現れた。

 

「こいつは——」

 

「カッコイイな、おい!!」

 

「そうか!カッコイイか!!」

 

「……スネーク、天龍、少し落ち着け」

 

「提督はわからないのか!?今までSFでしか出てこなかった代物がいま目の前にあるんだぜ?!」

 

「おお!わかるか天龍!!」

 

「当たり前だ!こんなに面白そうな物は初めて見たぜ!!」

 

……そういえば忘れていた、天龍は普段は龍田のキャラで隠れて普通に見えるが初めて会った時

「ふふっ、怖いか?」なんて厨二病みたいな事を言っていた。

夕張ほどオタクでも無いがマンガも見ている、無理もない……か

 

「……ところで今これは何を写しているんだ?何か色々と動いているが……」

 

「これか?この緑色の奴は海に出ているウェーバー達だ、赤色の奴は3人が認識している艦娘だ」

 

「生なのか!?」

 

「……天龍、普通にリアルタイムって言えば良いだろう」

 

「っるせぇ!すぐに言葉が出てこなかったんだ!!

それより、これ今やってる事がそのまま映ってるって事だよな!?」

 

「その通りだ、マップ上に把握した敵の位置・味方の居場所がリアルタイムで反映される」

 

……こいつはスゴい、是非ともうちにも欲しい。

いや、個人的に入手できるなら なおさら欲しい。

 

「すげぇな!すげぇな!!他になんか出来んのか!?」

 

「そうだな……時間も丁度いい、映像を見るか」

 

「まさか・・・!?」

 

「ああ、こいつを持っている奴が見ている光景はこいつを通して俺たちも見る事が出来る」

 

『マジか!?』

 

何だこの便利アイテムは!?

……本格的に交渉を考える必要があるな

 

「言っとくがこいつは提供できん、契約にも書いたが俺らは互いに技術に関してはやり取りしない」

 

「……そうなのか提督?」

 

「……ああ」

 

「…………」

 

ああ、天龍がすごい目でこっちを見てる…………けど私は悪くない、悪く……ない

 

「……で 観るんだろ?」

 

「ああ、もちろんだぜ!」

 

スネークの言葉であっさり復活した……私も大人しく見るとするか

スネークが机にその端末を置き、パイプ椅子を3つ持ってくる。

同時に先ほどより大きくスクリーンが現れ、海上で話し合いをする彼女たちと彼の部下たちが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工廠で完全に鑑賞モードに入った提督たちが自分たちの事をスネークのiDroidで観ているとも知らずウェーバーを筆頭とした隊員たちと、13人の艦娘が最終確認をしていた。

もちろん、音声も工廠にいる3人に届いている。

 

「今回こっちは俺が仕切る、そっちは長門か?」

 

「いや、今回は陸奥と川内だ」

 

「ああ、連合艦隊か」

 

「そうよ〜 まあ今回は私たちは攻撃しないけれどね」

 

「魚雷が撃てない!」

 

「せんだいーもし撃ったらー……すぐに破壊するからね」

 

「……うん」

 

川内の背中には冷たいものが通り去った、何せエアーに睨まれ“宣言された”のだ。

壊すのはもちろん魚雷だがついでに何をするのかわかった物じゃない。

姉妹である神通や那珂までも珍しく緊張しエアーを見据える、それだけお互いに本気の雰囲気を醸し出しているのだ。

 

「エアー そう殺気をばら撒くな、説明がやりにくくなるだけだ、お前は俺に迷惑をかけたいのか?」

 

「そうよ」

 

「即答かよ」

 

「ええ」

 

「……まぁいい、さっきBOSSが言っていたが今回も前回と同じ様に俺らの射撃から逃げ回ってくれ。今回は俺ら3人だけだが、その分遠慮なくやらせてもらう。

時間も10分ほどやらせてもらう、あの間ひたすら逃げてくれ」

 

そう言って目の前にいる13人を見つめるウェーバー

先週の対空戦闘で長門が睨んだ通りウェーバーはやり手だ、そしてこの1年彼女たちが経験した以上の修羅場を経験し…………処理してきた。

その見つめる眼には彼女たちを怯ませるほどでは無くとも、何かしら感じさせる力はあった。

 

「もちろんだ、もっとも私たちは狩られたくは無いがな」

 

「お互い様だ、俺らだって狩るのが専門じゃない、真正面からの戦闘も好きじゃない」

 

「マーリンは好きそうだが……」

 

「あいつは そういうタイプでそういう仕事だ」

 

「そうなのか……」

 

「そんな事どうでもいいだろう、そろそろ輸送機も来る、じゃあ1分後開始な」

 

『いきなり!?』

 

長門とウェーバーが話してると思っていた所に訓練開始である。

唐突にもほどがあるがウェーバーやエアー・フォレストは戦闘態勢、艦娘と距離をとった。

もう既に300メートル以上は離れている。

 

《まあそう言うな、大体俺らの訓練は唐突だ》

 

《そうそう、BOSSに「稽古つけて下さい」って言ったら、その場で「ああ」って答えてすぐに

投げてくるんだから》

 

「……それ訓練なの?」

 

《だって誰も日時を決めてないもの、ルールは全く破ってないもの》

 

「ええ………」

 

《まぁ川内さんが言いたいのもわかるんだけどさ、奇襲も立派な戦略。

せこくても外道じゃない、ただ単に“予想外”なだけ、予想しなかった奴が悪い》

 

「悪いって……なんか変じゃない?」

 

《その違和感はわかるよ、けどそんな甘い考えは戦場じゃ命取りだ、文句を言う前に死ぬ》

 

『……………』

 

「…………だが、それでは何事も無茶が通ってしまうぞ?」

 

流石にウェーバーたちの言う事に疑問を抱いたのか、全艦娘の代表として長門が無線を通して聞く。

 

《いや、無茶は通らない。

そのためにルールがある、各国には法がある、 俺らで言えば交戦規定がある、自衛隊は特に厳しい。

その範囲内でならできる事はなんでもやってもいい、特に戦場なら………意味はわかるな?》

 

この言葉には武士とも言える長門でさえも反論出来なかった。

何せ今言われた事は

 

 

過去に自分たちの乗組員が

 

所属した海軍が

 

国家が

 

 

やった事でもある

それを指摘する資格が自分たちにはない……そう判断したからだ。

 

《そう暗くなるな、今はいまだ。

それに最終的には自分の意思で決める事に変わり無い、それにこの訓練は戦場でその決める選択肢を増やす為でもある》

 

《……確かにその通りですね》

 

《あんた意外と上手いこと言うわね》

 

「……どういう事なの?」

 

《上に行けばわかる!なら時間だ、逃げ切れよ!》

 

《ちなみに、それなりに被弾したら罰ゲームね》

 

そう言ってウェーバーがすぐに発砲、川内の頭部を狙う

だが直前までの話から既に全員が警戒していた

マズルフラッシュを見た瞬間に体をかがめ、その状態から加速 回避する

 

他の艦娘も一気に散開、ひとまず10分間の回避訓練が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁスネークさんよぉ」

 

「スネークで構わない、その呼び方だけはやめてくれ」

 

スクリーンから目を一旦外し、天龍はスネークに質問をしたいらしい。

もっとも呼び方が気に食わず、スネークはまだスクリーンを見ている。

 

「だとさ天龍」

 

「っ……スネーク、さっきの会話なんだがさぁ」

 

「あいつらが言った通りだ。

ルールの範囲内で最大限動き任務を遂行し達成する、その為には柔軟な発想力が必要だ。

もっとも、捻くれている印象を受けるのもわかっている。確か揚げ足を取るっていうんだったか」

 

「ああ、その通りだ。

俺はそこが気に喰わねぇ、確かにその発想力が重要なのは理解できんだ。

……けどよ、それにしたって川内が悪い事にはならねぇだろ?」

 

「・・・なるほどな」

 

天龍がさっきまでの無邪気な子供から海上で深海凄艦に見せているであろう表情に変化している。

要するにスネークを心の中では今敵と見なしている。

 

それはスネークも見透かしているらしい。

流石に無視する事も出来ないと判断し、席を外しスクリーンから天龍の方に体を向ける。

 

「いいか天龍、少しこっちに来い」

 

「……何をするんだよ?」

 

「そう警戒するな、お前の言いたい事は十分わかる。

だがお前は俺らが言いたい事が納得できないというより、“しにくい”だろう?」

 

「……まぁどちらかと言えばな」

 

「なら説明する」

 

そう言って工廠の奥の行きながら突然腰から一丁の拳銃を取り出し、

さらに作業台からいくつかのパーツを選び、同時に作業しながら数秒で組み立てた。

種類はリボルバー、そして二丁の拳銃を私たちに見せる、中には1発も入っていない。

 

「今から一方のリボルバーに1発だけ装填する、そして俺が銃をシャッフルする。

二丁あるうちの1つだけお前が先に選べ」

 

「……決闘か?」

 

「そうだ、選んだらその場でお互い後ろを向き——」

 

「十歩 歩くんだろ?」

 

「ああ、お前が俺の言う事が納得できないならお前の言いたい事を俺に押し通せ」

 

「…………わかった」

 

突如、この鎮守府の工廠で決闘が始まった。

私としては是非とも遠慮して欲しんだが、スネークが天龍にわざわざ説明する事だ、

止めてしまっては何の意味も無いだろう。

安全管理は………まぁ問題ないか

 

「使うのは実弾だ、当たれば痛い」

 

1発装填

 

はみ出した薬室をはめ

 

撃つ

 

床に1つの穴が出来た

 

「………………」

 

その間に私は流れ弾が来ない様、2人の真横に回る。

そのままもう一方に1発の銃弾を装填、同じようにはめた。

その後、曲芸の様に二丁の銃を回し、投げ、後ろで掴む等々し、お互いの中央に銃を置いた。

 

「さあ取れ」

 

「……………」

 

しばらく天龍は悩んだがそれもほんの一瞬、迷わず左を選んだ。

そのままスネークは残った右を選び、お互い背を向ける。

 

「……カウントするぞ」

 

「…………おう」

 

 

 

1

 

カツッ

 

2

 

カツッ

 

3

 

カツッ

 

4

 

カツッ

 

5

 

カツッ

 

6

 

カツッ

 

7

 

カツッ

 

 

8

 

 

カツッ

 

 

9

 

 

カッ

 

 

10

 

 

・・・パーン!

 

撃ったのは天龍だった

リボルバーが回転し、そのまま薬莢は薬室に留まった。

銃身からは白い煙を吹き、僅かながら硝煙の匂いがする………それだけだ。

 

スネークは ふっと笑い、天龍の方に体を向けて決め言葉を言う

 

「空砲だ」

 

「……………はめられたぁ」

 

そう言って天龍がその場でダラける。

……どうやら本当に実弾が装填されていると思っていたらしい

 

「天龍、まさかお前本当にスネークがここで殺し合うとでも思ったのか?」

 

「提督はわかってたのかよ!?」

 

「当たり前だ、出なかったらとっくに止めている」

 

「けどさっきマジで撃ったじゃねえか!」

 

「けどさっき作業台で空砲にしていたじゃないか」

 

「…………え?」

 

確かにこの目で見た。

もっとも信じられない様な早業ではあったが片手で銃を組み立て、もう片方で弾丸を処理していた。

この職に就く過程で座学の他に実習としてある程度火器の扱いも習ったが、

見本でもあそこまで早く組み立て、早く弾丸を処理するのは見た事がない。

 

「その通りだ、提督には見えるがお前には見えない所でやらしてもらった」

 

「……………」

 

先ほどまでの黙りとは違い、恥ずかしさのあまり何も言えないらしい。

妙にかわいいな おい。

 

「だが、俺たちの言いたい事はわかっただろう?」

 

「……ん」

 

「さっきまで、俺は隙だらけだった。

なのにお前は逃げる事も、銃を拾った瞬間にぶん殴る事もしなかった。

そもそも、さっき提督が言った通りだがここで俺がお前を撃つ意味がない。

なのにお前はこの勝負を受けた、何故だ?」

 

「何故って………そりゃ勝負を受けたから」

 

「なら逃げる事も不意打ちをしなかったのは何故だ?」

 

「そんなの決闘じゃねぇ!!」

 

「その通りだ、だが倒す事を前提とするならアリだ」

 

「…………」

 

「仮に俺がお前たちの提督を殺した仇だとする」

 

「私を勝手に殺すなっ!」

 

「仮にだ、仮に」

 

何で私は何故……何というか、こう不遇な立場を求められるんだ?

いや、私で無ければ務まらないからなんとも言えないんだが……

 

「……まあ殺せるならあんたを殺したいな」

 

「その状況で同じ様に決闘を申し込まれたらどうする」

 

「……………」

 

「まぁどうやるかはお前の自由だ、だがお前は少なくともさっきと同じ様な事をしないだろう」

 

「……ああ」

 

「だが誰もお前を責める奴は居ない、少なくとも艦娘の中では」

 

「そうだと私は嬉しいな」

 

「…………」

 

天龍よぉ そこで照れないでくれ、俺まで恥ずかしくなる

 

「命のやり取りはそういうもんだ。

もっともコレが全てじゃないのも頭に入れておけよ」

 

「……だがわかったぜ、確かに俺がもしあんたを全力で殺しにいったとき、何も考慮してなかった

あんたが悪いな」

 

「そういう事だ、もっとも川内を落ち込ませたウェーバーには少し難があるとは思うがな」

 

「……そういえば、向こうは今どうなってるんだ」

 

「残り時間は……5分切ってるな」

 

「……そういや、これ空に浮かぶんだよな?」

 

「最終的にはな、ウェーバーが言っていた様にお前らに選択肢を増やすための訓練だ。

戦場での選択肢の拡大はお前らの作戦立案の幅を広げる、十分メリットはある」

 

「ならその端末を……」

 

「残念だがこれはウチのオリジナルだ、幾つか他の技術を複合させてはいるがな」

 

「……それで上にあった後どうやって戻ってくるんだ?この前の事件で陸路は使えないんだろ?」

 

「流石に陸上自衛隊から装甲車は借りれなかった」

 

「お前……そんなものを借りようとしてたのか」

 

「“逆に目立ちすぎるわ!!”と一蹴されたがな」

 

「当たり前だ、彼女たちが狙いでは無いにしても目立つのは標的にされるだけだ」

 

「……ならどうやって戻るんだよ」

 

「見ればわかる、それまで待て」

 

そう言ってスネークはスクリーンに体を戻した。

……確かに、今ここで話すにはもったい無い




作者「いやだってね!?ちょっとくらいラブで無くともそんな関係も描けた方が良いじゃないですか?!」

作者の知り合い「じゃあ深海凄艦出せよ」

作者「( ゚д゚)………………はっ!?」

次回、やっと深海凄艦の体が出てきます



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。