鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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……どうしてこうなった(´д` ;



世にも奇妙な話

 

時刻は15:40

一旦訓練を切り上げ、補給のため鎮守府に戻ってきた

彼女たちに疲労は溜まっているだろうが、目に見えるほどではない

だが念のため休みがてら工廠に向かう事にした

 

「で、どうだった?」

 

彼女たちの補給は本人ではなく艤装に供給する

……さすがに燃料を直接飲む訳ではないらしい

その作業の間にウェーバーと話す

「機銃での対処が鈍いですね、主砲に頼るのは良いですが」

 

「ああ、当てに行ってない」

 

「あと、上空援護の必要性を初めて感じました。

心強いものなんですね」

 

「……まあな」

 

対空射撃のみで航空機に対処するには無理があるのは実感した

護衛だとしても編隊を崩しておけば回避はしやすい

射程圏外で敵機が減るという事も効率的だ

訓練された奴が居なければ200機の対処には被害が出るハズだ

 

 

「そもそも対空戦闘で小破すら出ていないのが不思議なんですから」

 

どうやら補給作業が終わったらしい

赤城が後ろからこちらに向かってきた

 

「それは今回はボートを狙う事を前提としたからだろ?」

 

「……ですがほぼ全機が帰還できませんでした」

 

後ろから続けて加賀が来るが落ち込んでいる、他の空母5人は苦笑いだ

今回は演習のため妖精は犠牲になっていないが航空機は消耗している

ボーキサイトの消費量7人合わせて1270となっていたが大丈夫だろう

 

「だが、それも普通……じゃないのか?」

 

「むしろ異常よ、直掩機がいるなら まだしも射撃だけで撃墜率9割越えは……」

 

「ああ、流石の私もそれを聞いて鳥肌が立ったぞ」

 

それぞれ旗艦だった陸奥・長門がやって来て答える

後ろには残りの艦娘が付いてきていた

……秋月も忘れられていない

 

「そんな大した事か?」

 

「輪形陣外周の敵機を輪形陣内にいる状態で仕留めるなんて普通しません」

 

「まあ艦隊に護衛されている場合は回避運動しながら発砲するだろ、俺らはバイクだったしな」

 

「損害機も帰還できませんでした」

 

「帰還する以前に爆発すれば帰還もできませんよ」

 

「回避するように高度を一瞬だけ下げたら海面に衝突したみたいで……」

 

「アレは飛龍の航空機か、まあキャノピーに当たればそうなるだろ」

 

「低空で進入したのに……」

 

「まあ俺らは俯角を気にしなくていいから」

 

「雲の上から急降下して奇襲をかけたと思ったのだけれど—–」

 

「甘い、仮に爆弾を落としたところで迎撃できる、そもそも想定済みですよ」

 

「私は反跳爆撃した後に爆弾を撃たれたわよ……」

 

「そもそも反跳爆撃は喫水線が高ければ効果はあるがな、ゴムボートに当てるのは厳しいだろう

大半がゴムボートを飛び越えるに決まっている」

 

赤城・加賀・飛龍・蒼龍・翔鶴・瑞鶴の言葉に対して俺とウェーバーがそれぞれ答える

 

「私は突然1個編隊が消えましたけど……」

 

「アレは大鳳だったか、運が悪かったな」

 

「…………………」

 

ん?

なぜ大鳳が…………何かマズい事を言ったのか

 

「……何か俺がトラウマを思い出させたか?」

 

「まあトラウマじゃなくてコンプレックス、かしらね」

 

「……運が悪いことがか?」

 

「なぜか知らないけど私たちには運の良い・悪いがはっきりしててね、

前の大戦の影響からだと思うんだけど……運が悪いって言われるとねぇ」

 

「陸奥自身もそうなのか?」

 

「まあね〜どうも技術じゃどうにもならない事……賭けで索敵する時とか闇雲に撃った時なんか

全然ダメね」

 

「そんなに気にするほど、ですか?」

 

「そうだ、運の良さ・悪さは顕著に表れる。

お前たちが交流戦で戦った雪風がいるだろう?」

 

「……ああ、俺の狙撃を1回で見切った娘ですね」

 

「雪風は逆に運がいい、良すぎる。

もちろん技術・練度は申し分ないが運の良さでも戦っている」

 

「……逆もある、という事か」

 

「そうだ」

 

……長門の言う通り運が関わっているかどうかは知らないが、確かにあの雪風はいい動きをしていた

それが日常的……戦場でも起こっているならば逆もある

さっきみたくたったの1発で全滅する可能性が日常的にあれば……大問題だ

 

「……俺は運が悪いのか?」

 

「ふっ……確かに」

 

「……なんだ2人して」

 

「いや、振り返ればアレは運が悪かったのかって思ってな」

 

「全くですっ」

 

「……よければ何があったのか教えてくれ」

 

「ならティムに聞いてくれ、あいつの方が語るのは上手い」

 

「ですね、じゃあひとまず工廠に行きましょうか」

 

運の悪さ……数えきれる気がしない

今ならドローンの開発も目処がついた頃だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは!BOSSの不幸さを語って欲しいの!?」

 

バンバンバンとティムは工作台を叩きながら笑っていた

……お前、工作台を叩いて大丈夫か

 

「BOSSの不幸話ですっか!

そんなの数えたらキリないよー!!」

 

「……お前もBOSSの前でよく言えるよな」

 

「いや………ふふふふ」

 

「……わかるけどな」

 

ウェーバーもつられて少し笑っている

一方で話を振った原因の大鳳・陸奥の2人はただボー然としている

 

休むついでに工廠に着くとティムが1人で作業していた

どうやら夕張がいないため装備を開発する事もないため、自衛官も今日は工廠には来ていないらしい

ドローンの方は設計図が完成し骨格を完成させていた

あとはパーツを組み合わせるらしい、その作業に入る前の休み時間に俺らが来た

工廠に着いた後、2人がティムに質問した

「スネークさんの不幸話って何ですか」

ウェーバーがフォローに入り、事情を説明し……今に至る

 

「……そんなに経験してるのか?」

 

「……自分から言えるものじゃないがな」

 

「具体的には?」

 

「……今ティムが話すだろ」

 

 

訓練に参加していた艦娘20人……隣の長門を除いてだが……全員がティムとウェーバーを囲んでいる

ティムのやつも乗り気だ、椅子を引っ張り出して囲まれた状況を楽しんでいる

 

「まあ昨日いた駆逐艦の娘にも話はしたんだけどね」

 

「……お前、変なこと吹き込んでないよな?」

 

「大丈夫ですよBOSS、俺らの印象を武勇伝と一緒に伝えただけです」

 

「…………」

 

「確かに私も昨日聞きましたよ……隠れながら」

 

「……秋月、俺の今の印象はどんなだ」

 

「どんな?……………………スゴイヒト」

 

「……色々悩んだのは表現できなかったからか?」

 

「そうです!」

 

「…………」

 

嘘だな

!マークが無駄に増えた……まあ会話ができるなら良いが

 

「それで、どこまで話していいですかBOSS?」

 

「……俺がお前を殺さない程度だ」

 

「了解ですっ……とはいえスゴイ単純だけどね。

例えば任務で敵の兵器を破壊するのに失敗したりとか」

 

「どんな兵器を?」

 

「でっかい戦車、ここの講堂ぐらいの」

 

『!?』

 

「あとはフルチャージのレールガンを撃ち込まれたり—–」

 

「待ってよ!レールガンって一昨日のアレのこと!?」

 

「そうそう、艤装が剥がれるやつ。

アレの直撃をBOSSは奇襲で喰らいかけた」

 

『…………』

 

20人が俺の方を一斉に向き上から下まで目を通す

隣の長門までも俺から距離をおき観察する

 

「……俺は幽霊じゃない」

 

「いや、何で生きてるのよ」

 

「直撃してないからだろう、それに怪我の治療もできたしな」

 

フルチャージのレールガンもレーションを装備出来ていれば2回は耐えられる

 

「化物みたいね……」

 

「……瑞鶴、人を幽霊扱いするのはどうかと思うわよ?」

 

「……幽霊といえば、BOSSって幽霊に襲われたんでしたっけ」

 

『!!?』

 

「俺も襲われたけどな」

 

『ええ!?』

 

ここに連れてきた5人の中で戦闘班に長くいたのはウェーバー・マーリン・エアーの3人だ

他の2人も一時は戦闘班にいたが、研究開発班・医療班に移動した

……こいつらもあの任務を経験してたのか

 

「……バレずに接近する事が出来なかったから襲われた」

 

「あ、あのウェーバーさん?幽霊って…………見えるんですか?」

 

「常には見えないが気配で感じ取れる」

 

「俺はバレずに任務を遂行したがな」

 

「……そもそも幽霊なんているわけがありません」

 

「じゃあ加賀さん、この写真見る?」

 

そう言ってウェーバーが3枚の写真を手に持つ

MSFのメンバーで撮影した集合写真も持っているハズだが別の所に入れているだろう

……それよりだ

 

「お前よくまだそれを持ってたな」

 

「俺が撮ったやつじゃないです、マーリンですよ多分。

俺は持っておくのが嫌だったんでとっくに捨てました。

たまたま工廠に置いてったのを拝借してるだけです」

 

「……てかお前よくあの任務受けたよな」

 

「別に受けたくて受けたわけじゃない、訓練過程に勝手に組み込まれていただけだ」

 

「……研究班でよかった」

 

「で、加賀さん見る?」

 

「…………ハイ」

 

少しの間ウェーバーとティムのやり取りの間に加賀は決心したらしい

……手が湿っているのには触れないほうが良いだろう

ウェーバーが重ねた3枚の写真に手を伸ばす、意外と手は長い

手にした写真に目線を落とし、いつもの顔のまままず1枚目を表にする

 

……しばらくの沈黙

 

「で、信じるの?」

 

「……合成でしょう?」

 

「見せて…………どう……何でしょう?」

 

加賀と赤城が1枚目を審議している

……まあ合成も何もただの写っただけなんだが

次に2枚目をめくる

 

「!」

 

「どうしたの加賀さ—コレは……」

 

「……ウェーバー、2枚目は何だ?」

 

「多分3人同時に写ったやつです」

 

最後の3枚目をめくる

……一瞬飛びあがらなかったか

 

「…………嘘です……ね」

 

「これ大丈夫なの……」

 

「どんな感じだ?」

 

「長門さんも見ますか」

 

「……ああ」

 

「どれどれ?」

 

長門も写真に興味があるらしい、写真を赤城からもらう

陸奥がその横から顔を出す

 

「……コレを撮った奴は?」

 

「今も元気だよ、艦娘に体術なんかを教える程度には」

 

「そうか……駆逐艦は見るな、あと羽黒も」

 

『え』

 

突然長門が命令にも似た口調で発する

隣にいた陸奥も頷き続けて加賀も発言する

 

「秘書艦からも要請するわ、多分悪影響だから」

 

「何で私もなんですか?」

 

「羽黒は……泣くじゃない」

 

「……泣きません!」

 

突然、羽黒が反抗的になる

人見知りだろうが、しっかりしているように見えるが……姉の妙高に確認する

 

「……妙高、実際に彼女は泣くタイプなのか?」

 

「そうです、怖いものは無理です」

 

「……なら止めといた方がいいのか」

 

「そんなに怖いんですか?」

 

「怖いのかどうかわからんがあの1枚は動く事があるらしい」

 

「……羽黒、絶対に見ないで」

 

「え?……はいっ」

 

隣から鋭い気配を感じた

その気配が消えた瞬間、羽黒は答えていた

……全員クセが強いと思っていたが、やはり侮れないな

神通・那珂の2人も目線だけで駆逐艦を抑えている

 

「あとその写真は焼きましょう」

 

「あーそれは俺にじゃなくてマーリンに言わないとダメだ、

さすがに人の写真を勝手に焼くわけにはいかない」

 

「……長門さん、それ貸してください」

 

「妙高、いくら何でも勝手に同行するのはいかがな物かと思うぞ」

 

「“魔がい物”を大事にする理由はありません」

 

「“紛い物”は言い過ぎだろう?」

 

「いいえ、それは明らかにダメなヤツです!」

 

……何故か妙高は必死に処分したいらしい

その間に駆逐艦以外の艦娘が見ている

 

「まあ別に燃やしても構わんだろ、

幽霊なんていつでも会える、滅多にない機会ってほど貴重じゃない」

 

「いいんですかBOSS?」

 

「マーリンからは俺から伝えておく、それにフィルムは残っているしな」

 

「あっそういえばそうでしたね」

 

「長門さん、俺にその写真返して、今燃やすから」

 

 

 

『まったぁぁあああ!!』

 

 

 

「……どうした」

 

ウェーバーが手を伸ばした途端、叫び出した

……主に妙高と加賀の声だったが他の艦娘も何人か叫んだ

妙高姉妹4人は全員俺に待ったをかけたらしい

 

「どうした、じゃないですよ!

まだまだ写真は残ってるんですか!?」

 

「……妙高さん、どうかしました?」

 

「どこにあるんです!!」

 

「どこって……日本にいる諜報員とか本部だけど」

 

「……そんなに撮る機会があるのか?」

 

「いつもあるわけじゃないが、幽霊が出る所に行って欲しいって感じの依頼があるからな」

 

「その……呪われないの?」

 

「いるのがバレたら襲ってきますけど、呪われたって話は聞いたことないな」

 

「……大丈夫……なんですか?」

 

「羽黒さん大丈夫です、足柄さんにも今言いましたけど問題ないですって。

たまたま写っただけですし」

 

「……たまたま写ったなんて、適当な嘘ですね」

 

「加賀さん、強がんない方がいいですよ?」

 

「……別に強がってません」

 

そう言いながらも服の袖に左手が隠され、シワが目立つ

隣の赤城は少し笑っているのがわかる

その2人の肩に手が置かれ、間から顔をだす

 

「そうよー強がんない方がいいわよ〜?」

 

「えぇ……誰!?」

 

「ん?私だけど??」

 

さっきから後ろにいたエアーが加賀に声をかけた

……どうやら周りは気づいていなかったらしい

ウェーバーは気づいていたが、ティムは座っていて気づいていなかった

 

 

「あれっ、エアーまだ山に居るんじゃなかったのか?」

 

「結構みんな筋が良くてね、思ったより早く終わったんだけど……何で妙高さんはこんなに真剣なの?

あと加賀さんは驚きすぎー、さっきから居たのに」

 

「……いつから居たんですか?」

 

「ん?足柄が呪われるとかどうとか言ってた所からだけど」

 

「……赤城さんは気付きました?」

 

「いいえ……加賀さんに声をかけた時に初めて気付きました」

 

「……けど隣にいますよ」

 

「……ええ、確かに」

 

ティムとウェーバーを半円で囲むように艦娘は並んでいた

何人か……主に駆逐艦……は2人の目の前で座っていたが他は入り口を背にして聞いていた

赤城・加賀は1番外側で話を聞き、写真を見ていた

足音が無ければエアーの存在は認知できないだろう

 

長門や陸奥もエアーの存在には気づかなかったらしい

隣で「あらあら」と感心している

 

「今ちょうど幽霊の話をしてたのよ」

 

「幽霊?」

 

「ほら、心霊写真を撮れっていう任務の」

 

「……ああ、あの蘇生させるやつね」

 

「違うちがう、ミサイル基地で死んだ兵士を撮影する方」

 

「あ、そっち?」

 

「……何種類あるっていうのよ」

 

「たっだいまー!」

 

陸奥が頭を抱えているなか、マーリン、その後ろに川内が工廠に入ってきた

マーリンの奴は笑いながら汗をかいている。

川内は息を切らし、肩を上下にさせ工廠の前に立っていた

残りの7人は歩きながら山を降りているのだろう

 

「うわぁー疲れたぁー」

 

「姉さん、そんなに疲れたんですか?」

 

「アレ?神通じゃん……いやぁ久しぶりに疲れたよ、夜戦以外でこんなに汗かいたのひさびさ」

 

「そうだマーリン、お前の写真焼き捨ててもいいか?」

 

俺が言う前にティムががマーリンに確認した

 

「ん?何の写真?」

 

「いや、お前がここに置いていった心霊写真」

 

「……それって任務の時のやつ?」

 

「そう、それ。

ちょっと話のネタになったんだけど、燃やそうって話にここでなってね。

いま俺が燃やそうって思ってたんだけど、念のためお前にも確認できるならするけど」

 

そう言いながらティムの手にはライターがあった

まあここで妙高がどうこう言えば、ティムの立場が危うくなる

単に「燃やしたいから燃やす」事にすれば話は早いだろう

 

 

 

 

 

 

「何言ってんの〜あの写真は一昨日出動する前に処分したよ〜」

 

 

 

 

 

 

『…………え?』

 

「…………どうしたの?」

 

一瞬で工廠内の空気は悪くなった

エアーは身構え、ティムの表情は冷め、艦娘全員がマーリンに目線をロックした

 

「……お前、何で処分した」

 

「何でって気味が悪いってのもあるけど、一応情報漏洩は避けるべきだと思って……って何でみんな

深刻なの!?私なんかしたっけ?!」

 

「まあ待てマーリン、どう処分した」

 

「……普通に燃やしたけど?夕張に頼んでそこのガスバーナーで」

 

確かに工廠には工業用のバーナーがある

……何故わざわざそれを使った

 

「……ねぇウェーバー、それあなたのじゃないの?本当に私の?」

 

「俺は日本に来る前に捨てた」

 

「……私はそもそもあの手の任務は受けてないわよ、殴れないし」

 

「BOSSは?」

 

「……写真は持ち歩いていない」

 

「じゃあ私だねぇ・・・アレ、何で残ってるの?」

 

「お前いま気づいたのか!?」

 

「いやだって写真って何の写真かわかんないし!ティム持ってないじゃん!!」

 

「この写真だ」

 

マーリンの目の前に長門が写真を差し出す

 

だがマーリンは驚くこともなく、

その写真をゆっくり見る、

ゆっくり見て言い放った。

 

 

 

「……これ1枚増えてる、動く写真なんて私撮ってない」

 

 

 

『………………』

 

 

 

工廠の雰囲気はまた変わった、一瞬で冷え切った、全員が冷静になる

 

まず幽霊が写った写真が3枚、そのうち1枚は動く

持ち主はマーリン、本人は焼却した

しかし写真はここにある、しかも1枚……動くやつが増えている

 

つまり……………………どういう事だ?

 

「……長門」

 

「……どう処分するかだな」

 

写真を持っていた長門を中心に作戦会議がすぐに始まった

いつの間にかティムやウェーバーもこっちに来ていた

エアーとマーリンはすでに駆逐艦をなだめに入った

 

「また燃やす?」

 

「……お前の口から火に関する提案が出るとはな」

 

「別にいいじゃない、緊急事態だし」

 

「……そうだな」

 

「それでこの写真どうするのよ」

 

「けど……燃やしても戻って来たモノに効果があるとは思えません」

 

「……確かに羽黒の言うとおりね」

 

「じゃあ!このままほっといて置くっていうのは!」

 

バシッ

 

「……足柄、私を怒らせたいの」

 

「・・・じゃあ妙高姉さんは考えがあるの?」

 

「…………マーリンさんに食べさせる」

 

『!?』

 

……こいつ、俺の部下に対して写真を食べさせる気なのか

それはそれで効果はありそうだがやめて欲しい。

仮にやろうと思っても抵抗が激しいだろう、俺もマーリンに加勢せざるを得ない

 

「……妙高姉さん、いくら何でもそれはやり過ぎだ」

 

「ほったらかした方がまだマシよ……」

 

「そうですよ!マーリンさんを何だと思ってるんですか!!」

 

「……ごめん」

 

どうやら妹たちからの抵抗で止まったがしばらくの間、説教される様だ

その次に空母組が提案する

 

「……いっその事、写真を爆撃しましょう」

 

「……それいいかも」

 

最初の2人はまだいいが、艦娘の提案は何故過激なんだ?

わざわざ写真を爆撃したい程怖いか?

……良い気分にならないのは確かだろうが

 

「……何故あなたが賛成するんですか」

 

「機銃掃射より効果はあるでしょ」

 

「……そうですね」

 

「しかし、仮に爆撃するとしても場所がありませんよ?」

 

「……一航戦のセンパイなんだから考えはあるんでしょっ」

 

「そもそもお前ら、出撃以外で実弾の使用は禁止されてないのか?」

 

『……………』

 

……こいつら、この鎮守府の主力なんだよな?

航空戦力の要のはずだが……随分考えが浅くないか?

 

「まあ早く処分したい気持ちはわかるけど、ひとまず落ち着こうね」

 

「だがどうするんだ?焼却して駄目だとしたら捨てるだけっていうのもアレだろ」

 

「……そう言えば日本の人形って意思を持って動くって聞いたなぁ」

 

「そうなのか?」

 

「じゃあ写真も動くのか?」

 

「さぁ、俺は夕張さんから聞いただけ」

 

「こういう場合は、日本ではどうするんだ?」

 

「……どうするんだ?」

 

「……どうするの?」

 

俺、ウェーバー、ティムと経由して艦娘に聞く

俺らは日本の文化に詳しいわけじゃない……いくら何でも心霊写真への対処までは調べていない

 

「……神社やお寺で焼いて貰うのが普通なんじゃない?」

 

「じゃあ、龍驤が一番なのかしら」

 

「確かに、式神扱ってますもんね」

 

「……そもそもお前らの航空機で沖に沈められないのか?」

 

 

 

 

『…………あ』

 

 

 

 

……出来るのか

 

「お前ら、まず考えなかったのか、それを」

 

「俺は不可能だから妙高さんがマーリンに食べさせるなんて考えたのかと思ったんだけど」

 

「……で、出来るの?」

 

俺、ウェーバー、ティムと経由し今度は空母の連中に聞く

 

「……多分不可能じゃありません、矢に結べば運んでもらえると思います」

 

「……なら時間も時間だ、休憩も十分だろ、秋月に仕込むついでに飛ばしてこい。

マーリン、エアー、もうそっちの面倒は見なくていいぞ」

 

「別に私たち、わざわざ見ないわよ……」

 

そうだろうが、もし写真が落下しそっちに向かえば確実に見る事になる

それを回避するために2人にいてもらっただけだ

 

「それよりBOSS〜!なんか面白い事やるみたいじゃないですかぁ〜」

 

「……マーリン、今回の訓練にお前の出番はないぞ」

 

「けど、私たち暇なんですけど」

 

「知らん」

 

「けどBOSSとウェーバーだけじゃ少なすぎやしません?」

 

「秋月さんも居るんだが……」

 

「だーかーら!私たちも入れて下さい!!」

 

「……あんたら何であんだけ動いて休みたいと思わないの……」

 

どんだけやったのか知らないが、川内の方は完全に疲れているらしい

……もう少し体力があると思ったんだがな

 

「アレ、お姉ちゃん疲れてるの?」

 

「……まぁ、アレだけやって疲れずに動けてるマーリン達がスゴすぎだよ……」

 

「何を……したんです?」

 

「陸での警備方法とその実践だよぉ……あんだけ急にぶん投げられるなんて思わないよ……」

 

「はぁ・・・?」

 

「おい2人、そろそろ出るぞ」

 

とにかく秋月には今日にコツをつかませる

……2時間もあれば十分だろ

 

「で、BOSS……この2人はどうします?」

 

「……わかった、お前ら水上バイクに乗っておけ」

 

『了解!』

 

早々にあいつらは出って行った

……恐らく武器を取りに行ったのだろう

 

「ティム、すまないが——」

 

「わかりました、先にバイクをセッティングしときますよ」

 

ティムも既に工具を持ち、バイクを停めてある方へ走って行った


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