鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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失態

 

19:00 提督室

すでに俺の部下は準備が完了して、ここに武器を持った状態で座っている

もっとも主な武器はティムがスポーツバックのような横長のバックに銃やグレネードを入れている

ウェーバーの愛銃は専用のトランクの中に入っている

警備も特別警戒とし、本来は第4小隊が警備するが第3小隊も武装して巡回させている

また第2小隊も待機し何かあればすぐに対応、24:00からは第1小隊と巡回する

各小隊長も集まっている

 

「……で、何かわかったか?」

「それがうちの諜報員や公安も敵が何者なのか把握できていないんです」

「……そういうテロ集団は日本には居ないのか?」

「無いな、そんな軍隊レベルの武器を持って活動している集団なんぞ聞いたことが無い。

そんなテロ集団がいたらとっくに公安や警察が逮捕するハズだ」

「だがな提督、実際に起きているぞ?」

「………そうだ」

 

まあ提督がいつも通りにいかない理由も理解できる

何せ彼女達を兵器としてでは無く、人として接している

そんな彼女達が事件、よりによってテロに巻き込まれたのだ、無理もない。

 

「……ですがBOSS、犯人はともかく武器の流入方法まで不明です」

「そこだ、何せ空は奴らの空母の艦載機がいるが、そもそも税関で大騒ぎする。

海から流すにしても奴らがいる、成功するとは思えない」

「深海凄艦もそうだが周辺海域は艦娘がほぼ常に航海している。

不審物は流石に難しいだろうが不審船はすぐに発見されるし、そもそもやろうとする奴が居ない」

「不審物も発見できますよ」

 

ずっとここに残っている鳳翔が答える

彼女もまた提督と同じ……いやそれ以上に心配なハズだ

彼女は本当に母親役なのだ

だが、そんな雰囲気を2人とも感じさせない

少なくとも表情からは、だが。

 

「……それで何か警察からは情報は来てるのか、提督?」

「それならマーリンから情報が来てますよ、BOSS」

「いや待て、なんで警察や大本営より早く、君たちが情報を持っている?」

「……まあ警察は防衛省が関わる事を嫌うでしょうから、情報を提供するのも遅れるでしょう」

「いや、それはわかる。私もあまい考えはしていない、しかしなぜマーリンが情報を得ている?」

「……そういえばあいつ、確か指向性マイクを持っていったな〜」

「全員、黙ってろよ?」

 

要するに盗聴したのだ

警視庁に入ったあと何処かに隠れて“情報収集”したに違いない

……犯罪以外の何ものでも無い

念のためここにいる全員に黙るよう頼む

 

「……まあ命は惜しいから黙っているさ」

「いや、もっとも私たちには話す相手が居ないんですけどね……」

「……ならいい、で情報は?」

「マーリンからの話では20:00には突入らしいです……なんでも上層部の判断だそうですが____」

「待て!交渉はどうした!?」

「おそらく警察が早期解決したいんでしょうが____」

「それにしても早すぎるだろう!?」

「提督、落ち着け。お前がどうこう言ったところで解決することじゃ無い」

「だが____」

「だから俺らを待機させているんだろう?」

 

提督が声を初めて荒げた

鳳翔も声が出ないまでも表情を変えた

フォレストがカバーに入る

 

「それに恐らく突入は途中で中断されるかもしれん」

「……どういう事ですか?」

 

小隊長から質問される

提督もこちらを見る

 

「いいか、敵は爆発物を扱っている。

ましてや入り口は1つ、トラップが仕掛けられているだろうな」

「それでは____」

「負傷者が出やすいだろうな。

もっともトラップには注意するだろうから、大丈夫だとは思うんだが……警察の特殊部隊の実績は?」

「立て籠もり事件の解決はありますが、テロは初めてです」

「そもそも、突撃銃を使った立て籠もり自体、扱うのは初めてのハズだ。」

「……手が付けられなくなったら要請されるんだったな?」

「そうだ、大本営を経由して連絡がくる」

「……ティム、爆発物も準備しろ」

「すでにありますよ、ドアが飛ぶ程度に量も調節してあります」

「ならいい____警察の特殊部隊のレベルを 拝見するしか無いようだな」

「それと犯人からの要求ですが____」

 

鳳翔も落ち着いた

提督も深呼吸してテレビを見ている

とにかく1時間は暇だ

 

 

 

 

「全く連絡が無かったじゃないかミスター1番」

「無いな………なにかニュースでもあるのか?」

「ニュースは無いが要望はある」

「……一体なんだ」

「誠意の印として、人質を何人か解放してくれないか?」

「なんのために?我々の顔を知るためか?時間が来たら殺す、以上だ」

 

「……切れましたね」

「あと30分か、準備は出来てるな?」

「すでに出来てます……本当にやるんですね?」

「……そうだ」

 

 

はっきり言えば断りたい

交渉し、最終手段としての武力制圧だ

だが今回はそれが出来ない

……よりによって何で艦娘がいるんだ!

____いや、彼女たちは全く悪く無い、悪いのは犯罪者だ。

だがそう考えてしまう

 

私の部下たちをそんな縄張り争いのための駒にされたく無い

 

だが上からの命令ならどうにもならない、それが組織だ

逆らっても構わないが、次が存在しなくなる。

それに部下たちの居場所も消える、それは出来ない

 

「敵はどこにいますかね?」

「恐らく6階だろう、狙撃手から報告は?」

「変化は無いそうです、窓は閉められカーテンもかかってます」

「そうか………10分前になったら外に出るぞ」

「了解、今からカメラも遠ざけて見えないようにします」

 

……私はここにいるしか無い

現場に出たいが指揮車にボスが居なければいけない

____部下たちの安全しか祈れないのは辛い

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐか?」

「……だな」

 

提督に落ち着きは無い、そわそわしている

テレビも建物の出入り口を20分ぐらい前から映さなくなっている

恐らく警察から言われたのだろう

まあ当然の対処だろう

 

「……そう、わかったわ」

「諜報員からか?」

 

フォレストが携帯電話でやりとりを終える

 

「そうですが、何も無いですね」

「そうか……マーリンは?」

「大丈夫です、BOSSからの命令で防衛省内にいなさいと言っておきましたから」

「……もうすぐですかね〜」

「だろうな、時間通りに突入するだろう」

 

もう5分もしたら突入するだろう、

あのビルは上からの進入口は無いらしい

要するに一方通行だ……嫌な予感がする

 

 

 

「よし、侵入を開始しろ」

《了解、侵入開始》

 

SATの隊員たちがサブマシンガンを持って突入を始める

突入とは言っても

 

階段を音を立てずに登り

犯人に悟られず部屋に近づき

ドアを破壊して一気に入り

相手を射殺する

 

それだけだ

上からの進入口は無いため、

突入する前に小型のカメラをドアの下から入れて確認する

 

《こちらアルファ目標前に到着、中の状況を確認する》

「犯人の数は?」

《………いない?》

「いない、それは人質がか?」

《違う、誰もいない。アルファから指揮車へ、どうしますか?》

 

 

この瞬間、指揮車にいる隊長には2文字が浮かんだ

 

 

「全員退避!ワナだ!!」

 

 

だがカメラを入れた時点で手遅れだったのだ

 

すでに時限式の爆弾はカメラが入った時点で起動

 

10秒を数え終える所だった

 

バーン

 

階段側の壁が爆発、

 

同時に金属片や瓦礫が隊員たちに突き刺さる

 

 

 

指揮車にも爆発音が届き揺れる

それはテレビカメラにも同じ事だった

 

ジリジリジリジリ

 

黒電話のような着信音が鳴り響く

犯人達からの電話だ

 

「……もしもし」

「やっぱり突入してきたんだ?」

「……お前、1番じゃ無いな?」

「1番?____ああ、さっきまでそのビルにいた人ね〜」

「そのビル?」

「俺らはね〜、あなた達警察がついでに包囲しているビルのお隣だよ?」

 

要するに今まで交渉し、犯人がいると考えられていたビルは違う場所だったのだ

 

「だが、そのビルから発信されているのは確か____」

「ほっんと馬鹿だね、だからそれは“1番”とか言う人がいたビル。

俺たちはそこと違うビルにいるっていう、は・な・し」

「……では、君を何と呼べばいい?」

「ん?そうだねー……神様、ってどう?」

「……で“神様”は何で電話してきたんだ」

「ここにいるのってさー、“艦娘”だよね?」

「……そうだ」

「だったらさー、人じゃ無いんだよね〜、妊娠ってしないんだよね?」

「____どういう意味だ?」

「いや、ここに22人男が居て____ああ、さっきの爆発で1人居ないから21人か、

でさ、女が同じくらいいるんだよね〜」

「おい!!____」

「はははは!おっかしいのー!?悔しいの?

じゃあ自衛隊のヘリと国が50億用意してよ、ああ羽田の飛行機も忘れないでね?

人数は45人が入れる機数ね

あと、0時になっても用意できないならネットで公開処刑するからー」

「……公開処刑?」

「そーだよ!犯したあとに楽〜にしてあげるよ!!」

「____おい!」

 

電話が切れる

その直後、子供達が隣のビルから出てきた

どうやら子供にはやらないらしい

 

だが事態は最悪の状況となった

 

隊員達は負傷、未だに帰って来ていない

周りを囲んでいた機動隊員が回収に向かった

さらに艦娘の存在がばれ、要求の追加

要求が飲まれなければ艦娘や民間人を“公開処刑にする”と言い放った

 

隊長は重々しく携帯電話を取り出し、電話をかける。

コールは数回、すぐに出る

 

「こちら指揮官の斎藤、作戦は……失敗しました。」

 

警視庁内に設置された対策本部に報告する

指揮車も会議室も音は静かに、空気は冷たくなった

一方で、現場はテレビや野次馬で熱くなっていった

 


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