なんかもう色々と疲れた入学式の翌日重い足を引きずりながら何とか魔法科高校の校門をくぐった。
結局あの後中条先輩からの返信はなく、機嫌を損ねてしまったのではないかと内心びくびくしていたりする。
……だ、大丈夫だよな?流石に入学生を絞めようなんて生徒会役員の人が思うわけないよな……?
朝から億劫な気分のまま俺は教室を目指したのだった。
教室についてみるとまだ朝のHRまで30分以上あるのに殆どの生徒が登校を終えていた。
あれだ、
高校生活に期待を持っているため、楽しみで早く登校してしまったのだろう。
きっと一週間もたてば半数以上は10分前ぐらいに登校するようになるだろうが……
俺?
そもそも期待なんて持ってないんだから関係ないだろ?
むしろ一刻でも長く家にいたいまでである。
俺が早く来た理由は単純に妹が日直でそれに合わせて出てきたにすぎない。
小町のいない家を俺は家とは呼ばない。
「何考えてるの?目がすごい勢いで腐ってる……」
!?
急に話しかけられたため驚いて背筋を伸ばす。
「そこまで驚かなくても……」
そこにいたのは昨日俺に質問(苛めともいう)をしてきたおとなしそうな女子だった。
何この人?
なんで俺に話しかけてくんの?
っていうかそもそも目が腐ってんのは元々だ。
「あの、なんかようでひょうか?」
俺の口!
しっかり働け
その代わり俺は働かないから!
「……何考えてたの?」
「いや、皆早いな~と……」
「それはまだ二日目だから、そうなる。私は寝ていたかったけど……ほのかに「それはダメ!」って言われて」
なにこの会話?
友達なの?
この人俺の友達なの?
って言うか「ほのか」って誰?
「あ、そうですか……」
「うん、そう……」
……
…………
………………
ち、沈黙が痛い
これが気まずいからこれからはできるだけ話しかけないでほしい。
俺がこの高校に入学したのはあくまで組織・・の奴らがそうしろと言ったからにすぎない。
彼らから受けた大きな恩のことを考えるとそれもやむえなかったのだ
「……比企谷さんて入試2位だよね?」
沈黙を嫌ったのか彼女はちょっと強引な話題転換をした。
沈黙が嫌いなら別の奴にでも話しかければいいのに……
話を切り上げるため違うと言おうとしたが上位5人は張り出されていたためそれもままならない。
「そうですけど……」
「敬語じゃなくていい……ちなみに私は3位」
じゃああれか、北山……下の名前なんだっけ?まぁいいや
「で、その北山さ……北山が俺になんか用か?」
敬語じゃなくていいって言うのだったら、めんどくさいし、ため口で行こう
「うん、あなたの魔法ってどうなってるの?」
「?どういうことだ?」
俺は彼女の前で魔法を使ったことがない。
だからあのこと・・・・について彼女が知っているはずはないのだが……
「入試の時、同じ班で少し見ていた」
ああ、なるほど。
そういうことか。
「なんであなたの魔法は発動が解らないの?」
「ああ、……まぁ秘密ってわけでもないからいいか。おれ
「はい、着席しろ!HRを始めるぞ~」
なんという絶妙なタイミングだ……
「比企谷さん、昼休みに続きを聞くから……」
そう言って北山は自分の席の方に歩いて行った。
え?ちょっと待ってくれ。
俺は昼休みくらい平穏に過ごしたいんだ。
……そんな心の声は口から発せられることなく、溜息といっしょに消えていった。
あれが雫の話していた比企谷さんなのでしょうか?
なんかその……
目が少しアレな方ですね……
私は今まで話していた友人との会話を切り上げて荷物を整理する振りをしながら横目で彼らの様子を盗み見ます。
雫はいつも通りのマイペースな感じですが比企谷君の方は何か動揺しているような気がします。
あれで本当に入試成績が2位なのでしょうか?
……別に悪口を言っているわけじゃあないですよ!
私は誰に言い訳をしてるのでしょうか?
でも確かに雫の話には疑問を持つところがありました。
雫ほど魔法に秀でている者が魔法の発動に気付かないなんて……
子供のころから一緒のため雫の魔法力の高さは知っています。
それに家がお金持ちと言うこともあって、色々な訓練ができたため熟練度も他のみんなと比べて高いものでしょう。
そもそも一般家庭から生まれたのにもかかわらず私たちよりも魔法力が高い彼は何者なんでしょうか……
キーンコーンカーンコーン
はい、午前の授業は終了!
さぁ、昨日は途中で生徒会の人たちに絡まれたけど、ベストプレイスでもさがし……
「比企谷さん、約束……」
……解ってますよ。覚えてました。
ですけど北山さん?
一人で無理やりこじつけたものを約束とは言わないんですよ?
「……はい」
「じゃあ学食に行こう」
「あの~俺は弁当なんですが……」
「学食でお弁当を食べてはいけないなんてルールありませんよね?」
!?
「それ朝と全く同じ反応」
「そりゃ急に話しかけられれば驚くだろ……」
「ごめんなさい、私は光井ほのかって言います。雫とは幼馴染です……って言っても自己紹介したんで知ってますよね…」
うん、もちろん知ってましたよ。ハチマンウソツカナイ
「ほのかも比企谷さんの魔法が気になるって言っていたから……」
はいはい、解りました。
もう好きにしてください。
そう、あきらめの意味を込めて俺は何度目かわからない溜息をついた
この高校入ってから間違いなく溜息の量が増えてる気がする。
そんなこんなで学食に移動……と言うか連行された。
学食は想像以上に込んでいて座る席を確保することすら難しい状態だ。
「ここは空いてる?」
2科生が団体……とはいっても4人だが……で座っている隣が奇跡的に空いていたためすぐに雫が確認を取った。
「ああ、空いてるよ、さっきの人たちが丁度今どこかに行ったところだ」
「だって」
いま表情があまり変わっていなかったけど間違いなくドヤ顔したよな?
なんとなくイラつく。
「じゃあ比企谷さんは待っててください、私たちは注文してきますから……」
「お、おう」
マジですか?こんなところにしかも混雑している中4人席に俺だけ残してどっか行きますか?
見ろよ、なんか先輩らしき人が明らかに「1人なのに4人席に座ってんじゃねーよ」って感じで見てきてすんですけど……
もしかして俺はあの2人が帰ってくるまでこの針のむしろ状態でいなきゃならないの?
「比企谷って比企谷八幡か?」
そう、さっき雫がした質問に答えてくれた男が聞いてきた。
「え、ああ、しょうだけど」
なんだよSHOWってなにか面白い事でも始まるのか?
「そ、そうか、俺は司波達也だ。実技テスト2位なんて凄いな……」
「お、おう、ありがとう?」
「どうしたんだよ達也……あ?この目つきの悪い奴は誰だよ」
いや、お前がだれだよ……
そういうこと正面から言われると意外と傷つくもんなんだぜ?
「何言ってんのよ、ガラの悪いあんたに目つきが悪いとか言われ…………確かになんか残念な感じね」
ほっとけ!
「み、みなさん!そんなことを初対面の人に言うのは……あっ……………………」
あんたが一番失礼だろ!?
「こいつらは西条レオンハルト、千葉エリカ、柴田美月だ……んでこっちが比企谷八幡」
何こいつ?
何当たり前のように皆に紹介してんの?
って言うかこれがリア充のスキルか……
恐ろしい。
恐ろしすぎて真似しようとは思わない。
「そういえば実技上位にそんなような名前の人がいたような……」
眼鏡をかけた女子……柴田さんが頭をひねりながらそう言った。
「こいつがそうらしいぞ……」
「‼?!?!”?」
……なんなのこいつら
ほんと帰りたい
俺のこと馬鹿にしすぎじゃないか?
って言うか俺はさっきから何もしゃべってないぞ?
内輪ノリは内輪だけでやってくれよ……
「お待たせ……」
「待たせてスミマセン」
「お兄様!」
おっと待っていた2人が来たようだ。
……2人?
なんか1人多いような……
そう言って声のした方を見ると、新入生総代の司波深雪が司波の隣に立っていた。
なんだこの二人は双子ってことか?
まぁ従兄妹ってことも考えられるけど……
「ちょっと待ってよ司波さん!」
「ごめんなさい、私はお兄様たちと昼食を食べようと思うので皆さんとはご一緒できません」
うわ!?
マジかよ
こいつらトップカーストの連中だよ。
まだ高校生活始って2日しかたっていないけど俺の勘がそう言ってる。
……俺のサイドエフェクトがそう言ってるぜ
って言うか皆がいる中でよくこいつココに来れたよな。
1科生と2科生の間にある大きな確執……
このことを考えてまた大きなため息をつくのであった。
俺は高校生活をただ無難に乗り越えたいだけなのに……