魔法科高校の比企谷君 再投稿   作:sazanamin

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謝りしかないです。



やはり俺の自己紹介は間違っている

かつて「超能力」と呼ばれていた先天的に備わる能力が「魔法」という名前で体系化され、強力な魔法技能師は国の力と見なされるようになった。

20年続いた第三次世界大戦が終結してから35年が経つ西暦2095年、魔法技能師養成のための国策高等学校の一つ、国立魔法大学付属第一高校。ここに今、一人の目が腐った少年が入学しようとしていた。

 

 

 

 

 「-----なので、---」

 

 いま壇上では入学生代表がお礼の言葉を述べていた。

 司波深雪、魔法実技テストぶっちぎりの1位である。

 ……ちなみに2位は俺だったりする。

 国語も2位

 数学は6点だったりするのだが…

 魔法科高校に入学した生徒の中で過去最低点をたたき出したらしい

 ……まぁ、俺の話は置いといて入試試験でたまたま目に入ったのだがこの司波深雪とかいう奴はヤバい。

 何あの冷却魔法?氷の女王?人助けとかする部活作っちゃうの?

 ……俺は何を言ってるんだろうか?

 

 「最後に感謝を添えてあいさつとさせていただきます」

 

 おっと変なこと考えてるうちに終わったようだ。

 こうして入学式は終わりを告げる。

 さぁ、楽しい楽しいLHRだ。

 ……何が楽しいんだよ、あの自己紹介とかいうシステムはやめないか?

 なんでみんなあんな罰ゲームしなきゃなんねーんだよ。

 それに、相手が自分で「私はこういう人間です」とかいうのを信じちゃダメだろ……

 そんなことしてるといつの間にか高い壺を買うはめになるぞ、ソースは親父

 

 つまり、自己紹介になんて意味はない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そんなことを思っていた時期が私にはありました。

 

 入学式後のHRいきなり自己紹介から入った。

 皆すげー楽しそうに自己紹介してるよ、

 なに?そんだけで相手のこと本当に知った気になってんの?

 脳内花畑なの?生キャラメルでも作ってんじゃねーの?

 だが頭の中で反論して、いくらやりたくないといっても流れ的にやらなければならないだろう

 

 いやだなぁ

 どれくらい嫌かと言うと帰りたいまでである。

 妹に会いたい……ちなみに妹はプリチーなのだ。

 むろん目は腐っていない、むしろ輝いているね!

 小町可愛いよ小町!

 

 「では比企谷君お願いします」

 

 そう言って女の教師が俺の名前を指定してきた。

 現在では昔あった担任と言う概念はなくなった。

 理由は単純で通信用デバイスが全生徒に配布されるようになったためだ。

 つまり情報を伝えるための担任教師と言う存在意義がなくなったのだ。

 伝統を重んじる一部の高校には存在するようだが……

 そのためこの人は入学式の日から3日だけ様子を見る監督教師にすぎなかった。

 ちなみに1年主任らしい

 まぁそんなことはどうでもいい。

 今はこれをどうにかして乗り越えなければ……

 頼む小町、お兄ちゃんに力を貸してくれ!

 

 「え、えっと、おれ……じゃなくて僕はひきがひゃひゃちまんです…………よろしくお願いします」

 

 はい、終わったーー

 

 

 今までの奴らは自分の趣味とか言ってたけどそんなこと知ったことじゃねえ!

 何だよ「ひゃ」って、自分の名前をこんな風に噛んだこと初めてだ!

 ……と自己嫌悪している間に自己紹介は終わったようだ。

 後はガイダンスしてとりあえず終わりっと!

 

 「じゃあ、自己紹介を聞いて何か質問のある人はいますか?」

 

 出たこのパターン、これはあれだ。

 気になった異性に質問をし、気にとめてもらおうっていうリア充たちの遊戯だ。

 どうせ俺には関係ないし寝ようかな?

 いいよね、どうせ聞いてても関わることなんてろくにないんだし……

 昨日は夜までアニメ見てたからねみーんだよ。

 入学式前日に何してんだろ……

 

 「じゃあ、いいですか?」

 

 そう言って手を挙げたのは一人の無口そうな少女だった。

 ……まぁここにはもともと少年少女しかいないんだけどな、教師以外……

 

「比企谷君の趣味って何ですか?」

 

 ……比企谷君?

 へぇ、俺と同姓の人っていたんだ。

 

 「名前しか言わなかったの彼だけだったので……」

 

 え!?俺も名前しか言ってないんだけど?

 

 ……はいはい、解りました俺のことですよどうせ。

 なんなのこの人?

 俺のこと好きなの?

 それともいじめの標的にでもしようとしてるの?

 入学式の日から恥かかせてやろうとかそんな感じ?

 

 「……は、はい、じゃあ比企谷君、答えてください」

 

 教師が急いで座席票を確認して、俺を指名してきた。

 座席票確認って……

 大人だったら全員覚えてくださいよ。

 何のための自己紹介だったのだろうか?

 

 「……」

 

 っておい趣味か、どうしよう。

 人間観察とか言ったら間違いなく引かれるよな?

 別に引かれるのはいいが、ここで変に目立つのは得策じゃない。

 もう、妹をめでることでいいかな?いいよね!

 ……そっちの方が間違いなく引かれるか

 妹?

 あ、そうだあいつがいるじゃん。

 

 「えっと、猫のせわで……

 「そうなんですか~ちなみに先生は犬派ですよっと言うことで時間もなくなってきてしまったのでガイダンスに入っちゃいますね」

 

 これあれだな。

 時間がないのは本当だろうけど、実際は空気読んだだけだろ。

 まぁ結果的に俺も救われたけど……

 あのままだったら間違いなく変な空気になってた。

 

 取り合えずあれだな、あの無口そうな奴は俺の「絶対許さないノート」に記すことにしよう。

 ほんの数ミリだけ持っていた高校生活への期待はやはり裏切られた

 

  

 

 

 

 

 

 

 これは魔法科高校の入試テストの日のことだ。

 

 「わーってるって、っていうかなんで入試について妹に色々言われないといけないの?お兄ちゃんそんなに信用ない?」

 

 私は校内に緊張したまま、入ろうとするとそんな話し声が聞こえてきた。

 

 「……だから何なんだよそのポイント制は……じゃあ切るぞ」

 

 私が彼を見たのはこの時が初めてだった。

 彼の濁った目と口のニヤケ具合は忘れられない(主に恐怖でだけど)

 だから実技テストで一緒の班になった時、すぐに分かった。

 緊張しているのか何故か話しかけづらかった。

 そうこうしているうちに出番が来て、魔法を発動する。

 このテストでは1000℃の物質に魔法でどこまで温度を変えることができるかのテストだ。

 私は1862℃つまり862℃の温度変化をさせた。

 ちなみに言うと合格ラインは筆記の結果にもよるけどだいたいは500、一科生ならば650と言うところだろう。

 私の次は彼の番だ。

 ……一緒に入試を受けた人の結果を知りたいと思うのは当然のことで、荷物をまとめる振りをしながら横目で覗く。

 彼は機器の前に立つとポケットからviOaの様な端末を取りだして身体の前に構える

 CAD……サイオン信号と電気信号を相互変換可能な合成物質である「感応石」を内蔵した、魔法の発動を補助する機械。

 その中でも見たことないようなタイプだ。

 

 「ま、マイナス!?」

 

 監督の人の口からびっくりしたような声が聞こえてきた。

 そうして私も驚く。

 マイナスと言うことは少なくとも1000℃は下げたということだ。

 説明でされた物質の比熱(1℃変化させるためのエネルギー)は5kj

つまり5000kjのエネルギーをあの一瞬で奪ったのだ。

 2tの車が200~300kmで壁に衝突したときのエネルギーと同じ……

 

 それともう一つ気になったことがあった。

 基本的に私たち魔法師は近くでだれかが魔法を発動した時、どのような魔法かは解らなくても気付くはずなのだ。

 今回はそれがなかった。

 CADを構えたのを確認すると全く魔力を乱すことなくいつの間にか魔法が発動されていた。

 はたしてそんなことが可能なのだろうか、

 

 「あの、彼の名前はなんですか……?」

 

 思わず、近くにいた係りの人に聞いた。

 少し手元にあった名簿を確認して、係りの人は彼の名前を教えてくれた。

 

 比企谷八幡……それが彼の名前だった。

 


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