やっべぇ、すっかりデート回のこと忘れてたよおい。
遥か昔に書き溜めてたのを発掘できて良かった……。
ちょっと第三章の方が早く投稿しちゃいましたけど、どうぞ。
グレイフィア・ルキフグスSIDE
人間界のとある街のとある駅前。
駅前に設置してある大きな噴水の周りにはたくさんのベンチがある。
そのベンチに座り人通りの多いそこで私はそこで人を待っている。
待っているのだが………。
「ねぇねぇ、そこのお姉さん! ちょっと俺らと遊ばねぇ?」
「すげぇイイ所知ってんだぁ」
「そこで俺らとキモチイイことしようぜぇ」
『ギャハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
何やら珍妙な三人組にしつこく絡まれている。
……察するに彼らは酷く貧しい生い立ちなのだろうか?品性というモノが欠片もない。
ある程度の生活水準を保てる家庭環境で生まれ育ったのなら私達貴族とまで行かなくとも常識や倫理観が身につくはず。コレで最愛の
世の中には不思議が多い。
仕草、言動からして、既に涙がこみ上げて来そうなほど可哀想な人間の若者三人。通り行く人々の嫌悪の視線も気付かぬまま彼らは私に話しかけ続ける。私も基本無反応で通しているのであるが、無視という拒絶の意思も察してくれる様子はない。彼らの頭部にはキチンと脳が入っているのかと心配になってきそうだ。よもや、飾りにしては見てくれも悪過ぎる頭部である。 中が
この国には義務教育なるモノがあるらしいのだが……、ソレを受けてすらこの惨状なのだろうか?コレで最愛の
この国の行く末が不安である。
道行く人は此方をチラチラと見てはいるが、関わろうとはしない。先ほどから何かをほざいている哀れ三人組のことは一貫して完全に無視しているのだが。いい加減鬱陶しくなってきた。
この間のリアスお嬢様とライザー様とのゲーム終了時に約束してくれたこのデート。楽しみにし過ぎて早く来てしまったのが運の尽きだった様だ。しかし、この暇人三人組は何故私に絡んで来るのだろうか。そこにある電柱じゃダメなのだろうか?
その様な事を考えていると、向こうの方から何やら女性達の黄色い声が。騒ぎの原因はドンドン此方へ向かってきている様である。騒いでいると思われる女性達の中からから現れたのは――。
「悪い、遅れた」
私の待ち人だった。
いつもは楽な格好を好む彼だが、デートという事で服装にも気を使ってくれたのだろうか?漆黒のスーツ姿である。 白銀に煌く彼の髪がよく映える。しかし、いくらスーツといえどもそこは彼のことだ、若干着崩している。ネクタイは誰かにしてもらわないと出来ない派なので、もちろんネクタイはしていない。
流れるような挙動で私と残念な三人組に割って入り、ベンチに座ったままだった私の手を取り、優しく立たせる。
あぁ、この人はどこまで私を溺れさせるつもりだろう。もはや、あなた以外の男など殆ど同じに見えてしまう。どんな美丈夫も、どんな優男も、この人の前では霞んでしまう。この人に欠点など………、ある、浮気性な所が。まぁ、それだけ多くの異性に慕ってもらえるという事は、魅力溢れる人だという証拠でもあるのだが。嫉妬してしまうのは女として仕方ないと思う。
あまりにも自然な立ち振る舞いの彼に、脳無し三人組も思わず息を呑む。
呆然としていた彼らだが、このままでは格好がつかないと思ったのか彼に食ってかかる。
「何だテメェは」
「人様の邪魔しやがってよぉ」
「髪の色抜いたらカッコイイとか思ってんじゃねぇぞ!」
私も銀髪なんだが。そして彼も私も地毛である。 元からこうなのだ、他人にとやかく言われる筋合いは無い。しかし、彼らは鏡を見たことが無いのだろうか?自分達こそ髪を染めているではないか。頭頂部には新しく黒の毛が生えてきて色合い的にプリンの様ではないか。知能や見てくれ、仕草だけではなく眼まで悪いとは。
コレは病気か?末期なのか?
だとすれば、これまでどれほど壮絶な人生だったのだろう。映画にすればヒットするのではないか?今度セラフォルー様の映画を撮っている監督に紹介してやりたいほどである。もちろんジャンルはコメディだ。いや、本気過ぎて笑えないかも知れない。
愛しい彼は、声を掛けられるまでお気の毒な三人組に気付いていなかったらしく、目を細めて彼らを見渡す。
「知り合い?」
ふるふると首を横に振る。私の反応に首を傾げたが、俄然彼は何処か納得がいったらしく、私に微笑みかける。
「ああ、分かった。 ナンパだろ? お前は綺麗だからな」
私の頬に手を添え、笑みを浮かべ、愛恵の眼差しを向けてくる彼。
……幸せ過ぎる。
我が主であり、友でもあるサーゼクスは魔王であるにも関わらずその激務に耐えかね、しばしば抜け出す。その分の仕事が『女王』である私に回って来るので、正直かなり疲れる。まぁ、抜け出せばキッツイお仕置きをいつもしてやっているのだが………。その分の疲労を差し引いたとしても、幸せであることには違いない。今度少し優しくしてあげよう。
「俺らを無視してんじゃねぇよ!」
「とっととテメェは消えろや!」
「ぶん殴るぞコラァ!」
人が感傷に浸っているというのに、何と下賎な者共か。この街ごと消し去って文字通り二人だけの時間を過ごしてやろうか?
そんな私の穏便かつ手っ取り早い解決策を遮る様に、彼は悲劇)三人組に向き直る。
「人の女にちょっかい出してんじゃねぇよ、部外者は失せろ」
私の腰を少し強引に抱き寄せ、抱きしめながら笑殺三人組を睨みつける。
殺気が少し混じってしまっている……、彼からすればほんの超細微なものだが、普通の人間に耐えられる訳もなく、蜘蛛の子を散らすが如く逃げていく。私は未だ抱かれたままの状態だ。ん…、彼の匂いがする……。頭がクラクラしてきそうなほど、私には甘美なモノだ。頬の緩みが止められない。 愛おしくて愛おしくて堪らない彼に抱きしめられている。これほどの幸せ、そうはない。…………ずっと、このままでいたい。(作者は口から砂糖を吐きたい)
「じゃ、フィア。 今日は楽しもう?」
先程の殺気など嘘の様な暖かな雰囲気。私は満面の笑みで答える。
「エスコート、してくれる?」
私の手を取り、手甲に口付けをして歩き出す彼。私達の手は勿論、しっかりと繋がれていた。