ハイスクールD×D ―史上最強の存在―   作:黒鬼

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お久しぶりです、すいません。
番外編的な感じで書いてみましたこの話、すいません。
ギャグ回ですが、あんまり笑えません、すいません。
しかも前編後編に分かれます、すいません。


『○○の憂鬱――前編』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――時は少し遡る…――

 

――コレは、ゲーム中の観戦室での出来事――

 

――今回は特殊なケースということで、普段はあまりスポットの当たらない…、

 だがとても重要な者からの視点でご覧頂こう――

 

――それでは……、ごゆるりとお楽しみを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――魔王の憂鬱――

 

 

 

 

 

 

私、サーゼクス・ルシファーは今、非常に不安な心境である。

 

 

 

リアスとライザーのゲームを観戦室で見ているのだが、

まさか本当にトキ君が出て来るとは……。

グレイフィアから最初に言われた時は断りたかったが、『

ダメ、ですか……?』と上目遣いで言われては、私は無力だ。

だっていつもは綺麗系のグレイフィアが途端に可愛らしい表情を見せてくるのだ。 

ギャップ萌えと言ったかな? それが凄い。

 

私の父、グレモリー公爵は天月家、

及びその当主であるトキ君と妹レンちゃんの事を知っている。

もちろん、その凶悪なまでの強さも……。

 

詰まる所、私と父上はライザーがこの度のゲームで、

二度と使いものにならなくなるのではないかと危惧している。

ライザーの父、フェニックス卿は逆にトキ君の心配をしている。

大方、ライザーが人間であるトキ君に無茶な事をするのではないかと案じているのだろう。

非常に優しい方だ。

純血の悪魔は他種族を見下している者が多い。人間の心配をする純血悪魔など稀有な存在だ。

 

だが、今回ばかりは相手が悪かった。 いや、悪過ぎた。

 

 

『天月 刻』

 

彼の力は底知れない。

トキ君一人で世界の勢力図を書き換える事など容易い程に。

刀を握れば剣聖に、拳を握れば拳王に、魔力を練れば歩く魔法要塞と化す。

『銀髪の鬼神』『史上最強』『何コイツ強過ぎなんだけどッ!?』等の異名を持つくらいだ。

トキ君と闘ったことのある人達はみんな言っていた。 強過ぎてドン引きだったね。

 

急遽ゲーム出場が決まったトキ君専用の弱体化の駒をアジュカに急ピッチで作らせた。

 

 

『なるほど、それはまた面白い事になったな。 

 あのトキに使う駒となると、生半可な強度では持つまい……。

 当然効果は弱体化だとして……、その特性をどのタイミングで……』

 

 

といった感じで、かなり乗り気だった。

最上級悪魔ですら動けなくなる程の弱体化の特性ばかりでなく、

その効果を倍増する作用を含んだ能力抑制なども組み込んだらしいのだが……。

あんなデタラメを体現する様な破天荒の権化に、通用するかどうか……。

 

果てしなく不安だ。

 

 

 

 

 

 

――『その刀、光とは別の聖なる力が込められているな…。 一体何をしたッ…!』――

 

――『悪魔は聖なる力系は苦手だろう? 

  だから刀身に光の力やら聖なるオーラやら神通力やらを纏わしといた』――

 

――『神通力だとッ!? 神の持つ力の一つだぞ!? 

  何故一介の人間である貴様が扱える!?』――

 

――『知るか。 やってみたら何か出来た』――

 

――『…無茶苦茶だ……』――

 

 

 

 

 

うん、それはトキ君だから仕方がない。 諦めた方が賢明だよライザー。

モニターを見て、フェニックス卿は開いた口が塞がらない様子だ。

それはそうだろう。

神の力の一つである神通力を、何の祝福も受けていない人間が使いこなし、

挙げ句の果てには『やってみたら何か出来た』なのだから。

父上は大笑いしている。 笑いたくもなるだろう、デタラメ過ぎて。

私は泣きたい。 めちゃくちゃ過ぎて。

 

 

横を見てみると、

ゲーム開始と同時に此処へ転移してきたグレイフィア、レンちゃん、

黒歌がモニター越しのトキ君を見てウットリしている。

頬を赤く染め、熱の篭った視線をトキ君に惜しみなく向けている。

 

なんでやねん。

今のやり取りの何処にウットリ出来る要素があったのだろう?

やはり乙女心は分からない。 というよりトキ君、骨抜きにし過ぎじゃないかい?

 

 

――『コイツは〝妖刀村正〟が一振、『天狼』だ』――

 

 

「よ、妖刀村正ッ!? あの呪われた刀を何故人間が使いこなせる!? 彼は一体……!?」

 

「彼は天月家128代目当主なのですよ、フェニックス卿」

 

「あ、ああ、天月家当主ッ!? な、なるほど……」

 

 

父上の言葉に納得するフェニックス卿。 ……アレで納得するのか。

さすがトキ君、ネームバリューですら規格外だ。

 

 

「確か妖刀村正は四本あったはず……。

 『天狼』『北落師門』『紫微垣(しびえん)』『北斗七星』…。

 『天狼』はトキ君が持っているとして、他の三本は何処へ……? 

 一本でも使い手に恵まれれば『神滅具(ロンギヌス)』に匹敵するというのに……」

 

「あ、その三本でしたら兄さんが集めたので〝天月〟が所有していますよ?」

 

『な、何ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッ!?』

 

 

レンちゃんの言葉に驚愕を隠せない私達。

トキ君! 君は何がしたいんだ!? 『天狼』一本で十分だろう!? 何故……?

 

 

「兄さん曰く『どうせ四本あるんだったらコンプリートした方が清々しい』だそうです」

 

 

………もはや何も言うまい。

あの四本は数ある〝村正〟の中でも別格。

 神だろうが魔王だろうが龍だろうが、何一つ例外無くその命を断ち斬る。

しかもそれらは自我を持っているようで、弱者が持ってしまうとたちまちその精神は喰われ、

所有者が死に至るまで殺戮の限りを尽くすという曰く付きだ。

だが、使いこなせれば己の強さのブースターにもなる。

見る限り、トキ君は『天狼』にエラく気に入られている様だ。 

ますます誰も彼には勝てなくなったね。

 

 

こう言っては悪いが、そんな代物ライザー如きに使うな……。

この一言が言えたらどれだけ私の心労が減ることか……。

 

 

 

――『ま、待て! わ、分かっているのか!

  この婚約は悪魔の未来のために必要で大事なものなんだぞ!?

  お前の様な何も知らない人間の小僧がどうこうするようなことじゃないんだッ!』――

 

――『お前は、グレモリー家次期当主でも、純血の上級悪魔でも、魔王の妹としてでもなく……、

   一人の女として、リアスの事を考えた事があるか?』――

 

――『ふざけるなッ! そんなモノの為にお前はこの縁談を邪魔したと言うのかッ!?

  物事の優先順位も分からない、

  その上部外者であるお前が出て来る幕じゃ無いんだよッ!!!』――

 

 

 

 

 

「言っちゃいましたね……」

 

「言っちゃったにゃん……」

 

「言ってしまいましたね……」

 

「言ってしまったな……」

 

 

 

上から順にレンちゃん、黒歌、グレイフィア、父上である。

………ライザー……、ムチャしやがって……!

 

 

まぁ、今の言葉は流石に私も腹が立つが……。

ライザー、君はこの世界で絶対に敵に回してはいけない人を怒らせた。

トキ君は誰かの夢や人格、想いが(ないがし)ろにされるのを嫌う。

なのにそれらを「そんなモノ」扱いされた日には………、想像しただけで恐ろしい……。

さぁ、トキ君がどう出るか……?

 

 

 

 

 

――『無明神風流殺人剣――〝みずち〟――』――

 

 

 

 

 

「「「「あッ…」」」」

 

 

レンちゃん、黒歌、グレイフィア、私の声が重なった。

他の者達はこの圧倒的…、いや、絶対的剣技を知らない様だ。

トキ君がライザーの後ろへと通り過ぎたかと思うと、

全身のありとあらゆる所から血を吹き出し細切れになるライザー。

太刀筋どころか、いつ動いたか……、初動でさえまったくもって見えなかったね。

……うん、いつも通りだ。

まぁ、あれでもかなり威力をセーブしているらしい。 

駒による弱体化の状態で、だ。 もはや化物である。

 

 

「何だアレはッ!?」

 

「今、彼は何をッ!?」

 

 

父上とフェニックス卿も驚きを隠せない様子。

私はレンちゃんに目配せして、説明を頼む。

アレは本当に説明してもらわないと何一つとして理解不能だからね。

レンちゃんはコクりと頷き、その愛らしい唇を動かす。

 

 

「〝みずち〟は無明神風流において〝序〟の章でしかありませんが、

 神風流(じんぷうりゅう)における全ての(わざ)の基本形……。

 心を闇の如く無にし、技を光明(こうみょう)の如く研ぎ澄まし、

 体を影の如く自然に同化させ、あらゆる〝声〟に耳を傾け、

 〝神の疾風(いぶき)〟で全てを断つ…。 それが………、無明神風流―――……」

 

「………アレで基本形……」

 

 

あ、驚く方そっちなのか。

まぁ、トキ君の扱う〝無明神風流〟と〝天狼〟は相性抜群だからね。 私でも軽く死ねる。

 

 

「まったくもって無駄のない完璧な〝みずち〟……、流石です兄さん…」

 

 

と、頬を赤く染めながらウットリとした表情で呟くレンちゃん。 

もはや尊敬というより崇拝の域である。

 

 

「レ、レン殿。アレが基本形というのなら、更に上が…?」

 

「はい、神風流は〝みずち〟を含めた二つの基本と四つの奥義から成り立っていますよ?」

 

「……やっぱり奥義は凄いので?」

 

「ハッキリ言って桁違いですね、特に兄さんのは。 計り知れません」

 

 

だろうね、みんなトキ君レベルなら世界が終わっちゃうものね。

ていうかそんな事あって堪るものか。

 

 

「私も神風流使えますよ? ……でも、兄さんみたいに()()()()は使えませんが………」

 

 

顔を俯かせ、シュンとしながら言うレンちゃん。 

……途轍もなく可愛らしい。

 

 

白くなめらかそうな肌が服の隙間から垣間見え、

細く長い綺麗な脚がスラッと伸びる理想的なシルエット。

輝くような煌めきを見せる、淡いブルーの長く美しい髪。

翡翠の如く澄んだ瞳を潤ませ、それに呼応するかの様に震える長い睫毛(まつげ)

華奢な白い首筋に、芳醇なうら若き乙女の甘美な香り。 

その儚く可憐な姿は例えようが無い程だ。

 

 

彼女の圧倒的なまでの美貌がこの空間を支配している。 

同性である女性陣も思わず息を飲んでいるではないか。

レンちゃんを見た男性陣は皆、あまりの可愛さ美しさに身悶えしている。 もちろん私もだ。

 

しかし、レンちゃん。 今、サラッと爆弾発言しなかったかい? 最終奥義……?

 

………昔、トキ君の放つ奥義の一つを見たことがある。

辺り一帯が消し飛んで何も無くなり、否、失くなり、

大地は裂け、抉れ、空は割れ、周囲の大気を統べた。

それよりも上……?

もう嫌だ、コリゴリだ。

彼なら〝無限の龍神〟や〝真なる赤龍神帝〟をも倒せるんじゃないかな?

 

 

例え何があろうと、絶対に敵にだけは回してはいけない人物……、天月 刻。

我々悪魔界の上層部も、彼ら〝天月〟の動きには最大限の警戒態勢をしいていたのだが――。

 

 

「レンが落ち込んでる気がしたんだが?」

 

 

ほら来た化物。

 

このように行動がまったく読めない上に有り得ない。

非常識と規格外と型破りのごった煮が服を着て歩いている様だ。

そもそも何で空間が違ったのにそんな細かい部分まで分かるんだい?

 

 

「愛の成せる業だな、うん」

 

 

しれっと言い切りやがった。 

よくもまぁいけしゃあしゃあと……、そして何故私の心を読めるのさ?

 

いつの間にか観戦室…、私達の背後にいたトキ君。

その手には抜き身の〝天狼〟………、本能が『逃げろ』と告げている。

神通力も纏わせてるし、私達悪魔にとっては聖剣より危険だ。

 

 

「で? レンを落ち込ませた自殺志願者(バカ)はどいつだ?」

 

 

心臓を直接鷲掴みされているかの様な悪寒。 ヤバイ、シスコンガキレタ。

 

 

「兄さん、お疲れ様です。 私は大丈夫ですよ、

 兄さんの様に神風流を完璧に使いこなせない事を兄さんの妹として恥じていただけですから」

 

「本当か? 誰にも虐められてないか?」

 

「はい」

 

 

ニッコリと満面の笑顔でトキ君に抱きつくレンちゃん。

この場にいる男は例外なく口元が緩んでいる。 

………もちろん、その笑顔を向けられているトキ君なんかは特にだ。

まぁ、あの笑顔で抱きつかれたら、男では耐えられないよね。

 

 

和やかな視線に包まれている二人に近づく人影。

グレイフィアだ。

トキ君に近寄った矢先に、

 

 

「いひゃい、いひゃい。 いひゃいんはへど(痛いんだけど)、グレイフィア」

 

 

という感じで、トキ君の頬をつねる。

 

 

恐らく、トキ君がレンちゃんにデレデレしていたので嫉妬したんだろう。

そんなグレイフィアを見た黒歌が、ニヤリと笑みを浮かべたのを私は見逃さなかった。

 

 

「トキ、ゲームに完勝したご褒美ニャン、…あむっ…」

 

「「あッ」」

 

 

黒歌にキスされているトキ君を見て、グレイフィアとレンちゃんが叫ぶ。

 

 

「……私なんて普段会えないのに………」

 

 

と、少し涙目で俯くグレイフィア。

その場に居た男性陣は、雷に打たれた様な衝撃に見舞われた

 

 

『あのクールビューティーのグレイフィアがッッ!?!?!?』

 

 

トキ君、君は彼女に一体何をした!?

彼女がここまで表情をあらわにするなんて!!!

 

 

そんなショックに(さいな)まれていると、

いつの間にかトキ君がグレイフィアに近寄っているではないか。

さっきまで彼の居た場所を見る。

顔が真っ赤に染まり、息づかいも荒く、瞳をトロンとさせ、

腰が砕けた様にその場にへたり込んでいる黒歌とレンちゃん。

我々が目を離した一瞬の隙に何があった?

二人は完全に女の、いや、(メス)の表情になっているではないか。

 

というか、グレイフィアに近づいて一体何を…………ッ!?

 

 

「ん…ぷは…、……グレイフィア、今度デート行こう」

 

 

みんな唖然としている。 

それはそうだろう、いくらなんでも唐突過ぎる。

近づいて、抱き寄せて、キスをして、デートに誘う。

いろいろなプロセスが省かれまくっているんじゃないかなトキ君?

いや、本当に、……凄いよ君。

 

 

グレイフィアは顔を耳まで赤く染めながら、コクコクと何度も頷いている。

よほど嬉しい様だ。 両手を頬に当ててトキ君をチラチラ見ている。

正直かなり可愛いし、微笑ましい。

ここ最近は仕事詰めで頑張ってくれていたしね、それぐらいの息抜きは必要だろう。

 

 

 

 






いやホントすいません、今後更に更新は不定期になるかと、すいません。





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